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31 18歳の初産婦。妊娠40週0日で正常分娩した。産褥3日、訪室すると啼泣している児のそばでテレビを観ている。児の寝衣は汚れている。母乳分泌は良好で3時間ごとに授乳を行っているが「眠たいので子どもの世話は面倒だ」と言う。
適切な声かけはどれか。
1.「人工乳を足しましょう」
2.「母親の自覚を持ちなさい」
3.「赤ちゃんがかわいそうですよ」
4.「授乳間隔を延ばして休みましょう」
5.「一緒に赤ちゃんの着替えをしましょう」
解答5
解説
・18歳の初産婦(妊娠40週0日で正常分娩)。
・産褥3日:啼泣している児のそばでテレビを観ている。
・児の寝衣:汚れている。
・母乳分泌:良好で3時間ごとに授乳を行っている。
・「眠たいので子どもの世話は面倒だ」と言う。
→若年妊産婦の特徴をおさえておこう。若年妊産婦の特徴は、①周囲に同世代の妊産婦がいないため、一人で不安や悩みを抱えこみ孤立しやすい、②人生経験の少なさから、困難への対応力が十分でなく、ストレスが虐待などにつながりやすいことなどがあげられる。
1.× 「人工乳を足しましょう」と説明する必要はない。なぜなら、本症例の母乳分泌は、良好で3時間ごとに授乳を行っているため。ちなみに、人工乳とは、何らかの理由(アトピー性皮膚炎や乳頭裂傷など)で母乳が与えられない場合、調製粉乳による人工乳が使用されることが多い。現在では母乳の代用品としての調製粉乳の品質も向上し、母乳の場合と比べても大差なく育児ができるようになっている。
2.× 「母親の自覚を持ちなさい」と説明する必要はない。なぜなら、母親の自覚を促す言葉は、母親の負担感やストレスを強めるため。また、「母親の自覚」という曖昧で抽象的な言葉は、若年妊産婦に対し、理解しにくくより混乱させる要因となりかねない。
3.× 「赤ちゃんがかわいそうですよ」と説明する必要はない。なぜなら、若年妊産婦を責め、孤立を促すような言葉であるため。若年妊産婦が「ねむたい」、「世話が面倒」と言っているが、実際は「やり方がわからない(慣れていない)」、「テレビを見たらやろうと思ってた」ということもある。一緒に寄り添い、正確に合った対応が必要である。
4.× 「授乳間隔を延ばして休みましょう」と説明する必要はない。なぜなら、本症例の授乳状態も良く、自律授乳が基本となるため。自律授乳とは、児が欲しがるときに欲しがるだけ飲ませる授乳方法のことである。
5.〇 正しい。「一緒に赤ちゃんの着替えをしましょう」と伝える。まずは、母親に寄り添い、具体的なサポートを提供する提案である。母親が一人で育児に取り組むのではなく、サポートを得ながら進められることを示すことで、精神的な負担を軽減することができる。
32 糖尿病合併妊娠について正しいのはどれか。
1.経口血糖降下薬が治療の第一選択である。
2.妊娠中は糖尿病網膜症が悪化する危険性は低い。
3.胎児の先天奇形の発生率は妊娠初期の血糖値と関係しない。
4.妊娠中は食後2時間の血糖値120mg/dL以下を目標とする。
5.産褥期にはインスリンの必要量は増加する。
解答4
解説
今まで糖尿病と言われた事がないにもかかわらず、妊娠中に始めて指摘された糖代謝異常で、糖尿病の診断基準をみたさない人を妊娠糖尿病といいます。具体的には糖負荷試験をした際に、空腹時血糖92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値153mg/dL以上のいずれか1点以上を満たした場合に診断されます。妊娠時に診断された糖代謝異常でも、空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c6.5%以上、随時もしくは糖負荷試験2時間値が200mg/dL以上、糖尿病網膜症の存在が認められるものは、糖尿病合併妊娠とされます。(※引用:「糖尿病妊娠」日本内分泌学会様HPより)
1.× 「経口血糖降下薬」ではなくインスリンが治療の第一選択である。なぜなら、インスリンは胎盤を通過しないが、経口糖尿病薬は胎盤を通過して胎児に移行する可能性があり、赤ちゃんへの安全性が確認されていないものが多いため。
2.× 妊娠中は糖尿病網膜症が悪化する危険性は低い「と断言できない」。むしろ、妊娠中は血糖コントロールの変動や血圧の変動により、糖尿病網膜症が悪化するリスクが高まる。ちなみに、糖尿病網膜症とは、網膜の血管障害により生じ、進行すると視力低下をきたす。また、症状は不可逆性であり、進行した糖尿病網膜症は改善されない。わが国における失明原因の上位を占めている。
3.× 胎児の先天奇形の発生率は、妊娠初期の血糖値と関係「する」。HbA1Cが8%以上で児の先天奇形が20~30%と高率になることが明らかになっている。妊娠後期に血糖値が高い場合は、巨大児(4,000g以上の大きな赤ちゃん)となり、経膣分娩の際に難産となり、頭血腫、鎖骨骨折などの損傷が起こることがある。
4.〇 正しい。妊娠中は食後2時間の血糖値120mg/dL以下を目標とする。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。日本糖尿病学会においては、妊娠中は、朝食前血糖値70~100mg/dL以下、食後2時間血糖値120mg/dL以下、HbA1c:6.2%未満を目標とする。未治療の糖代謝異常合併妊娠では、まず食事療法を行い、血糖測定のうえ、目標血糖値を達成できない場合にはインスリン療法を行う。わが国では 2 型糖尿病が多いため,食事療法と運動療法が中心となる.妊娠中の運動療法は正常分娩の率を上げるとの報告もあるが,糖代謝異常妊婦に対してどの程度の運動が適切であるかは定かではない(※参考:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P26」)。
5.× 産褥期にはインスリンの必要量は、「増加」ではなく低下する。なぜなら、胎児への栄養供給をしなくてよくなるため。インスリンは、妊娠中期において、非妊娠時よりも血中の値が増加している。なぜなら、胎児の栄養供給を維持するために母体の血糖値を高めるため。つまり、妊娠中期になると、インスリンの抵抗性が増し、インスリンの分泌量が増加する。ちなみに、インスリンとは、血糖を下げる働きがあり、妊娠すると、胎盤からでるホルモンの働きでインスリンの働きが抑えられ、また胎盤でインスリンを壊す働きの酵素ができるため、妊娠していないときと比べてインスリンが効きにくい状態となる。
(※引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P25」)
33 在胎37週3日、体重2800gで出生した女児。生後30日に1か月児健康診査のため来院した。母乳栄養を行っており、この日の体重は3600g。先天性代謝異常検査は全項目正常だが、母親は生後1か月になっても児の黄疸が遷延していることを気にしている。児の便の写真を下図に示す。
この母親に対する黄疸の説明で最も適切なのはどれか。
1.「先天性甲状腺機能低下症の疑いがあります」
2.「体重増加不良により黄疸が長引いています」
3.「入院して光線療法を行う必要があります」
4.「母乳性黄疸であり、心配はいりません」
5.「直ちに黄疸の詳しい検査が必要です」
解答5
解説
・在胎37週3日(体重2800g、女児)。
・生後30日:母乳栄養、体重3600g。
・先天性代謝異常検査:全項目正常。
・母親は児の黄疸が遷延していることを気にしている。
・児の便:薄いクリーム色
→本症例は、便の色から胆道閉鎖症が疑われる。胆道閉鎖症とは、生まれて間もない赤ちゃんに発症する肝臓および胆管の病気で、胆汁の通り道である胆管が、生まれつきまたは生後間もなく完全につまってしまい、胆汁を腸管内へ排泄できない状態である。つまり、胆汁の通り道である胆管が生後間もなく完全に詰まってしまい、胆汁を腸管内へ排泄できない疾患である。症状は生後数か月以内の黄疸、灰白色便、肝腫大、ビタミンK不足による出血傾向などがある。治療には手術療法により詰まった胆管の一部を切除、もしくは肝移植が必要になることもある。
(※図引用:「胆道閉鎖症早期発見のための便色カード活用マニュアル」厚生労働省HPより)
1.× 先天性甲状腺機能低下症は考えにくい。なぜなら、本症例の先天性代謝異常検査は全項目正常であるため。先天性甲状腺機能低下症とは、胎児期または周産期に何らかの原因で甲状腺ホルモンの産生が不足したり、作用が不全になったりして、生まれつき甲状腺の働きが弱くなる病気である。全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。
2.× 体重増加不良と判断できない。なぜなら、出生時体重2800gで、生後30日3600g(1日あたり約26.6g増加)であるため。
【正常乳児の一日体重増加量の目安】
・0~3か月:25~30g
・3~6か月:20~25g
・6~9か月:15~20g
・9~12か月:7~10g
3.× 光線療法の優先度は低い。なぜなら、本症例は、便の色から胆道閉鎖症が疑われるため。光線療法とは、主に新生児黄疸の際に用いられる。光線療法とは、新生児に特殊な光線を当てて治療する方法である。光源は450~470nm付近の波長の青色LEDで、その光の作用で毒性の高い間接型ビリルビンを直接型に変え、体外への排出を促す。早ければ治療開始後2~3日で血中ビリルビン値は正常値に戻り、治療が完了する。
4.× 母乳性黄疸は考えにくい。なぜなら、本症例は、便の色から胆道閉鎖症が疑われるため。ちなみに、母乳性黄疸とは、生後1か月を経過しても黄疸が存在して長引く黄疸のことで、この場合には血液中に増加するビリルビンは非抱合型(間接型)であり、尿にも排泄されにくいために尿は黄色に着色しないのが特徴である。
5.〇 正しい。「直ちに黄疸の詳しい検査が必要です」と説明する。なぜなら、本症例は、便の色から胆道閉鎖症が疑われるため。胆道閉鎖症の診断は、胆嚢内腔の有無、肝外胆管形態をみる超音波検査や、胆汁の流れを見る胆道シンチグラフィ、十二指腸液検査などで行う。血液検査では、直接ビリルビン値が上昇し、ALPやγ-GTPなどの胆道系酵素の上昇、AST、ALTの上昇を認める。
新生児黄疸とは、生理的黄疸ともいい、生後間もない新生児の大半にみられる黄疸である。黄疸になると、皮膚や白目の色が次第に黄色味を帯びるが、新生児でみられる黄疸のほとんどは、生理的におきる新生児黄疸(生理的黄疸)である。この新生児黄疸(生理的黄疸)は、およそ生後3~5日目をピークに自然と治まっていくものである。過度に心配する必要はない。起きる機序として、新生児でのビリルビン産生の亢進、グルクロン酸抱合能の未熟、腸肝循環の亢進などにより、出生後に一過性に高間接ビリルビン血症となり、生理的黄疸となる。
34 女性生殖器の外性器はどれか。2つ選べ。
1.陰核
2.腟
3.処女膜
4.子宮
5.卵管
解答1・3
解説
外から見える部分の外性器と、外から直接見えない部分の内性器に大別できる。
・外性器:恥丘、大陰唇、小陰唇、陰核、腟前庭、会陰など。
・内性器:卵巣、卵管、子宮、腟など。
1.〇 正しい。陰核は、外性器である。陰核とは、女性の外性器の一部で、小陰唇が合わさる頭側の突起部分である。 クリトリスともいう。 発生過程から男性の陰茎に相当する。
2.× 腟は、内性器である。腟とは、女性生殖器の一部で、陰門から子宮頸部までの間にある粘膜で覆われた長さ約7cmの器官である。
3.〇 正しい。処女膜は、外性器である。処女膜とは、膣口のまわりにある薄い粘膜である。
4.× 子宮は、内性器である。子宮とは、女性の下腹部にある筋肉でできた袋状の臓器で、妊娠したときに胎児を育てる役割を担っている。
5.× 卵管は、内性器である。卵管とは、子宮と卵巣をつなげている管のことである。男性の精管に相当する。
(図引用:「女性器の解剖と整理」医学出版様より)
35 最終月経の開始から6週3日。尿検査で妊娠反応陽性を確認後2週が経過しているが、胎嚢が子宮内に確認できない。性器出血はない。
次に行う検査で適切なのはどれか。2つ選べ。
1.子宮卵管造影
2.尿蛋白量の測定
3.腟分泌物の細菌培養
4.内診による付属器周辺の圧痛の確認
5.血中ヒト絨毛性ゴナドトロピン〈hCG〉の測定
解答4・5
解説
・最終月経の開始から6週3日。
・尿検査で妊娠反応陽性:確認後2週が経過。
・胎嚢が子宮内に確認できない。
・性器出血はない。
→本症例は、異所性妊娠が疑われる。卵管妊娠(子宮外妊娠、異所性妊娠)とは、正常妊娠と異なり、受精卵が子宮内膜以外に着床し、胎芽・胎児の発育が進んでしまうことである。最も多いのは卵管に着床するケースで、そのほかに卵巣や腹腔、子宮頸管などに着床することもある。全妊娠数の1%程度で発症する。卵管妊娠(子宮外妊娠、異所性妊娠)の原因として、性感染症であるクラミジアや一般細菌などへの感染が卵管付近の炎症を引き起こしたり、卵管の癒着につながったりするとされている。異所性妊娠の症状は、骨盤痛、性器出血、無月経などがある。
1.× 子宮卵管造影の優先度は低い。なぜなら、子宮卵管造影は、不妊症の基礎検査であるため。子宮卵管造影とは、造影剤を腟から子宮頸管、子宮腔、卵管を通して腹腔内に注入し、その過程をX線で撮影することで、子宮内の異常や卵管の通過性などについて調べる方法である。
2.× 尿蛋白量の測定の優先度は低い。なぜなら、尿蛋白量の測定は、腎臓の働き、妊娠高血圧症候群などのスクリーニング検査であるため。尿蛋白量の測定とは、尿中のタンパク質の量を調べる検査で、尿検査のひとつである。腎臓が不要物をろ過して尿中に排泄する際にタンパク質量を調整しているが、腎機能が低下すると身体に必要なたんパク質も排出される。尿蛋白量の測定は、腎疾患の早期発見や治療効果の確認、腎機能の低下を簡易的に検査する目的で行われる。
3.× 腟分泌物の細菌培養の優先度は低い。なぜなら、腟分泌物の細菌培養は、感染症の評価に用いられるため。性器カンジダ症や細菌性腟症の原因となる菌の増殖の有無を調べる検査である。
4.〇 正しい。内診による付属器周辺の圧痛の確認は、次に行う検査である。異所性妊娠の症状は、付属器周辺の圧痛のほかにも様々で、骨盤痛、性器出血、無月経などがあるが、異所性妊娠を含む構造が破裂するまで症状がみられない女性もいる。一方、大半の女性に性器出血や少量の性器出血、または下腹部に鈍い痛み、鋭い痛み、または差し込むような痛みがみられることもある。
5.〇 正しい。血中ヒト絨毛性ゴナドトロピン〈hCG〉の測定は、次に行う検査である。なぜなら、異所性妊娠(子宮外妊娠)では、血中のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)値の上昇速度が正常な子宮妊娠よりも遅く、横ばい、もしくは低下することがあるため。
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG:human chorionic gonadotropin)とは、妊娠中にのみ測定可能量が著しく産生されるホルモンであり、妊娠の早期発見や自然流産や子宮外妊娠といった妊娠初期によくみられる異常妊娠の診断と管理のために使用される。主に絨毛組織において産生され、妊娠初期の卵巣黄体を刺激してプロゲステロン産生を高め、妊娠の維持に重要な働きをしている。また、胎児精巣に対する性分化作用や母体甲状腺刺激作用がある。絨毛性腫瘍の他に、子宮、卵巣、肺、消化管、膀胱の悪性腫瘍においても異所性発現している例もある。