第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午前61~65】

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61 ジェンダーの定義について正しいのはどれか。

1.生物学的な性
2.社会的文化的な性
3.自己認識している性
4.性的指向の対象となる性

解答2

解説

ジェンダーとは?

ジェンダーとは、生物学的な性別に対して、社会的・文化的につくられる性別のことを指す。つまり、特定の社会で共有されている価値観を元に、男女の役割などで区別される性別のことである。例えば、①すべての女性と女の子に対するあらゆる差別をなくす、②すべての女性や女の子へのあらゆる暴力(女性や女の子を売り買いしたり、 性的な目的などで一方的に利用することを含む。) をなくす、③子どもの結婚、早すぎる結婚、強制的な結婚、女性器を刃物で切りとる 慣習など、女性や女の子を傷つけるならわしをなくすなどである。

1.× 生物学的な性(Biological Sex)とは、生物学的特徴(外性器、内性器、性染色体、性ホルモン分泌など)によるものである。

2.〇 正しい。社会的文化的な性が、ジェンダーの定義として当てはまる。ジェンダーとは、生物学的な性別に対して、社会的・文化的につくられる性別のことを指す。つまり、特定の社会で共有されている価値観を元に、男女の役割などで区別される性別のことである。例えば、①すべての女性と女の子に対するあらゆる差別をなくす、②すべての女性や女の子へのあらゆる暴力(女性や女の子を売り買いしたり、 性的な目的などで一方的に利用することを含む。) をなくす、③子どもの結婚、早すぎる結婚、強制的な結婚、女性器を刃物で切りとる 慣習など、女性や女の子を傷つけるならわしをなくすなどである。
3.× 自己認識している性は、性自認(ジェンダー・アイデンティティー)という。身体の性と一致せず、自分自身の身 体に違和感を持っている人や、男性でも女性でもないと感じている人もいる。性同一性とは、自分自身の性別を自ら認識する個人の人格的な感覚である。
4.× 性的指向の対象となる性は、好きになる対象の性という意味である。具体例として、「恋愛・性愛の対象が異性に向かう異性愛(ヘテロセクシュアル)」「同性に向かう同性愛(ホモセクシュアル)」「男女両方に向かう両性愛(バイセクシュアル)」を挙げられる。

 

 

 

 

 

62 日本の周産期の死亡に関する記述で正しいのはどれか。

1.新生児死亡は生後1週未満の死亡をいう。
2.死産は妊娠満12週以後の死児の出産をいう。
3.妊産婦死亡は妊娠中又は妊娠終了後満28日未満の女性の死亡をいう。
4.令和元年(2019年)の人口動態統計では自然死産数が人工死産数よりも多い。

解答2

解説
1.× 新生児死亡とは、「生後1週未満の死亡」ではなく「生後4週(28日)未満の死亡」をいう。ちなみに、生後1週未満の死亡は、早期新生児死亡と定義する。早期新生児死亡率とは、年間の1000出生当たりの早期新生児の死亡数(生後1週未満の死亡数) を指す。【早期新生児死亡率】= 年間早期新生児死亡数(生後1週(7日)未満の死亡数)÷ 年間出生数×1000で表せる。
2.〇 正しい。死産とは「妊娠満12週(妊娠4か月)以後の死児の出産」をいう
3.× 妊産婦死亡とは、妊娠中又は妊娠終了後「満28日未満」ではなく「満42日未満」の女性の死亡をいう。
4.× 逆である。令和元年(2019年)の人口動態統計では、「人工死産数(53.8%)」が「自然死産数(46.2%)」よりも多い。ただし、近年、僅差となっているため最新のデータを常に参照してください。令和3年(2021)によると、「死産数は1万6277胎で、前年の1万7278胎より1001胎減少し、死産率(出産(出生+死産)千対)は19.7で、前年の20.1より低下している。死産率のうち、自然死産率は9.8 で前年の9.5より上昇し、人工死産率は9.9で前年の10.6より低下している(※引用:「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」厚生労働省HPより)」

妊娠週数

・妊娠初期:妊娠1か月~4か月(妊娠0~15週)
・妊娠中期:妊娠5か月~7か月(妊娠16~27週)
・妊娠後期:妊娠8か月~10か月(妊娠28週~)

 

 

 

 

63 避妊法について適切なのはどれか。

1.経口避妊薬は排卵を抑制する。
2.コンドーム法の避妊効果は99%以上である。
3.基礎体温法は月経が不順な女性に有用である。
4.子宮内避妊器具<IUD>は性交のたびに挿入が必要である。

解答1

解説

低用量経口避妊薬

【方法】エストロゲンとプロゲステロンの2種類のホルモンからなる低用量経口避妊薬を毎日1錠ずつ服用する。

【利点】女性主体で避妊ができる。
正確に服用すれば、避妊効果は確実である。
以下のような避妊以外の利点がある。
・子宮体癌、卵巣癌の発生率低下。
・子宮内膜症の症状緩和。
・月経困難症、月経前症候群の改善。

【欠点】
服用開始後1~2週間くらいまで、悪心や少量の不正性器出血を起こすことがある。
血栓症、心筋梗塞などのリスクを伴う場合がある。

【禁忌】
大手術の前後および長期間安静状態を要する患者。
35歳以上で1日15本以上の喫煙者。
血栓性素因のある者。
重症の高血圧症患者。
血管病変を伴う糖尿病患者。
産後4週以内の者。
授乳中(産後6か月未満)の者など。

1.〇 正しい。経口避妊薬は排卵を抑制する。経口避妊薬とは、エストロゲンとプロゲステロンの2種類のホルモンからなる。正確に服用できれば避妊効果は確実であるが、短所として、悪心や少量の不正性器出血を起こすことがある。血栓症、心筋梗塞などのリスクを伴う場合がある。
2.× コンドーム法の避妊効果は、「99%以上」ではなく98%程度であるといわれている。コンドーム法は、性感染症の予防ができ、日本で最も普及している避妊法である。男性主導であることが多く、性交渉の途中で付けたり、破れてしまったり、はずれてしまったりなどの失敗が少なくないことから、一般的な使用方法だと1年間の失敗率は15%といわれている。
3.× 基礎体温法は月経が不順な女性には、「有用」ではない。基礎体温法は、月経が不順ではなく規則正しく発来する女性に有用である。基礎体温法は、薬剤を使わず行えるが、排卵日を正確に予測することは不可能なので、避妊効果は劣る。ちなみに、周期的禁欲法(オギノ式避妊法)とは、生理(月経)周期から排卵日を予測して避妊する方法である。1年間に25%の人が妊娠するといった報告がある。
4.× 子宮内避妊器具<IUD>は、性交のたびの挿入は不要である。子宮内避妊器具とは、一度挿入すれば長期間(2~3年)有効であり、除去すれば再び妊孕性(にんようせい:妊娠するために必要な能力)を回復することができるが、不正性器出血、疼痛を起こすことがある。挿入や抜去は医師が行う。経産婦より未産婦のほうが、疼痛が大きく挿入しづらい。

子宮内黄体ホルモン放出システムとは?

子宮内黄体ホルモン放出システム(Intrauterine System)とは、子宮内避妊器具の一つで、黄体ホルモンが付加されていることが特徴である。子宮の中に入った子宮内黄体ホルモン放出システムから徐々に黄体ホルモンが放出され、①低用量ピルと同等の高い避妊効果と②子宮内避妊器具の長期にわたる避妊が行える。また、子宮の病気(子宮腺筋症、子宮筋腫、子宮内膜症)などにより月経の量が多い場合や生理痛が強い場合にも効果がある。

【特徴】
①子宮内膜の成長を抑えられ、月経量の減少や月経痛が軽くなる。
②子宮内にのみ作用し、全身作用がほとんどない。つまり、低用量ピルが持つような副作用はほとんどないと考えられている。低用量ピルの使用を勧められない方(例えば高血圧の方や喫煙者など)でも使用が可能である。
③5年間黄体ホルモンが放出される。その間は低用量ピルと同等の高い避妊効果がある。

【デメリット】
①子宮内黄体ホルモン放出システムを子宮内に挿入した後、軽度の出血が続くことがある。これは放出される黄体ホルモンの影響でおこるもので、時間の経過と共に出血日数や量は減っていく。
②医師による装着、除去が必要。その際に出血や痛みがある。

 

 

 

 

 

64 マタニティブルーズについて正しいのはどれか。

1.意欲低下が主症状である。
2.症状は2週間以上持続する。
3.好発時期は産後1か月ころである。
4.産後のホルモンの変動が要因となる。

解答4

解説

マタニティーブルーズとは?

マタニティーブルーズとは、分娩数日後から2週程度の間に多くの褥婦が経験し、原因は産後のホルモンの変動である。症状は、涙もろさ、抑うつ気分、不安、緊張、集中力の低下、焦燥感などの精神症状と、頭痛、疲労感、食欲不振などの身体症状がみられる。それらの症状が2週間以上持続する場合には産後うつ病を疑う。

1.× 主症状は、「意欲低下」ではなく、「軽度うつ症状(精神症状と身体症状)」である。特に、涙もろさ、不安感、集中力低下、頭痛など人によって主症状は様々みられる。
2.× 症状は2週間以上持続する場合は、「マタニティーブルーズ」ではなく産後うつを疑う。産後うつ病とは、産褥婦の約3%にみられ、産褥1か月以内(特に2週間以内)に発症することが多い。強い抑うつ症状を呈し、育児にも障害が出る。産後うつ病の患者への適切な対応が大切である。抑うつ状態の患者に対し、まずは患者の不安に寄り添い、共感的態度をとることが基本である。
3.× 好発時期は、「産後1か月ころ」ではなく、分娩数日後から2週間ごろである。
4.〇 正しい。産後のホルモンの変動が要因となる。妊娠中に多く分泌された黄体ホルモンや卵胞ホルモンが産後、急激に減少することが精神面に影響を与え、さらに慣れない育児や産後の疲れも加わることが原因である。

産後うつとは?

産後うつ病とは、産褥婦の約3%にみられ、産褥1か月以内(特に2週間以内)に発症することが多い。強い抑うつ症状を呈し、育児にも障害が出る。産後うつ病の患者への適切な対応が大切である。抑うつ状態の患者に対し、まずは患者の不安に寄り添い、共感的態度をとることが基本である。

 

 

 

 

65 精神保健における一次予防はどれか。

1.職場でうつ病患者を早期発見する。
2.自殺企図者に精神科医療機関への受療を促す。
3.統合失調症患者の社会参加のための支援を行う。
4.ストレスとその対処法に関する知識の啓発活動を行う。

解答4

解説

疾病予防の概念

疾病の進行段階に対応した予防方法を一次予防、二次予防、三次予防と呼ぶ。

一次予防:「生活習慣を改善して健康増進し、生活習慣病等を予防すること」
二次予防:「健康診査等による早期発見・早期治療」
三次予防:「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」と定義している。

(※健康日本21において)

1.× 職場でうつ病患者を早期発見するのは、二次予防である。
2.× 自殺企図者に精神科医療機関への受療を促す(早期治療)のは、二次予防である。
3.× 統合失調症患者の社会参加のための支援を行うのは、三次予防である。
4.〇 正しい。ストレスとその対処法に関する知識の啓発活動を行うのは、一次予防である。

 

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