第98回(H27) 助産師国家試験 解説【午後51~55】

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次の文を読み51〜53の問いに答えよ。
 Aさん(35歳、初産婦)。妊娠41週0日。身長158cm、体重80kg(非妊時体重75kg)。午後7時に陣痛発来し、午後10時に入院した。現在は1時間前に比べて陣痛間欠が短縮したと自覚がある。胎児心拍数陣痛図はreassuring fetal statusであった。体温36.6℃、脈拍78/分、血圧134/80mmHg。尿蛋白(-)、尿糖(-)。Seitz〈ザイツ〉法(±)。妊娠40週3日の妊婦健康診査で胎児推定体重3800g、BPD9.7cm、AFI8.0であった。

51 入院時の助産診断で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.過期産である。
2.巨大児と推定される。
3.遷延分娩の可能性がある。
4.妊娠高血圧症候群である。
5.母児の健康状態は良好である。

解答3・5

解説

本症例のポイント

・Aさん(35歳初産婦妊娠41週0日)。
・身長158cm、体重80kg(非妊時体重75kg)。
・午後7時:陣痛発来、午後10時:入院。
・現在:1時間前に比べて陣痛間欠が短縮したと自覚。
・胎児心拍数陣痛図:reassuring fetal status
・体温36.6℃、脈拍78/分、血圧134/80mmHg
尿蛋白(-)、尿糖(-)、ザイツ法(±)
・妊娠40週3日:胎児推定体重3800g、BPD9.7cm、AFI8.0
→上記の評価項目から正常な範囲、異常所見を判断できるようにしよう。本症例は、微弱陣痛に発展する恐れがある。したがって、陣痛を促すケアが求められる。微弱陣痛とは、一旦分娩開始した(陣痛の間隔が10分以内ごとであり 、痛みを伴う子宮収縮により分娩が進行)にも関わらず、陣痛の強さが弱く、発作の持続が短く、かつ陣痛の間隔が長くなってしまい、分娩が進行しない状態をいう。子宮口の開き具合により、6分30秒以上(子宮口の開き:4~6cm)、6分以上(子宮口の開き:7~8cm)、4分以上(子宮口の開き:9~10cm)が陣痛周期の目安とされている。ちなみに、reassuring fetal status(RFS)とは、健常な胎児の状態を呼び、安心できない胎児の状態をnon-reassuring fetal status(NRFS)と呼ぶ。

1.× 過期産「とはいえない」。なぜなら、Aさんは妊娠41週0日であるため。過期産とは、42週0日以後の分娩のことである。ちなみに、流産期とは、妊娠21週6日までの妊娠中絶(分娩)。早産期とは、妊娠22週0日~36週6日における分娩。正期産とは、妊娠37週0日~41週6日までの分娩。

2.× 巨大児と推定できない。なぜなら、妊娠40週3日にて胎児推定体重3800gであるため。巨大児とは、出生体重が4000g以上の正期産児をさす。ちなみに、低出生体重児は、2500g未満児のこと。1500g未満を「極低出生体重児」、1000g未満を「超低出生体重児」と呼ぶ。

3.〇 正しい。遷延分娩の可能性がある。なぜなら、現在、ザイツ法(±:児頭骨盤不均衡)であり、Aさん(35歳非妊時BMI:30)であり、微弱陣痛が疑われるため。ちなみに、遷延分娩とは、有効な陣痛があるが子宮頸管の開大や胎児の下降が異常に緩徐な場合である。遷延分娩の定義は、「分娩開始後すなわち陣痛周期が10分以内になった時点から、初産婦では30時間、経産婦では15時間を経過しても児娩出に至らないもの」をいう。一般的に、分娩第1期(分娩開始から子宮口全開大まで)の平均所要時間:初産婦10~12時間、経産婦4~6時間であり、初産婦の潜伏期遷延は20時間未満、活動期開大遷延は12時間未満である。

4.× 妊娠高血圧症候群とはいえない。なぜなら、Aさんの血圧134/80mmHg尿蛋白(-)であるため。妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上)を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。

5.〇 正しい。母児の健康状態は良好である。なぜなら、胎児心拍数陣痛図はreassuring fetal statusであるため。また、AFIは8.0、母体のバイタルサイン、1時間前に比べ陣痛間欠が短縮した自覚があることから健康状態は良好であると考える。ちなみに、AFIの正常範囲は5~24cmであり、24cm以上は羊水過多を意味する。

(※図引用:「骨盤形態からみた難産予測 著:又吉國雄 様」)

ザイツ法とは?

児頭が骨盤腔内に嵌入しているか否かを腹壁上からの触診でみる方法である。恥骨結合より児頭前面が低ければ Seitz(-)、同じ高さなら(±)、児頭前面の方が隆起していれば(+)と判定し、児頭骨盤不均衡を疑える。

 

 

 

 

 

次の文を読み51〜53の問いに答えよ。
 Aさん(35歳、初産婦)。妊娠41週0日。身長158cm、体重80kg(非妊時体重75kg)。午後7時に陣痛発来し、午後10時に入院した。現在は1時間前に比べて陣痛間欠が短縮したと自覚がある。胎児心拍数陣痛図はreassuring fetal statusであった。体温36.6℃、脈拍78/分、血圧134/80mmHg。尿蛋白(-)、尿糖(-)。Seitz〈ザイツ〉法(±)。妊娠40週3日の妊婦健康診査で胎児推定体重3800g、BPD9.7cm、AFI8.0であった。

52 分娩第2期になり2時間が経過し、微弱陣痛のためオキシトシン点滴静脈内注射が開始された。その後、順調に分娩が進行し、オキシトシン点滴静脈内注射の開始後30分に児頭まで娩出した。その後、前在肩甲娩出術を試みたが娩出しない。
 このときの対応として正しいのはどれか。2つ選べ。

1.子宮底部を圧迫する。
2.強く児頭を牽引する。
3.恥骨上縁圧迫法を行う。
4.オキシトシンを増量する。
5.McRoberts〈マックロバーツ〉体位をとらせる。

解答3・5

解説

本症例のポイント

・Aさん(35歳、初産婦、妊娠41週0日)。
・身長158cm、体重80kg(非妊時体重75kg)。
・午後7時:陣痛発来、午後10時:入院。
・分娩第2期(2時間経過):微弱陣痛のためオキシトシン点滴静脈内注射が開始。
・その後:順調に分娩が進行。
・オキシトシン点滴静脈内注射の開始後30分に児頭まで娩出。
・その後:前在肩甲娩出術を試みたが娩出しない
→本症例は、肩甲難産が疑われる。肩甲難産の対応をおさえておこう。肩甲難産とは、「児頭娩出後に前在肩甲が恥骨結合につかえ、肩甲娩出が困難状況なために、児の娩出が不可能な状態」と定義されている。つまり、お産のときに赤ちゃんの頭だけ出てきたものの、肩がひっかかって出てこられない状態を指す。

(※引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P181」)

1.× 子宮底部を圧迫する(クリステレル胎児圧出法)必要はない。なぜなら、肩甲難産が疑われる場合、クリステレル胎児圧出法や児頭を下方に牽引すると、新生児外傷の頻度が高いため。子宮底圧迫法とは、クリステレル胎児圧出法ともいい、子宮口が全開大した分娩第2期に遷延分娩や胎児胎盤機能不全などにより児をできるだけ早く娩出するため、子宮の収縮力と子宮内圧を高めることを目的とした施術である。主に吸引分娩の補助として行われる。肩甲難産の危険因子として吸引・鉗子分娩があり、肩甲難産娩出の際に他の手技を行わずに子宮底圧迫のみを行った場合には新生児外傷の頻度が高いため、肩甲難産において子宮底圧迫法は禁忌とされている。

2.× 強く児頭を牽引する必要はない。。なぜなら、肩甲難産が疑われる場合、クリステレル胎児圧出法や児頭を下方に牽引すると、新生児外傷の頻度が高いため。無理な児頭牽引は禁忌である。

3.〇 正しい。恥骨上縁圧迫法を行う。なぜなら、「肩甲難産発生時には、人員の確保に努めるとともに、会陰切開、McRoberts体位、恥骨上縁圧迫法などのいずれかまたはすべてを試みる」と記載されている(※引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P181」)。ちなみに、恥骨上縁圧迫法とは、恥骨結合上縁部圧迫法ともいい、恥骨結合上縁部に触れる児の前在肩甲を斜め45度下方、かつ胎児胸部に向けて側方に押し下 げる処置を行いながら、 通常の力で児頭を下方に牽引する方法である。

4.× オキシトシンを増量する必要はない。なぜなら、オキシトシン(過剰な子宮収縮)が肩甲難産を悪化させる可能性があるため。本症例は、オキシトシン点滴静脈内注射開始30分で児頭まで娩出しており、肩甲難産であるが娩出力については問題がない。

5.〇 正しい。McRoberts〈マックロバーツ〉体位をとらせる。なぜなら、「肩甲難産発生時には、人員の確保に努めるとともに、会陰切開、McRoberts体位、恥骨上縁圧迫法などのいずれかまたはすべてを試みる」と記載されている(※引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P181」)。ちなみに、McRoberts〈マックロバーツ〉法とは、産道を広げる方法のひとつで、いわゆるうんこ座りにより、導尿、会陰切開を広げる方法である。産道が最も広がり分娩にもっとも適した姿勢であり、それに伴い、①しっかりと妊婦さんに産道を見てもらうこと、②痛くても仰け反らない、つまり背中を丸くしてもらうことを指導する。

肩甲難産とは?

肩甲難産とは、「児頭娩出後に前在肩甲が恥骨結合につかえ、肩甲娩出が困難状況なために、児の娩出が不可能な状態」と定義されている。つまり、お産のときに赤ちゃんの頭だけ出てきたものの、肩がひっかかって出てこられない状態を指す。肩甲難産の頻度は経膣分娩例のおよそ200~500人に一例程度であるが、生まれてくる赤ちゃんの体重が大きくなればなるほど頻度が高くなると考えられている。肩甲難産の危険因子としては胎児の大きさが最も重要であるが、他にも母体の糖尿病や、母体の妊娠中の過剰な体重増加、過期妊娠、母体の高年齢、骨盤の変形、過去に肩甲難産の分娩歴のある場合などがある。肩甲難産はひとたび発生すると母体にも赤ちゃんにも悪い影響を及ぼす。母体では、膣や頚管裂傷などの産道裂傷や、産後の弛緩出血(子宮の戻りが悪くて出血すること)、膀胱麻痺や尿道損傷などの危険性がある。また、赤ちゃんは肩がひっかかるためしんどくなったり、最悪の場合には命にかかわるようなケースもある。また、生まれてくる途中で首の周りの神経が傷ついて腕に麻痺が生じたり、骨折などの危険性もある。このような恐ろしい分娩合併症である肩甲難産であるが、発症を正確に予知するのは非常に難しいのが現状である。万一発生した場合にはさまざまな処置が必要であるため、産婦人科医は妊婦さんのハイリスク因子を十分考慮して分娩に対応し、異常の早期発見に努めていく必要がある。

 

 

 

 

 

次の文を読み51〜53の問いに答えよ。
 Aさん(35歳、初産婦)。妊娠41週0日。身長158cm、体重80kg(非妊時体重75kg)。午後7時に陣痛発来し、午後10時に入院した。現在は1時間前に比べて陣痛間欠が短縮したと自覚がある。胎児心拍数陣痛図はreassuring fetal statusであった。体温36.6℃、脈拍78/分、血圧134/80mmHg。尿蛋白(-)、尿糖(-)。Seitz〈ザイツ〉法(±)。妊娠40週3日の妊婦健康診査で胎児推定体重3800g、BPD9.7cm、AFI8.0であった。

53 4032gで出生した男児。Apgar〈アプガー〉スコアは1分後8点、5分後9点。出生時に羊水混濁はなかった。
 まず確認する児の異常はどれか。2つ選べ。

1.鎖骨骨折
2.腕神経叢麻痺
3.顔面神経麻痺
4.帽状腱膜下出血
5.胎便吸引症候群

解答1・2

解説

本症例のポイント

・Aさん(35歳、初産婦、妊娠41週0日、肩甲難産)。
・身長158cm、体重80kg(非妊時体重75kg)。
4032gで出生した男児。
・アプガースコア:1分後8点、5分後9点。
・出生時:羊水混濁はなかった
→巨大児(肩甲難産)の合併症やリスクをおさえておこう。巨大児とは、出生体重が4000g以上の正期産児をさす。娠中期に発症した妊娠糖尿病で母体の血糖値の管理が不十分である場合、妊娠後期に生じやすい。

1~2.〇 正しい。鎖骨骨折/腕神経叢麻痺は、まず確認する児の異常である。なぜなら、巨大児の肩分娩時に、、無理に児を娩出させようと引っ張り、頸部の過伸展により生じることが多いため。よく見られる合併症である。肩甲難産の児の合併症には、①腕神経叢麻痺(Erb麻痺)、②上腕・鎖骨骨折、③新生児仮死、④新生児死亡、⑤低酸素性虚血性脳症、⑥脳性麻痺などがある。母体合併症には、①弛緩出血、②腟・頸管裂傷、③子宮破裂、④大量出血、⑤膀胱弛緩、⑥外側大腿神経麻痺、⑦恥骨離解などがある。

3.× 顔面神経麻痺より優先されるものが他にある。なぜなら、顔面神経麻痺は、鉗子分娩(鉗子)による圧迫が一般的な原因であるため。鉗子分娩とは、児頭を鉗子で挟み児を娩出させる急速遂娩法である。先進児頭の下降度によって、①低在鉗子(出口鉗子)、②中在鉗子、③高在鉗子に分けられる。①低在鉗子(出口鉗子)の定義は諸説あるが、おおむねStation+2~+3以上である。術前に陰部神経麻酔、硬膜外麻酔を行うことが望ましい。

4.× 帽状腱膜下出血より優先されるものが他にある。なぜなら、帽状腱膜下出血は、吸引分娩による損傷が原因であるため。ほかにも、鉗子分娩や血液凝固障害で生じることがある。ちなみに、帽状腱膜下出血とは、帽状腱膜と骨膜との間に生じた血腫のことをいう。より大きい外傷(吸引分娩等)を原因とし、側頭部を含む頭皮全体に生じる波動性の腫瘤が特徴であり、出生後数時間で現れる。血腫が前額、眼瞼、耳介周囲に及ぶこともある。空隙となりうる頭皮下の領域は大きく、著しい失血および出血性ショックの可能性があり、輸血が必要となる場合がある。出血性ショックや播種性血管内凝固症候群(DIC)、 高ビリルビン血症に注意する必要がある。1~2か月で消失する。

5.× 胎便吸引症候群より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例の出生時において、羊水混濁はないため。ちなみに、胎便吸引症候群とは、出生前または周産期に肺に胎便(暗緑色の、無菌の便)を吸い込んだ新生児にチアノーゼや呼吸困難(呼吸窮迫)がみられることである。酸素不足などのストレスによって反射的にあえぎ、胎便を含む羊水を肺に吸い込んでしまうことなどで起こる。多呼吸羊水混濁が特徴である。胸部エックス線の所見の特徴では、①両肺野にびまん性の策状影、②縦郭気腫などのエアリーク所見、③両側肺の過膨張がみられる。

腕神経叢麻痺とは?

腕神経叢とは、頚髄から分枝した神経が鎖骨や肋骨の間を通り、腋窩付近を走行する際に形成する神経の束のことである。腕神経叢麻痺は、腕神経叢の過伸展によって引き起こされることが多い。
・上位型:C5~6神経根
・下位型:C8~T1神経根
・全型:C5~T1神経根

 

 

 

 

 

次の文を読み54、55の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、初産婦)。夫と2人暮らし。両親と姉とが近隣に住んでいる。夫は長距離トラックの運転手をしており、自宅に帰る時間は不規則である。妊娠24週2日、初めて妊婦健康診査を受診し、計画していない妊娠だと話した。その後、妊婦健康診査を3回受診し、妊娠38週0日に正常分娩した。入院中の母児の状態は良好であった。産後5日、産後の生活の手伝いが決まらないまま退院した。病院の助産師は、市町村保健センターに連絡し、依頼を受けた地域の助産師が産後8日に訪問した。

54 訪問すると「家事と育児は1人でしています。夜も授乳でゆっくり眠れていません」と言う。
 最初の対応で適切なのはどれか。

1.児童相談所に相談するよう説明する。
2.夫に育児を手伝ってもらうよう話す。
3.家事を手伝ってくれる者を確認する。
4.子育て中の親子が集うサークルを紹介する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(28歳、初産婦、2人暮らし:夫)
・両親と姉:近隣に住んでいる
・夫:長距離トラックの運転手(自宅に帰る時間は不規則)。
計画していない妊娠だと話した。
・妊娠38週0日(正常分娩)。
・入院中の母児の状態:良好。
・産後5日:産後の生活の手伝いが決まらないまま退院
市町村保健センターに連絡、依頼を受けた地域の助産師が産後8日に訪問。
・「家事と育児は1人でしています夜も授乳でゆっくり眠れていません」と。
→Aさんは初産婦で、産後5日目に退院した後、家事と育児を一人で担っており、夜も授乳で十分な睡眠が取れていない状況である。このような場合、産後うつのリスクが高まる可能性がある。したがって、最初の対応としては、Aさんのサポート体制を確認し、適切な支援を提供することである。

1.× 児童相談所に相談するよう説明する優先度は低い。なぜなら、児童相談所は、子供の虐待や育児放棄などの場合に強く関与する施設であるため(下に詳しく記載)。

2.× 夫に育児を手伝ってもらうよう話す優先度は低い。なぜなら、夫の職業は長距離トラックの運転手で、自宅に帰る時間は不規則であるため。仕事上、育児の手伝いを期待することが現実的でない。

3.〇 正しい。家事を手伝ってくれる者を確認する。なぜなら、夫の職業は長距離トラックの運転手であるが、両親と姉は近隣に住んでいるため。Aさんの負担を軽減するため、家族に家事や育児のサポートを依頼できるかどうかを確認する優先される。

4.× 子育て中の親子が集うサークルを紹介する優先度は低い。なぜなら、本症例は、産後8日で「夜も授乳でゆっくり眠れていません」と社会的交流や外出は困難と考えられるため。退院後の家事・育児のサポート体制を整えることが優先される。ちなみに、子育てサークルとは、親同士が子育てに関する情報交換や相互協力を、また子どもにとっては友達作りなどを行うサークルのことである。

児童相談所とは?

児童相談所は、「児童福祉法」に基づいて設置される行政機関であり、都道府県、指定都市で必置となっている。原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けている。児童相談所は、すべての子供が心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、ともに考え、問題を解決していく専門の相談機関である。

職員:児童福祉司、児童心理司、医師または保健師、弁護士 等。所長は、医師で一定の者、大学等で心理学を専修する学科を卒業した者、社会福祉士、児童福祉司で一定の者 等。

【業務内容】
①助言指導 
②児童の一時保護
③児童福祉施設等への入所措置
④児童の安全確保
⑤里親に関する業務
⑥養子縁組に関する相談・支援

(参考:「児童相談所とは」東京都児童相談センター・児童相談所様HPより)

 

 

 

 

 

次の文を読み54、55の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、初産婦)。夫と2人暮らし。両親と姉とが近隣に住んでいる。夫は長距離トラックの運転手をしており、自宅に帰る時間は不規則である。妊娠24週2日、初めて妊婦健康診査を受診し、計画していない妊娠だと話した。その後、妊婦健康診査を3回受診し、妊娠38週0日に正常分娩した。入院中の母児の状態は良好であった。産後5日、産後の生活の手伝いが決まらないまま退院した。病院の助産師は、市町村保健センターに連絡し、依頼を受けた地域の助産師が産後8日に訪問した。

55 地域の助産師は、初回訪問で授乳方法を指導し、産後11日にAさんを再訪問した。児の体重は1日30g増加している。児の栄養は母乳栄養のみであった。児の抱き方はぎこちなく、オムツ交換に時間がかかっている。オムツ交換の回数を確認すると1日6回程度という。
 このときの対応で最も適切なのはどれか。

1.「育児を頑張っていますね」
2.「人工乳を足した方がいいですね」
3.「オムツ交換は手早く行いましょう」
4.「その抱き方では腱鞘炎になりますよ」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(28歳、初産婦、2人暮らし:夫)
・妊娠38週0日に正常分娩。
・「家事と育児は1人でしています。夜も授乳でゆっくり眠れていません」と。
・初回訪問:授乳方法を指導し、産後11日にAさんを再訪問。
・児の体重:1日30g増加している。
・児の栄養:母乳栄養のみであった。
・児の抱き方:ぎこちない
・オムツ交換:時間がかかっている
・オムツ交換の回数:1日6回程度。
→本症例は、初めての育児で不慣れである様子がみられる。育児に対する自信を持たせることが優先される。

1.〇 正しい。「育児を頑張っていますね」と伝える。本症例は、初めての育児で不慣れである様子がみられる。育児に対する自信を持たせることが優先される。

2.× 「人工乳を足した方がいいですね」と伝える必要はない。なぜなら、本児の体重は適切に増加(0~3か月:25~30g)しているため(※下参照)。ちなみに、人工乳とは、何らかの理由(アトピー性皮膚炎や乳頭裂傷など)で母乳が与えられない場合、調製粉乳による人工乳が使用されることが多い。現在では母乳の代用品としての調製粉乳の品質も向上し、母乳の場合と比べても大差なく育児ができるようになっている。

3.× 「オムツ交換は手早く行いましょう」と伝える必要はない。なぜなら、必ずしも指摘が、技術の向上には寄与しないため。指摘以外にも、模倣や誘導などの技術のアドバイスの方法がある。指摘のみではなく、まず彼女の努力を認め、ゆっくり慣れていくことを促す方がよい。

4.× 「その抱き方では腱鞘炎になりますよ」と伝える必要はない。なぜなら、本症例に対し、不安を煽るような発言ととられかねないため。腱鞘炎になることも、育児の努力頑張りととらえられるよう言葉を用い、さらに具体的に改善点を伝えるようにしよう。ちなみに、腱鞘炎とは、骨と筋肉をつないでいる腱と、腱を包む腱鞘が擦れ合うことで炎症が起こる病気のことである。原因として、主に手指を使いすぎることによって発症する。特に、動きが多い手首や指などの場所に発症することが多い。代表的なものでは、ドケルバン病やばね指などが挙げられる。

体重の変化

【新生児の生理的体重の変化】
正期産により出生した正常な新生児の生理的体重減少率は、出生体重の3~10%の範囲であり、生後3~5日がそのピークである。減少率とは、出生時体重からの減少の割合で、「(出生時の体重-現在の体重)÷ 出生時の体重 × 100」で算出される。

【正常乳児の一日体重増加量の目安】
・0~3か月:25~30g
・3~6か月:20~25g
・6~9か月:15~20g
・9~12か月:7~10g

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