第98回(H27) 助産師国家試験 解説【午後21~25】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

21 思春期の女子を対象とした外来を週1回行うことになり、担当医師と助産師のチーム3人で事前に検討した。
 外来の運営方法について最も適切なのはどれか。

1.診察時間は平日の午前に設定する。
2.診察後の指導は保護者同伴とする。
3.待合室は成人女性の外来と別にする。
4.外来は毎回異なる助産師が担当する。

解答

解説

ポイント

・対象:思春期の女子
外来週1回行う。
・担当医師と助産師のチーム3人で事前に検討した。

1.× 診察時間は、「平日の午前」ではなく放課後の時間に設定する。なぜなら、平日の午前は、学校の授業が行われている時間帯であるため。

2.× 診察後の指導は保護者同伴とする必要はない。なぜなら、思春期の女子はプライバシーに敏感であるため。また、保護者が同伴していると本音を話しにくい場合がある。

3.〇 正しい。待合室は成人女性の外来と別にする。なぜなら、待合室を別にすることで、プライバシーを保つことができるため。

4.× 外来は毎回異なる助産師が担当する必要はない。むしろ、毎回「同じ」助産師が対応することで、信頼関係を築くことができ、より手厚い支援ができると考えられる。

 

 

 

 

 

22 産科医療補償制度について正しいのはどれか。

1.補償を申請できるのは児の主治医である。
2.補償を申請できるのは5歳の誕生日までである。
3.補償を申請できるのは生後3か月の時点からである。
4.障害の原因が染色体異常であると判断された児も補償対象となる。

解答

解説

産科医療補償制度とは?

産科医療補償制度とは、分娩に関連して発症した脳性麻痺の子と家族の経済的負担を速やかに補償し、原因分析を行い、再発防止のための情報提供などを行う制度である。病院、診療所や助産所といった分娩を取り扱う機関が加入する制度である。原因分析の結果は、保護者と分娩機関にフィードバックされ、事例情報を整理し再発防止策を策定し広く一般に公開、提言される。産科医療補償制度の定める「脳性麻痺」の定義に合致し、以下の3つの基準をすべて満たし、運営組織が「補償対象」として認定した場合に、補償金が支払われる仕組みである。

①在胎週数32週以上かつ出生体重1,400g以上、または在胎週数28週以上で低酸素状況を示す所定の要件を満たして出生したこと、②先天性や新生児期等の要因によらない脳性麻痺であること、③身体障害者手帳1・2級相当の脳性麻痺であることがあげられる。いずれにしても、まずは産科医療補償制度の定める「脳性麻痺」の定義に合致する必要がある。

1.× 補償を申請できるのは、「児の主治医」ではなく児の保護者である。

2.〇 正しい。補償を申請できるのは5歳の誕生日までである。満5歳の誕生日を過ぎると、補償申請を行うことができない。

3.× 補償を申請できるのは、「生後3か月」ではなく生後6か月の時点からである。なぜなら、3つの基準のうち、②「先天性や新生児期等の要因によらない脳性麻痺であること」の備考に「お子様が生後6か月未満で死亡した場合は補償対象とならない」ことが記載されているため。(※参考:「産科医療補償制度の補償申請について」参加医療保障制度HPより)

4.× 障害の原因が、「染色体異常である」と判断された児も補償対象とならない。除外基準について、脳性麻痺の原因が先天性または新生児期等の要因に基づく場合などは、補償対象とならないことについて定めた基準である。①先天性の要因(両側性の広範な脳奇形、染色体異常、遺伝子異常、先天性代謝異常または先天異常が重度の運動障害の主な原因であることが明らかである場合)、②新生児期の要因(分娩とは無関係に発症した髄膜炎、脳炎、その他の神経疾患、虐待、その他の外傷などが重度の運動障害の主な原因であることが明らかである場合)である。(※参考:「産科医療補償制度の補償申請について」参加医療保障制度HPより)

(※図引用:「産科医療補償制度について」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

23 32歳の初妊婦。妊娠37週5日の胎児心拍数陣痛図で、胎児心拍数基線125bpm、基線細変動は消失し、高度変動一過性徐脈が確認された。
 この胎児心拍数陣痛図の波形レベルはどれか。

1.レベル1
2.レベル2
3.レベル3
4.レベル4
5.レベル5

解答

解説

本症例のポイント

・32歳の初妊婦(妊娠37週5日)。
・胎児心拍数陣痛図:胎児心拍数基線125bpm、基線細変動は消失
高度変動一過性徐脈
→本症例は、基線細変動は消失している。したがって、「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P229」の表2-3「基線細変動消失例」を参考にする。したがって、高度変動一過性徐脈は、胎児心拍数波形のレベル分類において、レベル5といえる。

→変動一過性徐脈とは、15bpm以上の心拍数減少が急速に起こり、開始から回復まで15秒以上2分未満の波形をいう。高度の判断は、①最下点が70 bpm未満で持続時間が30秒以上、②最下点が70 bpm以上80 bpm未満で持続時間が60秒以上で評価する。

(※引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P229」)

1.× レベル1は、正常波形である。
2.× レベル2は、亜正常波形である。
3.× レベル3は、軽度異常波形である。
4.× レベル4は、中等度異常波形である。
5.〇 正しい。レベル5(高度異常波形)がこの児の波形レベルである。基線細変動が消失している場合、一過性徐脈がない場合以外は、レベル5に該当する。

 

 

 

 

 

24 前回の分娩で子宮内反症を起こした経産婦。今回の妊娠経過は順調で、正常な経過で児を娩出した。
 児娩出後の胎盤娩出のための対応で最も適切なのはどれか。

1.臍帯を牽引する。
2.子宮底を圧迫する。
3.胎盤を用手剥離する。
4.子宮底を輪状マッサージする。
5.胎盤剥離徴候がみられるまで待つ。

解答

解説

本症例のポイント

・経産婦
・前回の分娩:子宮内反症
・今回の妊娠経過:順調。
正常な経過で児を娩出した。
→子宮内反症の対応をおさえておこう。子宮内反とは、子宮が内膜面を外方に反転した状態をいう。子宮が裏返しになり子宮内膜面が腟内または腟外に露出し、胎盤剝離面から出血が続く状態である。病因は①外因性と②内因性、③もしくは複合したものがある。①ほとんどが外因性で、胎盤剝離前の臍帯牽引によることがもっとも多く、他のリスク因子として癒着胎盤や過短臍帯、臍帯巻絡がある。②内因性のものとしては、子宮奇形に伴う子宮筋の弛緩、多胎妊娠、巨大児、羊水過多などの子宮筋が弛緩した状態に起こりやすい。また、外因性と内因性が複合して発症する場合もある。

1~4.× 臍帯を牽引する/子宮底を圧迫する/胎盤を用手剥離する/子宮底を輪状マッサージする必要はない。なぜなら、子宮内反症の誘因となりえるため。ちなみに、子宮底部の輪状マッサージとは、子宮筋を刺激して、子宮収縮を促進させるマッサージである。 排尿・排便を定期的に促し、膀胱・直腸充満からの圧迫による子宮収縮不全を防止する。早期離床を促し、悪露の貯留による子宮収縮不全を防止する。

5.〇 正しい。胎盤剥離徴候がみられるまで待つ。なぜなら、本症例の今回の妊娠経過・娩出は順調であるため。自然に剥離するのを待つことで、過度な牽引や圧迫を避け、子宮内反症のリスクを最小限に抑えることができる。
【胎盤剥離徴候】
・キュストネル徴候(Kustner徴候):恥骨上を押すと子宮は押しつぶされて子宮底部は頭側に移動する。剥離していないと臍帯も一緒に引き戻されるが、剥離していると引き戻されず、むしろ臍帯が出る。
・シュレーダー徴候(Schroder徴候):児娩出後ほぼ臍高にあった子宮底が胎盤剥離するとやや上昇し右に傾く。
・アールフェルド徴候(Ahlfeld徴候):胎児娩出直後に臍帯の腟入口に位置する部に止血鉗子で目じるしをつけておくと、胎盤が剥離下降してくるとこの目じるしが10〜15cm外方へ下垂する現象である。
・キュストナー徴候(Kustner徴候):胎児娩出後に恥骨結合上から子宮下方を骨盤内に圧すると臍帯が圧出される状態である。
・シュトラスマン徴候(Strassmann徴候):一方の手で臍帯を持ち、他方の手で子宮底を叩いても手に響かない。癒着しているときは手に響く。

 

 

 

 

 

25 分娩後48時間。突然、褥婦に多量の性器出血を認めた。
 原因として考えられるのはどれか。

1.子宮破裂
2.頸管裂傷
3.腟壁血腫
4.血栓性静脈炎
5.卵膜・胎盤遺残

解答

解説
1.× 子宮破裂とは、主として分娩時に起こる子宮体部ないしは子宮下部の裂傷である。①完全子宮破裂と②不全子宮破裂とに分類されており、①完全子宮破裂とは子宮壁が全部裂けるもので、②不全子宮破裂とは子宮の外側は裂けずに残っているものである。いずれにしても症状として、児娩出後にも母体は下腹部痛や出血多量(持続的な出血)、ショック状態になる。

2.× 頸管裂傷とは、子宮頸管に裂けてできた傷が起こることであり、急速に分娩が進行することや吸引分娩などの処置、巨大児などが原因となる。頸管裂傷になると持続的な出血(鮮紅色の出血)が起こる。主に分娩の際に生じる可能性があり、大量出血など生命の危険にまでつながるリスクがある。本症例の場合、腹部で子宮底を触れず、腟内に超手拳大の腫瘤を触れることから頸管裂傷は否定できる。

3.× 腟壁血腫とは、腟壁粘膜下組織の血管が破綻・断裂して血腫ができた状態のことである。急速な分娩進行による腟壁の急激な伸展、過大な頭部や肩甲の通過による腟壁の過度な伸展などが原因である。一般的に、分娩直後に症状が現れる。

4.× 血栓性静脈炎とは、血液凝塊が原因となって静脈の血管が詰まり、静脈とその周囲の皮膚が炎症を起こす病気である。静脈内に血液のかたまり(血栓)ができ、血管を細くしたり詰まらせたりすることで静脈とその周囲の皮膚が炎症を起こす病気である。性器からの出血が直接的に関連することは少ない

5.〇 正しい。卵膜・胎盤遺残が原因として考えられる。卵膜・胎盤遺残とは、通常赤ちゃんの出生後数分~10分ほどで自然に排出される胎盤が、なにかしらの原因で排出されず子宮内に残ってしまう状態のことをいう。胎盤・卵膜の遺残は、出血が多く凝血塊が貯留するため、弛緩出血を助長する。弛緩出血とは、児と胎盤の娩出後、本来なら子宮が収縮することで止まるはずの出血が続く状態である。原因は、多胎妊娠や巨大児による子宮の過伸展、子宮収縮剤の長時間投与、長引く分娩による母胎の疲労、子宮奇形などの体質によるもの、子宮内の凝血塊の遺残、全身麻酔などが挙げられる。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)