第112回(R5) 看護師国家試験 解説【午前91~95】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

次の文を読み91~93の問いに答えよ。
 Aさん (47歳、男性、会社員)は妻と2人暮らしで、自宅の室内で犬を飼っている。15年前に慢性糸球体腎炎と診断され、徐々に腎機能低下が認められたので、 2年前から慢性腎不全のため血液透析療法を週3回受けている。今回、弟から腎臓の提供の申し出があり、生体腎移植の目的で入院した。入院3日、Aさんの生体腎移植手術は予定通り終了した。

問題91 Aさんの手術直後に観察すべき項目で優先度が高いのはどれか。

1.尿量
2.血糖値
3.白血球数
4.シャント音

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん (47歳、男性、会社員)
・2人暮らし(妻、犬)
・15年前:慢性糸球体腎炎(徐々に腎機能低下)。
・2年前:慢性腎不全(血液透析療法を週3回)。
・今回:生体腎移植の目的で入院。
・入院3日:生体腎移植手術は予定通り終了。
→生体腎移植とは、健康な人から2つある腎臓の1つを摘出し、それをレシピエント(援助者)に移植する方法である。術後の合併症には注意する必要がある。①急性拒絶反応、②原疾患の再発、③感染症、④糖尿病などが当てはまる。

1.〇 正しい。尿量は、Aさんの手術直後に観察すべき項目で優先度が高い。なぜなら、生体腎移植の術後の合併症である急性拒絶反応に該当するため。急性拒絶反応とは、主に術後1ヶ月周辺で現れることがあり、この場合は移植腎機能が低下し、クレアチニンの上昇、蛋白尿、尿量の減少、体重増加、発熱、浮腫などが出現する。腎生検のために入院となり、治療法としてステロイド、サイモグロブリンといった免疫抑制薬で拒絶反応の抑制を図る。
2.× 血糖値より観察すべき優先度の高い項目が他にある。ただし、腎移植を行うことで新たに糖尿病を発症することがあるため、血糖値には注意を図る必要がある。また、術前に糖尿病であった方は移植後糖尿病が悪化することがあり、インスリン治療の開始や増量が必要になる場合がある。
3.× 白血球数より観察すべき優先度の高い項目が他にある。ただし、手術により白血球数の増加が生理的反応としてみられることが多い。合併症でもある感染症が併発していた場合は、さらに白血球数が増加するため観察すべき項目である。
4.× シャント音より観察すべき優先度の高い項目が他にある。シャントとは、血液透析を行う際、充分な血液量が確保できるように、動脈と静脈を体内または体外で直接つなぎ合わせた血管のことである。シャント音が聞こえない場合は、血圧が低下していたり、血管が閉塞している恐れがある。観察は続けていく必要がある項目ではあるが、腎移植が定着すれば、透析から離脱できる。

 

 

 

 

 

次の文を読み91~93の問いに答えよ。
 Aさん (47歳、男性、会社員)は妻と2人暮らしで、自宅の室内で犬を飼っている。15年前に慢性糸球体腎炎と診断され、徐々に腎機能低下が認められたので、 2年前から慢性腎不全のため血液透析療法を週3回受けている。今回、弟から腎臓の提供の申し出があり、生体腎移植の目的で入院した。入院3日、 Aさんの生体腎移植手術は予定通り終了した。

問題92 Aさんは術前からタクロリムスなど複数の免疫抑制薬を服用している。Aさんは「移植したら免疫抑制薬を飲む必要があることは分かっているのですが、 退院後は何に気を付ければよいですか」と看護師に質問した。
 Aさんへの看護師の説明で適切なのはどれか。

1.「犬は今まで通り室内で飼育できます」
2.「グレープフルーツは摂取しないでください」
3.「感染予防のため風疹のワクチン接種をしてください」
4.「薬を飲み忘れたときは2回分をまとめて服用してください」

解答

解説

慢性腎不全とは?

 慢性腎不全(慢性腎臓病とも)は、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。その結果血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。その原因として最も多いのは糖尿病で、次に多いのは高血圧である。尿や血液、腹部超音波検査やCTなどの検査で腎臓機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される。

慢性腎不全(CKD)に対する治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。
①生活習慣の改善:禁煙・大量飲酒の回避・定期的な運動・ワクチン接種による感染症の予防・癌スクリーニングなど。
②食事療法:十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限。

1.× 「犬は今まで通り室内で飼育できます」と断言することはできない。なぜなら、Aさんは術前からタクロリムスなど複数の免疫抑制薬を服用しているため。犬の常在菌による感染症を引き起こす可能性もあるため、主治医と相談のうえで解答すべき項目である。
2.〇 正しい。「グレープフルーツは摂取しないでください」と説明する。なぜなら、免疫抑制薬の効果に影響を及ぼすため。腎移植患者さんの食事制限として、移植後に毎日服用する免疫抑制薬の効果に影響を及ぼす食品(グレープフルーツなどの一部の柑橘類や、一部のハーブティー など)は飲食できない。
3.× 「感染予防のため風疹のワクチン接種をしてください」と説明は不要である。むしろ、免疫抑制薬を使用しているため、生ワクチンは禁忌である。不活化ワクチンは、一般的に移植後の免疫抑制状態が軽くなる3~6ヶ月以降に接種可能である。
4.× 「薬を飲み忘れたときは2回分をまとめて服用してください」と断言することはできない。なぜなら、忘れたことに気が付いた時点に応じて、対応が異なることが多いため。例えば1~2時間程度で、飲み忘れに気が付いた際は、服薬することが多いが、2時間以上経過していた場合は、スキップすることが多い。これは、免疫抑制剤を使用しているためである。どういった対応にすべきか主治医や薬剤師に相談するとよい。

 

 

 

 

 

次の文を読み91~93の問いに答えよ。
 Aさん (47歳、男性、会社員)は妻と2人暮らしで、自宅の室内で犬を飼っている。15年前に慢性糸球体腎炎と診断され、徐々に腎機能低下が認められたので、 2年前から慢性腎不全のため血液透析療法を週3回受けている。今回、弟から腎臓の提供の申し出があり、生体腎移植の目的で入院した。入院3日、 Aさんの生体腎移植手術は予定通り終了した。

問題93 Aさんは順調に回復し、移植後の拒絶反応もなく退院することになった。 Aさんは「腎臓が悪くなってから気を付けないといけないことが多かったのですが、移植してこれまでの制約がなくなりますね」と話した。
 Aさんの退院後の生活で継続が必要なのはどれか。

1.蛋白質の摂取制限
2.週3回の通院
3.水分の制限
4.体重の管理

解答

解説

本症例のポイント

・15年前に慢性糸球体腎炎と診断され、徐々に腎機能低下が認められた。
→生体腎移植手術の合併症として、原疾患の再発があげられる。移植した腎臓に、元の腎臓病が再発することがある。腎機能低下が進んだ場合は2回目の腎移植も考慮しなければならない。

1.× 蛋白質の摂取制限より優先度が高いものが他にある。慢性腎不全の食事療法において、十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限する必要がある。Aさんは、腎移植によって、以前の生活より蛋白質の制限は緩和されていると考えられる。
2.× 週3回の通院より優先度が高いものが他にある。通院の頻度としては、手術後2か月までは週1回程度、手術後4か月までは2週に1回程度、以降は月1回程度で十分である。
3.× 水分の制限より優先度が高いものが他にある。むしろ水分摂取は制限されず、脱水予防のため推奨されることが多い。
4.〇 正しい。体重の管理が、Aさんの退院後の生活で継続が必要である。なぜなら、肥満は移植腎に大きな影響を与えるため。腎移植後も、BMIを25(kg/㎡)未満に保つよう指導する。

慢性腎不全とは?

 慢性腎不全(慢性腎臓病とも)は、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。その結果血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。その原因として最も多いのは糖尿病で、次に多いのは高血圧である。尿や血液、腹部超音波検査やCTなどの検査で腎臓機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される。

慢性腎不全(CKD)に対する治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。
①生活習慣の改善:禁煙・大量飲酒の回避・定期的な運動・ワクチン接種による感染症の予防・癌スクリーニングなど。
②食事療法:十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限。

 

 

 

 

 

次の文を読み94~96の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、女性、美容師) はゴルフが趣味である。 同居しているパートナーと1週前にゴルフに行った後から、顔面の紅斑、微熱、 全身倦怠感および手指の関節痛が現れた。病院を受診したところ、 全身性エリテマトーデス 〈SLE:systemic lupus erythematosus〉と診断され入院した。Aさんは看護師に「これまで病気をしたことがなかったので、驚いています」と話した。
 【バイタルサイン体温 37.4℃、呼吸数18/分、脈拍64/分、整、血圧110/60mmHg。
 【
血液所見赤血球260万/μL、Hb9.0 g/dL、白血球7,600/μL、血小板18万/μL、尿素窒素16mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、CRP0.7mg/dL、直接Coombs〈クームス〉試験陽性。
 尿所見:尿蛋白(-)、尿潜血(-)。
 神経学的検査:異常所見なし。
 12誘導心電図:異常所見なし。
 胸部エックス線写真:異常所見なし。

問題94 Aさんに生じている可能性が高いのはどれか。

1.心膜炎
2.溶血性貧血
3.ループス腎炎
4.中枢神経ループス

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(28歳、女性、美容師、全身性エリテマトーデス
・バイタルサイン:体温 37.4℃、呼吸数18/分、脈拍64/分、整、血圧110/60mmHg。
・血液所見赤血球260万/μL、Hb9.0 g/dL、白血球7,600/μL、血小板18万/μL、尿素窒素16mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、CRP0.7mg/dL、直接Coombs〈クームス〉試験陽性
・尿所見:尿蛋白(-)、尿潜血(-)。
・神経学的検査、12誘導心電図、胸部エックス線写真:異常所見なし。
→全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。

1.× 心膜炎とは、心膜の炎症である。しばしば心嚢液貯留を伴う。 心膜炎は、多くの疾患(例:感染症、心筋梗塞、外傷、腫瘍、代謝性疾患)によって引き起こされる。特発性のことも多い。 症状としては胸痛胸部圧迫感などがあり、しばしば深呼吸により悪化する。本症例の場合、体温上昇、CRP上昇がみられているものの特徴的な症状としては胸痛胸部圧迫感などの症状がみられていないため、心膜炎と判断する材料は少ない。
2.〇 正しい。溶血性貧血が、Aさんに生じている可能性が高い。なぜなら、直接Coombs〈クームス〉試験陽性Hb9.0 g/dL(基準値:男性14~18g/dL、女性12~16g/dL)あるため。溶血性貧血とは、血管の中を流れる赤血球が破壊される(溶血)ことにより起こる貧血の一種である。ビタミンE欠乏が、溶血性貧血や神経障害の原因となる。直接抗グロブリン試験(直接クームステスト)とは、患者赤血球が生体内において不完全抗体で既に感作(吸着)されているか否かを調べる方法である。抗ヒトグロブリン抗体を含むゲルに患者血液(赤血球浮遊液)を入れて遠心し、ゲル内で凝集反応させて判定する。つまり、赤血球表面に結合しうる抗赤血球抗体の有無を調べるのがCooms試験である。溶血が疑われる場合(網状赤血球増加、間接ビリルビン高値、LDHの上昇、ハプトグロビンの低下)に陽性となる。
3.× ループス腎炎とは、全身性エリテマトーデス(SLE)に伴う腎障害(糸球体障害)である。腎臓の中の糸球体(尿のろ過装置)に、全身性エリテマトーデス(SLE)に起因する免疫複合体の沈着、細胞の増殖、微小血栓や壊死などが発生することによって腎機能の低下が引き起こされる。本症例の場合、クレアチニン0.8mg/dL(正常値:男性1.2mg/dl以下、女性1.0mg/dl以下)であるため、ループス腎炎と判断すべきではない。ちなみに、クレアチニンとは、筋肉を動かすためのエネルギーを使った後に出てくる老廃物の一つで、体にとって不要なもので、尿として体の外に出す必要がある。
4.× 中枢神経ループスとは、全身性エリテマトーデス(SLE)に伴う最重症病態の一つである。全身性エリテマトーデスの精神神経症状(中枢神経ループス:CNSループス)であり、軽度のものでは頭痛や髄膜炎症状、重度のものになるとけいれんや錯乱などがみられる。ほかにも、精神症状(うつ状態、失見当識、妄想など)がみられる。本症例と看護師との会話の中で、Aさんは看護師に「これまで病気をしたことがなかったので、驚いています」と話していることから、中枢神経ループスとは判断すべきではない。

 

 

 

 

 

次の文を読み94~96の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、女性、美容師) はゴルフが趣味である。 同居しているパートナーと1週前にゴルフに行った後から、顔面の紅斑、微熱、 全身倦怠感および手指の関節痛が現れた。病院を受診したところ、 全身性エリテマトーデス 〈SLE:systemic lupus erythematosus〉と診断され入院した。Aさんは看護師に「これまで病気をしたことがなかったので、驚いています」と話した。
 【バイタルサイン】体温 37.4℃、呼吸数18/分、脈拍64/分、整、血圧110/60mmHg。
 【血液所見】赤血球260万/μL、Hb9.0 g/dL、白血球7,600/μL、血小板18万/μL、尿素窒素16mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、CRP0.7mg/dL、直接Coombs〈クームス〉試験陽性。
 尿所見:尿蛋白(-)、尿潜血(-)。
 神経学的検査:異常所見なし。
 12誘導心電図:異常所見なし。
 胸部エックス線写真:異常所見なし。

問題95 Aさんはステロイドパルス療法の後、副腎皮質ステロイド薬の内服治療が開始された。入院3週ころから満月様顔貌がみられたため、外見の変化に気持ちが落ち込むようになった。
 Aさんへの対応で適切なのはどれか。

1.気にする必要はないと励ます。
2.パートナーの面会を制限する。
3.外見よりも病気の治療を優先すると説明する。
4.薬の量が減れば満月様顔貌は軽減すると説明する。

解答

解説

ステロイドパルス療法とは?

ステロイドパルス療法とは、ステロイドを短期間で大量に用いることにより作用を強め「劇的な効果を得る」ことを目的とした治療法である。治療全体でのステロイドの用量を減少させることができ、短期間の大量投与は副作用も少ないことが知られている。急性期治療後のステロイド内服は長期にならないよう漸減中止することが望ましい。なぜなら、ステロイドの長期内服による合併症を予防するため。

1.× 気にする必要はないと励ます必要はない。むしろ「必要ない」と言われた患者は、「否定された」と受け取られかねない。一方的に、看護師の考えや激励をおこなうのではなく、傾聴共感受容的な態度が望ましい。
2.× パートナーの面会を制限する必要はない。なぜなら、Aさんからそのような希望は聞かれていないため。むしろ、パートナーとの面会の時間は苦痛の緩和に有効であることが多い。一方的に、看護師の考えを押し付けないよう心掛ける。
3.× 外見よりも病気の治療を優先すると説明することの優先度は低い。なぜなら、治療の方針は主に医者が決定するため。Aさんの外見の変化からの落ち込みを、主治医に報告し、具体的な治療期間や今後の方針、セルフケアなど説明し、不安の軽減を図るよう心掛ける。
4.〇 正しい。薬の量が減れば満月様顔貌は軽減すると説明する。ステロイドの副作用は、ステロイドの量の減量に伴い、減少する。また、急性期治療後のステロイド内服は長期にならないよう漸減中止することが望ましい。

ステロイドの副作用

【ステロイドの機序】
ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。

【ステロイドの副作用】
軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌
重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)

ステロイドを長期的に内服した場合、体内でステロイドホルモンが分泌されなくなることがある。そのため、急に薬の内服を止めると体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがある。これをステロイド離脱症候群という。

(※参考:「副腎皮質ステロイド」日本リウマチ学会様HP)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)