第99回(H28) 助産師国家試験 解説【午後31~35】

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31 助産業務ガイドライン2014における妊婦管理適応リストにおいて、連携する産婦人科医師と相談の上、協働管理すべき対象者はどれか。2つ選べ。

1.妊娠41週2日の妊婦
2.妊娠糖尿病の既往のある妊婦
3.妊娠33週で早産の既往のある妊婦
4.胎児発育不全<FGR>の既往のある妊婦
5.子宮筋腫核出術の2年後に妊娠した妊婦

解答1・4

解説

(※図引用:「Ⅲ.妊婦管理適応リスト」助産業務ガイドライン 2019より)

1.〇 正しい。妊娠41週2日の妊婦は、「B.連携する産婦人科医師と相談の上、協働管理すべき対象者」である。これは、「4.異常妊娠経過が予測される妊婦、妊娠中に発症した異常」の「予定日を超過した場合(妊娠41週以降)」に該当する。

2.× 妊娠糖尿病の既往のある妊婦は、「C.産婦人科医師が管理すべき対象者」である。これは、「4.産科的既往がある妊婦(妊娠中の発症,再発の可能性があり,周産期管理が必要とされるもの)」の「妊娠糖尿病の既往」に該当する。

3.× 妊娠33週で早産の既往のある妊婦は、「C.産婦人科医師が管理すべき対象者」である。これは、「4.産科的既往がある妊婦(妊娠中の発症,再発の可能性があり,周産期管理が必要とされるもの)」の「妊娠34週未満の早産既往」に該当する。

4.〇 正しい。胎児発育不全<FGR>の既往のある妊婦は、「B.連携する産婦人科医師と相談の上、協働管理すべき対象者」である。これは、「産科的既往がある妊婦、妊娠中の発症を認めないもの」の「胎児発育不全<FGR>の既往」に該当する。

5.× 子宮筋腫核出術の2年後に妊娠した妊婦は、「C.産婦人科医師が管理すべき対象者」である。これは、「2.婦人科疾患の既往または合併症のある妊婦」の「子宮筋腫核出術後妊婦」に該当する。

 

 

 

 

 

32 深部静脈血栓症を疑うのはどれか。2つ選べ。

1.下肢の筋力が低下する。
2.歩行時に恥骨結合部が痛む。
3.下肢の皮膚に赤紫色の色調変化を認める。
4.下腿部周囲径の左右差が2cm以上である。
5.大腿から下腿の背側に放散するしびれがある。

解答3・4

解説

深部静脈血栓症とは?

深部静脈血栓症とは、深部静脈に血の塊(血栓)ができることである。血栓が足の静脈から心臓や肺に向かって流され、肺の血管に詰まった場合、肺塞栓症を引き起こす。

1.× 下肢の筋力が低下するとはいえない。下肢の筋力低下は、筋自体の損傷(廃用症候群)や神経筋疾患などが疑われる。

2.× 深部静脈血栓症は、歩行時に「恥骨結合部」ではなく腓腹部が痛む(ホーマンズ徴候)。Homans徴候(ホーマンズ徴候)とは、深部静脈血栓症でみられる所見である。 膝関節伸展位で足関節の背屈を他動的に強制する。腓腹部に疼痛を訴える場合(Homans徴候陽性)には下腿の深部静脈血栓症の可能性を示唆する。ちなみに、「恥骨結合部」に痛みがる際は、妊娠後期によるホルモンの変化、出産時の恥骨結合部の離開、育児による過度な負担や炎症などが考えれられる。

3.〇 正しい。下肢の皮膚に赤紫色の色調変化を認める。なぜなら、血栓による静脈血流の停滞が起こるため。

4.〇 正しい。下腿部周囲径の左右差が2cm以上である。なぜなら、血栓による静脈血流の停滞が起こるため。片側の下肢に浮腫が生じる。

5.× 大腿から下腿の背側に放散するしびれがあるのは、「神経症状(椎間板ヘルニア)」である。椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。
L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

廃用症候群とは?

 廃用症候群とは、病気やケガなどの治療のため、長期間にわたって安静状態を継続することにより、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす症状のこと。関節拘縮や筋萎縮、褥瘡などの局所性症状だけでなく、起立性低血圧や心肺機能の低下、精神症状などの症状も含まれる。一度生じると、回復には多くの時間を要し、寝たきりの最大のリスクとなるため予防が重要である。廃用症候群の進行は速く、特に高齢者はその現象が顕著である。1週間寝たままの状態を続けると、10~15%程度の筋力低下が見られることもある。

 

 

 

 

33 Silverman<シルバーマン>スコアの項目はどれか。2つ選べ。

1.呼吸数
2.筋緊張
3.呼気性呻吟
4.チアノーゼ
5.肋間腔の陥没

解答3・5

解説

(図:「シルバーマンスコア」)

1~2.4.× 呼吸数/筋緊張/チアノーゼは、シルバーマンスコアの項目に該当しない。

3.〇 正しい。呼気性呻吟/肋間腔の陥没は、シルバーマンスコアの項目である。シルバーマンスコアとは、呼吸障害のある新生児を評価する方法である。評価項目は、①胸と腹の動き、②肋間の陥凹、③剣状突起下の陥没、④鼻翼呼吸、⑤呼吸補助筋の使用(呻吟)を観察する。合計点が0~10点となり、点数が低いほうが正常となる。

(※図引用:「アプガースコア」ナース専科様HPより)

 

 

 

 

 

34 核黄疸のⅡ期症状はどれか。2つ選べ。

1.嗜眠
2.振戦
3.後弓反張
4.落陽現象
5.哺乳力の低下

解答3・4

解説

核黄疸とは?

核黄疸とは、間接ビリルビンが新生児の主として大脳基底核等の中枢神経細胞に付着して黄染した状態をいい、神経細胞の代謝を阻害するため死に至る危険が大きく、救命されても不可逆的な脳損傷を受けるため治癒不能の脳性麻痺等の後遺症を残す疾患である。核黄疸のリスク因子として、未熟児、溶血、新生児仮死、代謝性アシドーシス、呼吸ひっ迫、低体温、低タンパク血症、低血糖、感染症、頭蓋内出血、薬剤などがある。

「急性期の臨床症状として、Ⅰ期(生後数日)には筋緊張低下、嗜眠哺乳力減弱をきたし、Ⅱ期(生後数日~ 1 週間)には筋緊張亢進、後弓反張、発熱、甲高い泣き声、痙攣などを呈し、Ⅲ期(生後 1 ~ 2 週間以降)には筋緊張亢進は減弱ないし消退する。更に慢性期(生後 1 ~ 1 年半)の臨床症状としてアテトーゼ、上方凝視麻痺、難聴などの核黄疸後遺症が出現する。通常、Ⅰ期では可逆性のことも多いが、Ⅱ期に至ると不可逆性でありビリルビン毒性による脳障害が惹起されるものと考えられている。核黄疸の発症予防のためには、I 期症状の段階での適切な治療が必要である」(※引用:「核黄疸(ビリルビン脳症)の発症予知と予防」著:李 容桂様 )。

1.× 嗜眠は、Ⅰ期症状である。嗜眠とは、傾眠よりやや強い意識混濁の状態を指す。強く刺激すれば覚醒し、食事のような合目的的行動も可能である。

2.× 振戦は、核黄疸の症状ではない。振戦とは、手指や手指以外にも腕、足、アゴ、頭部などに安静時(何もしていない時)にみられるふるえのことである。特に、手指に振戦が見られるもの手指振戦という。原因として、パーキンソン病やアルコール依存症、甲状腺ホルモン分泌の亢進などさまざまである。また、糖尿病においても低血糖症状として、手指振戦がみられることがある。

3.〇 正しい。後弓反張は、Ⅱ期症状である。後弓反張とは、後頚部の筋および背筋、上下肢筋の筋緊張亢進、または痙攣により頚部を強く背屈させ、全身が後方弓形にそりかえる状態のことをいう。

4.〇 正しい。落陽現象は、Ⅱ期症状である。落陽現象とは、眼球上転運動障害のことである。乳児の眼球が上から下にゆっくり動いて、下方向へ回転するように見える現象で、眼球の黒目が下のまぶたへ入り込む状態を指す。核黄疸や低酸素症、水頭症などの頭蓋内疾患で多くみられる。

5.× 哺乳力の低下は、Ⅰ期症状である。

 

 

 

 

35 児童虐待のうち、ネグレクトに相当するのはどれか。2つ選べ。

1.乳幼児を家に放置して外出する。
2.子どもの自尊心を傷つける発言をする。
3.子どもに不潔な下着を長期間着用させる。
4.子どもをポルノグラフィーの被写体にする。
5.子どもの前で配偶者やその他の家族に対し暴力を振るう。

解答1・3

解説

児童虐待とは?

児童虐待には4つの種類がある。①身体的虐待、②性的虐待、③保護の怠慢・拒否(ネグレクト)、④心理的虐待である。どの種類に当てはまるかということよりも、子どもに対する養育者の不適切な対応は虐待ととらえ早期に対応することが必要である。まずは、子ども(被害者を含む)の状況を速やかに把握し、安全の確保が最優先となる。

1.3.〇 正しい。乳幼児を家に放置して外出する子どもに不潔な下着を長期間着用させる
上記は、児童虐待のうち、ネグレクトに相当する。ネグレクトとは、養育拒否・怠慢のことをさし、子どもに食事を与えなかったり、病気になっても病院に連れて行かなかったりすることをいう。

2.× 子どもの自尊心を傷つける発言をすることは、④心理的虐待である。

4.× 子どもをポルノグラフィーの被写体にすることは、②性的虐待である。

5.× 子どもの前で配偶者やその他の家族に対し暴力を振るうことは、①身体的虐待である。

児童相談所における児童虐待相談の対応件数

平成28年度中に児童相談所が対応した養護相談のうち児童虐待相談の対応件数は122,575件で、前年度に比べ19,289件(18.7%)増加しており、年々増加している。被虐待者の年齢別にみると「7~12歳」が41,719件(構成割合34.0%)と最も多く、次いで「3~6歳」が31,332件(同25.6%)、「0~2歳」が23,939件(同19.5%)となっている。相談の種別をみると、「心理的虐待」が63,186件と最も多く、次いで「身体的虐待」が31,925件となっている。また、主な虐待者別構成割合をみると「実母」が48.5%と最も多く、次いで「実父」が38.9%となっており、「実父」の構成割合は年々上昇している。

(※一部引用:「平成28年度福祉行政報告例の概況」厚生労働省HPより)

 

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