第99回(H28) 助産師国家試験 解説【午前41~45】

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次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
 Aさん(37歳、女性)。常勤の会社員。結婚して2年間、基礎体温を記録して排卵に合わせて性交渉を行っていたが、妊娠に至らなかった。義母の強い勧めがあり、Aさん1人で不妊専門クリニックを受診した。月経周期は28日型、持続日数は5日、基礎体温は二相性である。

41 初診時に確認すべき情報で最も優先されるのはどれか。

1.経済力
2.仕事の継続の意思
3.不妊治療に対する義母の考え
4.不妊治療に関する夫婦の合意

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(37歳、女性、常勤の会社員)。
・結婚して2年間:妊娠に至らず(基礎体温を記録、排卵で性交渉)。
義母の強い勧めがあり、Aさん1人で不妊専門クリニックを受診。
・月経周期は28日型、持続日数は5日、基礎体温は二相性。
→妊娠・出産は夫婦間の大きなライフイベントである。

1.× 経済力より優先されるものが他にある。なぜなら、Aさん(37歳、常勤の会社員)で、背景にも義母の強い勧めがあることから、経済的な負担はみられない。

2.× 仕事の継続の意思より優先されるものが他にある。なぜなら、不妊治療は仕事を継続しながら行えるため。

3.× 不妊治療に対する義母の考えより優先されるものが他にある。なぜなら、不妊専門クリニックへ受診したのも義母の強い勧めがあったため。また、義母の考えよりもまずは、夫婦の意思が大切となる。

4.〇 正しい。不妊治療に関する夫婦の合意は、初診時に確認すべき情報で最も優先される。なぜなら、妊娠・出産は夫婦間の大きなライフイベントであるため。Aさん1人で不妊専門クリニックを受診していることからも、夫の支援が必要となるため、夫の意思を確認しておくことが大切である。

 

 

 

 

 

次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
 Aさん(37歳、女性)。常勤の会社員。結婚して2年間、基礎体温を記録して排卵に合わせて性交渉を行っていたが、妊娠に至らなかった。義母の強い勧めがあり、Aさん1人で不妊専門クリニックを受診した。月経周期は28日型、持続日数は5日、基礎体温は二相性である。

42 初診時の診察では、子宮や卵巣に形態異常はなかった。Aさんは月経4日目に再受診した。
 Aさんに行う検査で適切なのはどれか。

1.子宮卵管造影
2.フーナー試験
3.卵管通水検査
4.ホルモン基礎値の測定

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(37歳、女性、常勤の会社員)。
・結婚して2年間:妊娠に至らず(基礎体温を記録、排卵で性交渉)。
・月経周期は28日型、持続日数は5日、基礎体温は二相性。
・初診時:子宮や卵巣に形態異常はなかった。
・Aさんは月経4日目に再受診した。
→各検査の知識をおさえておこう。

(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編 2020 P133」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

1.× 子宮卵管造影は、月経が終了する7日目から排卵前の10日目頃までに実施する検査である。ちなみに、子宮卵管造影とは、造影剤を子宮から卵管を経て腹腔内に注入し、X線で撮影することで子宮内や卵管の状態を調べる検査である。不妊治療において必須検査項目である。

2.× フーナー試験は、排卵日ごろに実施する検査である。Huhner〈フーナー〉試験(性交後検査)とは、頸管粘液中の精子の数と動きを調べることで、子宮内に十分な精子が侵入しているかどうかを推測する検査である。排卵期の静甲後に、子宮頚管粘液を採取し運動精子を観察する。粘液中に精子が確認できなければ無精子症や抗精子抗体、子宮頸管炎などが疑われる。

3.× 卵管通水検査は、月経終了直後に実施する検査である。卵管通水検査とは、子宮内に生理食塩水などを注入して、卵管の通過性や子宮の状態を調べる検査である。

4.〇 正しい。ホルモン基礎値の測定は、Aさん(月経4日目)に行う検査である。ホルモン基礎値の測定は、月経3~7日目に実施し、血液検査で、卵巣の機能を判断するために、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、エストラジオール(E2)などの量を測定する。高値の場合、卵巣機能が少し低下していることが考えられ、低値の場合、下垂体または間脳の機能が低下していることが考えられる。

月経周期

・卵胞期:1回の月経周期が始まると脳の底の方にある下垂体というところから、卵を包んでいる卵胞を刺激する卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されはじめ、卵胞は大きくなると同時に女性ホルモン(エストロゲン)を分泌する時期。
・増殖期:女性ホルモン(エストロゲン)が新しい子宮内膜を成長させていく時期。卵胞期と増殖期とはだいたい同じ時期。
・黄体期:排卵した後の卵胞(黄体)から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるようになる時期。
・分泌期:子宮内膜が成長を止めて受精卵が着床できるよう準備をする時期。
・月経期:出血が始まってから終わるまでの期間をさす。

 

 

 

 

 

次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
 Aさん(37 歳、女性)。常勤の会社員。結婚して2年間、基礎体温を記録して排卵に合わせて性交渉を行っていたが、妊娠に至らなかった。義母の強い勧めがあり、Aさん1人で不妊専門クリニックを受診した。月経周期は28日型、持続日数は5日、基礎体温は二相性である。

43 その後、Aさんは2年間外来で治療を受けたが妊娠には至らなかった。夫婦で相談し、体外受精を試みることにした。
 Aさんへの説明で正しいのはどれか。

1.「採卵のタイミングに合わせて夫に採精してもらう必要があります」
2.「Aさんの場合、妊娠する確率は60%以上です」
3.「妊娠した場合、流産する確率は10%以下です」
4.「胎児の心奇形の発生率は自然妊娠より高くなります」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(39歳、女性、常勤の会社員)。
・結婚して2年間:妊娠に至らず(基礎体温を記録、排卵で性交渉)。
・月経周期は28日型、持続日数は5日、基礎体温は二相性。
・初診時:子宮や卵巣に形態異常はなかった。
・2年間外来で治療を受けたが妊娠には至らなかった。
・夫婦で相談し、体外受精を試みることにした。
体外受精の知識をおさえておこう。

1.〇 正しい。「採卵のタイミングに合わせて夫に採精してもらう必要があります」と説明する。体外受精とは、採卵手術により排卵直前に体内から取り出した卵子を体外で精子と受精させる治療である。受精が正常に起こり細胞分裂を順調に繰り返して発育した良好胚を体内に移植すると妊娠率がより高くなることから、一般的には2~5日間の体外培養後胚を選んで腟から子宮内に胚移植する。

2.× Aさん(39歳)の場合、妊娠する確率は「60%以上」ではなく約20%である(※データ引用:「2021年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績」)。

3.× 妊娠した場合、流産する確率は「10%以下」ではなく約30%である(※データ引用:「2021年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績」)。

4.× 胎児の心奇形の発生率は、自然妊娠より高くない。先天性心疾患の原因は、遺伝子と生活習慣などの環境要因が複雑に絡み合って発症すると考えられている。特定の原因を特定することはほとんどできず、多くの場合原因は不明である。

主な生殖補助医療

顕微授精(ICSI:卵細胞質内精子注入法)とは、体外受精がうまくいかない場合や精子の数が非常に少ない重症の男性不妊症が発覚した場合に行われ、精子を直接卵子に注入する顕微授精のことである。

体外受精―胚移植<IVF-ET>とは、受精し分裂した卵を子宮内に移植することである。排卵近くまで発育した卵子を体外に取り出し、精子と接触(媒精)させて受精し分割した卵を子宮内に戻す不妊治療のことであり、移植する胚は1個である。つまり、同じお皿に精子と卵子を一緒に培養して受精をさせる一般的な体外受精のことをいう。

凍結融解胚移植(FET)とは、採卵をして受精した胚を一旦凍結して、次以降の周期で胚を融解し移植する技術のことである。凍結保護剤の入った培養液の中に胚(受精卵)を入れて急速に融解し、融解後数時間~数日培養して最終的な状態を確認して子宮内に移植する。凍結融解胚移植出生児が年々増えている理由として、2つ挙げられる。①:1回の採卵で複数個の胚を凍結できることが多く複数回胚移植ができること、②:着床に適した状態で胚を子宮に移植することができ高い妊娠率が見込めること、③:胚の凍結融解技術が向上し、ほとんど胚がダメージを受けなくなったことなどである。

 

 

 

 

次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
 Aさん(40歳、初産婦)。半年間の不妊治療を受け、クエン酸クロミフェンの内服によって妊娠に至った。経腟超音波検査で子宮内に胎囊が3つ認められ、三胎妊娠と診断された。妊娠9週で総合周産期母子医療センターの産科に紹介され受診した。

44 妊娠25週5日、Aさんは少量の出血があり、救急外来を受診した。「今朝から時々下腹部が硬くなる感じがして、痛いときもありました」と言う。救急外来受診時の経腟超音波検査の写真を下図に示す。子宮頸管長は23.4mmであった。
 Aさんに認められる所見はどれか。2つ選べ。

1.内子宮口の開大
2.頸管長の短縮
3.辺縁前置胎盤
4.胎胞の膨隆
5.臍帯下垂

解答1・2

解説

本症例のポイント

・Aさん(40歳、初産婦、三胎妊娠)。
・半年間の不妊治療:クエン酸クロミフェンにて妊娠に至った。
妊娠25週5日:少量の出血あり。
・「今朝から時々下腹部が硬くなる感じがして、痛いときもありました」と。
・子宮頸管長:23.4mm
→本症例は、切迫早産が疑われる。切迫早産の所見をおさえておこう。ちなみに、切迫早産とは、子宮収縮が規則的かつ頻回に起こることにより子宮口が開き、早産となる危険性が高い状態である。頸管長が妊娠28週未満で30mm未満は切迫早産と診断とされる場合が多い。破水が先に起きたり、同時に起きたりすることもある。切迫早産の主な症状は、下腹部の張り、生理痛のような下腹部や腰の痛みである。このような症状がある場合には、まず横になって安静に促す。

1.〇 正しい。内子宮口の開大がAさんに認められる。なぜなら、経腟超音波検査の写真から読み取れるため。内子宮口が楔状(嘴状)に開大している所見がみられる。

2.〇 正しい。頸管長の短縮がAさんに認められる。なぜなら、Aさんの子宮頸管長は23.4mmであるため。頸管長が妊娠28週未満で30mm未満は切迫早産と診断とされる場合が多い。

3.× 辺縁前置胎盤とは、胎盤の端が子宮口の端に達している状態の前置胎盤である。ちなみに、前置胎盤とは、胎盤が正常より低い位置(腟に近い側)に付着してしまい、そのために胎盤が子宮の出口(内子宮口)の一部もしくは全部を覆っている状態のことをいう。頻度として、全分娩の約1%弱を占めている。一般的に前置胎盤は無症状であるが、典型的な症状として①腹痛を伴わない突然の性器出血(警告出血)や大量性器出血があげられる。これらの症状は、お腹が大きくなり張りやすくなる妊娠28週以降に増加するといわれている。

4.× 胎胞の膨隆とは、妊娠中期に起こる「頚管無力症」という疾患の最終段階で、羊膜が子宮口から膣内に風船のように膨隆する現象である。胎胞とは、子宮頸管内に胞状に侵入した卵膜の部分である。やがて破水、流早産に至る。

5.× 臍帯下垂とは、破水していない状態で、赤ちゃんより先に臍帯が降りてきている状態で、内診をすると赤ちゃんの頭ではなく臍帯が触れる状態をいう。原因として、①赤ちゃんの姿勢に問題がある場合(さかごや横位など)や、児頭骨盤不均衡、低出生体重児分娩、羊水過多症、多胎妊娠などである。

 

 

 

 

 

次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
 Aさん(40歳、初産婦)。半年間の不妊治療を受け、クエン酸クロミフェンの内服によって妊娠に至った。経腟超音波検査で子宮内に胎囊が3つ認められ、三胎妊娠と診断された。妊娠9週で総合周産期母子医療センターの産科に紹介され受診した。

45 Aさんは入院し、リトドリン塩酸塩の点滴静脈内注射が開始された。しかし、開始翌日から全身の発疹と肝機能異常とが出現したため、リトドリン塩酸塩は中止となり、マグネシウム硫酸塩の点滴静脈内注射に変更された。助産師が訪室するとAさんは「ずっと全身がほてって、だるい感じです」と訴えた。体温36.7℃、脈拍80/分、血圧128/80mmHg。
 今後最も注意すべき所見はどれか。

1.手指の振戦
2.下腿の浮腫
3.腱反射の消失
4.耳下腺の腫脹
5.両側の視野狭窄

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(40歳、初産婦、三胎妊娠)。
妊娠25週5日切迫早産の疑い。
・リトドリン塩酸塩の点滴静脈内注射が開始。
・開始翌日:全身の発疹と肝機能異常とが出現。
リトドリン塩酸塩からマグネシウム硫酸塩の点滴静脈内注射に変更。
・Aさん「ずっと全身がほてって、だるい感じです」と。
・体温36.7℃、脈拍80/分、血圧128/80mmHg。
→それぞれの薬剤の副作用をおさえておこう。

(※図引用:「医療用医薬品 : リトドリン塩酸塩」)

1.× 手指の振戦は、リトドリン塩酸塩の副作用である。

2.× 下腿の浮腫より優先されるものが他にある。下腿の浮腫は、一般的な妊娠の過程でみられやすい生理的所見であるため、薬剤の副作用と判断が難しい。

3.〇 正しい。腱反射の消失が今後最も注意すべき所見である。「本剤の投与により高マグネシウム血症が起こり、マグネシウム中毒(血圧低下、中枢神経抑制、心機能抑制、呼吸麻痺等)が惹起されることがあるため、投与中は、慎重な観察(膝蓋腱反射、呼吸数の変動の確認あるいは血中マグネシウム濃度の測定等)を行うこと」と記載されている(※引用:「医療用医薬品 : マグセント」より)。

4~5.× 耳下腺の腫脹/両側の視野狭窄は、リトドリン塩酸塩やマグネシウム硫酸塩とも関連が低い。

リトドリン塩酸塩の禁忌

・強度の子宮出血、子癇、前期破水例のうち子宮内感染を合併する症例、常位胎盤早期はく離、子宮内胎児死亡、その他妊娠の継続が危険と判断される者
・重篤な甲状腺機能亢進症
・重篤な高血圧症
・重篤な心疾患
・重篤な糖尿病
・重篤な肺高血圧症
・妊娠16週未満の妊婦
・本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者

(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P136」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

 

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