第99回(H28) 助産師国家試験 解説【午後21~25】

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21 化膿性乳腺炎の原因菌として最も多いのはどれか。

1.大腸菌
2.腸球菌
3.肺炎球菌
4.黄色ブドウ球菌
5.B群溶血性レンサ球菌<GBS>

解答

解説
1.× 大腸菌より化膿性乳腺炎の原因菌がほかにある。大腸菌とは、健康なヒトの大腸内で生息し、また環境中にも広く分布している微生物あるが、腸管出血性大腸菌(O157など)のように、ある種の大腸菌はヒトに下痢、腹痛などといった病気を起こす。

2.× 腸球菌より化膿性乳腺炎の原因菌がほかにある。腸球菌とは、弱毒性のグラム陽性球菌で、ヒト腸 管内の常在菌である。腸球菌属で最も多い。

3.× 肺炎球菌は、化膿性乳腺炎の関連性は低い。肺炎球菌とは、肺炎の原因となる細菌である。肺炎球菌の主な感染経路は、飛沫感染である。 肺炎球菌は、主に、子どもがもっているが、咳やくしゃみで広がり、抵抗力の低下した高齢者に感染した場合には、肺炎を起こし、肺炎球菌感染症は重症化しやすい。

4.〇 正しい。黄色ブドウ球菌が化膿性乳腺炎の原因菌として最も多い。起炎菌は、黄色ブドウ球菌が最も多いが、連鎖球菌、大腸菌なども認められる。また頻度は低いが、嫌気性菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、メチシリン感受性黄色ブトウ球菌(MSSA)、カンジダ菌が原因菌となる場合もある(※参考:「医療での乳腺炎の診断と治療の実際」著:竹下茂樹)。黄色ブドウ球菌とは、食中毒の原因となるだけでなく、おでき、にきびや、水虫等に存在する化膿性疾患の代表的起因菌である。健康な人でものどや鼻の中などに高率で検出され、動物の皮膚、腸管、ホコリの中など身近にも存在している。5類感染症のひとつである。

5.× B群溶血性レンサ球菌<GBS>より化膿性乳腺炎の原因菌がほかにある。B群溶血性レンサ球菌とは、腸や腟などに存在する常在細菌の一種で、多くの人が保有しており無症状である場合が多い。 一方、妊婦の方が感染していると出産時の産道感染などにより、新生児がB群連鎖球菌感染症を起こす。

化膿性乳腺炎とは?

急性化膿性乳腺炎とは、乳汁うっ滞に細菌感染が生じた病態のことである。特徴的な臨床症状は、乳房の発赤、腫脹、硬結、疼痛といった局所症状と共に悪寒戦慄を伴う発熱や全身倦怠感などの全身症状を認めることである。また患側の腋窩リンパ節の有痛性の腫大を認める場合もある。化膿性乳腺炎の発症する時期は、産褥2~6週頃とされている。重症になるにつれて病巣が拡大し乳房全体が浮腫状に腫大するが、乳腺の炎症が限局してくると最終的には膿瘍形成をきたすことになる。化膿性乳腺炎の原因としては、うっ滞乳腺炎から移行して乳管口から細菌が侵入して炎症を起こしたタイプと乳頭亀裂、乳頭のびらんからの細菌感染による炎症によって引き起こされたタイプの二種類がある。起炎菌は、黄色ブドウ球菌が最も多いが、連鎖球菌、大腸菌なども認められる。また頻度は低いが、嫌気性菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、メチシリン感受性黄色ブトウ球菌(MSSA)、カンジダ菌が原因菌となる場合もある。臨床症状は、うっ滞性乳腺炎に比較して強く、白血球数の増加やCRPの上昇が参考になる。極めて稀ではあるが、乳腺炎と鑑別しなければいけない疾患に産褥期の炎症性乳癌があげられる。炎症性乳癌に特徴的な皮膚所見である橙皮様(peaud orange)、豚皮様 (pig skin) 皮膚を呈し、血液生化学検査で炎症反応の所見が乏しい場合は、本症も念頭に置いて鑑別診断の目的で組織生検などの精査も必要となる。化膿性乳腺炎の治療は、まず保存療法としては、局所の安静、冷庵法を行い、乳汁うっ滞を防止することが重要である。特に乳汁うっ滞は、炎症を悪化させるので、重症例を除いては、基本的に授乳は中止させる必要はない。薬物療法としては、抗菌薬、消炎鎮痛剤などの投与を行う。広域抗菌スペクトラムを有する合成ペニシリン系、セフェム系、マクロライド系が第一選択とされ、適合性が得られれば、48時間以内に臨床症状は改善するが、投与期間に関しては7~10日間程度の長期投与を行う方が良好な経過が得られると報告されている(※参考:「医療での乳腺炎の診断と治療の実際」著:竹下茂樹)。

 

 

 

 

 

22 27歳の初産婦。妊娠41週2日、出生体重2,900gの女児を出産した。
 児の感染予防についての説明で正しいのはどれか。

1.「おへそが取れた後は消毒の必要はありません」
2.「出生直後の沐浴は赤ちゃんの感染予防に有効です」
3.「人工栄養によって赤ちゃんの腸内は乳酸菌優位となります」
4.「胎盤を通じたお母さんからの免疫力は1歳まで持続します」
5.「お母さんとのスキンシップは赤ちゃんの感染予防に有効です」

解答

解説

ドライテクニック法とは?

ドライテクニックとは、産まれた直後に、赤ちゃんの皮膚についた血液などの汚れのみを拭き取り、胎脂はそのまま残しておく保清方法である。胎脂には抗菌作用があるとされていて、細菌から守るだけでなく、保温・保湿効果を有している。さらに、胎脂のにおいが母児の絆を深めるのに役立つとされています。ちなみに、赤ちゃんの沐浴は、発汗が始まる生後4~5日目頃が良いとされている。

【ドライテクニックの利点】
①赤ちゃんの体温が安定する(胎脂は皮膚の表面を覆うことによる保温効果が高く、赤ちゃんの低体温を防ぐ)。
②沐浴による赤ちゃんの体力消耗予防。
③エネルギーの消費が減るため、体重減少を少なくする。
④赤ちゃんのおへその乾燥を早くして、おへその感染を防ぐ。
⑤赤ちゃんのお肌の乾燥を防ぐ。

(※参考「6月から赤ちゃんのドライテクニックを始めます!」愛和病院様HPより)

1.× 「おへそが取れた後は消毒の必要はありません」と断言できない。なぜなら、おへその消毒は施設ごとに異なることが多いため。おへそは生後5~7日で自然に取れ、取れた後は血がにじむことがあるため、しっかり乾燥するまでは消毒を続けることもある。

2.× 出生直後の沐浴は、赤ちゃんの感染予防に「有効」とはいえない。むしろ、沐浴により胎脂を洗い流さない方が良い。胎脂には抗菌作用があるとされていて、細菌から守るだけでなく、保温・保湿効果を有している。

3.× 「人工栄養」ではなく母乳によって、赤ちゃんの腸内は乳酸菌優位となる。なぜなら、母乳に含まれる成分が、赤ちゃんの腸内で乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌以外の細菌を増やさない門番のような役割を担うため。特に初乳に多く含まれる。

4.× 胎盤を通じたお母さんからの免疫力は、「1歳」ではなく生後6ヶ月頃まで持続する。胎盤を通じたお母さんからの免疫は、IgGのことである。IgGとは、分子量が最も小さい抗体であるため、唯一、胎盤を通過する免疫グロブリンである。母体からのIgGが消失するうえに自分で産生する能力が低いため出生後3~6か月ころに最も減少するが、その後に児自身でIgGを産生する能力が伸びていく

5.〇 正しい。「お母さんとのスキンシップは赤ちゃんの感染予防に有効です」と説明する。なぜなら、親の皮膚の常在菌が赤ちゃんの皮膚に移行し、バリア機能を高める効果も期待されるため。

 

 

 

 

23 抗SS-A抗体陽性の全身性エリテマトーデス<SLE>合併妊娠において留意すべき胎児の異常はどれか。

1.巨大児
2.食道閉鎖
3.二分脊椎
4.臍帯ヘルニア
5.先天性房室ブロック

解答

解説

生後の新生児のケアについて留意すべきことは何か?

1)全身性エリテマトーデス(SLE)
SLE合併妊娠では母親の自己抗体の中でIgG(抗SS-A抗体)が胎盤を介して、児に移行し、児に母体と同様のSLE様症状を呈することがある(新生児ループス)。発症時期は、出生直後から生後3か月頃であり、母体由来のIgGが消失する生後半年程度で軽快する。症状として完全房室ブロックや,皮膚症状,汎血球減少がある。完全房室ブロックは不可逆的な障害であるが,心症状以外の症状は一過性で,可逆的な障害であり生後1年までに自然に治癒する。

(※引用:「分娩管理と新生児のリスクについて」富山大学大学院医学薬学研究部産科婦人科より)

1.× 巨大児との関連性は低い。巨大児とは、出生体重が4000g以上の正期産児をさす。娠中期に発症した妊娠糖尿病で母体の血糖値の管理が不十分である場合、妊娠後期に生じやすい。

2.× 食道閉鎖との関連性は低い。食道閉鎖とは、食道の一部が途切れて断裂し、盲端になっているか気管とつながっている先天異常である。5000人にひとり程度(日本では年間200人程度)発生する病気で、原因ははっきりしていない。

3.× 二分脊椎との関連性は低い。二分脊椎とは、脊椎の先天的な形成不全によるもので、脊髄が癒着や損傷しているために、様々な神経障害を呈する。下肢の運動障害・感覚障害のほか、膀胱直腸障害が出現する。また、合併症として水頭症がある。知的障害がある場合には, 自立生活を考える時期にかかわることが出てくる。

4.× 臍帯ヘルニアとの関連性は低い。臍帯ヘルニアとは、胎児のおなかの壁が正しく作られず、おなかの壁に穴ができてしまい、赤ちゃんはへその緒(臍帯)の中に胃や腸、肝臓などが出たままの状態であることである。5,000〜10,000人に一人の割合で発生すると報告されている。治療として、へその緒の中に脱出している臓器を元の位置に戻すための手術介入が必要となる。

5.〇 正しい。先天性房室ブロックが留意すべき胎児の異常である。抗SS-A抗体が胎児に移行し、心臓の伝導系に障害を引き起こすことがあり、これにより先天性房室ブロックが発生するリスクが高くなる。完全房室ブロックは不可逆的な障害であり、ペースメーカーが必要となる。(※参考:「抗 SS-A 抗体陽性女性の妊娠に関する診療の手引き」)

全身性エリテマトーデスとは?

全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。

プレドニゾロンとは、ステロイド薬で、炎症・免疫系をおさえる作用がある。炎症性の病気、免疫系の病気、アレルギー性の病気などに広く使用されている。たとえば、膠原病、ネフローゼ、関節リウマチ、重い喘息、ひどいアレルギー症状、めまい、耳鳴り などに用いる。「妊婦または妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」と記載されており、気を付ければ投与可能である。

 

 

 

 

 

24 正常な10か月児でみられる反射はどれか。

1.側弯反射
2.手掌把握反射
3.交叉性伸展反射
4.パラシュート反射
5.非対称性緊張性頸反射

解答

解説
1.× 側弯反射(Galant反射、背反射)は、脊柱の外側に沿って上から下へこすると刺激側の背筋が収縮して側屈する。胎児期後期から生後2ヵ月までみられる。

2.× 手掌把握反射は、児が指を開いているときに指で手のひらを刺激すると、指を握りしめようとする反射で、代表的な原始反射のひとつである。手掌把握反射は生後3~4か月で消失する。

3.× 交叉性伸展反射は、検者が一側下肢を伸展させ、同側の足底を刺激すると反対側の下肢が屈曲し、その後に刺激を与えている検者の手を払いのけるように伸展・交差する。胎児期後期から出現し、生後1~2ヵ月までに消失する。

4.〇 正しい。パラシュート反射は、正常な10か月児でみられる反射である。パラシュート反射は、姿勢反射のひとつであり、6か月頃から現れ始め、生涯続く。体幹を保持した状態から倒れそうになったときに、手のひらを広げてバランスを保つ反射で、生涯の転倒防止に役立つ。

5.× 非対称性緊張性頸反射は、背臥位にした子どもの顔を他動的に一方に回すと、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、顔面側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する。生後4~6か月には消失する。

 

 

 

 

25 在胎30週0日、体重900gで出生した児の退院後の外来における発育発達の評価で正しいのはどれか。

1.入院中の頭部MRIに異常がなければ運動発達に問題は発生しない。
2.栄養状態の評価は頭囲の発育で確認する。
3.退院後は集団での健康診査を避ける。
4.低身長症のハイリスク児である。
5.暦月齢による評価を行う。

解答

解説

MEMO

低出生体重児とは、2500g未満児のこと。1500g未満を「極低出生体重児」、1000g未満を「超低出生体重児」と呼ぶ。外的ストレスをできる限り減らす必要がある。ポジショニングは、体内にいるときに近い姿勢を保つ。子宮内環境に近づける。なぜなら、低出生体重児は、胎内で屈曲姿勢をとる期間が少なく、神経系の発達が未成熟、在胎週数に応じた筋緊張が低下を認めるため。したがって、成熟児に比べて、四肢伸展、外転位の不良姿勢や不良運動パターンを認めやすい。胎内での屈曲姿勢に近い肢位をとらせるのが正しい。そのため、タオルやクッションなどを使用し姿勢のセッティングが必要になる。ポイントは、①頚部の軽度屈曲位、②肩甲帯の下制・前進、③骨盤後傾、④肩・股関節中間位(内・外転)、⑤上・下肢屈曲位である。

1.× 入院中の頭部MRIに異常がなければ、運動発達に問題は発生しないとはいえない。なぜなら、頭部MRIに異常がない場合でも、脳の発達が未熟であるため。運動発達や他の発達に遅れが出る可能性がある。

2.× 栄養状態の評価は、「頭囲の発育」ではなく「3つの指標(体重、身長、頭囲)」で確認する。「低栄養の影響は体重→身長→頭囲の順で現れますので、身長の伸びが緩やかになってきたら低身長をきたす疾患に罹患していないか、摂取する栄養量をどう増やすか、検討する必要があります」と記載されている(※引用:「乳幼児身体発育評価マニュアル」)。

3.× 必ずしも、退院後は集団での健康診査を避ける必要はない。なぜなら、特別な疾患がなければ安全に健康診査が行えるため。また、様々な児を観察でき、母親の新しい気づきや交流の場ともなる。

4.〇 正しい。低身長症のハイリスク児である。なぜなら、成熟児に比べて、四肢伸展、外転位の不良姿勢や不良運動パターンを認めやすいため。ちなみに、低身長症とは、平均身長から標準偏差の2倍以上身長が低い状態である。

5.× 「暦月齢」ではなく修正月齢による評価を行う。修正月齢とは、例えば2か月早く生まれたなら、生後2か月時点が生後0か月となる。 一方、生まれた日から換算した月齢は「暦月齢」である。なお、予防接種(ワクチン)は、修正月齢ではなく、他の赤ちゃんと同じスケジュール、つまり暦月齢で接種を受けることが原則である。

 

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