第98回(H27) 助産師国家試験 解説【午前36~40】

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36 臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準に当てはまるのはどれか。2つ選べ。

1.羊水の混濁
2.子宮の圧痛
3.母体脈拍80/分
4.腟分泌物の増加
5.母体体温38.3℃

解答2・5

解説

Lenckiらによる臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準

絨毛膜羊膜炎とは、腟からの上行性感染により細菌が絨毛膜羊膜に至り、そこに止まっている状態を指す。この細菌が、破水などにより子宮腔内へ波及した状態が子宮内感染症である。したがって、子宮内感染症では、胎児感染も引き起こされている可能性がある。症状としては、発熱、子宮圧痛、悪臭のある羊水、膿性の頸管分泌物、母体または胎児の頻脈などがある。診断には母体の発熱、頻脈や白血球 15000/μL以上などがあげられる。

【Lenckiらによる臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準】
母体に38.0℃以上の発熱が認められ、 かつ ①母体頻脈≧100回/分、②子宮の圧痛、③腟分泌物・羊水の悪臭、④母体白血球数≧15,000/μLのうち、1項目以上を認めるか、母体体温が38.0℃未満あっても①から④すべてを認める場合、臨床的絨毛膜羊膜炎と診断するものである。

(※参考:「子宮内感染について」より)

1.× 羊水の「混濁」ではなく悪臭が診断基準に当てはまる。

2.5.〇 正しい。子宮の圧痛/母体体温38.3℃は、臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準に当てはまる。
【Lenckiらによる臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準】
母体に38.0℃以上の発熱が認められ、 かつ ①母体頻脈≧100回/分、②子宮の圧痛、③腟分泌物・羊水の悪臭、④母体白血球数≧15,000/μLのうち、1項目以上を認めるか、母体体温が38.0℃未満あっても①から④すべてを認める場合、臨床的絨毛膜羊膜炎と診断するものである。

3.× 母体脈拍は、「80/分」ではなくが100/分以上が診断基準に当てはまる。

4.× 腟分泌物の「増加」ではなく悪臭が診断基準に当てはまる。

 

 

 

 

 

37 切迫子宮破裂で特徴的にみられるのはどれか。2つ選べ。

1.嘔吐
2.浮腫
3.過強陣痛
4.不穏状態
5.母体の徐脈

解答3・4

解説

MEMO

子宮破裂とは、子宮が自然に裂けて開くことであり、強い腹痛が続き、胎児の心拍数が異常に下がる。帝王切開の既往がある女性で治癒した瘢痕線に沿って起こることが多い。他に多胎妊娠や羊水過多なども原因となることがある。

1.× 嘔吐は切迫子宮破裂の特徴とはいえない。妊娠後期の吐き気や嘔吐、胃痛、げっぷや胸やけなどの症状は、子宮が胃腸を圧迫することや、ホルモンの影響で消化管の働きが弱まっていることなどが原因である。

2.× 浮腫は切迫子宮破裂の特徴とはいえない。妊娠後期の浮腫は、血液の量が増加するため起こる。 これは、胎児に栄養や酸素を届け、出産時の出血に備えるために水分量が増えるためである。

3.〇 正しい。過強陣痛は、切迫子宮破裂で特徴的にみられる。なぜなら、過度の陣痛が子宮壁に過大な負荷をかけ、破裂のリスクを高めるため。ちなみに、過強陣痛とは、子宮口が十分に開いていないのに分娩直前の陣痛が過剰に強く起きる事をさす。子宮の収縮が非常に強く長く続くのが特徴で、定義として、子宮口7cmの過強陣痛(外側法)は、2分以上の陣痛持続時間の場合をいう。

4.〇 正しい。不穏状態は、切迫子宮破裂で特徴的にみられる。過強陣痛になると、妊婦は不安や不穏状態になり、破裂部に激痛を訴え、時に破裂感を自覚する。

5.× 「母体」ではなく胎児の徐脈は、切迫子宮破裂で特徴的にみられる。母体は、不安や不穏状態となりやすいため、頻脈がみられる。

浮腫とは?

浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起きることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。
【低アルブミン血症の原因】①栄養摂取の不足(低栄養状態)、②肝臓における蛋白質合成能の低下、③腎臓から尿への蛋白質の大量喪失(ネフローゼ症候群)など。

 

 

 

 

 

38 産褥期の肺塞栓症のリスク因子となるのはどれか。2つ選べ。

1.分娩誘発
2.前期破水
3.精神的な興奮
4.飲水量の制限
5.妊娠高血圧症候群

解答4・5

解説

肺塞栓症とは?

肺塞栓症とは、肺動脈に血栓が詰まる病気のこと。この血栓が9割以上は脚の静脈内にできる。この血栓を「深部静脈血栓症」といい、それが血液の流れに乗って右心房、右心室を経由して肺動脈まで運ばれてきて、肺塞栓症の原因となる。肺塞栓症と深部静脈血栓症は、極めて関係が深い病気で、二つを合わせて「静脈血栓塞栓症」と呼ばれる。深部静脈血栓症患者の約50%は潜在性の肺塞栓症を有し、肺塞栓症患者の30%以上は証明可能な深部静脈血栓症患者を有すると報告されている。

1.× 分娩誘発は、産褥期の肺塞栓症のリスク要因ではない。分娩誘発剤には、オキシトシンやプロスタルモンなどの薬剤があり、副作用として、過強陣痛、胎児仮死、子宮破裂、分娩後出血などがある。

2.× 前期破水は、産褥期の肺塞栓症のリスク要因ではない。妊娠37週以降の前期破水であっても、その合併症として、母体側では、子宮内感染、常位胎盤早期剝離離、臍帯脱出等があり胎児側でも、胎児感染、胎便吸引症候群等の危険が伴う。ちなみに、破水とは、卵膜が破れて羊水が子宮外に流出することである。破水は、臍帯脱出や上行感染、胎児機能不全などの原因となり得る。【破水の種類】①前期破水とは、分娩が始まる前の破水のこと、②早期破水とは、分娩開始以降で子宮口全開大前の破水のこと、③適時破水:子宮口全開大に達する頃の破水のことをいう。

3.× 精神的な興奮は、産褥期の肺塞栓症のリスク要因ではない。肺塞栓症のリスク因子としては、血液の凝固能の亢進が基本にある。

4.〇 正しい。飲水量の制限は、産褥期の肺塞栓症のリスク要因である。なぜなら、脱水状態は血液の粘稠度を高め、血栓形成のリスクを増加させるため。

5.〇 正しい。妊娠高血圧症候群は、産褥期の肺塞栓症のリスク要因である。なぜなら、妊娠高血圧症候群により血管内皮細胞の障害が助長されるため。妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上)を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。

深部静脈血栓症の予防方法

 手術を行った後や脊髄損傷の急性期、長期臥床などにより、静脈血がうっ滞することによって深部静脈血栓症が起こりやすい。未治療の運動療法は肺塞栓症を生じる可能性もある。その予防法についは以下のものがあげられる。
①下肢挙上し、重力による静脈還流を促す。
②弾性ストッキングや弾性包帯の利用
③下肢の運動(足部の運動、膝の等尺性運動)

 

 

 

 

 

39 新生児の呼吸窮迫症候群〈RDS〉について正しいのはどれか。2つ選べ。

1.肺胞の表面張力は低下している。
2.糖尿病合併妊娠では発症頻度が上昇する。
3.破水後時間が経つと発症頻度は上昇する。
4.マイクロバブルテストは診断に有用である。
5.酸素管理は動脈血酸素分圧〈PaO2〉を100Torr以上に保つ。

解答2・4

解説

呼吸窮迫症候群とは?

呼吸窮迫症候群とは、早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が産生されないか不足しているために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こる。早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、呼吸窮迫症候群を発症するリスクが高くなる。症状として、肺胞がしぼみ、呼吸がうまく出来ず、多呼吸の症状が現れる。息を吸うときに肋骨や胸骨の下が陥没するのが特徴(陥没呼吸)。 症状が悪化すると、呻吟、チアノーゼ、嗜眠、不規則呼吸および無呼吸となる。

1.× 肺胞の表面張力は、「低下」ではなく増加している。なぜなら、肺サーファクタントが欠乏しているため。肺サーファクタントとは、肺胞の空気が入る側へと分泌されている界面活性剤である。なお、肺サーファクタントは単一の成分ではなく、リン脂質を主成分とした混合物である。出生して肺呼吸が始まったときに肺サーファクタントが欠乏していると、肺胞内壁の水分が作り出す表面張力による肺を押しつぶすような力に対抗できない。肺がつぶれて伸展できず呼吸が障害される(新生児呼吸窮迫症候群の原因)。医薬品としての肺サーファクタントを治療に使う。

2.〇 正しい。糖尿病合併妊娠では発症頻度が上昇する。なぜなら、早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、胎児のサーファクタント産生が遅れやすくなる報告があるため。

3.× 破水後時間が経つと発症頻度は、「上昇」ではなく低下する。なぜなら、破水後時間が経つことによって、胎児の肺成熟が進むため。

4.〇 正しい。マイクロバブルテストは診断に有用である。マイクロバブルテストにより、肺胞表面の肺サーファクタントが少ない場合は新生児特発性呼吸切迫症候群(IRDS)のリスクが高いと判断される。マイクロバブルテストは、肺サーファクタントが直径15μm以下のマイクロバブルを安定させることを利用した検査である。母体羊水、新生児胃液などをピペットで吸排して泡立て、4分間静置後のバブルを観察する。肺サーファクタントとは、肺胞の空気が入る側へと分泌されている界面活性剤である。なお、肺サーファクタントは単一の成分ではなく、リン脂質を主成分とした混合物である。出生して肺呼吸が始まったときに肺サーファクタントが欠乏していると、肺胞内壁の水分が作り出す表面張力による肺を押しつぶすような力に対抗できない。肺がつぶれて伸展できず呼吸が障害される(新生児呼吸窮迫症候群の原因)。

5.× 酸素管理は動脈血酸素分圧〈PaO2〉を「100Torr」ではなく50〜80Torrに保つ。なぜなら、動脈血酸素分圧〈PaO2〉を100Torr以上に保つことは、酸素過剰な状態や過換気が考えられるため。

糖尿病合併妊娠とは?

今まで糖尿病と言われた事がないにもかかわらず、妊娠中に始めて指摘された糖代謝異常で、糖尿病の診断基準をみたさない人を妊娠糖尿病といいます。具体的には糖負荷試験をした際に、空腹時血糖92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値153mg/dL以上のいずれか1点以上を満たした場合に診断されます。妊娠時に診断された糖代謝異常でも、空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c6.5%以上、随時もしくは糖負荷試験2時間値が200mg/dL以上、糖尿病網膜症の存在が認められるものは、糖尿病合併妊娠とされます。(※引用:「糖尿病妊娠」日本内分泌学会様HPより)

 

 

 

 

 

40 保健師助産師看護師法施行規則に規定されている助産録の記載事項はどれか。2つ選べ。

1.妊娠高血圧症候群の妊婦の治療方針
2.産婦の配偶者の職業
3.保健指導の要領
4.産婦の性格
5.分娩経過

解答3・5

解説

診療記録とは?

診療録、カルテとは、医療に関してその診療経過等を記録したものである。 診療録には手術記録・検査記録・看護記録等を含め診療に関する記録の総称をいう。

医療機関の記録には、看護記録の他に①診療録(カルテ)と②助産録がある。①診療録は、医師法第24条に、②助産録は保健師助産師看護師法(施行規則第34条)に、その記録が法的に規定されている。しかし、看護記録は保健師助産師看護師法に記録の規定はない。診療記録には、主に、①診療録(カルテ)、②処方箋、③手術記録、④看護記録、⑤検査所見、⑥エックス線写真、⑦紹介状など保管する。(※一部引用:「保健師助産師看護師法」厚生労働省HPより)

1.× 妊娠高血圧症候群の妊婦の治療方針/産婦の配偶者の職業/産婦の性格は、助産録の記載事項とはいえない。

3.〇 正しい。保健指導の要領は、保健師助産師看護師法施行規則に規定されている助産録の記載事項である。⑪産褥経過、褥婦および新生児の保健指導の要項に該当する。

5.〇 正しい。分娩経過は、保健師助産師看護師法施行規則に規定されている助産録の記載事項である。⑦分娩経過・処置に該当する。

助産録の記載内容の12項目

①妊産婦の住所、氏名、年齢、職業
②分娩・死産回数、生死産の別
③妊産婦の既往疾患の有無およびその経過
④今回の妊娠経過、所見、保健指導の要項
⑤医師による妊娠中の健康診断受診の有無
⑥分娩場所、年月日時分
⑦分娩経過・処置
⑧分娩異常の有無、経過および処置
⑨児の数、性別、生死別
⑩児および胎児付属物の所見
⑪産褥経過、褥婦および新生児の保健指導の要項
⑫産後の医師による健康診断の有無

 

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