第99回(H28) 助産師国家試験 解説【午後11~15】

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11 無床の助産所について正しいのはどれか。

1.自宅の住所を所在地として届け出る。
2.管理者は助産師でなくてもよい。
3.保健所長が開設を認可する。
4.分娩は取り扱えない。

解答

解説

助産所について

助産所について、「医療法」に記載されている。ちなみに、医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。

助産所の管理(医療法第11条、第12条、第15条第2項)
・助産所の開設者は、助産師に、これを管理させなければならない。
・自ら管理者となることができるものである場合は、原則として、自ら管理しなければならない。
・助産所の管理者は、助産所に勤務する助産師その他の従業者を監督し、その業務遂行に遺憾のないよう必要な注意をしなければならない。

1.〇 正しい。自宅の住所を所在地として届け出る。これは医療法第5条に規定されており、「公衆又は特定多数人のため往診のみによつて診療に従事する医師若しくは歯科医師又は出張のみによつてその業務に従事する助産師については、第六条の四の二、第六条の五又は第六条の七、第八条及び第九条の規定の適用に関し、それぞれその住所をもつて診療所又は助産所とみなす」と記載されている(※一部引用「医療法」e-GOV法令検索様HPより)。

2.× 管理者は助産師で「なければならない」なくてもよい。これは、医療法第11条において、「助産所の開設者は、助産師に、これを管理させなければならない」と記載されている(※一部引用「医療法」e-GOV法令検索様HPより)。

3.× 「保健所長」ではなく都道府県知事が開設を認可する。これは、医療法第7条において、「・・・中略・・・助産所を開設しようとするときは、開設地の都道府県知事の許可を受けなければならない」と記載されている(※一部引用「医療法」e-GOV法令検索様HPより)。

4.× 分娩も取り扱える。これは、医療法第5条において「公衆又は特定多数人のため往診のみによつて診療に従事する医師若しくは歯科医師又は出張のみによつてその業務に従事する助産師については、それぞれその住所をもつて診療所又は助産所とみなす」と記載されている(※一部引用「医療法」e-GOV法令検索様HPより)。

(※参考:「助産所について」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

12 妊娠・分娩における喫煙の影響でリスクが増加するのはどれか。

1.母体の耐糖能異常
2.妊娠高血圧症候群
3.前置胎盤
4.過期妊娠
5.弛緩出血

解答

解説

喫煙のリスク因子

妊娠中の喫煙は妊娠・出産・児の健康に悪影響を及ぼす可能性があるのみならず、受動喫煙でも影響が報告されており、カップルでの禁煙を勧める疫学研究は以下の悪影響を指摘している。ヘビースモーカーの流産率は非喫煙者の約2倍、受動喫煙者の流産率は1.7倍との報告がある。頸管無力症、切迫早産、37週未満の前期破水、早産および妊娠33週未満の早産、絨毛膜羊膜炎、常位胎盤早期剥離、前置胎盤の頻度を増加させると報告されている。妊娠高血圧症候群、妊娠高血圧腎症は報告によって結果が大きく異なるが、エコチル調査による報告では、10本/日を超える喫煙は妊娠高血圧症候群の発症頻度を増加させる。形態異常発生頻度は、母親の喫煙のみならず、受動喫煙でも上昇すると報告されている。口唇裂および口蓋裂、先天性心疾患、手足の欠損、腹壁破裂などの増加が報告されている。喫煙本数に応じて児体重は抑制される。(※引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P102」)

1.× 母体の耐糖能異常は、巨大児のリスク要因である。ほかにも、母体の耐糖能異常、肥満、妊娠中の過度の体重増加、過期産、巨大児分娩の既往、片親または両親の体格が大きい、頻産婦などである。

2.× 妊娠高血圧症候群は、報告によってさまざまである。10本/日を超える喫煙は妊娠高血圧症候群の発症頻度を増加させるという結果がある一方、喫煙はむしろ妊娠高血圧症候群のリスクを低下させるという報告もある。ちなみに、妊娠高血圧症候群とは、妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上)を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。

3.〇 正しい。前置胎盤が妊娠・分娩における喫煙の影響でリスクが増加する。なぜなら、喫煙により胎盤への血流障害が生じ、異常な胎盤の位置形成に寄与するためといわれている。ちなみに、前置胎盤とは、胎盤が正常より低い位置(腟に近い側)に付着してしまい、そのために胎盤が子宮の出口(内子宮口)の一部もしくは全部を覆っている状態のことをいう。頻度として、全分娩の約1%弱を占めている。一般的に前置胎盤は無症状であるが、典型的な症状として①腹痛を伴わない突然の性器出血(警告出血)や大量性器出血があげられる。これらの症状は、お腹が大きくなり張りやすくなる妊娠28週以降に増加するといわれている。

4.× 過期妊娠ではなく「早産および妊娠33週未満の早産」のリスクが増加する。タバコの主成分であるニコチンは、血管を収縮させる作用があり、これにより、胎盤への血流が減少し、胎児への酸素供給が妨げられる。したがって、ニコチンの影響で胎児の成長が阻害され、低出生体重児のリスクが高まる。ちなみに、過期妊娠とは、妊娠42週以降も妊娠が続く状態である。妊娠が長引きすぎると胎盤が胎児に十分な栄養を届け続けることができなくなり、胎児機能不全を起こす可能性がある。この状態を過熟と呼ぶ。

5.× 弛緩出血と喫煙の関連性は低い。弛緩出血とは、児と胎盤の娩出後、本来なら子宮が収縮することで止まるはずの出血が続く状態である。原因は、多胎妊娠や巨大児による子宮の過伸展、子宮収縮剤の長時間投与、長引く分娩による母胎の疲労、子宮奇形などの体質によるもの、子宮内の凝血塊の遺残、全身麻酔などが挙げられる。弛緩出血が起きたときには、子宮収縮を促すためオキシトシンなどの子宮収縮剤の投与や、子宮マッサージが行われる。

 

 

 

 

13 32歳の初産婦。妊娠29週0日に切迫早産と診断され、安静目的で入院した。深部静脈血栓症の既往がある。表在性静脈瘤はない。
 入院中の深部静脈血栓症の予防で適切なのはどれか。

1.床上安静
2.減塩食の摂取
3.骨盤ベルトの装着
4.ワルファリンの内服
5.ヘパリンの皮下注射

解答

解説

本症例のポイント

・32歳の初産婦(妊娠29週0日:切迫早産)。
・安静目的で入院した。
・既往:深部静脈血栓症
・表在性静脈瘤はない。
深部静脈血栓症の予防に関して日常生活指導を行えるようにしよう。肺血栓塞栓症とは、肺の血管に血のかたまり(血栓)が詰まって、突然、呼吸困難や胸痛、ときには心停止をきたす危険な病気である。ロング・フライト血栓症やエコノミークラス症候群などと呼ばれる。原因として、①血液凝固能の亢進、②静脈血流のうっ滞、③静脈壁の障害の3つの因子が種々の程度に重なって起こる。離床(車椅子乗車や立位訓練、歩行訓練など)を開始したタイミングで発症するリスクが高くなるため注意が必要である。症状として、呼吸困難、胸痛、失神などが認められ、時に心停止となり、突然死に至る場合もある。

1.× 床上安静は必要ない。むしろ、床上安静は深部静脈血栓症のリスクを増加させる。早期の離床や適度な運動が推奨される。

2.× 減塩食の摂取は必要ない。なぜなら、減塩食と深部静脈血栓症の予防の関連性は低いため。減塩食はネフローゼ症候群(腎機能の低下)や高血圧症に対して行う生活指導である。ちなみに、減塩には、①漬物や汁物の摂取量を減らす、②外食や加工食品の摂取を控える、③だしを効かせる、④香味野菜を使用するなどがあげられる。

3.× 骨盤ベルトの装着は必要ない。なぜなら、骨盤ベルトと深部静脈血栓症の予防の関連性は低いため。むしろ、骨盤の圧迫や血流障害を引き起こす可能性がある。ちなみに、骨盤ベルトとは、骨盤周囲を適切に圧迫し、骨盤が産後にずれたり開いたりするのを防ぐためのものである。主に、恥骨結合離開に用いられることが多い。恥骨結合離開とは、出産時に起こる恥骨結合部が離開し痛みが生じていることである。分娩後に恥骨痛が出現し、歩行時障害が現れたら疑われる。治療として、離開の程度によるが、安静とベルトによる固定が必要になる。重いものを持ち上げたり、長時間の歩行を控えるよう指導するだけでなく、骨盤ベルトを正しく着用することが重要である。

4.× ワルファリンの内服は、妊婦には禁忌である。ちなみに、【対象】血栓を生じる疾患、【作用】抗血栓作用、【副作用】出血傾向である。

5.〇 正しい。ヘパリンの皮下注射は、本症例の深部静脈血栓症の予防である。なぜなら、ヘパリンは抗凝固療法の1つであり、特に妊娠中の女性でも安全に投与可能であるため。ヘパリンとは、血液凝固阻止剤で、抗凝固といって、血液を固まりにくくする作用がある。ヘパリン製剤はそのほかの抗血栓薬と比較すると作用半減期が3〜6時間ととても短く、また拮抗薬もあるので、術直前まで投与が可能という理由からヘパリンが選択されている。したがって、医療現場では、血栓塞栓症の防止や治療、カテーテル挿入時の血液凝固防止などにも用いられる。

 

 

 

 

 

14 正常妊娠に伴う生殖器の変化で正しいのはどれか。

1.外陰部の皮脂の分泌は増加する。
2.腟粘膜は淡紅色に変化する。
3.妊娠末期の子宮腔内の容積は非妊時の100倍になる。
4.卵管の長さは短縮する。
5.卵巣の直径は非妊時の3倍になる。

解答

解説

(図引用:「女性器の解剖と整理」医学出版様より)

1.〇 正しい。外陰部の皮脂の分泌は増加する。なぜなら、妊娠により増加したエストロゲン、プロゲステロンといったホルモンにより、メラニン色素が増加するため。これを妊娠性色素沈着という。乳輪、脇の下、陰部、肛門の周り、腹部正中線に生じる。他にも、つわりで栄養不足になったり、赤ちゃんに優先的に栄養をいきわたらせるため、髪にいくはずの栄養が少なくなったりすることで抜け毛が増えると言われている。

2.× 腟粘膜は、「淡紅色」ではなく藍紫色に変化する。これをリビド着色と呼ぶ。リビド着色とは、妊娠によって増加するエストロゲンにより血管の怒張やうっ血が生じ、それにより子宮膣部や膣壁の色が「妊娠初期は紅紫色、末期には暗い藍紫色」に変化することをいう。

3.× 妊娠末期の子宮腔内の容積は非妊時の「100倍」ではなく約2000~2500倍になる。子宮腔容積は、非妊時2mLから、妊娠末期には4000~5000mLとなる。

4.× 卵管の長さは、「短縮」ではなく変化ない。つまり、卵管は、妊娠の経過にかかわらず、その長さを維持する。卵管とは、子宮と卵巣をつなげている管のことである。

5.× 卵巣の直径は、非妊時の「3倍」ではなく変化ない。つまり、妊娠中もその範囲内で維持されることがほとんどである。なぜなら、妊娠中は排卵が停止し、卵巣の活動が休止状態になるため。したがって、卵巣の大きさが著しく増加する場合、例えば数倍になるような場合は、妊娠黄体が大きくなる、卵巣嚢胞や腫瘍が疑われる。ちなみに、卵巣は子宮の左右に一つずつあり、通常では2~3cmぐらいの大きさである。

 

 

 

 

15 新生児期にみられる皮膚の所見について正しいのはどれか。

1.苺状血管腫は自然に消退しない。
2.サーモンパッチは自然に消退する。
3.脂漏性湿疹は石けんの刺激で悪化する。
4.カフェオレ斑は結節性硬化症に併発する。
5.中毒性紅斑は正期産児よりも早産児に多い。

解答

解説

1.× 苺状血管腫は、自然に消退「する」。なぜなら、未熟な毛細血管が増殖しているものであるため。いちご状血管腫とは、乳児血管腫ともいい、未熟な毛細血管が増殖してできる赤アザのことをさす。まれつきのあざではなく、赤ちゃんや乳幼児の生後数週以内に湿疹のような状態で現れ、表面がイチゴ状になり急速に範囲が広がったり盛り上がりを呈するようになる。体の表面、どこにでもできる赤あざである。多くは徐々に縮小し、ほとんどわからなくなるものの、稀に皮膚萎縮や瘢痕を残す例もあり、7歳以降に存在するものは、手術となる場合もある。

2.〇 正しい。サーモンパッチは自然に消退する。サーモンパッチとは、まぶたや眉間などに見られる赤いあざで毛細血管が拡張したものである。新生児の20~30%にみられ、2~3歳ころに自然に消失する。サーモンパッチの原因は、皮膚の真皮毛細血管の増加と拡張と考えられているが、なぜできるのかについてははっきりとしたことはわかっていない。遺伝の影響などと考えられている。

3.× 脂漏性湿疹は石けんの刺激で、「悪化する」とはいえない。むしろ「指の腹+石けん」を用いることが推奨されている。ちなみに、脂漏性湿疹とは、生後2~4週間頃に皮脂分泌の活発な部位に出現する湿疹性病変である。新生児期は皮脂分泌が最も盛んな時期であることから、顔面や頭部に脂漏性湿疹を引き起こすことがある。そのため、ガーゼやタオルでこすると児の皮膚に小さな傷をつけるので、指の腹に石けんをつけて洗うと良い。

4.× カフェオレ斑は結節性硬化症に併発する「とはいえない」。カフェオレ斑(皮膚色素沈着)は、神経線維腫症Ⅰ型(フォン・レックリングハウゼン病)に併発しやすい。概要神経線維腫症Ⅰ型(フォン・レックリングハウゼン病)とは、カフェオレ斑と神経線維腫を主徴とし、その他骨、眼、神経系、(副腎、消化管)などに多彩な症候を呈する母斑症であり、常染色体性優性の遺伝性疾患である。カフェオレ斑は、楕円形のものが多く、子供では5mm以上、大人では15mm以上もある。重症合併症を有する割合は少ないが、健常人と比べて悪性腫瘍を合併する割合がやや高いと言われている。原因は17番染色体であり遺伝子疾患であるが、患者の半数以上は無症状の両親から生まれている。他の症状としては、脊柱側弯や長管骨の狭細化・弯曲・偽関節である。ちなみに、知的障害がなくカフェオレ斑が見られる疾患を、McCune-Albright症候群(マッキューン・オルブライト症候群)という。

5.× 逆である。中毒性紅斑は、「早産児」よりも「正期産児」に多い。新生児の呼吸の生理的特徴(皮膚の成熟徴候)である。ちなみに、中毒性紅斑とは、生後数日間に、胸や背中などに赤い斑点やブツブツ、小さな水ぶくれなどができる新生児特有の皮膚トラブルである。新生児中毒性紅斑の原因は不明であるが、胎内環境から胎外環境への急激な変化に適応する過程で起きる、生理的な変化だと考えられている。2週間ほどで自然に治るのが特徴である。

結節性硬化症とは?

結節性硬化症は、大脳皮質などに結節性病変が多発する常染色体優性遺伝疾患である。皮膚病変には、顔面の血管線維腫や葉状白斑がみられ、脳、腎臓、肺、心臓など様々な身体の部位に腫瘍ができる疾患である。てんかん発作や知的障害、自閉症、頭痛、腹痛、血尿、高血圧など実に多彩な症状が現れるが、これらの症状の有無や程度は個人差がかなり大きいとされている。精子や卵子の遺伝子が突然変異することによって発病することが多く、完治は難しい。

 

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