第99回(H28) 助産師国家試験 解説【午後36~40】

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次の文を読み36〜38の問いに答えよ。
 Aさん(33歳、1回経産婦)。妊娠40週2日、6分ごとに1分間持続する規則的な子宮収縮を自覚して来院した。前日の妊婦健康診査時の経腹超音波検査の結果、胎児推定体重3,800g、AFI 8.0。夫は出産の立会いを予定していたが仕事の都合で来院できなかった。

36 来院時の内診所見は、子宮口4cm開大、展退度50%、Station -2、子宮頸管の硬度は中、子宮口の位置は中央であった。腟鏡診では後腟円蓋に少量の血液が混じった帯下があり、BTB試験紙の色調の変化は認めない。子宮収縮時には会話が困難な程度の痛みを感じている。
 来院時の助産診断で正しいのはどれか。

1.前期破水である。
2.羊水過少である。
3.児頭は陥入している。
4.Bishop<ビショップ>スコアは6点である。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(33歳、1回経産婦)
・妊娠40週2日:6分ごとに1分間持続する規則的な子宮収縮を自覚。
・前日:胎児推定体重3,800 g、AFI 8.0
・来院時:子宮口4cm開大展退度50%Station -2、子宮頸管の硬度は中、子宮口の位置は中央。
・腟鏡診:後腟円蓋に少量の血液が混じった帯下あり、BTB試験紙の色調の変化は認めない
・子宮収縮時:会話が困難な程度の痛みを感じている。
→ほかの選択肢の消去できる理由をあげられるようにしよう。

1.× 前期破水とはいえない。なぜなら、本症例のBTB試験紙の色調の変化は認めないため。満期の破水を診断する際に、もっとも一般的に用いられる方法がBTB試験紙法である。正常の腟内は弱酸性(pH4.5~6.0)で、羊水は中性から弱アルカリ性(pH7.0~8.5)である。BTB試験紙が青変(青く変色)することにより、羊水流出による腟内のpHの変化を確認する。ただし、血液・精液・薬剤などの影響による偽陽性の場合も少なからずあるため、診断には注意を要す。ちなみに、前期破水とは、陣痛開始前のいずれかの時点で胎児の周りの羊水が流れ出ることである。多くの場合、破水後まもなく陣痛が始まる(約70~80%が1週間以内)。破水して6~12時間以内に陣痛が始まらない場合には、妊婦と胎児の感染リスクが上昇する。

2.× 羊水過少とはいえない。なぜなら、本症例のAFI 8.0であるため。羊水過少とは、AFI5以下をいう。AFI(amniotic fluid index)とは、子宮の各4分の1について羊水深度を垂直に計測した値の合計である。羊水過多は、羊水の吸収が減るか、産生が増えることによって起きる。吸収が減少する病態として、食道閉鎖や十二指腸閉鎖などの上部消化管閉鎖(狭窄)などの先天異常、染色体異常などで機能的に嚥下ができない場合がある。 また、上部消化管周囲から羊水の通過を妨げる口腔、頸部、肺などの腫瘍も原因となる。

3.× 児頭は陥入しているとはいえない。なぜなら、本症例の来院時は、子宮口4cm開大、展退度50%、「Station -2」であるため。ちなみに、児頭陥入とは、胎児の産道通過機序のひとつで、児頭の最大径が骨盤入口を通過した状態を指す。児頭がさらに下降して座骨棘の高さまで先進部が下降した状態(児頭陥入)を「Station 0」という。

4.〇 正しい。<ビショップ>スコアは6点である。なぜなら、本症例の来院時は、子宮口4cm開大(2点)、展退度50%(1点)、Station-2(1点)、子宮頸管の硬度は中(1点)、子宮口の位置は中央(1点)であるため。ちなみに、ビショップスコアとは、最も広く使用されている子宮頚管の熟化評価法である。以下の表を参考に、5項目のスコアを合計し、13点満点で評価する。通常、9点以上を「良好」、6点以下を「不良」、3点以下を「特に不良」と評価することが多い。

(※図引用:「助産師基礎教育テキスト:第 5 巻:2020 年版訂正ご案内」株式会社日本看護協会出版会様HPより)

 

 

 

 

 

 

次の文を読み36〜38の問いに答えよ。
 Aさん(33歳、1回経産婦)。妊娠40週2日、6分ごとに1分間持続する規則的な子宮収縮を自覚して来院した。前日の妊婦健康診査時の経腹超音波検査の結果、胎児推定体重3,800g、AFI 8.0。夫は出産の立会いを予定していたが仕事の都合で来院できなかった。

37 入院後1時間、陣痛間欠3〜4分、陣痛発作40秒となり、下腹部と腰部との痛みが急激に増強した。Aさんは陣痛間欠時も体中に力が入っており「もう痛みに耐えられない。帝王切開にしてください」と不安そうな表情で訴えた。
 Aさんの支援のための対応として最も適切なのはどれか。

1.楽な姿勢を一緒に考える。
2.痛みに耐えるように伝える。
3.もっと頑張るように励ます。
4.帝王切開術の適応ではないことを説明する。
5.赤ちゃんが大きいため時間がかかることを伝える。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(33歳、1回経産婦、妊娠40週2日)
夫は出産の立会いを予定していたが仕事の都合で来院できず
・入院後1時間:陣痛間欠3〜4分、陣痛発作40秒、下腹部と腰部の痛み急激増強
・陣痛間欠時も体中に力が入っている。
・「もう痛みに耐えられない。帝王切開にしてください」と不安そうな表情で訴えた。
→産痛を緩和するための対応をおさえておこう。産痛は不安感などの精神的な状態にも左右される。産痛緩和法とは、赤ちゃんを産むときのおなかや腰などの痛みを和らげる方法である。具体的には、おなかや腰のマッサージをしたり、温めたり、楽な姿勢を取ったり、緊張をほぐすための呼吸法を行ったりする。心と体をリラックスさせることが大切である。

1.〇 正しい。楽な姿勢を一緒に考える。なぜなら、本症例の産痛は増強しており、「もう痛みに耐えられない。帝王切開にしてください」と訴えが強いため。産痛を少しでもコントロールできるよう支援していこう。

2.× 痛みに耐えるように伝える優先度は低い。なぜなら、痛みの訴えを無視し、さらに不安を増幅させる可能性があるため。

3.× もっと頑張るように励ます優先度は低い。なぜなら、具体的な解決とはならないため。

4.× 「帝王切開術の適応ではない」ことを説明する優先度は低い。なぜなら、帝王切開術を判断するのは時期尚早であるため。一般的に、帝王切開術を行うためには、ご本人とご家族に説明し、承諾書にサインが必要である。本日、夫は仕事の都合で来院できていないため、夫に連絡が必要である。したがって、「帝王切開術の適応ではない」と一方的に拒否したり、「帝王切開を実施する」と断行するのではなく、一緒に寄り添い産痛の支援(必要なら医師と相談し薬物療法)を考える必要がある。

5.× 赤ちゃんが大きいため時間がかかることを伝える優先度は低い。なぜなら、「赤ちゃんが大きい」と伝えることが、産痛を和らげる直接的な対応とはならないため。むしろ、不安をさらに増す可能性がある。

帝王切開術の適応

①母体適応:児頭骨盤不均衡 前置胎盤,子宮破裂,重症妊娠高血圧症候群,常位胎盤早期剝離,分娩停止,分娩遷延など。
②胎児適応:胎児機能不全(胎児ジストレス),臍帯脱出,子宮内胎児発育遅延,切迫早産,前期破水,多胎など。

分娩期

【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。

・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。

・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。

・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。

 

 

 

 

 

次の文を読み36〜38の問いに答えよ。
 Aさん(33歳、1回経産婦)。妊娠40週2日、6分ごとに1分間持続する規則的な子宮収縮を自覚して来院した。前日の妊婦健康診査時の経腹超音波検査の結果、胎児推定体重3,800g、AFI 8.0。夫は出産の立会いを予定していたが仕事の都合で来院できなかった。

38 その後、順調に分娩が進行し、体重3,820gの女児を正常分娩で出産した。分娩所要時間は4時間30分、分娩第3期までの出血量は400mLであり、会陰裂傷第1度を認めた。分娩後1時間、バイタルサインに異常はない。外陰部にあてているパッドには少量の血液を認める。外陰部は対称性に軽度むくんでおり、圧痛はない。子宮底は臍下2横指の高さに硬く触れており、Aさんは下腹部の痛みを訴えて苦しそうにしている。
 Aさんの症状について最も考えられるのはどれか。

1.後陣痛
2.膀胱炎
3.頸管裂傷
4.外陰部血腫
5.子宮復古不全

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(33歳、1回経産婦、妊娠40週2日)
・正常分娩(体重3,820gの女児)で出産した。
・分娩所要時間:4時間30分、分娩第3期までの出血量:400mL、会陰裂傷第1度。
分娩後1時間:バイタルサインに異常はない。
・外陰部にあてているパッドには少量の血液を認める。
・外陰部は対称性に軽度むくんでおり、圧痛はない
・子宮底は臍下2横指の高さに硬く触れている。
下腹部の痛みを訴えて苦しそうにしている。
→ほかの選択肢が消去される理由も説明できるようにしよう。

1.〇 正しい。後陣痛が最も考えられる。なぜなら、本症例の子宮復古は良好であるが、下腹部の痛みがみられるため。ちなみに、後陣痛とは、赤ちゃんを出産した後に、子宮が元の大きさに戻ろうと収縮する時に生じる痛みのことである。子宮を収縮させることで、胎盤が剥がれた部分の血管断裂部を圧迫し、止血する役割がある。分娩後に子宮が収縮し、元の大きさに戻ろうとすることを子宮復古といい、産後6週~8週で妊娠前の状態に戻る。正常な子宮復古の経過の場合、産褥7日頃の子宮底高は恥骨結合上縁にわずかに触れる程度である。

2.× 膀胱炎より考えられるものが他にある。なぜなら、本症例の排尿に関する記載がなく判断しにくいため。ちなみに、膀胱炎の症状として、排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が特徴である。

3.× 頸管裂傷より考えられるものが他にある。なぜなら、本症例の場合、分娩第3期までの出血量は400mL、外陰部にあてているパッドは少量出血であるため。ちなみに、頸管裂傷とは、子宮頸管に裂けてできた傷が起こることであり、急速に分娩が進行することや吸引分娩などの処置、巨大児などが原因となる。頸管裂傷になると持続的な出血(鮮紅色の出血)が起こる。主に分娩の際に生じる可能性があり、大量出血など生命の危険にまでつながるリスクがある。

4.× 外陰部血腫より考えられるものが他にある。なぜなら、本症例の外陰部は、対称性に軽度むくんでおり、圧痛はないため。外陰部血腫とは、分娩時や産褥中に外陰部や腟壁に血腫を形成する状態である。外陰部血腫の症状には、浮腫や腫脹、裂傷後の血腫、 違和感、疼痛がみられる。

5.× 子宮復古不全より考えられるものが他にある。なぜなら、分娩後1時間にて、子宮底は臍下2横指の高さに硬く触れている。外陰部にあてているパッドは少量出血であるため。一般的な子宮復古の分娩直後の状態は、①子宮底長(11~12cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)である。子宮復古不全とは、妊娠によって大きくなった子宮が出産を終えて元に戻る過程である子宮復古に異常が起き、通常の子宮収縮が認められない病態である。 原因は、①子宮内に胎盤の一部が残っている場合(子宮内残留)や、②母体疲労によるもの、③胎盤や卵膜の子宮内感染など原因は多岐に渡る。

会陰裂傷の重症度

第1度:会陰の皮膚、腟壁粘膜のみに限局し、筋層には達しない裂傷。
第2度:会陰筋層まで及ぶが、肛門括約筋には達しない裂傷。
第3度:肛門括約筋や腟直腸中隔に達する裂傷。
第4度:第3度裂傷に加え、肛門粘膜や直腸粘膜の損傷を伴う裂傷。

子宮復古の状態

・分娩直後:①子宮底長(11~12cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・分娩後12時間:①子宮底長(15cm)、②子宮底の高さ(臍高~臍上1~2横指少し右方に傾く)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・1~2日:①子宮底長(11~17cm)、②子宮底の高さ(臍下1~2横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・3日:①子宮底長(9~13cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・4日:①子宮底長(9~10cm)、②子宮底の高さ(臍と恥骨結合の中央:臍恥中央)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・5日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・6日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・7~9日:②子宮底の高さ(恥骨結合上わずかに触れる)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・10日以降~3週間:②子宮底の高さ(腹壁上より触知不能)、③悪露の色調・におい(黄色・無臭)
・4~6週間:③悪露の色調・におい(白色・無臭)

 

 

 

 

次の文を読み39〜41の問いに答えよ。
 Aさん(25 歳、初産婦)。既往歴に特記すべきことはない。妊娠経過は順調で、出産直後からの母児同室と母乳哺育とを希望していた。妊娠38週6日に陣痛発来で入院した。分娩第2期遷延のためオキシトシンを用いて陣痛を促進し、吸引分娩で娩出となった。児は、出生体重2,800 gの男児でApgar<アプガー>スコアは1分後、5分後ともに9点であった。分娩所要時間22時間、分娩時出血量450mL で、会陰切開縫合術を受けた。分娩後2時間の母児の経過は良好であった。

39 分娩後3時間に訪室すると「傷がズキズキと痛みます」と訴えた。会陰部の観察をしたところ、創部に軽度の腫脹がみられたが離開や血腫はなかった。
 このときの対応で最も適切なのはどれか。

1.会陰部の冷罨法を行う。
2.医師の診察を要請する。
3.仰臥位を保つよう勧める。
4.今は鎮痛薬を使えないと説明する。
5.痛みが紛れるよう児を抱くことを勧める。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(25 歳、初産婦、既往歴に特記なし)。
・妊娠38週6日:陣痛発来で入院(妊娠経過:順調)。
・分娩第2期遷延(オキシトシン):吸引分娩で娩出。
・出生体重2,800 gの男児:アプガースコアは1分後、5分後ともに9点。
・分娩所要時間22時間、分娩時出血量450mL、会陰切開縫合術を受けた。
・分娩後2時間の母児の経過:良好
・分娩後3時間「傷がズキズキと痛みます」と。
・会陰部:創部に軽度の腫脹がみられたが離開や血腫なし
→異常所見やほかの選択肢の対応の根拠もしっかりおさえておこう。

1.〇 正しい。会陰部の冷罨法を行う。なぜなら、本症例は会陰切開縫合術を受け、母児の経過は良好、会陰部の創部に軽度の腫脹と「傷がズキズキと痛みます」という訴えがみられるため。冷罨法とは、主に炎症や疼痛軽減に用い、冷やすことである。寒冷療法の生理作用には、局所新陳代謝の低下、毛細血管浸透圧の減少、血管収縮とその後の拡張、感覚受容器の閾値の上昇、刺激伝達遅延による中枢への感覚インパルス減少、筋紡錘活動の低下等がある。これらの作用により、炎症や浮腫の抑制、血液循環の改善、鎮痛作用、筋スパズムの軽減が期待される。(引用:「寒冷療法」物理療法系専門領域研究部会 著:加賀谷善教)

2.× 医師の診察を要請する優先度は低い。なぜなら、本症例の経過に正常から逸脱している所見は見られないため。本症例は会陰切開縫合術を受け、炎症症状が見られている程度である。

3.× あえて、仰臥位を保つよう勧める優先度は低い。なぜなら、本症例の経過に正常から逸脱している所見は見られないため。

4.× 「今は鎮痛薬を使えない」と説明する必要はない。なぜなら、鎮痛薬が使えない根拠がないため。必要であれば、医師に報告のうえ、医師から鎮痛薬を処方してもらう。

5.× 痛みが紛れるよう児を抱くことを勧める優先度は低い。なぜなら、児を抱くことが、必ずしも痛みが紛れるとは断定できないため。また、本症例は、初産婦であることから、初めての抱っこでより精神的な緊張を招く可能性がある。したがって、炎症に対し、直接的な対応の方が望ましいと考えられる。

炎症4徴候とは?

炎症4徴候として、疼痛や腫脹、発赤、熱感があげられる。基本的に、RICE処置を実施する。RICE処置とは、疼痛を防ぐことを目的に患肢や患部を安静(Rest)にし、氷で冷却(Icing)し、弾性包帯やテーピングで圧迫(Compression)し、患肢を挙上すること(Elevation)である。頭文字をそれぞれ取り、RICE処置といわれる。

(※画像引用:ナース専科様HPより)

 

 

 

 

 

 

次の文を読み39〜41の問いに答えよ。
 Aさん(25 歳、初産婦)。既往歴に特記すべきことはない。妊娠経過は順調で、出産直後からの母児同室と母乳哺育とを希望していた。妊娠38 週6日に陣痛発来で入院した。分娩第2期遷延のためオキシトシンを用いて陣痛を促進し、吸引分娩で娩出となった。児は、出生体重2,800 gの男児でApgar<アプガー>スコアは1分後、5分後ともに9点であった。分娩所要時間22 時間、分娩時出血量450 mL で、会陰切開縫合術を受けた。分娩後2時間の母児の経過は良好であった。

40 Aさんは、産褥1日目から母児同室を開始しており1時間半から2時間おきに授乳をしていた。産褥2日の夕方、Aさんは「こんなに授乳しているのに、赤ちゃんはすぐに泣きます。母乳だけでは足りないのでしょうか」と話し、疲れた様子であった。児の体重は2,590g。乳房は熱感を帯びて張っており、乳頭を圧迫するとタラタラと乳汁が流れ出てくる。児の吸啜状態は良好で、排尿は5回/日、排便は2回/日であった。
 Aさんの気持ちを傾聴した後の対応で最も適切なのはどれか。

1.人工乳を補足する。
2.夜間は授乳を休む。
3.時間を決めて授乳する。
4.これまでのペースで授乳を続ける。
5.乳房緊満がなくなるまで搾乳する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(25 歳、初産婦、既往歴に特記なし)。
・出生体重2,800gの男児
・産褥1日目:1時間半から2時間おきに授乳。
・産褥2日の夕方:「こんなに授乳しているのに、赤ちゃんはすぐに泣きます。母乳だけでは足りないのでしょうか」と疲れた様子。
・児の体重:2,590g
・乳房:熱感を帯びて張っており、乳頭を圧迫するとタラタラと乳汁が流れ出てくる。
・児の吸啜状態:良好、排尿は5回/日、排便は2回/日。
→不安を訴え、疲労感があるが、乳房状態が良好であることを説明しこれまでのペースで授乳していけるよう支援する。

Aさんの産褥2日目の乳房の状態としては、乳房緊満あり、乳汁分泌は流れ出るほどあるので順調な経過をたどっている。授乳感覚は1時間半から2時間とやや短いが、母乳栄養を成功させるための10か条では「赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけの授乳を勧めましょう」とある。児は哺乳力良好である。体重は前日と比べて210g減少、体重減少率は7.5%で生理的体重減少の範囲である。Aさんは不安を訴え、疲労感があるが、乳房状態が良好であることを説明しこれまでのペースで授乳していけるよう支援する。

1.× 人工乳を補足する必要はない。なぜなら、体重の変化(約-7%)、児の吸啜状態とも良好であるため。新生児の生理的体重の変化の範囲内である(下の解説参照)。ちなみに、人工乳とは、何らかの理由(アトピー性皮膚炎や乳頭裂傷など)で母乳が与えられない場合、調製粉乳による人工乳が使用されることが多い。現在では母乳の代用品としての調製粉乳の品質も向上し、母乳の場合と比べても大差なく育児ができるようになっている。

2~3.× 夜間は授乳を休む/時間を決めて授乳する必要はない。なぜなら、授乳のタイミングは、自律授乳が基本となるため。自律授乳とは、児が欲しがるときに欲しがるだけ飲ませる授乳方法のことである。児に吸われる刺激によって母乳分泌が促されて母乳育児がスムーズになることから、とくに生後1~2か月ぐらいまでの間は自律授乳が推奨されている。

4.〇 正しい。これまでのペースで授乳を続ける。なぜなら、特段、逸脱した所見は見られないため。児の吸啜状態が良好であり、排尿・排便の回数も適切である。

5.× 乳房緊満がなくなるまで搾乳する必要はない。なぜなら、授乳状況は、児の吸啜状態は良好であるため。搾乳とは、児の哺乳力が弱いか、陥没乳頭などでうまく捕乳できない場合に、母乳を絞って哺乳瓶で与える方法である。ほかにも、NICUに入院したときや、今後児に影響がかかる薬物を内服する治療が始まるときなどに用いられる。

体重の変化

【新生児の生理的体重の変化】
正期産により出生した正常な新生児の生理的体重減少率は、出生体重の3~10%の範囲であり、生後3~5日がそのピークである。減少率とは、出生時体重からの減少の割合で、「(出生時の体重-現在の体重)÷ 出生時の体重 × 100」で算出される。

【正常乳児の一日体重増加量の目安】
・0~3か月:25~30g
・3~6か月:20~25g
・6~9か月:15~20g
・9~12か月:7~10g

 

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