第112回(R5) 看護師国家試験 解説【午前66~70】

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問題66 患者の権利や力を尊重し、自己制御している感覚を持たせ、患者が社会生活に必要な技能や能力を獲得する支援を意味するのはどれか。

1.リカバリ
2.ストレングス
3.レジリエンス
4.エンパワメント

解答

解説
1.× リカバリとは、精神の病気に制限があったとしても、何かに貢献し、希望にあふれ、満たされた生活を送る生き方である。リカバリには、精神疾患による壊滅的な影響を乗り越え成長する中で人生についての新たな意味や目標が見いだされていくことが含まれている。(直訳:回復)
2.〇 正しい。ストレングスは、患者の権利や力を尊重し、自己制御している感覚を持たせ、患者が社会生活に必要な技能や能力を獲得する支援を意味する。ストレングスモデルとは、患者さんの夢や希望を実現させるために、患者の持つ長所や強み(=ストレングス)を活かした「できること」を大切に支援していく考え方のことである。(直訳:強み)
3.× レジリエンスとは、精神障害者が逆境の中で能動的に鼓舞し、再び自己コントロール感を獲得したり、社会に適応していく過程を表す概念であることである。(直訳:立ち直る力)
4.× エンパワメントとは、対象者が主体的に自身の状態を変えていく方法や自信を獲得できるよう、対象者が本来持っている力を引き出し、その自己決定能力を強化することである。対象は、個人、組織、コミユニテイの3段階がある。過程には、傾聴→対話→行動アプローチがある。(直訳:権限を与える、自信を与える)

コミュニティ・エンパワメントの成果

①コミュニティ・メンバーは自身の問題解決に向かう意欲と自信がつく。
②コミュニティ・メンバーのコミュニティに対する関心が高まる。
③コミュニティでの相互支援が高まる。
④コミュニティでリーダーが育成される。
⑤コミュニティは政策改善の方向性を見いだす。

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【8問】医療用語についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

問題67 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律〈障害者総合支援法〉に基づき、精神障害者に適用されるのはどれか。

1.障害基礎年金
2.一定割合の雇用義務
3.精神障害者保健福祉手帳
4.自立支援医療(精神通院医療)

解答

解説

国民年金法(30条)

第三節 障害基礎年金(支給要件)
第三十条 障害基礎年金は、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において次の各号のいずれかに該当した者が、当該初診日から起算して一年六月を経過した日(その期間内にその傷病が治つた場合においては、その治つた日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至つた日を含む。)とし、以下「障害認定日」という。)において、その傷病により次項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときに、その者に支給する。ただし、当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の三分の二に満たないときは、この限りでない。
一 被保険者であること。
二 被保険者であつた者であつて、日本国内に住所を有し、かつ、六十歳以上六十五歳未満であること。
2 障害等級は、障害の程度に応じて重度のものから一級及び二級とし、各級の障害の状態は、政令で定める。(※引用:「国民年金法」e-GOV法令検索様HPより)

1.× 障害基礎年金は、「国民年金法(30条)」に規定されている。国民年金法とは、公的年金制度を創設する法律である。老齢、障害または死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持および向上に寄与することを目的とする。
2.× 一定割合の雇用義務は、「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」に規定されている。これは37条に「第一節 対象障害者の雇用義務等(対象障害者の雇用に関する事業主の責務)全て事業主は、対象障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、適当な雇用の場を与える共同の責務を有するものであつて、進んで対象障害者の雇入れに努めなければならない。」と記載されている(※引用:「障害者の雇用の促進等に関する法律」e-GOV法令検索様HPより)。
3.× 精神障害者保健福祉手帳とは、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律<精神保健福祉法>」に規定されている。精神障害者保健福祉手帳とは、精神障害者の自立と社会参加の促進を図ることを目的としてつくられたものである。障害者手帳は、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種の手帳を総称した一般的な呼称であり、 制度の根拠となる法律等はそれぞれ異なる。対象は、何らかの精神障害(てんかん、発達障害などを含む)により、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約があるものである。ちなみに、精神障害者保健福祉手帳を取得することで、①生活の助けとなるサービス(自治体ごとに公共料金などの割引、税金の免除・減免など)や、②働くことへのサービス(障害者求人へ応募できることや就労に関する支援の対象となるなど)を受けることができる。
4.〇 正しい。自立支援医療(精神通院医療)は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律〈障害者総合支援法〉に基づき、精神障害者に適用される。自立支援医療とは、『障害者総合支援法』に定められている。障害者総合支援法とは、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策についてまとめられた法律である。これにより障害者の範囲が拡大され、身体障害者、精神障害者、知的障害者、障害児の全てが対象とされている。そして、対象となっている者は、認定調査というものを受け「障害支援区分」という障害の重症度分類によって7区分(非該当、区分1~6)に分けられる。それにより受けられるサービス内容が変わってくる。①更生医療(自立支援医療)、②育成医療(軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できる者に対して提供される、生活の能力を得るために必要な自立支援医療費の支給を行うもの)、③精神通院医療(精神疾患の治療に掛かる医療費を軽減する公的な制度)、④育成医療(障害児の身体障害を除去、軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できる者に対して提供される)がある。

障害者総合支援法とは?

障害者総合支援法は、2013年に障害者自立支援法から障害者総合支援法へと改正され、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策についてまとめられた法律である。これにより障害者の範囲が拡大され、身体障害者、精神障害者、知的障害者、障害児の全てが対象とされている。そして、対象となっている者は、認定調査というものを受け「障害支援区分」という障害の重症度分類によって7区分(非該当、区分1~6)に分けられる。それにより受けられるサービス内容が変わってくる。

①障害者も難病患者も自立できる社会をめざす。
②応能負担(所得に応じて自己負担額が変わること)が原則。
③あらゆる障害(身体・知的・精神+難病)についてこの法律で対応する。
④市区町村が事業の母体である。

 

 

 

 

 

問題68 Aさん(85歳 男性)は1人暮らしで判断能力が不十分である。4親等以内の親族はいない。
 訪問看護事業所におけるAさんの情報管理で適切なのはどれか。

1.成年後見人にAさんの訪問看護計画を説明する。
2.地域の民生委員にAさんの経済状況を知らせる。
3.Aさんの訪問記録を電子メールに添付して援助者間で共有する。
4.新たなサービスの利用を検討する他の利用者にAさんのケアプランを見せる。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(85歳、男性、1人暮らし)
判断能力が不十分
・4親等以内の親族はいない。
→本人からみて4親等以内に該当する人は、高祖父母、曽祖父母、祖父母、父母、子、孫、ひ孫、玄孫、兄弟姉妹、甥・姪、姪孫、おじ・おば、いとこ、大おじ・大おばである。

→訪問看護とは、看護を必要とする患者が在宅でも療養生活を送れるよう、かかりつけの医師の指示のもとに看護師や保健師などが訪問して看護を行うことである。訪問看護師の役割として、主治医が作成する訪問看護指示書に基づき、健康状態のチェックや療養指導、医療処置、身体介護などを行う。在宅看議の目的は、患者が住み慣れた地域で自分らしく安心して生活を送れるように、生活の質(QOL)向上を目指した看護を提供することである。療養者とその家族の価値観や生活歴を重視し、その人らしさやQOLを考える。

1.〇 正しい。成年後見人にAさんの訪問看護計画を説明する。なぜなら、本症例は、判断能力が不十分で、4親等以内の親族はいないため。ちなみに、成年後見人とは、判断能力がないまたは不十分な者に対して、保護者を付すことにより契約などの法律行為を補助するものである。①法定後見制度と②任意後見制度とがある。①法定後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などによって判断能力が不十分な方に対して、本人の権利を法律的に支援、保護するための制度である。本人の判断能力の程度に応じて、後見・保佐・補助の3類型がある。②任意後見制度とは、まだしっかりと自分で判断ができるうちに、自分の判断能力が衰えてきた時に備えて、あらかじめ支援者(任意後見人)を誰にするか、将来の財産管理や身の回りのことについてその人に何を支援してもらうか、自分で決めておくことができる仕組みである。
2.4.× 地域の民生委員にAさんの経済状況を知らせる/新たなサービスの利用を検討する他の利用者にAさんのケアプランを見せる必要はない。なぜなら、Aさんの個人情報保護しなければならないため。経済状況はAさんのプライバシーに関わる情報である。業務上知り得た人の秘密を漏らさない義務(秘密保持義務:42条2項)は、「保健師助産師看護師法」に定められている。42条2項には、「保健師、看護師又は准看護師は、正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。保健師、看護師又は准看護師でなくなつた後においても、同様とする」と記載されている(※一部引用:「保健師助産師看護師法」厚生労働省HPより)。ちなみに、民生委員は、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進図っている。任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。
3.× Aさんの訪問記録を電子メールに添付して援助者間で共有する必要はない。なぜなら、電子メールはセキュリティが十分ではなく、個人情報が漏洩するリスクがあるため。患者を特定できるような訓練内容を指導者にメールで報告すべきではない。誤送信により情報漏えいしてしまった場合は、ニュースになりかねない。「患者情報 メール」と検索すると誤送信による情報漏えいのニュースがたくさん出てくるため、個人情報の管理は責任を持って行う。

個人情報とは?

個人情報保護法(第2条)

『個人情報』とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名・生年月日その他の記述などにより特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)をいう。

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【12問】訪問看護事業所についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

問題69 Aさん (80歳、女性)は1人暮らしで、在宅酸素療法〈HOT〉を受けている。 訪問看護師はAさんに停電時を想定した避難行動の指導を行うことにした。
 Aさんの停電時の避難行動で優先度が高いのはどれか。

1.電気のブレーカーを落とす。
2.玄関の扉を開けて出口を確保する。
3.訪問看護ステーションに連絡をする。
4.酸素濃縮器から酸素ボンベに切り替える。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん (80歳、女性、1人暮らし)
在宅酸素療法〈HOT〉を受けている。
・訪問看護師:停電時を想定した避難行動の指導。
→酸素療法とは、室内空気より高い濃度の酸素を投与することである。したがって、在宅酸素療法とは、酸素療法を自宅で実施することをさす。適応として、慢性呼吸不全や慢性心不全により体内の酸素濃度が低下している人に対して行われる。在宅でも安心して酸素療法を受けられるよう、生活指導などの看護支援が必要で、在宅酸素療法を実施している間は、火気厳禁となる。

1.× 電気のブレーカーを落とすより優先すべき選択肢が他にある。なぜなら、すぐに生命に危険を及ばないため。停電時に電気のブレーカーを落とすことは、一般的に安全対策としては重要あるが、Aさんの場合、在宅酸素療法を受けているため、生命の危険性が高いものから行動する必要がある。
2.× 玄関の扉を開けて出口を確保するより優先すべき選択肢が他にある。なぜなら、すぐに生命に危険を及ばないため。玄関の扉を開けて出口を確保することは、主に地震が起こった時に行う行動である。一般的に安全対策としては重要あるが、Aさんの場合、在宅酸素療法を受けている。
3.× 訪問看護ステーションに連絡をするより優先すべき選択肢が他にある。なぜなら、すぐに生命に危険を及ばないため。停電時には、まず酸素供給の確保が最優先となる。
4.〇 正しい。酸素濃縮器から酸素ボンベに切り替える。なぜなら、停電時には酸素濃縮器が使用できなくなり、酸素供給が途絶えるリスクがあるため。酸素濃縮器とは、室内の空気から窒素を取り除き、高濃度の酸素を供給する装置である。ただし、酸素ボンベにも容量があるため、その後、訪問看護ステーションに連絡したり、避難所での支援が必要となる。

 

 

 

 

 

問題70 介護保険制度における都道府県が指定監督を行う居宅サービスはどれか。

1.福祉用具貸与
2.小規模多機能型居宅介護
3.定期巡回随時対応型訪問介護看護
4.認知症対応型共同生活介護〈グループホーム〉

解答

解説

居宅サービスとは?

居宅サービスとは、自宅で生活する人を対象とした介護保険の介護サービス全般のことをいう。利用者は要介護2以下が7割を占めているというデータもあり、その割合は年々増加傾向となっている。

【居宅サービスの種類】
訪問看護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定支援入居者生活介護、福祉用具貸与、特定福祉用具販売、住宅改修費支給

1.〇 正しい。福祉用具貸与は、介護保険制度における都道府県が指定監督を行う居宅サービスである。福祉用具貸与は、要介護者や要支援者が自宅で介護を受ける際に必要な福祉用具を貸与するサービスである。福祉用具の貸与は、居宅サービス計画を立案した介護支援専門員(ケアマネジャー)を通じて福祉用具貸与事業者から貸与される。直接的に、介護支援専門員(ケアマネジャー)が行うことはしない。介護支援専門員(ケアマネジャー)が利用者や家族と相談し、利用できるサービスのなかでニーズに合ったものを決定する役割をしている。
2.× 小規模多機能型居宅介護は、地域密着型サービスである。小規模多機能型居宅介護とは、デイサービスを中心に訪問介護やショートステイを組み合わせ、在宅での生活の支援や、機能訓練を行うサービスで、居宅・通所・短期入所を状況に応じて組み合わせて行うものである。
3.× 定期巡回随時対応型訪問介護看護は、地域密着型サービスである。定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは、訪問介護員または訪問看護師が要介護者の自宅を定期訪問し、介護・看護を提供する24時間対応の介護サービスである。一日に複数回訪問し、一回の訪問は10~20分程度で、短時間の身体介護(食事介助、清拭介助、排せつ介助など)を中心に行う。
4.× 認知症対応型共同生活介護〈グループホーム〉は、地域密着型サービスである。認知症対応型共同生活介護(グループホーム)とは、認知症である者について、共同生活を営むべき住居において、入浴・排泄・食事などの介護、その他日常生活上の世話および機能訓練を行うことをいう。共同生活のなかで利用者の認知症の改善を図る施設である。

地域密着型サービスとは?

地域密着型サービスとは、高齢者が住み慣れた地域でサービスを受けられるようにするものである。原則として、その市町村の被保険者しか利用できない。今後増加が見込まれる認知症高齢者や中重度の要介護高齢者等が、出来る限り住み慣れた地域で生活が継続できるように、市町村指定の事業者が地域住民に提供するサービスである。

【地域密着型サービス9種類】
①定期巡回・随時対応型訪問介護看護
②夜間対応型訪問介護
③認知症対応型通所介護
④小規模多機能居宅介護
⑤看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
⑥認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
⑦地域密着型特定施設入居者生活介護
⑧地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
⑨地域密着型通所介護

 

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