第98回(H27) 助産師国家試験 解説【午後36~40】

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次の文を読み36〜38の問いに答えよ。
 Aさん(40歳、女性)。39歳のときに43歳の男性と結婚し、1年間基礎体温を記録して妊娠のタイミングをはかっていた。妊娠に至らなかったため、不妊症の検査を希望して来院した。

36 不妊症の検査を始めるときの指導で最も適切なのはどれか。

1.「あなたの検査に夫の同意が必要です」
2.「42歳を超えたら治療をやめたほうがよいです」
3.「一度治療を始めたら途中で休んではいけません」
4.「高齢の妊娠では母体と胎児に異常が生じるリスクが高くなります」
5.「不妊期間が2年になるまで排卵日に合わせて性交渉を行いましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(40歳、女性)。
・39歳のときに43歳の男性と結婚。
1年間基礎体温を記録:妊娠に至らなかった。
・希望:不妊症の検査

1.× Aさんの検査に当たっては、夫の同意は不要である。したがって、未婚、もしくは当面結婚の予定はないものでも検査できる。女性側が行える不妊スクリーニング検査は、超音波検査、血液検査、卵管通水検査がある。

2.× 「42歳を超えたら治療をやめたほうがよいです」と伝える必要はない。なぜなら、不妊治療の判断は、医学的な所見をもとに患者の自己決定が優先されるため。

3.× 一度治療を始めても、途中で休むことができる。なぜなら、治療者のライフイベントや事故などによっても、心理的な変化が起こる可能性があるため。また、精神的に追い込まれている様子があったら、不妊治療をいったん休むことも選択肢の一つである。

4.〇 正しい。「高齢の妊娠では母体と胎児に異常が生じるリスクが高くなります」と説明する。なぜなら、加齢に伴い、卵子の老化が起こるため。したがって、高齢出産は、早産やダウン症の発症リスクを高めるとされている。高齢妊娠については、日本では「35歳以上の初産婦を高年初産婦とする」 と定義している。

5.× 「不妊期間が2年になるまで排卵日に合わせて性交渉を行いましょう」と伝える必要はない。なぜなら、本症例は、1年間基礎体温を記録し妊娠に至らなかった経緯であるため。また、Aさんは、40歳であるため、年齢・不妊期間の長さにかかわらず、不妊症の検査を実施すべきである。

不妊症とは?

不妊症とは、避妊せず性行為を続けているのにもかかわらず、約1年妊娠しないことである。原因はさまざまである。病気によって排卵のはたらきや、卵管・子宮・精巣など妊娠に関わる臓器が病気によって悪くなっていることなどが関係しているといわれている。時に原因が分からないこともある。

 

 

 

 

 

次の文を読み36〜38の問いに答えよ。
 Aさん(40歳、女性)。39歳のときに43歳の男性と結婚し、1年間基礎体温を記録して妊娠のタイミングをはかっていた。妊娠に至らなかったため、不妊症の検査を希望して来院した。

37 Aさんの既往歴に特記すべきことはなく、理学的所見も正常である。基礎体温は二相性であった。2回目の受診時にAさんは「結婚してしばらくは排卵日に性交渉をもつようにしていましたが、夫が3か月くらい前から疲れているという理由で性交渉をもつことを拒否するようになりました。夫は容器に精液を採ることはできると言っています」と打ち明けた。
 Aさんに勧める内容で最も適切なのはどれか。

1.「あなたへの検査は中止しましょう」
2.「夫婦でカウンセリングを受けましょう」
3.「夫にもっと協力するよう話しましょう」
4.「夫が採取した精液を腟内に自己注入しましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(40歳、女性)。
・39歳のときに43歳の男性と結婚。
1年間基礎体温を記録:妊娠に至らなかった。
・既往歴:なし、理学的所見:正常。
・基礎体温:二相性。
・Aさんは「結婚してしばらくは排卵日に性交渉をもつようにしていましたが、夫が3か月くらい前から疲れているという理由で性交渉をもつことを拒否するようになりました。夫は容器に精液を採ることはできると言っています」と打ち明けた。

1.× 「あなたへの検査は中止しましょう」と伝える必要はない。なぜなら、設問文からは、妊娠に至らない理由が「Aさんにまったくない」と判断できる根拠には至らないため。様々な可能性を考え、アプローチすべきである。

2.〇 正しい。「夫婦でカウンセリングを受けましょう」と伝える。なぜなら、性行為の拒否は繊細な問題であり、妊娠の妨げになっているだけでなく、夫婦仲の問題へと発展しかねる可能性が高いため。夫婦でカウンセリングを受けることで、コミュニケーションや心理的な問題を解決する手助けとなる。

3.× 「夫にもっと協力するよう話しましょう」と伝える必要はない。なぜなら、妊娠に至らない理由を「すべて夫の責任」にしているように感じ取られかねないため。本事例は、1年間基礎体温を記録して、妊娠に至らなかった経緯がある。したがって、夫の協力姿勢を認め、妊娠に至らない理由を探っていく必要がある。

4.× 「夫が採取した精液を腟内に自己注入しましょう」と伝えるより優先されるものがほかにある。なぜなら、本事例は、1年間基礎体温を記録し、妊娠に至らなかった経緯があるため。精液を腟内に自己注入(セルフシリンジ法)の実施の判断は、時期尚早と考えられる。セルフシリンジ法とは、ご自宅であらかじめ採取した精液を専用の滅菌器具を使い、ご自分で膣内に注入する方法で、海外では非常にポピュラーな妊活方法である。

 

 

 

 

 

次の文を読み36〜38の問いに答えよ。
 Aさん(40歳、女性)。39歳のときに43歳の男性と結婚し、1年間基礎体温を記録して妊娠のタイミングをはかっていた。妊娠に至らなかったため、不妊症の検査を希望して来院した。

38 夫の精液検査を行ったところ、容器内に4.0mLの精液が採取されていたが、精液中に精子を全く認めなかった。射精感はあったという。1週後に再検査したが同様の結果であった。
 Aさん夫婦に勧める内容で適切なのはどれか。

1.養子縁組をする。
2.精巣生検を受ける。
3.精子の提供者を探す。
4.受精卵の提供者を探す。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(40歳、女性)。
・39歳のときに43歳の男性と結婚。
・夫の精液検査:精液中に精子を全く認めない
・射精感:あり。
・1週後の再検査:同様の結果。
→夫は無精子症が疑われる。今後は、①非閉塞性か②閉塞性かの無精子症の鑑別診断を行う必要がある。①非閉塞性無精子症とは、精巣がなんらかの原因で精子を産生できなくなった状態である。②閉塞性無精子症とは、精子が精巣内で作られているが、何らかの理由により輸精管が閉塞しているために外に出てこない状態を指す。

1.× 養子縁組をするのは時期尚早である。なぜなら、現時点では、夫は無精子症の鑑別がまだであるため。例えば、閉塞性無精子症の場合は、治療次第では妊娠が可能である。ちなみに、特別養子縁組とは、子どもの福祉の増進を図るために、養子となるお子さんの実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、実の子と同じ親子関係を結ぶ制度である。特別養子縁組は、養親になることを望むご夫婦の請求に対し、要件を満たす場合に、家庭裁判所の決定を受けることで成立する。(※参考:「特別養子縁組制度について」厚生労働省HPより)

2.〇 正しい。精巣生検を受ける。なぜなら、精巣生検により、無精子症の原因が特定され、治療方針を決定するための情報が得られるため。精巣生検とは、精巣組織の一部を採取して精子の存在や成熟度などを調べる検査である。精巣での造精機能障害が疑われる無精子症などの場合に行われる。

3~4.× 精子/受精卵の提供者を探すのは時期尚早である。なぜなら、現時点では、夫は無精子症の鑑別がまだであるため。例えば、閉塞性無精子症の場合は、治療次第では妊娠が可能である。

造精機能障害とは?

不妊症の男性因子は、①造精機能障害、②精路通過障害、③射精障害に分類される。①造精機能障害とは、精子を作る機能に障害があり、精子濃度や運動率といった精子の機能が弱まってしまう状態のことを指す。造精機能障害には、①先天性(Klinefelter<クラインフェルター>症候群など)、②医原性のもの(化学療法・放射線療法など)、③精索静脈瘤によるもの、④突発性がある。このなかでは④突発性機能障害が最も多い。精子の機能が弱まる(=精液所見が悪くなる)ことで、自然妊娠が難しくなり、人工授精や体外受精、顕微授精をすることになる。①造精機能障害の原因として、約半分は原因不明なのに対し、精索静脈瘤が36.6%で、ホルモン低下によるものは1.2%である。いずれも治療可能な疾患である。

【精液検査の基準値】
①精液量:1.4ml以上
②精液濃度:1600万/ml以上
③運動率:42%以上
④総運動精子数(精液量×精子濃度×運動率):1638万以上
⑤正常形態率:4%以上(奇形率96%未満)

 

 

 

 

 

次の文を読み39〜41の問いに答えよ。
 28歳の初産婦。妊娠39週5日。妊娠経過は順調であった。午後5時に陣痛発来し、午後8時に夫に付き添われて入院した。入院時、内診所見は子宮口3cm開大、展退度60%、Station-3、子宮頸管の硬度は中、子宮口の位置は中央、矢状縫合は横径に一致し、小泉門は9時の方向に触れ、未破水である。陣痛間欠5分、陣痛発作20〜30秒。胎児心拍数基線は145bpmであった。夫は産婦の様子をみて心配している。

39 入院時の助産診断で正しいのはどれか。

1.第1頭位である。
2.児頭最大径は骨盤濶部である。
3.Bishop〈ビショップ〉スコアは9点である。
4.Friedman〈フリードマン〉曲線の潜伏期である。

解答

解説

本症例のポイント

・28歳の初産婦(妊娠39週5日、妊娠経過は順調)。
午後5時:陣痛発来、午後8時:入院。
・入院時:子宮口3cm開大、展退度60%、Station-3、子宮頸管の硬度は中、子宮口の位置は中央、矢状縫合は横径に一致し、小泉門は9時の方向に触れ、未破水。
・陣痛間欠5分、陣痛発作20〜30秒。胎児心拍数基線は145bpm。
・夫:産婦の様子をみて心配している。
→上記の評価結果を正確に読み取れるようにしよう。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)

ビショップスコアとは?

ビショップスコアとは、最も広く使用されている子宮頚管の熟化評価法である。以下の表を参考に、5項目のスコアを合計し、13点満点で評価する。通常、9点以上を「良好」、6点以下を「不良」、3点以下を「特に不良」と評価することが多い。

1.× 「第1頭位」ではなく第2頭位である。なぜなら、小泉門は9時の方向に触れているため。第1頭位とは、胎児の背中が母体の左手側にあることをいう。つまり第1頭位の場合、入口部における小泉門は母体の左方にある。一方、第2頭位とは、胎児の背中が母体の右手側にあることをいう。

2.× 児頭最大径は、「骨盤濶部」ではなく骨盤入口部(の上)である。なぜなら、Station-3であるため(※下表参照)。

3.× Bishop〈ビショップ〉スコアは、「9点」ではなく6点である。本児の場合、子宮口3cm開大:2点、展退度60%:2点、Station-3:0点、子宮頸管の硬度は中:1点、子宮口の位置は中央:1点で、合計6点である。

4.〇 正しい。Friedman〈フリードマン〉曲線の潜伏期である。なぜなら、①陣痛初来:2時間経過、②入院時の内診所見:子宮口3cm開大であるため。陣痛曲線(Friedman曲線)とは、分娩第1期(分娩開始から子宮口全開大までの期間)として、分娩開始からの時間を横軸に、子宮口開大度と胎児の下降度を縦軸としてグラフ化したものである。大量の正常分娩のデータから作成されており、これに照らしあわせることによって、個々の症例の分娩経過が問題ないかを判断することに役立つ。

(※図引用:「Friedman曲線」20.正常経腟分娩の管理より)

(※図引用:「助産師基礎教育テキスト:第 5 巻:2020 年版訂正ご案内」株式会社日本看護協会出版会様HPより)

 

 

 

 

 

次の文を読み39〜41の問いに答えよ。
 28歳の初産婦。妊娠39週5日。妊娠経過は順調であった。午後5時に陣痛発来し、午後8時に夫に付き添われて入院した。入院時、内診所見は子宮口3cm開大、展退度60%、Station-3、子宮頸管の硬度は中、子宮口の位置は中央、矢状縫合は横径に一致し、小泉門は9時の方向に触れ、未破水である。陣痛間欠5分、陣痛発作20〜30秒。胎児心拍数基線は145bpmであった。夫は産婦の様子をみて心配している。

40 翌日午前8時40分の内診所見は、子宮口8cm開大、展退度90%、Station+1、子宮頸管の硬度は軟、子宮口の位置は前方、大泉門を1時方向に触れ、未破水である。陣痛間欠2分、陣痛発作60秒。体温37.2℃、呼吸数20/分、脈拍95/分、血圧160/100mmHg。上腹部痛を訴えている。頭痛や気分不快、手指の震えはない。濃縮尿がみられる。
 このときの所見で直ちに対応が必要なのはどれか。2つ選べ。

1.血圧
2.脈拍数
3.呼吸数
4.濃縮尿
5.上腹部痛

解答1・5

解説

本症例のポイント

・28歳の初産婦(妊娠39週5日、妊娠経過は順調)。
・午後5時:陣痛発来、午後8時:入院。
・翌日(午前8時40分)子宮口8cm開大、展退度90%、Station+1、子宮頸管の硬度は軟、子宮口の位置は前方、大泉門を1時方向に触れ、未破水。
・陣痛間欠2分、陣痛発作60秒。
・体温37.2℃、呼吸数20/分、脈拍95/分、血圧160/100mmHg
上腹部痛あり、頭痛や気分不快、手指の震えはない。
・濃縮尿がみられる。
→上記の評価から、異常所見を見出せるようにしよう。妊娠高血圧症候群が疑われ、合併症や前駆症状をおさえておこう。HELLP症候群とは、妊娠中あるいは産褥期に溶血(hemolysis)、肝酵素上昇(elevated liver enzymes)、血小板減少(low platelet)を呈し、多臓器障害をきたして母体生命を脅かす重篤な妊産婦救急疾患である。主な症状は上腹部(心窩部あるいは右季肋部)痛であり、嘔気や嘔吐、強い倦怠感を伴うこともある。今回妊娠時に高血圧を発症した妊娠高血圧症候群であり、妊娠高血圧症候群は重症になると血圧上昇、蛋白尿に加えてけいれん発作(子癇)、脳出血、肝臓や腎臓の機能障害、HELLP症候群などを引き起こすことがある。直ちに行う検査としては、HELLP症候群の3徴候である①溶血、②肝酵素上昇、③血小板減少を血液検査所見で確認する。

1.〇 正しい。血圧(160/100mmHg)は、直ちに対応が必要である。なぜなら、妊娠高血圧症候群は重症になると血圧上昇、蛋白尿に加えてけいれん発作(子癇)、脳出血、肝臓や腎臓の機能障害、HELLP症候群などを引き起こすことがあるため。

2.× 脈拍数(95/分)は、直ちに対応が必要とはいえない。成人の安静時の脈拍数は50~100回/分である。脈拍が50回/分未満を徐脈、101回/分以上を頻脈である。

3.× 呼吸数(20/分)は、直ちに対応が必要とはいえない。成人の呼吸数は12~20回/分である。新生児は35~50回、乳幼児は30~40回である。

4.× 濃縮尿は、直ちに対応が必要とはいえない。なぜなら、濃縮尿が直ちに生命に影響を及ぼすとはいえないため。ちなみに、濃縮尿は、脱水を示唆する濃縮された茶~黄褐色の尿のことである。

5.〇 正しい。上腹部痛は、直ちに対応が必要である。なぜなら、HELLP症候群の症状の一つであるため。主な症状は上腹部(心窩部あるいは右季肋部)痛であり、嘔気や嘔吐、強い倦怠感を伴うこともある。

 

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