第99回(H28) 助産師国家試験 解説【午前1~5】

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問題の引用:第102回保健師国家試験、第99回助産師国家試験及び第105回看護師国家試験の合格発表

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。コメント欄にて誤字・脱字等、ご指摘お待ちしています。よろしくお願いいたします。

 

1 親性について正しいのはどれか。

1.養育行動に影響する。
2.社会的な性役割を含んでいる。
3.母性と父性とを統合した概念である。
4.子どもが生まれると自然に獲得される。

解答

解説

親性とは?

親性とは、「母性と父性とを統合した性質で、親が自分の子どもを養い育てようとする性質」と定義されている。 従来、親の性質を表す用語として「母性」や「父性」が用いられてきたが、ジェンダーフリーの概念として「親性」という用語が広がりつつある。育児性や養護性ともいわれる。

1.〇 正しい。養育行動に影響する。養育行動とは、哺乳類の新生児の生存可能性を高めるために親が取る行動の総称で、哺乳や保温、身体の清潔保持、外部からの保護などが含まれる。一方、親性とは、育児性や養護性ともいわれ、「母性と父性とを統合した性質で、親が自分の子どもを養い育てようとする性質」と定義されている。

2.× 社会的な性役割は、「含んでいない」。従来、親の性質を表す用語として「母性」や「父性」が用いられてきたが、ジェンダーフリーの概念として「親性」という用語が広がりつつある。育児性や養護性ともいわれる。

3.× 母性と父性とを「統合」ではなくフリーにした概念である。従来の母は母性としての母乳などの性質、父は父性としての厳格さなどの性質の言葉ではなく、ジェンダーフリーの概念である。

4.× 子どもが生まれると自然に獲得されるものではない。子どもが生まれると自然に獲得されるものの例として、愛着形成があげられる。愛着(アタッチメント)とは、主に乳幼児期の子どもと母親をはじめとする養育者との間で築かれる、心理的な結びつきのことである。ネグレクトによって反応性愛着障害(反応性アタッチメント障害)が起こる。反応性愛着障害とは、5歳までに発症し、小児の対人関係のパターンが持続的に異常を示すことが特徴であり、その異常は、情動障害を伴い、周囲の変化に反応したものである(例:恐れや過度の警戒、同年代の子どもとの対人交流の乏しさ、自分自身や他人への攻撃性、みじめさ、ある例では成長不全)。こどもの対人関係の障害である。

性の種類

①快楽性(衝動性):性的指向
②生殖性:種の保存
③性役割:心理・社会的属性(ジェンダー)
④連帯性(親密性):人間関係の形成
⑤性別:性別学的な男性・女性を区別する。

 

 

 

 

 

2 精巣に最も近い精子の輸送路はどれか。

1.精囊
2.精管
3.射精管
4.精巣上体

解答

解説

(※図引用:「生殖器各部位(男性)」厚生労働省HPより)

1.× 精囊とは、精液のおおよそ70%を占める精嚢液を産生・分泌する働きを持つ器官である。

2.× 精管とは、精巣から精子を精嚢に輸送し、尿道に開口する管である。

3.× 射精管とは、精巣上体に蓄えられた精子を射精する際に通過する管で、精管の一部である。

4.〇 正しい。精巣上体は、精巣に最も近い精子の輸送路である。精巣上体とは、陰嚢の中、精巣の外側に付属する組織である。精巣(睾丸)で作られた精子を蓄えて成熟させる。精子を運ぶ管(精管)の一部である。

 

 

 

 

3 最も母体側に位置する卵膜の構造物はどれか。

1.羊膜
2.脱落膜
3.絨毛膜
4.子宮漿膜

解答

解説

(※図引用:「羊膜のご提供をお考えのお母さまへ」東京歯科大学HPより)

卵膜とは?

卵膜とは、おなかの赤ちゃんを包む3層の薄い膜のことで、外側から脱落膜、絨毛膜、羊膜の3層に分かれている。一方、胎盤とは、母体の組織に由来する基底脱落膜と、胎児の組織である絨毛が一緒になって構成されており、円盤状の基底脱落膜のなかに絨毛が納まっているような形をしている。胎児に酸素や栄養素を与えるベースである胎盤は、妊娠の経過とともに発達し、分娩期には直径20cm、厚さ2〜3cm、重さ500gの円盤状となる。

1.× 羊膜とは、細胞とコラーゲンやラミニン等のタンパクからなる基底膜や緻密層からなり、血管を含まない半透明の薄い袋状の膜である。子宮の中で赤ちゃんを包む卵膜の最内層を覆う厚さ約100~150μmの半透明の膜であり、母体からの胎盤組織への拒絶反応の抑制等、赤ちゃんを保護したり、羊水を分泌する役割があると考えられている。 赤ちゃん由来の組織であるため、拒絶反応が起こりにくく、炎症を抑える働きがある。薄くて伸縮性に富むため、昔から様々な医療用途に用いられている。

2.〇 正しい。脱落膜は、最も母体側に位置する卵膜の構造物である。脱落膜とは、子宮内膜が受精卵の着床により肥大・増殖したもので、受精卵の着床によってこの変化が始まり、後にその一部は胎盤の構成にあずかる 。

3.× 絨毛膜とは、脱落膜と羊膜の間にある膜である。

4.× 子宮漿膜とは、子宮体部の壁をなす3層の1つである。子宮体部は子宮内膜、筋層、漿膜の3層からなる。子宮内膜は、腺上皮細胞と間質細胞からなり、筋層に近い基底層と、表層の機能層に区別され、機能層にはラセン状の走行を示すラセン動脈が分布する。子宮漿膜は腹膜の一部で、両側は子宮広間膜に、前方は膀胱漿膜に、後方は直腸漿膜に移行する。

(※図引用:「25. 胎盤・臍帯の超音波像」日本産婦人科医会様HPより)

 

 

 

 

 

4 生後1週の新生児の生理的な睡眠について正しいのはどれか。

1.睡眠周期は約4時間である。
2.1日の睡眠時間は12時間以下である。
3.ノンレム睡眠が睡眠時間全体の70%以上を占める。
4.周期性呼吸はノンレム睡眠よりもレム睡眠のときに多い。

解答

解説

新生児の睡眠とは?

新生児の睡眠は、昼夜の区別がなく、睡眠と覚醒を短い期間で繰り返す(多相性睡眠)。

1.× 睡眠周期は、「約4時間」ではなく約50~60分である。新生児は眠りが浅い(レム睡眠)ため、少しの刺激でも目を覚ましやすい。月齢が進むと、昼夜のリズムができていき、全睡眠におけるレム睡眠の割合は徐々に減少する。睡眠には、①レム睡眠(脳が活発に動いている)と、②ノンレム睡眠(大脳が休息している)がある。

2.× 1日の睡眠時間は、「12時間以下」ではなく16~20時間程度である。基本的に母乳かミルクを飲むと眠り、おなかが空いたら起きるという生活である。

3.× ノンレム睡眠が睡眠時間全体の70%以上を占めるのは、成人の場合である。新生児の場合は、ノンレム睡眠とレム睡眠それぞれ約50%である。

4.〇 正しい。周期性呼吸は、ノンレム睡眠よりもレム睡眠のときに多い。なぜなら、レム睡眠は、脳が活発に動いている状態であり、新生児の脳の未熟さとレム睡眠の割合の高さに起因するため。ちなみに、周期性呼吸とは、正常新生児にときどき認められる5~10秒程度の呼吸休止が不規則的にみられる呼吸パターンである。原因として、呼吸中枢の未熟と考えられていて、特別異常なことではない。ただし、無呼吸発作の移行や、SPO2の低下、徐脈などが伴わないか観察が必要である。

ノンレム睡眠とは?

睡眠は、深いノンレム睡眠から始まり、睡眠欲求が低下する朝方に向けて、徐々に浅いノンレム睡眠が増えていく。その間に約90分周期でレム睡眠が繰り返し出現し、睡眠後半に向けて徐々に一回ごとのレム睡眠時間が増加する。レム睡眠+ノンレム睡眠で約90分周期を繰り返す。

レム睡眠とは、脳が活発に働いており、記憶の整理や定着が行われ、夢を見る浅い眠りである。目がぴくぴく活発に動く、Rapid Eye Movement(急速眼球運動)があることからREM(レム)睡眠と呼ばれる。

ノンレム睡眠とは、脳の睡眠といわれ、①新陳代謝を促進する成長ホルモンの分泌が増加、②エネルギー代謝の抑制、③体温の低下があげられる。

 

 

 

 

5 6か月齢以下の乳児に対しRSウイルス感染症の予防のために投与するパリビズマブの適応はどれか。

1.出生体重2,500g未満
2.在胎35週以下での出生
3.Turner<ターナー>症候群
4.風疹抗体が陰性の母体からの出生

解答

解説

パリビズマブとは?

早産児に特別な注射として、RSウイルスに対するモノクロナール抗体であるパリビズマブ(商品名シナジス)という注射がある。他の予防接種の対象疾患と同様に、早産児では母親からのRSウイルスに対する抗体の移行が少なくRSウイルス感染症が重篤化しやすいとされている。重篤化を軽減するために抗体であるパリビズマプの注射を月1回、RSウイルスの流行中に行う。この注射をうけるかどうかは、出生体重ではなく、早産かどうかによって決まっている。在胎週数、生まれてからの月数、合併症、その他のリスクの有無などにより注射を受けるかどうかは異なるため、主治医の先生と相談する必要がある。

【RSウイルス感染流行初期において】
・在胎期間28週以下の早産で、12ヵ月齢以下の新生児および乳児
在胎期間29週~35週の早産で、6ヵ月齢以下の新生児および乳児
・過去6ヵ月以内に気管支肺異形成症(BPD)の治療を受けた24ヵ月齢以下の新生児、乳児および幼児
・24ヵ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)の新生児、乳児および幼児
・24ヵ月齢以下の免疫不全を伴う新生児、乳児および幼児
・24ヵ月齢以下のダウン症候群の新生児、乳児および幼児
・24ヵ月齢以下の肺低形成を伴う新生児、乳児および幼児
・24ヵ月齢以下の気道狭窄を伴う新生児、乳児および幼児
・24ヵ月齢以下の先天性食道閉鎖症の新生児、乳児および幼児
・24ヵ月齢以下の先天代謝異常症の新生児、乳児および幼児
・24ヵ月齢以下の神経筋疾患の新生児、乳児および幼児
(※引用:「本邦における肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症および神経筋疾患に対するパリビズマブ使用の手引き」)

1.× 出生体重2,500g未満に対する規定はない。出生体重ではなく、早産かどうかによって決まっている。在胎週数、生まれてからの月数、合併症、その他のリスクの有無などにより注射を受けるかどうかは異なるため、主治医の先生と相談する必要がある。

2.〇 正しい。在胎35週以下での出生は、6か月齢以下の乳児に対しRSウイルス感染症の予防のために投与するパリビズマブの適応である。
・在胎期間28週以下の早産で、12ヵ月齢以下の新生児および乳児
在胎期間29週~35週の早産で、6ヵ月齢以下の新生児および乳児

3.× Turner<ターナー>症候群に対する規定はない。ターナー症候群とは、典型的には身長が低く、首の後ろに皮膚のたるみ(翼状頸)があり、学習障害がみられ、思春期が始まらないのが特徴である。2本のX染色体のうち1本の部分的または完全な欠失によって引き起こされる性染色体異常である。女性特有の染色体異常である。

4.× 風疹抗体が陰性の母体からの出生に対する規定はない
・24ヵ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)の新生児、乳児および幼児
・24ヵ月齢以下の免疫不全を伴う新生児、乳児および幼児
・24ヵ月齢以下のダウン症候群の新生児、乳児および幼児
・24ヵ月齢以下の肺低形成を伴う新生児、乳児および幼児
・24ヵ月齢以下の気道狭窄を伴う新生児、乳児および幼児
・24ヵ月齢以下の先天性食道閉鎖症の新生児、乳児および幼児
・24ヵ月齢以下の先天代謝異常症の新生児、乳児および幼児
・24ヵ月齢以下の神経筋疾患の新生児、乳児および幼児

(※図引用:「低出生体重児保健指導マニュアル」厚生労働省HPより)

 

(※表引用:「予防接種スケジュール」日本小児学会より)

 

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