第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午後81~85】

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81 疾病の内因となるのはどれか。

1.免疫複合体
2.栄養素
3.温度
4.細菌
5.薬物

解答1

解説

病因とは?

病因とは、病気の原因をといい、①内因と②外因に分けられる。

①内因とは、生体側の因子で,病気にかかりやすい準備状態を指す。内因のみでは病気は発現しない。内因は素因ともいう。
例:①生理的素因(年齢、人種、性など)、②病理的素因(個人的素因:皮膚癌を生じやすい紅皮症、アレルギー体質、糖尿病の易感染性など)

②外因とは、外部から生体に対し障害性に働くものをいう。
例:①栄養的外因(蛋白質過剰による痛風、ビタミンB1欠乏による脚気など)、②物理的外因(外傷、熱傷、放射線障害など)、③化学的外因(重金属中毒、医薬品、体内で産生されるエンドトキシン、アンモニア、アセトンなど)、④病原微生物(ウイルス、細菌、原虫など)

1.〇 正しい。免疫複合体は、疾病の内因の病理的素因である。免疫複合体とは、抗原に抗体が結合した抗原抗体複合体とそれに補体成分が結合した抗原抗体補体複合体をいう。Ⅲ型アレルギー抗原と抗体(IgG抗体・IgM抗体)が結合したものを免疫複合体といい、膠原病や自己免疫疾患を引き起こす。 
2.× 栄養素は、疾病の外因の栄養的素因である。
3.× 温度は、疾病の外因の物理的素因である。
4.× 細菌は、疾病の外因の病原微生物である。
5.× 薬物は、疾病の外因の科学的素因である。

 

 

 

 

 

82 舌癌について正しいのはどれか。

1.癌全体に対する発症頻度は約10%である。
2.発症年齢は20歳代が多い。
3.好発部位は舌尖である。
4.浸潤は起こさない。
5.平上皮癌が多い。

解答5

解説

舌癌とは?

舌がんとは、舌がんは舌にできるがんである。原因不明であるが、危険因子として喫煙や飲酒による化学的な慢性刺激に加えて、虫歯や合わない詰め物、極端に傾いた歯などによる機械的な慢性刺激、さらには口の中の不衛生な状態などが挙げられる。 男女比は約2:1である。好発年齢は50歳代後半であるが、50歳未満が約1/4を占め、20~30歳代の若年者にも時々みられる。癌全体に対する発症頻度は、約1~2%(※口腔がん含め)である。

1.× 癌全体に対する発症頻度は、「約10%」ではなく約1~2%(※口腔がん含め)である。
2.× 発症年齢は、「20歳代」ではなく50歳代後半が多い。危険因子として喫煙や飲酒による化学的な慢性刺激に加えて、虫歯や合わない詰め物、極端に傾いた歯などによる機械的な慢性刺激、さらには口の中の不衛生な状態などが挙げられる。 
3.× 好発部位は、「舌尖」ではなく舌縁部である。
4.× 浸潤は、「起こさない」のではなく起きる。なぜなら、がん(悪性腫瘍)であるため。悪性腫瘍は未熟構造であり、浸潤性があり異型性が強く、分化度が低く、分裂が活発で転移が見られる。悪性腫瘍は正常な細胞の増殖、成熟の制御を外れて増殖し、外部からの制御を受けない性質を持つ。
5.〇 正しい。平上皮癌が多い(約90%)。皮膚は表皮・真皮・皮下組織といった層構造を形成している。扁平上皮癌はこのうち表皮に存在する表皮角化細胞と呼ばれる細胞が悪性増殖してできる。

 

 

 

 

83 Alzheimer<アルツハイマー>病で正しいのはどれか。

1.基礎疾患として高血圧症が多い。
2.アミロイドβタンパクが蓄積する。
3.初期には記銘力障害はみられない。
4.MRI所見では前頭葉の萎縮が特徴的である。
5.脳血流シンチグラフィ所見では頭頂葉の血流増加がある。

解答2

解説

Alzheimer型認知症とは?

アルツハイマー病とは、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑(アミロイドβの蓄積)・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。Alzheimer型認知症の患者では、現在でもできる動作を続けられるように支援する。ちなみに、休息をとることや記銘力を試すような質問は意味がない。

1.× 基礎疾患として高血圧症が多いのは、「脳血管型認知症」である。脳血管型認知症とは、脳細胞の死滅によって起こる認知症であり、その部位や範囲によって症状は様々である。他の症状として、巣症状(失語、失行、失認など脳の局所性病変によって起こる機能障害)や階段状に認知障害が進行することが特徴である。
2.〇 正しい。アミロイドβタンパクが蓄積する。アルツハイマー病とは、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑(アミロイドβの蓄積)・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。
3.× 初期に記銘力障害が「みられない」のではなくみられる。初期症状では、記銘力障害や健忘性失語(物の名前を思い出せない)など、 言葉に関する記憶の喪失が特徴的である。
4.× MRI所見で前頭葉の萎縮が特徴的であるのは、「前頭側頭型認知症」である。前頭側頭型認知症とは、前頭葉・側頭葉に限局した萎縮性病変を認める症候群をいう。代表的な疾患にPick病がある。発症は初老期(40~60歳代)にみられる。初期は、自発性の低下、自発語の減少、偏食・過食、脱抑制などの人格変化・行動異常で潜行性に発症する。
5.× 脳血流シンチグラフィ所見では、頭頂葉の血流の「増加」ではなく減少がある。シンチグラフィとは、体内に投与した放射性同位体から放出される放射線を検出し、その分布を画像化したものである。

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【6問】認知症についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

84 食物の嚥下において喉頭蓋が喉頭口を閉鎖する時期はどれか。

1.先行期
2.準備期
3.口腔期
4.咽頭期
5.食道期

解答4

解説

(※図引用:「illustAC様」)

1.× 先行期とは、飲食物の形や量、質などを認識する時期である。
2.× 準備期とは、口への取り込み。飲食物を噛み砕き、飲み込みやすい形状にする時期である。
3.× 口腔期とは、飲食物を口腔から咽頭に送り込む時期である。
4.〇 正しい。咽頭期は、食物の嚥下において喉頭蓋が喉頭口を閉鎖する時期である。咽頭期とは、飲食物を咽頭から食道に送り込む時期である。
5.× 食道期とは、飲食物を食道から胃に送り込む時期である。

嚥下の過程

①先行期・・・飲食物の形や量、質などを認識する。
②準備期・・・口への取り込み。飲食物を噛み砕き、飲み込みやすい形状にする。
③口腔期・・・飲食物を口腔から咽頭に送り込む。
④咽頭期・・・飲食物を咽頭から食道に送り込む。
⑤食道期・・・飲食物を食道から胃に送り込む。

 

 

 

 

85 放射性同位元素を用いるのはどれか。

1.脳血管造影
2.膀胱鏡検査
3.頭部CT検査
4.腹部超音波検査
5.骨シンチグラフィ

解答5

解説
1.× 脳血管造影とは、脳内および脳周辺の血管を画像にして、動静脈奇形や動脈瘤などの異常の検出する検査である。手首、肘、鼠径部の動脈から細いカテーテルを血管の中に入れて、脳の血管に造影剤を注入し、エックス線を使用して撮影する。
2.× 膀胱鏡検査とは、内視鏡器具を使用し、尿道から膀胱等を観察する検査である。
3.× 頭部CT検査とは、脳内の腫瘍や出血などの異常の有無や程度が分かる。出血部位は低吸収域(黒)としてうつる。エックス線を使用した撮影である。
4.× 腹部超音波検査とは、腹腔内臓器に対して行う超音波検査である。腹部エコーともいう。 一般的には肝臓・胆のう・膵臓・脾臓・腎臓・脈管系を対象とする。
5.〇 正しい。骨シンチグラフィは、放射性同位元素を用いる。放射線を発する薬品を体内に投与し、専用カメラで検出する。描出された画像をシンチグラフィと呼ぶ。

 

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