第98回(H27) 助産師国家試験 解説【午前6~10】

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6 自然流産について正しいのはどれか。

1.高齢妊婦では頻度が上昇する。
2.妊娠12週以降に生じやすい。
3.最も多い原因は感染である。
4.全妊婦の約5%に生じる。

解答

解説

用語の定義

・流産とは、日本産科婦人科学会は、「妊娠22週未満の胎児が母体から娩出されること」と定義している。妊娠22週以降の場合の死亡胎児の出産は死産と定義。つまり、何らかの原因で胎児が亡くなってしまい妊娠が継続しなくなることである。日本産科婦人科学会の定義ではさらに、妊娠12週未満の「流産」を「早期流産」、妊娠12週以降22週未満の「流産」を「後期流産」としている。妊娠12週未満の早い時期での流産が多く、流産全体の約90%を占める。
・習慣流産とは、流産を3回以上繰り返した場合をいう。(死産や早期新生児死亡は含めない)。出産歴がない原発習慣流産と、出産後に流産を繰り返す続発習慣流産がある。続発習慣流産は、胎児染色体異常(赤ちゃんの染色体異常)による場合が多く、明らかな原因は見つかりにくい傾向がある。
・反復流産とは、流産を2回以上繰り返した場合をいう。最近、反復流産も原因精査の対象と考えられるようになってきた。

(※参考:「反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル」より)

1.〇 正しい。高齢妊婦では頻度が上昇する。なぜなら、高齢妊婦では、卵子が老化して染色体異常が起こりやすくなるため。ちなみに、自然流産の原因には、①胎児側と②母体側の2つの要因が考えられ、①胎児側の原因としては、受精卵の染色体異常や遺伝子病などである。②母体側の原因としては、子宮の異常や感染症、内分泌疾患、黄体機能不全、免疫異常、重度外傷などである。

2.× 妊娠12週「以降」ではなく未満に生じやすい(約8割)。なぜなら、この時期の流産の原因は、ほとんどが胎児側の染色体異常で、受精の瞬間に「流産の運命」が決まるため。妊娠7〜9週は流産の確率が最も高い時期で、妊娠12週未満の早期流産が8割以上を占めている。

3.× 最も多い原因は、「感染」ではなく染色体異常である。自然流産の原因の約50~70%は、胎児の染色体異常である。染色体異常による流産は、受精卵の染色体に異常が生じて上手く成長できなかったことが原因で、一定の確率で誰にでも起こりえる。

4.× 全妊婦の「約5%」ではなく約8~15%に生じる。誰のせいでもないため、決して自責しないよう支援をする(※参考:「流産について」国立成育医療研究センター様HPより)。

 

 

 

 

 

7 妊娠36週0日の妊婦健康診査で胎児発育不全〈FGR〉が認められた。
 経腹超音波検査による胎児の状態評価において、胎内環境が不良であることを示唆するのはどれか。

1.手掌の開閉動作がある。
2.羊水ポケットが5cmである。
3.臍帯動脈血流が逆流している。
4.呼吸様運動が30分間に2回ある。

解答

解説

胎児発育不全とは?

胎児発育不全とは、平均と比べて成⻑が遅くなっていることをいい、胎盤由来の妊娠合併症の代表的なものである。子宮内での胎児の発育が遅延あるいは停止したために在胎週数に相当した胎児の発育が見られない状態で、妊娠週数に対して胎児が明らかに小さい場合をいい、胎児発育曲線において「-1.5SD以下」の場合に診断される。

胎児のwell-beingの評価には、主にバイオフィジカルプロファイルスコアリング(BPS:biophysical profile scoring:生物物理的プロフィール得点)が用いられることが多い。バイオフィジカルプロファイルスコアリング(BPS:biophysical profile scoring:生物物理的プロフィール得点)とは、超音波検査とNST(分娩監視装置による胎児心拍の観察)を用いて胎児のwell-beingを評価する方法である。胎児の各状態をチェックして点数評価し合計点で胎児の状態を診断する。

①胎児の呼吸運動:【正常な状態(2点)30分間に30秒以上続く運動が1回以上】【異常な状態(0点)無いとき】

②胎動:【正常な状態(2点)30分間に身体の大きな動きが3回以上】【異常な状態(0点)2回以下】

③筋緊張:【正常な状態(2点)30分間に手足の動きが1回以上】【異常な状態(0点)認めない】

④羊水量:【正常な状態(2点)直径2cm以上の羊水ポケットが1ヶ所以上】【異常な状態(0点)2cm以下】

⑤non-stress test:【正常な状態(2点)20~40分間中に15bpm以上の一過性品脈が2回以上】【異常な状態(0点)2回未満】

1.× 手掌の開閉動作があることは、正常(胎児筋緊張スコア=2)である。

2.× 羊水ポケットが5cmであることは、正常(羊水量スコア=2)である。

3.〇 正しい。臍帯動脈血流が逆流していることは、胎内環境が不良であることを示唆する。拡張期の臍帯動脈血流の逆流は臍帯動脈の循環抵抗(RI、PI)の上昇がみられ、子宮胎盤機能不全(慢性低酸素血症)などの疑いがある。

4.× 呼吸様運動が30分間に2回あることは、正常(non-stress testスコア=2)である。

 

 

 

 

 

8 思春期の子どもがいる親を対象に「思春期の子どもとの関わり方を考える」をテーマに、15人定員の参加型の小集団健康教室を計画した。
 教室の運営で最も適切なのはどれか。

1.講師による講義形式で行う。
2.教室の運営は参加者に任せる。
3.親の年齢によってグループに分ける。
4.参加者の顔が見えるようにサークル型に椅子を置く。

解答

解説

MEMO

対象:思春期の子どもがいる親
テーマ:「思春期の子どもとの関わり方を考える」
15人定員の参加型小集団健康教室を計画。
→どのような形式で行うのが良いか、それぞれのメリットデメリットをおさえておこう。参加型教室では、双方向のコミュニケーションやディスカッションが重要である。

1.× 講師による講義形式で行う優先度は低い。なぜなら、講義形式は情報の一方向的な伝達が主になりやすいため。講義法の長所は、指導者が目的も範囲も展開法も時間配分も、コントロールできることにある。

2.× 教室の運営は参加者に任せる必要はない。なぜなら、教室の運営を参加者に任せると、適切な進行が難しくなる可能性があるため。特にテーマが「思春期の子どもとの関わり方を考える」という繊細な議題でもあるため、ファシリテーターが必要である。ちなみに、ファシリテーターとは、会議や話し合いの場で、中立的な立場に立って参加者の意見をまとめ、より良い結論に導く役割を担う人のことである。進行役としての役割だけでなく、参加者の意見を聞きやすくまとめて伝えたり、他の参加者たちのスムーズな理解を促したりする。

3.× 親の年齢によってグループに分ける優先度は低い。なぜなら、年齢でグループ分けをすると、情報交換が偏ってしまう可能性があるため。参加者全員が意見交換しやすい雰囲気を作り、様々な視点や年齢からの意見を尊重する。

4.〇 正しい。参加者の顔が見えるようにサークル型に椅子を置く。なぜなら、サークル型に椅子を配置することで、参加者同士が互いに顔を見ながら意見交換をしやすくなるため。対話を促進し、参加者が自由に意見を出しやすい環境を作ることができる。

 

 

 

 

 

9 妊産婦へのB群溶連菌〈GBS〉の検査と対応について正しいのはどれか。

1.検査部位は咽頭である。
2.検査時期は妊娠16週未満である。
3.検査は母体敗血症の予防のために実施する。
4.保菌者にはペニシリン系抗菌薬の投与が行われる。

解答

解説

MEMO

B群レンサ球菌とは、膣内に常在することのある細菌で、妊婦以外では、膀胱炎などの尿路感染症でもおこさない限り問題となることは少ない。ところが、出産時にこのB群レンサ球菌が膣内に存在すると、生まれる新生児に敗血症、髄膜炎、肺炎などの重症のB群レンサ球菌感染症を起こすことがありえることが知られている。この母から子への感染が問題とされている。B群連鎖球菌は、新生児における、敗血症や髄膜炎、肺炎の主要な原因菌の一つである。髄膜炎が死亡原因となることや、髄膜炎の後遺症として、聴力や視力が失われたり、運動や学習の障害などが残る場合もある。妊婦では、膀胱炎や子宮の感染症(羊膜炎、子宮内膜炎)、死産を起こすことがある。妊婦以外では、尿路感染症、敗血症、皮膚・軟部組織の感染症および肺炎を起こすことがあり、死亡例もある(※参考:「B群レンサ球菌(GBS)感染症について」横浜市HPより)。

1.× 検査部位は、「咽頭」ではなく膣もしくは肛門である。「※引用:産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P298」において、GBS培養の検体採取は、綿棒で腟入口部の検体採取後、同綿棒を肛門からも採取する。肛門の採取部位として、CDCは肛門括約筋を越えた部位を推奨しており、前述の採取後5週間以内の有効性を示した調査も同部位で行われている。

2.× 検査時期は、妊娠「16週未満」ではなく妊娠35~37週である。「※引用:産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P298」において、34週以前に実施した培養検査でGBS陰性であっても、実施した5週後に再度スクリー二ングすることが望ましい。

3.× 検査は、「母体敗血症」ではなく早発型新生児GBS感染症の予防のために実施する(※参考:産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P298)。

4.〇 正しい。保菌者にはペニシリン系抗菌薬の投与が行われる。(※下の図参照)

(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P297」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

 

 

 

 

 

10 30歳の初妊婦。妊娠23週5日。妊娠経過は良好。1年前から正規雇用の職員として働いている。「妊婦健康診査は有給休暇をとって受診していました。今後は妊婦健康診査の回数が増えたり、出産後も子どものことで仕事を休む機会が増えると思うのでどのような制度があるか聞きたい」と言う。
 この妊婦への情報提供として正しいのはどれか。

1.「妊婦健康診査の受診に必要な時間を確保するための休暇の申請ができます」
2.「産後休暇の後に育児休業が1年とれます」
3.「看護休暇は1年に20日が限度です」
4.「子どもが小学生になるまで短時間勤務が可能です」

解答

解説

本症例のポイント

・30歳の初妊婦(妊娠23週5日、妊娠経過:良好)。
・1年前:正規雇用の職員として働いている。
・「妊婦健康診査は有給休暇をとって受診していました。今後は妊婦健康診査の回数が増えたり出産後も子どものことで仕事を休む機会が増えると思うのでどのような制度があるか聞きたい」と言う。
→各制度に関しての数値までしっかりおさえておこう。

1.〇 正しい。「妊婦健康診査の受診に必要な時間を確保するための休暇の申請ができます」と情報提供する。これは、男女雇用機会均等法の第12~13条(妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置)に規定されている。
第12条:事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する女性労働者が母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければならない。
第13条:事業主は、その雇用する女性労働者が前条の保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければならない。(※引用:「男女雇用機会均等法」e-GOV法令検索様HPより)

2.× 産後休暇の後に育児休業は、「1年」ではなく最長2年とれる。育児休業の対象者は、育児・介護休業法第1条により育児休業は出産日から起算して2年まで取得できる。子どもが1歳になっても保育園などに入れない場合は、1歳6ヶ月~2歳まで延長可能になっている。育児休業とは、子を養育する労働者が法律に基づいて取得できる休業のことであり、男性も取得可能である。育児休業は『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)』に規定されている。

3.× 看護休暇は、1年に「20日」ではなく5日が限度である。これは、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の第26条の2(子の看護休暇の申出)において、「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、その事業主に申し出ることにより、一の年度において五労働日(その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が二人以上の場合にあっては、十労働日)を限度として、負傷し、若しくは疾病にかかった当該子の世話又は疾病の予防を図るために必要なものとして厚生労働省令で定める当該子の世話を行うための休暇(以下「子の看護休暇」という。)を取得することができる」と規定されている。

4.× 短時間勤務は、子どもが「小学生」ではなく3歳になるまでである。これは、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の第23条(所定労働時間の短縮措置等)において、「事業主は、その雇用する労働者のうち、その三歳に満たない子を養育する労働者であって育児休業をしていないものに関して、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の申出に基づき所定労働時間を短縮することにより当該労働者が就業しつつ当該子を養育することを容易にするための措置を講じなければならない。・・・以下省略」と規定されている。

育児・介護休業法とは?

育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)は、育児・介護に携わる労働者について定めた日本の法律である。①労働者の育児休業、②介護休業、③子の看護休暇、④介護休暇などが規定されている。

 

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