第99回(H28) 助産師国家試験 解説【午後26~30】

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26 34歳の経産婦。院内助産所での分娩を予定している。妊娠34週3日、妊婦健康診査のため助産師外来を受診した。「おなかの張りや出血はない」と言う。胎児心拍数140bpm。レオポルド触診にて子宮底に胎児部分の中で一番大きく丸く硬いものを触れ、浮球感があり、胎児先進部は未固定である。
 助産師の対応で適切なのはどれか。

1.2週後の受診を指導する。
2.医師に管理を依頼する。
3.胎児外回転術を行う。
4.膝胸位を指導する。
5.内診を行う。

解答

解説

本症例のポイント

・34歳の経産婦(妊娠34週3日)。
・分娩予定:院内助産所
・「おなかの張りや出血はない」と。
・胎児心拍数140bpm。
・レオポルド触診:子宮底に胎児部分の中で一番大きく丸く硬いものを触れ浮球感があり胎児先進部は未固定である(骨盤位)。
→本児は、妊娠34週3日にて骨盤位である。したがって、「Ⅲ.妊婦管理適応リスト」の「C.産婦人科医師が管理すべき対象者」の「5.異常な妊娠経過の妊婦(骨盤位:34~35週で頭位とならない場合)」に該当する(※参考:「助産業務ガイドライン 2019」)※詳しくは下図参照。

(※図引用:「Ⅲ.妊婦管理適応リスト」助産業務ガイドライン 2019より)

1.× 2週後の受診を指導する優先度は低い。なぜなら、本児は、「Ⅲ.妊婦管理適応リスト」の「C.産婦人科医師が管理すべき対象者」であるため。

2.〇 正しい。医師に管理を依頼する。なぜなら、本児は、「Ⅲ.妊婦管理適応リスト」の「C.産婦人科医師が管理すべき対象者」であるため。

3.× 胎児外回転術を行うのは、「助産師」ではなく医師である。ちなみに、胎児外回転術とは、用手的に児を骨盤位から頭位へ変える処置で、一般的に36週以降で陣痛発来前の骨盤位妊婦に行われるものである。36週以降に行われる理由として、胎児心拍異常や、破水、胎盤早期剝離などで緊急の帝王切開術が行われる可能性を考慮しているためである。

4.× 膝胸位を指導するより優先されるものが他にある。なぜなら、膝胸位の指導は、妊娠28週頃から行われる骨盤位を正すための体操であるため。

5.× 内診を行うより優先されるものが他にある。なぜなら、内診を行う所見や理由(腹部緊満や出血などの切迫早産徴候)がないため。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)

Leopold触診法とは?

レオポルド触診法とは、母体の腹壁に触れることで子宮の収縮状態、子宮底の位置、胎児の数、胎向、胎位、胎勢、先進部、下降度などの観察が目的である。妊娠27週頃から可能で、児頭は固く丸く、四肢は小部分として触れる。

【触診法】
第1段法:子宮底の位置や高さ、形、胎児部分を触診する。
第2段法:一方の手で胎児小部分を確認し、他方の手で胎向を確認する。子宮の形、大きさ、緊張度、羊水量、胎動、胎向をみる。
第3段法:恥骨結合上の胎児部分を触診し、可動性(移動性)をみる。
第4段法:恥骨結合と胎児の下降部に指先を挿入して、下降部と骨盤進入度合いを確認する。

 

 

 

 

 

27 周産期医療におけるセミオープンシステムの目的はどれか。

1.周産期母子医療センターでの妊婦健康診査の増加
2.リスクに応じた医療の提供
3.診療所での分娩数の増加
4.ハイリスク妊婦の減少
5.医療費の削減

解答

解説

(※引用:「周産期医療体制」厚生労働省HPより)

周産期母子医療センターの整備とは?

周産期母子医療センターには、①総合周産期母子医療センターと②地域周産期母子医療センターがある。
①総合周産期母子医療センターとは、母体・胎児集中治療管理室(M-FICU)を含む産科病棟及び新生児集中治療管理室(NICU)を備えた医療機関である。常時、母体・新生児搬送受入体制を有し、母体の救命救急への対応、ハイリスク妊娠に対する医療、高度な新生児医療等を担っている。
②地域周産期母子医療センターとは、産科及び小児科(新生児)を備え、周産期に係る比較的高度な医療行為を常時担う医療機関である。

セミオープンシステムとは、地域内の診療所やクリニックと病院が連携して、妊婦健診や出産などを行うシステムです。妊産婦の利便性を保ちながら、それぞれの医療機関のメリットを活かすことで、安全・安心な出産を目指しています。

1.× 周産期母子医療センターでの妊婦健康診査の「増加」が目的ではない。むしろ、セミオープンシステムにより、周産期母子医療センターは、リスクが低い妊婦を連携施設(地域内の診療所やクリニック)に委託するため、妊婦健康診査は減少する。

2.〇 正しい。リスクに応じた医療の提供は、周産期医療におけるセミオープンシステムの目的である。セミオープンシステムとは、地域内の診療所やクリニックと病院が連携して、妊婦健診や出産などを行うシステムです。妊産婦の利便性を保ちながら、それぞれの医療機関のメリットを活かすことで、安全・安心な出産を目指しています。

3.× 診療所での分娩数の「増加」が目的ではない。むしろ、リスクが高い妊婦は診療所での分娩を避け、周産期母子医療センターなどでの安全な分娩を確保することが目的である。

4.× ハイリスク妊婦の「減少」が目的ではない。リスクに応じた適切な医療を提供し、安全・安心な出産を目指している。

5.× 医療費の「削減」が目的ではない。リスク管理が徹底されることで結果的に医療費の削減につながることもあるかもしれないが、主な目的とは逸脱している。

 

 

 

 

28 助産師が行うことができるのはどれか。2つ選べ。

1.妊娠の診断
2.乳腺炎の診断
3.経口避妊薬の処方
4.死体検案書の作成
5.出生直後の新生児の蘇生

解答1・5

解説

医師等の処方箋なしに販売が行える正当な理由

① 大規模災害時等において、医師等の受診が困難な場合、又は医師等からの処方箋の交付が困難な場合に、患者(現に患者の看護に当たっている者を含む。)に対し、必要な処方箋医薬品を販売する場合
② 地方自治体の実施する医薬品の備蓄のために、地方自治体に対し、備蓄に係る処方箋医薬品を販売する場合
③ 市町村が実施する予防接種のために、市町村に対し、予防接種に係る処方箋医薬品を販売する場合
④ 助産師が行う臨時応急の手当等のために、助産所の開設者に対し、臨時応急の手当等に必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑤ 救急救命士が行う救急救命処置のために、救命救急士が配置されている消防署等の設置者に対し、救急救命処置に必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑥ 船員法施行規則第 53 条第1項の規定に基づき、船舶に医薬品を備え付けるために、船長の発給する証明書をもって、同項に規定する処方箋医薬品を船舶所有者に販売する場合
⑦ 医学、歯学、薬学、看護学等の教育・研究のために、教育・研究機関に対し、当該機関の行う教育・研究に必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑧ 在外公館の職員等の治療のために、在外公館の医師等の診断に基づき、当該職員等(現に職員等の看護に当たっている者を含む。)に対し、必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑨ 臓器の移植に関する法律(平成9年法律第 104 号)第 12 条第1項に規定する業として行う臓器のあっせんのために、同項の許可を受けた者に対し、業として行う臓器のあっせんに必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑩ 新法その他の法令に基づく試験検査のために、試験検査機関に対し、当該試験検査に必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑪ 医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の原材料とするために、これらの製造業者に対し、必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑫ 動物に使用するために、獣医療を受ける動物の飼育者に対し、獣医師が交付した指示書に基づき処方箋医薬品(専ら動物のために使用されることが目的とされているものを除く。)を販売する場合
⑬ その他①から⑫に準じる場合

(※一部引用:「薬局医薬品の取扱いについて」厚生労働省HPより)

1.〇 正しい。妊娠の診断は、 助産師も行うことができる。母子保健法施行規則の第3条(妊娠の届出)において「第15条の内閣府令で定める事項は、次のとおりとする。①届出年月日、②氏名、年齢、個人番号(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第五項に規定する個人番号をいう。第九条第一項において同じ。)及び職業、③居住地、④妊娠月数、⑤医師又は助産師の診断又は保健指導を受けたときは、その氏名、⑥性病及び結核に関する健康診断の有無」と記載されている(※引用:「母子保健法施行規則」e-GOV法令検索様HPより)。

2.× 乳腺炎の診断は、医師が行う。医師法とは、医師全般の職務・資格などを規定する日本の法律である。つまり、一般人には禁止されている医療行為を、医師という有資格者に限って許可する法律である。

3.× 経口避妊薬の処方は、医師が行う。医師が患者の状態を診断したうえで、状態に合った薬剤を選択し処方する。ちなみに、応急医薬品の購入には、助産師が行う臨時応急の手当等のために、助産所の開設者に対し、臨時応急の手当等に必要な処方箋医薬品を販売する場合には、医師等の処方箋なしに販売が行える。

4.× 死体検案書の作成は、医師が行う。死亡診断書と死体検案書は、人の死亡を医学的・法律的に証明するために医師が交付する文書である。死因や死亡時刻などを医学的に証明するために医師が作成し、事故死や突然死、自殺などの場合は警察医や監察医が検死を行い、検案で死因が分かれば医師が発行する。

5.〇 正しい。出生直後の新生児の蘇生は、 助産師も行うことができる。保健師助産師看護師法の第38条において「助産師は、妊婦、産婦、じよく婦、胎児又は新生児に異常があると認めたときは、医師の診療を求めさせることを要し、自らこれらの者に対して処置をしてはならない。ただし、臨時応急の手当については、この限りでない」と記載されている(※引用:「保健師助産師看護師法」e-GOV法令検索様様HPより)。

異常死産児とは?

異常死産児とは、病死・自然死以外の死亡死体で、事故、災害、中毒、自殺、他殺による死亡及びそれら後遺症による死亡や、病死と判断されてもその原因が不詳の場合、また手術中や診療・検査中の予期せぬ急死や乳幼児の突然の死亡も異状死体に含まれる。

異常死産児の届出には、①医師法(第21条)と保健師助産師看護師法(第41条)に義務として記載されている。①医師法第21条(異状死体の届出)により医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異常があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならないと定められている。②保健師助産師看護師法(第41条)助産師は、妊娠四月以上の死産児を検案して異常があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署にその旨を届け出なければならない。(※参考:e-GOV法令検索様HPより)

 

 

 

 

 

29 妊娠6週の初妊婦。血液検査でRhDが陰性、抗D抗体が陰性と確認された。
 抗Dヒト免疫グロブリンを投与する時期について正しいのはどれか。2つ選べ。

1.妊娠9週前後
2.妊娠12週前後
3.妊娠28週前後
4.分娩後72時間以内
5.産褥1か月健康診査の受診時

解答3・4

解説

(※引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P36」)

本症例のポイント

・妊娠6週の初妊婦。
・血液検査:RhD陰性、抗D抗体陰性
→RhD不適合妊娠における母体感作の予防法をおさえておこう。

(※引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P37」)

1~2.5.× 妊娠9週前後/妊娠12週前後/産褥1か月健康診査の受診時は、抗Dヒト免疫グロブリンを投与する時期とはいえない。RhD不適合妊娠における母体感作の予防法は、①妊娠28週頃、②分娩後72時間以内、③胎児血が母体血中に流入し感作の危険があるとき(流産後、人工妊娠中絶後、異所性妊娠後、羊水穿刺・絨毛採取・胎児採血などの検査・処置後、母体腹部打撲後など)である。

3.〇 正しい。妊娠28週前後/分娩後72時間以内が抗Dヒト免疫グロブリンを投与する時期である。妊娠経過の中で妊娠28週以降は感作のリスクが上昇するといわれている。その時期に、抗Rh(D)抗体の有無を確認した後に抗D免疫グロブリンを投与することで、以降の感作を予防する。抗 D免疫グロブリンの半減期は約 24日とされ、妊娠中に投与した後の間接クームス試験の結果に影響を与えることがある(※参考:「4.Rhガイドライン」日本産婦人科医会HPより)。

Rh式血液型不適合妊娠とは?

Rh式血液型にはD、E、C、c、eなどいくつかの因子があり、このうち「D」の因子を持つ場合を「Rh(+)」(Rhプラス)、持たない場合を「Rh(-)」(Rhマイナス)という。Rh式血液型にはD、E、C、c、eなどいくつかの因子があり、このうち「D」の因子を持つ場合を「Rh(+)」(Rhプラス)、持たない場合を「Rh(-)」(Rhマイナス)という。Rh式血液型不適合妊娠とは、母親の血液型がRh(-)、父親の血液型がRh(+)で、胎児の血液型がRh(+)のため新生児溶血性黄疸が起きる場合をいう。Rh(-)の女性が初めて妊娠し、分娩時にRh(+)の胎児の血液が母体内へ侵入すると、母体にRh(+)の血球に対する抗体がつくられる。これを母体感作といい、Rh(+)の第2子を妊娠したときには、この母体中のIgG抗体が経胎盤的に胎児に移行し、それが胎児の赤血球を破壊する。しかし、妊娠前にすでにRh(-)の母体がRh(+)の供血者からRh因子不適合輸血を受けていれば、その際にすでに感作が成立しているので、初回妊娠による第1児でも症状が出ることがある。そのため、お母さんが抗D抗体を作らないように、妊娠中や出産後の適切な時期に、お母さんに「抗D人免疫グロブリン製剤」を注射することが勧められている。

 

 

 

 

30 羊水塞栓症の症状はどれか。2つ選べ。

1.血圧低下
2.視覚障害
3.上下肢の麻痺
4.大量の子宮出血
5.38℃以上の発熱

解答1・4

解説

羊水塞栓症とは?

羊水塞栓症とは、羊水が母体血中へ流入することによって引き起こされる。肺毛細管の閉塞を原因とする肺高血圧症と、それによる呼吸循環障害を病態とする疾患である。羊水塞栓症の症状として、①意識消失、②ショックバイタル、③播種性血管内凝固症候群(DIC)、④多臓器不全になる。ちなみに、播種性血管内凝固症候群〈DIC〉とは、小さな血栓が全身の血管のあちこちにできて、細い血管を詰まらせる病気である。血液凝固が増加することで出血の抑制に必要な血小板と凝固因子を使い果たしてしまい、過度の出血を引き起こす。感染、手術、出産時の合併症など、考えられる原因はいくつかある。

1.〇 正しい。血圧低下は、羊水塞栓症の症状である。なぜなら、ショック状態に陥るため。ちなみに、ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。

2.× 視覚障害は起きにくい。視覚の伝導路は、【視神経→視交叉→視索→外側膝状体→視放線→後頭葉(視覚野)】である。

3.× 上下肢の麻痺は起きにくい。麻痺は主に錐体路障害で起こる。錐体路(大脳皮質運動野→放線冠→内包後脚→大脳脚→延髄→(錐体交叉)→脊髄側索→脊髄前核細胞)の障害で、対側の運動麻痺などの症状を生じる。

4.〇 正しい。大量の子宮出血は、羊水塞栓症の症状である。なぜなら、種性血管内凝固症候群(DIC)が起こるため。播種性血管内凝固症候群〈DIC〉とは、小さな血栓が全身の血管のあちこちにできて、細い血管を詰まらせる病気である。血液凝固が増加することで出血の抑制に必要な血小板と凝固因子を使い果たしてしまい、過度の出血を引き起こす。感染、手術、出産時の合併症など、考えられる原因はいくつかある。妊娠高血圧症候群性の常位胎盤早期剥離では播種性血管内凝固症候群〈DIC〉を発生することが多い。

5.× 38℃以上の発熱は起きにくい。発熱は主に感染症(炎症)によって起きやすい。

産科DICスコア

【基礎疾患】
①常位胎盤早期剥離
②羊水塞栓症
③DIC型後産期出血
④子癇
⑤その他の基礎疾患

【臨床症状】
①急性腎不全
②急性呼吸不全(羊水塞栓症を除く)
③心、肝、脳、消化管などに重篤な障害(それぞれ4点を加える)
④出血傾向
⑤その他(脈拍、血圧、冷汗、蒼白)

 

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