第99回(H28) 助産師国家試験 解説【午前31~35】

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31 日本の平成25年(2013年)の年齢階級別がん死亡部位内訳において、40歳以上50歳未満の女性で、死亡数が最も多いがん発生部位はどれか。

1.胃
2.肺
3.子宮
4.乳房
5.肝臓

解答

解説

(※図引用:「がんの統計2022」がん研究振興財団様より)細かな数値は、P76を参照。

1.× 胃は、97人(7.5%)である。

2.× 肺は、70人(5.4%)である。

3.× 子宮は、202人(15.7%)である。

4.〇 正しい。乳房は、357人(27.7%)である。選択肢の中で死亡数が最も多い。

5.× 肝臓は、17人(1.3%)である。

(※図引用:「がんの統計2022」がん研究振興財団様より)

 

 

 

 

 

32 保健師助産師看護師法に定められていないのはどれか。

1.助産所開設の届出
2.異常死産児の届出
3.業務従事者の届出
4.出生証明書の交付
5.臨床研修の努力義務

解答

解説

保健師助産師看護師法とは?

保健師助産師看護師法とは、保健師・助産師および看護師の資質を向上し、もって医療および公衆衛生の普及向上を図ることを目的とする日本の法律である。通称は保助看法。(※一部引用:「保健師助産師看護師法」厚生労働省HPより)

1.× 助産所開設の届出は、「医療法」に定められている。医療法の第8条において「臨床研修等修了医師、臨床研修等修了歯科医師又は助産師が診療所又は助産所を開設したときは、開設後十日以内に、診療所又は助産所の所在地の都道府県知事に届け出なければならない」と定められている(※引用:「医療法」e-GOV法令検索様HPより)。ちなみに、医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。

2.× 異常死産児の届出は、「保健師助産師看護師法」に定められている。保健師助産師看護師法の第41条において「助産師は、妊娠四月以上の死産児を検案して異常があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署にその旨を届け出なければならない」と定められている(※引用:「保健師助産師看護師法」e-GOV法令検索様HPより)。

3.× 業務従事者の届出は、「保健師助産師看護師法」に定められている。保健師助産師看護師法の第33条において「業務に従事する保健師、助産師、看護師又は准看護師は、厚生労働省令で定める二年ごとの年の十二月三十一日現在における氏名、住所その他厚生労働省令で定める事項を、当該年の翌年一月十五日までに、その就業地の都道府県知事に届け出なければならない」と定められている(※引用:「保健師助産師看護師法」e-GOV法令検索様HPより)。

4.× 出生証明書の交付は、「保健師助産師看護師法」に定められている。保健師助産師看護師法の第39条2項において「分べんの介助又は死胎の検案をした助産師は、出生証明書、死産証書又は死胎検案書の交付の求めがあつた場合は、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と定められている(※引用:「保健師助産師看護師法」e-GOV法令検索様HPより)。

5.× 臨床研修の努力義務は、「保健師助産師看護師法」に定められている。保健師助産師看護師法の第28条2項において「保健師、助産師、看護師及び准看護師は、免許を受けた後も、臨床研修その他の研修(保健師等再教育研修及び准看護師再教育研修を除く)を受け、その資質の向上を図るように努めなければならない」と定められている(※引用:「保健師助産師看護師法」e-GOV法令検索様HPより)。

 

 

 

 

33 助産師外来の活動内容として適切でないのはどれか。

1.胎児の先天奇形の診断
2.夫の育児参加への助言
3.予防接種についての情報提供
4.妊娠中の適切な体重管理の指導
5.正常な妊娠経過からの逸脱のアセスメント

解答

解説
1.× 胎児の先天奇形の診断は、「助産師」ではなく医師が行う。医師法第17条は、「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定めており、医師でない者が医業(医行為)を行うことを禁じており、「診断」も医師以外の者が行うことは許されない 。

2~5.〇 夫の育児参加への助言/予防接種についての情報提供/妊娠中の適切な体重管理の指導/正常な妊娠経過からの逸脱のアセスメントは、助産師外来の活動内容である。助産師外来とは、助産師による妊婦健診や保健指導を行う外来である。妊娠中の過ごし方や日常生活の注意点、お産の不安やバースプランなど、妊婦の心と体の準備をサポートするために、助産師がさまざまなアドバイスを行う。

 

 

 

 

 

34 妊娠の成立に関して正しいのはどれか。2つ選べ。

1.受精は子宮腔内で起こる。
2.受精卵は桑実胚期に着床する。
3.受精後3日目に透明帯が消失する。
4.子宮内膜の分泌期に受精卵が着床する。
5.子宮内膜の増殖はエストロゲンの作用である。

解答4・5

解説

(図引用:「女性器の解剖と整理」医学出版様より)

(※図引用:「基礎編―人体発生―」腹腔内内ヘルニア大全HPより)

1.× 受精は、「子宮腔内」ではなく卵管膨大部で起こる。卵管膨大部とは、女性のお腹にある卵管の2/3を占める部分で、先端にある卵管采で受け取られた卵子が移動する場所である。

2.× 受精卵は、「桑実胚期」ではなく胚盤胞期に着床する。なぜなら、受精卵が着床する段階は受精後6~7日頃であるため。桑実胚(4日目):割球が16個から32個の状態を指す。胚盤胞(5日目):胎盤と胎児になる部分が確認できる状態になっているより成長した胚のことをさす。

3.× 「受精後3日目」ではなく受精後6~7日目に透明帯が消失する。透明帯は、受精後4~5日目に胚盤胞まで発育した胚が子宮に到着し、6~7日目に子宮内膜に着床する際に破れる(ハッチング)。ちなみに、透明帯とは、卵子の細胞膜を取り囲む糖タンパク質で、卵巣内では卵子の形成や成熟に働き、受精時には多精子受精や異物(異種の精子やウイルスなど)の侵入を防ぐ役割を担っている。

4.〇 正しい。子宮内膜の分泌期に受精卵が着床する。なぜなら、分泌期にはプロゲステロンの作用が著明であるため。プロゲステロン(黄体ホルモン)は、基礎体温を上げ、受精卵が着床しやすい状態にする作用を持つ。プロゲステロン(黄体ホルモン)は、性周期が規則的で健常な成人女性において、着床が起こる時期に血中濃度が最も高くなるホルモンである。着床が起こる時期とは、月経の黄体期である。黄体期は、排卵した後の卵胞(黄体)から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるようになる時期である。
【月経周期】
・卵胞期:1回の月経周期が始まると脳の底の方にある下垂体というところから、卵を包んでいる卵胞を刺激する卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されはじめ、卵胞は大きくなると同時に女性ホルモン(エストロゲン)を分泌する時期。
・増殖期:女性ホルモン(エストロゲン)が新しい子宮内膜を成長させていく時期。卵胞期と増殖期とはだいたい同じ時期。
・黄体期:排卵した後の卵胞(黄体)から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるようになる時期。
・分泌期:子宮内膜が成長を止めて受精卵が着床できるよう準備をする時期。

5.〇 正しい。子宮内膜の増殖はエストロゲンの作用である。排卵した後、プロゲステロン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)の作用によって子宮内膜はさらに厚みを増し、受精卵の受け入れ体制を整える。

胚盤胞に関する基礎知識

卵割球
・前核期胚(1日目)
・4分割期胚(2日目)
・8分割期胚(3日目)

桑実胚(4日目):割球が16個から32個の状態を指す。

胚盤胞(5日目):胎盤と胎児になる部分が確認できる状態になっているより成長した胚。

(※画像引用:日本医師会様HPより)

 

 

 

 

35 妊婦の伝染性紅斑について適切なのはどれか。2つ選べ。

1.胎児水腫が発生する危険がある。
2.感染予防のためのワクチンがある。
3.皮疹の出現中は他者への感染力が強い。
4.ヒトパルボウイルスB19による感染である。
5.胎児死亡率は妊娠20週以降に感染したとき高率である。

解答1・4

解説

伝染性紅斑とは?

伝染性紅斑とは、春から夏にかけて流行する傾向があり、4~5年周期で流行がみられる。近年では、2007年と2011年の流行の後、2015年に全国的な流行があった。妊婦が初めて感染した場合、約2割でウイルスが胎盤を通過し胎児感染を起こし、そのうち約2割が胎児の貧血や胎児水腫を起こす。これは、全初感染妊婦のおよそ4%にあたる。

胎児水腫の発生機構としては、ウイルスが胎児赤血球系前駆細胞に感染し、造血障害による重症貧血、心不全、低酸素血症を引き起こす。ヒトパルボウイルスB19(HPV-B19)は心筋細胞にも感染し、心筋の障害が胎児水腫や胎児死亡の発生に関与する。重篤な血小板減少が胎児水腫の約半数にみられる。胎児水腫は母体感染から9週以内に発症し、その多くは2~6週に発症する。特に妊娠早期の感染が問題となる、妊娠28週以降の母体ヒトパルボウイルスB19感染による胎児水腫や胎児死亡の発生率は低いとされる。胎児水腫の約3割は自然に軽快する。ヒトパルボウイルスB19(HPV-B19)感染の診断は、臨床症状とヒトパルボウイルスB19(HPV-B19)に対するPB 19-IgM抗体の検出によって行われる。ちなみに、ヒトパルボウイルスB19とは、小児でよくみられる両頬の紅斑を特徴とした伝染性紅斑(リンゴ病)の原因ウイルスである。通常は年長児に好発する予後良好な急性感染症である。成人では不顕性感染が多いが、妊娠中の初感染によって胎児水腫や胎児死亡を引き起こすことがある。日本人妊婦の抗体保有率は、20~50%とされる。(※参考:「ヒトパルボウイルスB19母子感染の実態」NID国立感染症研究所様HPより)

1.〇 正しい。胎児水腫が発生する危険がある。なぜなら、胎児に感染すると重篤な合併症に発展するサインであるため。胎児水腫の約3割は自然に軽快する。

2.× 感染予防のためのワクチンが「ない」。感染が流行している時期にはマスクの着用や手洗いの励行が勧められている。

3.× 皮疹の出現中は、他者への感染力が強い「とはいえない」。なぜなら、発症早期の有熱期から発疹が出る前の期間に最も強く、発疹が出てきた時期には感染力はないと考えられているため。伝染性紅斑の皮疹は、頬や腕、足などにできる赤い発疹で、ピークは3~4日目で、7~10日ほどで消えていく。

4.〇 正しい。ヒトパルボウイルスB19による感染である。ヒトパルボウイルスB19(HPV-B19)感染の診断は、臨床症状とヒトパルボウイルスB19(HPV-B19)に対するPB 19-IgM抗体の検出によって行われる。ちなみに、ヒトパルボウイルスB19とは、小児でよくみられる両頬の紅斑を特徴とした伝染性紅斑(リンゴ病)の原因ウイルスである。通常は年長児に好発する予後良好な急性感染症である。成人では不顕性感染が多いが、妊娠中の初感染によって胎児水腫や胎児死亡を引き起こすことがある。日本人妊婦の抗体保有率は、20~50%とされる。(※参考:「ヒトパルボウイルスB19母子感染の実態」NID国立感染症研究所様HPより)

5.× 胎児死亡率は、妊娠20週「以降」ではなく未満に感染したとき高率である。なぜなら、20週未満に感染した場合の方が、胎児への影響が大きいため。つまり、母体感染後の胎児死亡のリスクは2~6%で、妊娠前半での感染が最も高リスクである。厚生労働省研究班の全国調査によると、2011年に妊娠中に伝染性紅斑に感染した女性69人のうち、約7割の49人が流産や死産していたことがわかっている。

 

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