第98回(H27) 助産師国家試験 解説【午後26~30】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

26 更年期障害に対するホルモン補充療法で最も治療効果が得られやすいのはどれか。

1.ほてり
2.尿漏れ
3.肩こり
4.皮膚の乾燥
5.骨量の減少

解答

解説

MEMO

更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。

エストロゲンとは、主に卵巣から分泌される女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。

1.〇 正しい。ほてりが更年期障害に対するホルモン補充療法で最も治療効果が得られやすい。なぜなら、ほてりは、エストロゲンの減少によって、血管の収縮や拡張をコントロールしている自律神経が乱れ生じるため。

2.× 尿漏れより効果が見込めるものが他にある。なぜなら、女性の尿漏れは更年期障害(エストロゲンの減少)によるもののほか、妊娠・出産を経た尿漏れ(切迫性尿失禁)の可能性も考えられるため。更年期となると、頻尿や夜間頻尿(過活動膀胱の疑い)であり、まずは薬物療法や生活習慣の改善が試みられるべきである。日本排尿機能学会の調査によると、50代の約6割、60代では約8割の人が夜間頻尿の症状を経験しているとしている。

3.× 肩こりより効果が見込めるものが他にある。一般的に、肩こりが発生する原因は様々であり、生活習慣の改善(運動習慣、食事の改善、ベッドの変更)などを提案する。更年期障害により、エストロゲンが減少し、自律神経が乱れ、血液循環が悪化することで肩こりが起こると考えられているが、必ずしも起こすとはいえない。

4.× 皮膚の乾燥より効果が見込めるものが他にある。なぜなら、皮膚の乾燥においては、少なくとも老化による影響もあるため。保湿をしっかり行うことが大切である。

5.× 骨量の減少より効果が見込めるものが他にある。なぜなら、効果が出るまでに時間がかかるため。女性ホルモンの一種であるエストロゲンを補充することで、骨吸収を抑制し、骨密度を増加させ、骨折予防効果があることが認められている。

ホルモン補充療法の禁忌症例と慎重投与症例は?

[禁忌症例]
・重度の活動性肝疾患
・現在の乳癌とその既往
・現在の子宮内膜癌、低悪性度子宮内膜間質肉腫
・原因不明の不正性器出血
・妊娠が疑われる場合
・急性血栓性静脈炎または静脈血栓塞栓症とその既往
・心筋梗塞および冠動脈に動脈硬化性病変の既往
・脳卒中の既往

[慎重投与ないしは条件付きで投与が可能な症例]
・子宮内膜癌の既往
・卵巣癌の既往
・肥満
・60歳以上または閉経後10年以上の新規投与
・血栓症のリスクを有する場合
・冠攣縮および微小血管狭心症の既往
・慢性肝疾患
・胆嚢炎および胆石症の既往
・重症の高トリグリセリド血症
・コントロール不良な糖尿病
・コントロール不良な高血圧
・子宮筋腫,子宮内膜症、子宮腺筋症の既往
・片頭痛
・てんかん
・急性ポルフィリン症

(※参考:「ホルモン補充療法ガイドライン 2017 年度版」日本産科婦人科学会より)

 

 

 

 

 

27 手技の実施によって子宮胎盤循環が悪化し、胎児の低酸素状態を急激に悪化させる危険性が指摘されているのはどれか。

1.吸引分娩
2.鉗子分娩
3.子宮底圧迫法
4.Bracht〈ブラハト〉法
5.Veit-Smellie〈ファイト・スメリー〉法

解答

解説

帽状腱膜下血腫とは?

帽状腱膜下血腫とは、吸引分娩や鉗子分娩の際に大きな外力が頭皮にかかり、帽状腱膜(読み:ぼうじょうけんまく)と骨膜の間に出血がおこることである。出産直後は観察されないが、生後数時間から1日のうちに出血がすすみ、頭の皮下が腫れていく。血液がにじむため、皮膚の色は暗赤色にみえ、ときに大出血を起こし、貧血やショック状態になることがあるため注意する必要がある。

(※図引用:「7. 骨盤位牽出術」株式会社杏林舎様HPより)

1.× 吸引分娩とは、分娩第2期に分娩を補助および促進するために鉗子または吸引器を児頭に対して使用することである。子宮口全開大から胎児娩出までの遷延胎児機能不全の疑いがある場合などに行われる。デメリットとして、帽状腱膜下血腫が起こる可能性がある。

2.× 鉗子分娩とは、児頭を鉗子で挟み児を娩出させる急速遂娩法である。先進児頭の下降度によって、①低在鉗子(出口鉗子)、②中在鉗子、③高在鉗子に分けられる。①低在鉗子(出口鉗子)の定義は諸説あるが、おおむねStation+2~+3以上である。術前に陰部神経麻酔、硬膜外麻酔を行うことが望ましい。デメリットとして、児頭の顔面への損傷が起こる可能性がある。

3.〇 正しい。子宮底圧迫法は、手技の実施によって子宮胎盤循環が悪化し、胎児の低酸素状態を急激に悪化させる危険性が指摘されている。子宮底圧迫法とは、クリステレル胎児圧出法ともいい、子宮口が全開大した分娩第2期に遷延分娩や胎児胎盤機能不全などにより児をできるだけ早く娩出するため、子宮の収縮力と子宮内圧を高めることを目的とした施術である。主に吸引分娩の補助として行われる。圧力が過度になると、子宮胎盤循環が圧迫され、胎児に酸素が十分に供給されなくなるリスクがある。肩甲難産の危険因子として吸引・鉗子分娩があり、肩甲難産娩出の際に他の手技を行わずに子宮底圧迫のみを行った場合には新生児外傷の頻度が高いため、肩甲難産において子宮底圧迫法は禁忌とされている。

4.× Bracht〈ブラハト〉法とは、自然分娩介助法のひとつであり、児の下半身が自然に娩出されるまで待ち、その後児体を把持・挙上し、恥骨弓を視点にしてゆっくり弧を描くように母体腹側に向かって回旋させる方法である。牽引などの人為的操作を行わないのが特徴である。

5.× Veit-Smellie〈ファイト・スメリー〉法とは、後続児頭娩出法のひとつであり、児の驅幹を内診手に騎乗させ口中に同手指を挿入し屈位を保たせつつ肩甲にかけて他手によって牽引する。この時、助手に母体恥骨結合上を圧迫してもらうとより効果的である。後続児頭娩出困難例では児顔面を側方を向けると有効なことがある。それでも娩出困難な場合には後続児頭鉗子を用いる(※参考:「7. 骨盤位牽出術」株式会社杏林舎様HPより)。

肩甲難産とは?

肩甲難産とは、「児頭娩出後に前在肩甲が恥骨結合につかえ、肩甲娩出が困難状況なために、児の娩出が不可能な状態」と定義されている。つまり、お産のときに赤ちゃんの頭だけ出てきたものの、肩がひっかかって出てこられない状態を指す。肩甲難産の頻度は経膣分娩例のおよそ200~500人に一例程度であるが、生まれてくる赤ちゃんの体重が大きくなればなるほど頻度が高くなると考えられている。肩甲難産の危険因子としては胎児の大きさが最も重要であるが、他にも母体の糖尿病や、母体の妊娠中の過剰な体重増加、過期妊娠、母体の高年齢、骨盤の変形、過去に肩甲難産の分娩歴のある場合などがある。肩甲難産はひとたび発生すると母体にも赤ちゃんにも悪い影響を及ぼす。母体では、膣や頚管裂傷などの産道裂傷や、産後の弛緩出血(子宮の戻りが悪くて出血すること)、膀胱麻痺や尿道損傷などの危険性がある。また、赤ちゃんは肩がひっかかるためしんどくなったり、最悪の場合には命にかかわるようなケースもある。また、生まれてくる途中で首の周りの神経が傷ついて腕に麻痺が生じたり、骨折などの危険性もある。このような恐ろしい分娩合併症である肩甲難産であるが、発症を正確に予知するのは非常に難しいのが現状である。万一発生した場合にはさまざまな処置が必要であるため、産婦人科医は妊婦さんのハイリスク因子を十分考慮して分娩に対応し、異常の早期発見に努めていく必要がある。

 

 

 

 

 

28 正期産で出生した児の生後12時間の所見で、直ちに小児科医に報告する必要があるのはどれか。

1.排尿がみられない。
2.排便がみられない。
3.羊水様の嘔吐が数回みられる。
4.股関節に開排の制限がみられる。
5.出生時から頭部全体が膨隆してきている。

解答

解説

生理的嘔吐とは?

生理的嘔吐とは、病気によって起こっている嘔吐以外のことで、新生児の嘔吐の大部分はほとんどが生理的なものである。 新生児では食道胃移行部の括約筋の機能が未熟で、また胃の蠕動運動が乏しいこと、体位によって胃内容の通過時間が異なることなどから嘔吐が起こりやすいと考えられている。分娩に伴って嚥下した羊水や血液が刺激になって嘔吐することもある。

1~2.× 排尿/排便がみられない場合、直ちに小児科医に報告する必要はない。なぜなら、排尿/排便は、通常生後24時間以内にみられるため(約90%)。24時間たっても排便がない場合は、胎便性イレウスや先天性消化管閉鎖症などの可能性が考えられる。

3.× 羊水様の嘔吐が数回みられる場合、直ちに小児科医に報告する必要はない。なぜなら、羊水様の嘔吐は、生後24時間の新生児の生理的嘔吐であるため。羊水様の嘔吐とは、新生児が分娩中に嚥下した羊水や血液が刺激となり、嘔吐することである。嘔吐の内容は羊水や粘液が多く、ときに嚥下した血液が見られることもある。生理的で持続も短く治療が必要となることはほとんどない。

4.× 股関節に開排の制限がみられる場合、直ちに小児科医に報告する必要はない。なぜなら、股関節に開排の制限は、股関節脱臼などの可能性を示唆するが、生命への影響は低く、緊急性が高くないため。ただし、このまま放置すると、成長とともに股関節の臼蓋の形成不全を生じるため、適切な診察や検査が必要である。

5.〇 正しい。出生時から頭部全体が膨隆してきている場合、直ちに小児科医に報告する必要がある。なぜなら、頭蓋内出血や帽状腱膜下出血が示唆されるため。帽状腱膜下出血とは、帽状腱膜と骨膜との間に生じた血腫のことをいう。より大きい外傷(吸引分娩等)を原因とし、側頭部を含む頭皮全体に生じる波動性の腫瘤が特徴であり、出生後数時間で現れる。血腫が前額、眼瞼、耳介周囲に及ぶこともある。空隙となりうる頭皮下の領域は大きく、著しい失血および出血性ショックの可能性があり、輸血が必要となる場合がある。出血性ショックや播種性血管内凝固症候群(DIC)、 高ビリルビン血症に注意する必要がある。1~2か月で消失する。

 

 

 

 

 

29 医療法に基づき、有床助産所の構造設備について基準が定められているのはどれか。

1.保育器
2.分娩室の床面積
3.入所する妊産婦用の食堂
4.洗浄機能の付いたトイレ
5.子ども用のプレイルーム

解答

解説

医療法施行規則第17条

第十七条 法第二十三条第一項の規定による助産所の構造設備の基準は、次のとおりとする。
一 入所室は、地階又は第三階以上の階には設けないこと。ただし、特定主要構造部を耐火構造とする場合は、第三階以上に設けることができる。
二 入所室の床面積は、内法によつて測定することとし、一母子を入所させるためのものにあつては六・三平方メートル以上、二母子以上を入所させるためのものにあつては一母子につき四・三平方メートル以上とすること。
三 第二階以上の階に入所室を有するものにあつては、入所する母子が使用する屋内の直通階段を設けること。
四 第三階以上の階に入所室を有するものにあつては、避難に支障がないように避難階段を二以上設けること。ただし、前号に規定する直通階段を建築基準法施行令第百二十三条第一項に規定する避難階段としての構造とする場合は、その直通階段の数を避難階段の数に算入することができる。
五 入所施設を有する助産所にあつては、床面積九平方メートル以上の分べん室を設けること。ただし、分べんを取り扱わないものについては、この限りでない。
六 火気を使用する場所には、防火上必要な設備を設けること。
七 消火用の機械又は器具を備えること。

(※引用:「医療法施行規則」e-GOV法令検索様)

1.× 保育器の基準は定められていない。保育器とは、未熟性の高い出生直後の新生児・未熟児を収容する医療機器である。主に新生児集中治療室(NICU)を備えた病院で使用される。

2.〇 正しい。分娩室の床面積は、医療法(施行規則第17条)に基づき、有床助産所の構造設備について基準が定められている。医療法施行規則第17条において、「入所施設を有する助産所にあつては、床面積九平方メートル以上分べん室を設けること」と記載されている。

3~5.× 入所する妊産婦用の食堂/洗浄機能の付いたトイレ/子ども用のプレイルームの基準は定められていない

 

 

 

 

 

30 Müller〈ミュラー〉管から形成される臓器はどれか。2つ選べ。

1.子宮
2.卵管
3.卵巣
4.精管
5.精巣

解答1・2

解説

ミュラー管とは?

Müller<ミュラー>管は、セルトリ細胞から分泌される抗ミュラー管ホルモンが存在するとき退縮し、存在しないとき子宮卵管腟上部に分化する。Müller<ミュラー>管は男性では退化するが、代わりにWolff<ウォルフ>管が発達する。

1~2.〇 正しい。子宮/卵管は、ミュラー管から形成される臓器である。

3.× 卵巣とは、子宮の両脇に1つずつある親指大の楕円形の臓器で、卵巣の表面をおおっている上皮(表層上皮)、卵子のもとになる胚細胞、性ホルモンをつくる性索 細胞 、 間質細胞などからできている。

4~5.× 精管/精巣は、男性の臓器である。女性の場合、ウォルフ管が退縮するが、男性の場合は、ウォルフ管が精巣上体・輸精管・精嚢に分化する。ウォルフ管とは、ライディッヒ細胞から分泌されるテストステロンが存在するとき(男性になるとき)、精巣上体・輸精管・精嚢に分化する。テストステロンが存在しないとき(女性になるとき)は退縮する。性管・外性器は、胎児精巣由来ホルモンの有無に依存して分化する。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)