第99回(H28) 助産師国家試験 解説【午後6~10】

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6 子宮頸部細胞診においてスライドグラスに細胞を塗布した後の処理で正しいのはどれか。

1.よく乾燥させる。
2.生理食塩水を滴下する。
3.カバーグラスをかける。
4.95%エタノールで固定する。

解答

解説

子宮頸部細胞診とは?

子宮頸部細胞診とは、ブラシやヘラで子宮頸部をこすり、細胞を採取する検査である。その採取方法として、医師が直接子宮を見ながら頸部の細胞を採取する「医師採取」が一般的であるが、自分自身で子宮入口(頸部)の細胞を採る「自己採取」による検査方法もある。

(※引用:「産婦人科診療ガイドライン外来編2020 P30」)

1.× よく乾燥させる必要はない。なぜなら、細胞が収縮したり変形したりするため。

2.× 生理食塩水を滴下する必要はない。なぜなら、生理食塩水を滴下すると「固定が不十分」となるため。

3.× カバーグラスは最後に行う。顕微鏡観察で使用するカバーグラスは、スライドガラスの上に置かれた試料を保護し、顕微鏡のレンズに傷をつけないようにするために使用される。

4.〇 正しい。95%エタノールで固定する。なぜなら、細胞の形態を保存でき、診断の精度を高めることができるため。したがって、スライドグラスに細胞を塗布した後は、95%エタノールやスプレー式固定剤でただちに固定する必要がある(※上の文献参照)。

 

 

 

 

 

7 Aさん(30歳、初産婦)。妊娠39週5日。前期破水にて入院し、2時間後、自然に陣痛が開始した。分娩開始後13時間が経過し、内診所見は、子宮口6cm開大、展退度80%、Station +1、小泉門が2時方向に触れる。陣痛間欠は7分に延長し、陣痛発作は20秒のままである。陣痛間欠時も緊張しており、昨晩から眠れていない。悪心が強く、飲水が困難なため点滴静脈内注射が開始された。胎児心拍数陣痛図は正常である。
 この時点でのAさんへの対応で最も適切なのはどれか。

1.入浴を勧める。
2.階段昇降を一緒に行う。
3.陣痛間欠時に休息を促す。
4.陣痛発作時に怒責を誘導する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(30歳、初産婦、妊娠39週5日:前期破水)。
・2時間後:自然に陣痛が開始した。
・分娩開始後13時間子宮口6cm開大、展退度80%、Station +1、小泉門が2時方向に触れる。
・陣痛間欠は7分に延長し、陣痛発作は20秒のままである。
・陣痛間欠時も緊張しており、昨晩から眠れていない
・悪心が強く、飲水が困難なため点滴静脈内注射が開始
・胎児心拍数陣痛図:正常。
→本症例は「微弱陣痛」が疑われる。微弱陣痛とは、一旦分娩開始した(陣痛の間隔が10分以内ごとであり 、痛みを伴う子宮収縮により分娩が進行)にも関わらず、陣痛の強さが弱く、発作の持続が短く、かつ陣痛の間隔が長くなってしまい、分娩が進行しない状態をいう。子宮口の開き具合により、6分30秒以上(子宮口の開き:4~6cm)、6分以上(子宮口の開き:7~8cm)、4分以上(子宮口の開き:9~10cm)が陣痛周期の目安とされている。子宮口が完全に開いてから(分娩第2期)は、初産婦では4分以上、経産婦では3分30秒以上が微弱陣痛の目安となる。

【用語説明】
破水とは、卵膜が破れて羊水が子宮外に流出することである。破水は、臍帯脱出や上行感染、胎児機能不全などの原因となり得る。【破水の種類】①前期破水とは、分娩が始まる前の破水のこと、②早期破水とは、分娩開始以降で子宮口全開大前の破水のこと、③適時破水:子宮口全開大に達する頃の破水のことをいう。

【微弱陣痛の治療】
母体疲労がある場合は、無理をして分娩を進行させるだけでなく、睡眠をとれるよう支援したり、痛みを緩和させるケアをする。温かいタオルを痛みが強い場所に置いたり、マッサージを行ったり、足浴をして緊張を解いたりする場合もある。また、不安や恐怖も微弱陣痛に関与しているため、不安軽減に努めることも大切なケアの一つになる。陣痛を有効な(正常な)陣痛にするために、陣痛促進剤の点滴を行うこともある。破水していない場合は医師、助産師の判断で人工的に破膜させることで陣痛を増強させることがある。分娩が停止してしまい、経腟分娩が可能な状態であれば、鉗子分娩や吸引分娩を行う場合がある。経腟分娩が不可能と判断される場合や母体と胎児に危険があると判断される場合には、緊急で帝王切開術を行う場合がある。

1.× 入浴を勧める優先度は低い。なぜなら、湯船を使用した入浴は、上行感染のリスクがあげられるため。リラックス効果を優先する場合は、足浴にするべきである。

2.× 階段昇降を一緒に行う優先度は低い。なぜなら、院内の階段昇降によりさらに疲労が蓄積され分娩遅延につながる可能性が高いため。微弱陣痛の原因の一つに疲労があげられる。疲労により子宮筋の収縮不全が起こり微弱陣痛となる。

3.〇 正しい。陣痛間欠時に休息を促す。なぜなら、陣痛間欠時にリラックスして休息を取ることで、体力の回復が図れるため。睡眠をとれるよう支援したり、痛みを緩和させるケアをする。温かいタオルを痛みが強い場所に置いたり、マッサージを行ったり、足浴をして緊張を解いたりする場合もある。また、不安や恐怖も微弱陣痛に関与しているため、不安軽減に努めることも大切なケアの一つになる。陣痛を有効な(正常な)陣痛にするために、陣痛促進剤(子宮収縮薬)の点滴を行うこともある。

4.× 陣痛発作時に怒責を誘導する優先度は低い。なぜなら、本症例の子宮口は6cm開大であり、分娩第1期といえるため。怒責は、子宮口が全開大で児頭の矢状縫合が縦径に一致したら開始し、本人のタイミングではなく、子宮収縮のタイミングで行うことでお産が進みやすくなる。

分娩期

【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。

・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。

・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。

・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。

 

 

 

 

8 Aさん(21歳、大学生)。在学中に妊娠し、パートナーも大学生である。Aさんはパートナーと別れ、生まれた子どもは実母と一緒に育てることを決めた。妊娠経過は順調で、妊娠37週0日の妊婦健康診査で産後の生活についてAさんから助産師に相談があった。
 このときのAさんの言動で児への虐待のリスクが最も高いと思われるのはどれか。

1.「大学は卒業したい」
2.「これからどうなるのか不安です」
3.「本当は子どもなんか欲しくない」
4.「この子に障害があったらどうしよう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(21歳、大学生、在学中に妊娠)
・パートナーも大学生である。
・Aさんはパートナーと別れ、生まれた子どもは実母と一緒に育てることを決めた。
妊娠経過は順調
妊娠37週0日産後の生活についての相談。
→本症例は、妊娠後期であり、これまで中絶の判断もする機会はあったはずである。虐待のリスク要因は下にまとめておいたので参考にしてほしい。

1.× 「大学は卒業したい」という発言だけでは虐待のリスクが高いとはいえない。むしろ、将来について、前向きな意志を持っていることを示している。

2.4.× 「これからどうなるのか不安です」「この子に障害があったらどうしよう」という発言だけでは虐待のリスクが高いとはいえない。むしろ、将来の不安は、一般的な妊婦によくみられる心境である。その将来の不安を、具体的に聞くことで、支援のきっかけとなる。

3.〇 正しい。「本当は子どもなんか欲しくない」というAさんの言動は、児への虐待のリスクが最も高い。なぜなら、本症例(妊娠37週0日)は、妊娠経過も順調であることから、胎動・愛着を感じる時期でもあるため。この時期に、「本当は子どもなんか欲しくない」と拒否感があることから、ネグレクトや虐待に繋がるリスクが高いと感じられる。

虐待のリスク要因とは?

【保護者側のリスク要因】保護者側のリスク要因には、妊娠、出産、育児を通して発生するものと、保護者自身の性格や精神疾患等の身体的・精神的に不健康な状態から起因するものがある。リスク要因と考えられているものを挙げると、まず望まぬ妊娠10代の妊娠であり、妊娠そのものを受容することが困難な場合である。また、望んだ妊娠であったとしても、妊娠中に早産等何らかの問題が発生したことで胎児の受容に影響が出たり、妊娠中又は出産後に長期入院により子どもへの愛着形成が十分行われない場合がある。また、保護者が妊娠、出産を通してマタニティブルーズや産後うつ病等精神的に不安定な状況に陥ったり、元来性格が攻撃的・衝動的であったり、医療につながっていない精神障害、知的障害、慢性疾患、アルコール依存、薬物依存等がある場合や保護者自身が虐待を受けたことがある場合が考えられる。特に、保護者が未熟である場合は、育児に対する不安やストレスが蓄積しやすい。
【子ども側のリスク要因】子ども側のリスクとして考えられることは、乳児期の子ども、未熟児、障害児、何らかの育てにくさを持っている子ども等である。

(※引用:「 子ども虐待対応の手引き > 第2章 発生予防」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

9 Aさん(26歳、初産婦)。東南アジアの出身で2年前に結婚し、日本人の夫(40歳、会社員)と2人暮らしである。日本語は日常会話程度ならできるが読み書きはできず、英語は全く理解できない。妊娠中から市の保健センターの保健師がAさんに関わっていた。妊娠39週に正常分娩し、母子とも経過は良好で、産褥4日目に夫とともに助産師から退院指導を受けることになった。
 このときの助産師の説明で適切なのはどれか。

1.「出生届は外務省に提出してください」
2.「育児は日本の習慣に合わせてください」
3.「1か月健康診査はご夫婦でお越しください」
4.「1か月健康診査後に保健師へ出産の連絡をしてください」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(26歳、初産婦、東南アジアの出身、2年前に結婚)。
・2人暮らし:日本人の夫(40歳、会社員)。
・日本語:日常会話程度、読み書きはできない
・英語:全く理解できない。
・妊娠中:市の保健センターの保健師が関わっていた
・妊娠39週:正常分娩(母子:経過良好)。
・産褥4日目:夫とともに助産師から退院指導を受ける。
→Aさん(日本語困難)に対する適切な支援を考えよう。

1.× 出生届は、「外務省」ではなく市区町村の役所に提出する。出生届とは、生まれてきたお子さんの氏名等を戸籍に記載するための届出である。戸籍に記載されることで、生まれてきたお子さんの親族関係が公的に証明され、住民票が作成される。なお、外国人のお子さんであっても、日本国内で出生した場合は、出生届をしなければならない。戸籍法により、出生届は出生日を含めて14日以内に在住している市区町村の役所に提出する。両親の国籍にかかわらず、日本で出産した場合は届け出なければならない。

2.× 必ずしも育児は、日本の習慣に合わせる必要はない。なぜなら、育児にはさまざまな文化的背景があり、異なる文化を尊重する必要があるため。育児の方針は、夫婦で相談するように伝える。

3.〇 正しい。「1か月健康診査はご夫婦でお越しください」と説明する。なぜなら、Aさんの日本語の能力は、日常会話程度で読み書きはできないため。夫も同行することで、正確に医療者からの説明を理解でき、Aさんにも安心感を与えることができる。また、夫婦で育児に関わる姿勢を促すことができる。

4.× あえて、1か月健康診査後に保健師へ出産の連絡する必要はない。なぜなら、設問文から、すでに妊娠中、市の保健センターの保健師が関わっていたという情報があるため。したがって、1か月健康診査後に再度連絡することを求めるのは過剰な指示ともいえる。また、連絡の必要性がある場合でも、助産師や保健師で連絡を取り合うことが望ましい。

 

 

 

 

10 生理休暇について正しいのはどれか。

1.非正規雇用の場合は取得できない。
2.取得には医師の診断書が必要である。
3.請求できる日数は月に3日までである。
4.労働基準法に定められている権利である。

解答

解説

労働基準法とは?

労働基準法とは、労働者の生存権の保障を目的として、①労働契約や賃金、②労働時間、③休日および年次有給休暇、④災害補償、⑤就業規則といった労働者の労働条件についての最低基準を定めた法律である。

1.× 非正規雇用の場合も、「取得できる」。正社員だけでなく、契約社員やパート、アルバイトなどの非正規社員にも認められている。

2.× 取得に、医師の診断書は「不要である」。生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときに認められる。

3.× 請求できる日数は、「月に3日まで」という日数の制限はない。生理により就業が困難な期間中、必要に応じて休暇を取ることができる。

4.〇 正しい。労働基準法に定められている権利である。生理休暇は、『労働基準法(第68条)』に規定されている。「(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)第六十八条 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない(※引用:「労働基準法」e-GOV法令検索様HPより)」。

 

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