第98回(H27) 助産師国家試験 解説【午前21~25】

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21 18歳の女性。未婚。無職。パートナーはいるが、経済的支援を受けられない。両親の所在は不明。腹痛の訴えがあり救急車で病院に搬送された。診察の結果、妊娠37週相当と診断され、胎児心拍数モニタリングを行い、胎児のwell-beingは良好であった。子宮口は8cm開大している。女性は「妊娠していると思わなかった。自分では育てられない」と言う。
 この時点で連携をとる施設はどれか。

1.乳児院
2.助産施設
3.母子生活支援施設
4.市町村保健センター

解答

解説

本症例のポイント

・18歳の女性(未婚、無職、妊娠37週相当)。
・パートナーはいるが、経済的支援を受けられない
・両親の所在:不明。
・胎児心拍数モニタリング:胎児のwell-beingは良好。
・子宮口:8cm開大。
・女性は「妊娠していると思わなかった。自分では育てられない」と。
→ほかの選択肢の施設の内容もおさえておこう。本症例の場合、出産前・後の支援の相談から始める必要がある。

1.× 乳児院の優先度は低い。なぜなら、出産後の対応の施設であるため。ちなみに、乳児院とは、保護者の養育を受けられない乳幼児を養育する児童福祉施設であり、児童養護施設が原則として1歳以上の児童を養育するのに対し、1歳未満の乳児を主に養育する。

2.× 助産施設の優先度は低い。なぜなら、出産期間のみ対応する施設であるため。本症例の場合、経済的支援を受けられないことから、出産後も生活の相談を行える施設が優先される。助産施設とは、保健上必要な妊産婦が経済的な理由で入院助産を受けることができない場合に、入所して助産を受けるために児童福祉法に基づいて設けられた施設である。指定された医療機関として、安全な出産を図ることを目的としている。

3.× 母子生活支援施設の優先度は低い。なぜなら、出産に対応できない施設であるため。ちなみに、母子生活支援施設とは、児童福祉法第38条に基づき、配偶者のない女子又はこれに準ずる事情にある女子及びその者の監護すべき児童を入所させて、これらの者を保護するとともに、これらの者の自立の促進のためにその生活を支援することを目的とする施設である。母子生活支援施設においては、母子を保護するとともに、その自立を促進するため個々の母子の家庭生活及び稼動の状況に応じ、就労、家庭生活及び児童の教育に関する相談及び助言を行う等の支援を行っている。つまり、母子家庭を保護し自立支援のために生活を支援する施設である。

4.〇 正しい。市町村保健センターが最も優先される。なぜなら、出産からその後の生活まで幅広く相談できる施設であるため。ちなみに、市町村保健センターとは、健康相談、保健指導、健康診査など、地域保健に関する事業を地域住民に行うための施設である。地域保健法に基づいて多くの市町村に設置されている。産前・産後の事業も行われている。また、地域保健法とは、地域保健対策の推進に関する基本指針、保健所の設置その他地域保健対策の推進に関し基本となる事項を定めることにより、母子保健法その他の地域保健対策に関する法律による対策が地域において総合的に推進されることを確保し、地域住民の健康の保持及び増進に寄与することを目的として制定された法律である。

 

 

 

 

 

22 養育医療について正しいのはどれか。

1.保護者が申請する。
2.申請先は都道府県である。
3.入院しない児も対象となる。
4.児童福祉法に基づく制度である。

解答

解説

養育医療とは?

養育医療とは、入院治療を必要とする対象者に該当する乳児(出生時体重が2000g以下だった乳児、低体温、強い黄疸などの症状を示す乳児)に対して、健やかに成長できるよう、その養育に必要な医療を給付するものである。 指定医療機関において、診察・医学的処置・治療等の給付が受けられる。

(※引用:「養育医療のご案内」長野市HPより)

1.〇 正しい。保護者が申請する。基本的に、保護者が申請するが、「委任状及び代理人の身元の確認できる書類」を提出することで、代理人も申請できる。

2.× 申請先は、「都道府県」ではなく市区町村である。

3.× 入院しない児も対象とはならない。養育医療は、出生時の体重が2,000g以下又はその他の理由により、指定養育医療機関での入院による医療を必要と認めた場合、その医療費の一部を公費で負担する制度である。 

4.× 「児童福祉法」ではなく母子保健法に基づく制度である。母子保健法の第20条(養育医療)において「市町村は、養育のため病院又は診療所に入院することを必要とする未熟児に対し、その養育に必要な医療(以下「養育医療」という。)の給付を行い、又はこれに代えて養育医療に要する費用を支給することができる」と記載されている(※引用:「母子保健法」e-GOV法令検索様HPより)。

児童相談所とは?

児童相談所は、「児童福祉法」に基づいて設置される行政機関であり、都道府県、指定都市で必置となっている。原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けている。児童相談所は、すべての子供が心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、ともに考え、問題を解決していく専門の相談機関である。

職員:児童福祉司、児童心理司、医師または保健師、弁護士 等。所長は、医師で一定の者、大学等で心理学を専修する学科を卒業した者、社会福祉士、児童福祉司で一定の者 等。

【業務内容】
①市町村への援助(市町村相互間の連絡調整、情報提供、研修その他必要な援助)
②児童・その家庭の相談のうち、専門的な知識・技術を必要とする者への対応
③児童・その家庭の必要な調査、医学的、心理学的、教育学的、社会学的、精神保健上の判定
④調査、判定に基づいた児童の健康・発達に関する専門的な指導
⑤児童の一時保護
⑥児童福祉施設等への入所措置
⑦一時保護解除後の家庭・その他の環境調整,児童の状況把握・その他の措置による児童の安全確保
⑧里親に関する業務
⑨養子縁組に関する相談・支援

(参考:「児童相談所とは」東京都児童相談センター・児童相談所様HPより)

 

 

 

 

 

23 Aさん(35歳、初産婦)。妊娠38週3日、3600gの女児を正常分娩した。分娩時、会陰裂傷第3度と腟壁裂傷とがあり縫合術が施行された。Aさんから「私の分娩には健康保険が使えますか」と質問があった。
 助産師の説明で最も適切なのはどれか。

1.「裂傷の大きさによって異なります」
2.「帝王切開以外は使えません」
3.「縫合の処置料は使えます」
4.「分娩介助料は使えます」

解答

解説

健康保険法とは?

健康保険法とは、労働者及びその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関する医療保険給付等について定めた日本の法律である。療養の給付とは、健康保険法等を根拠に、日本の公的医療保険において、被保険者に対して実際の療養を保険給付として行うものである。公的医療保険における最も基本的な保険給付であり、保険者から発行された被保険者証を提出することで、被保険者は広く医療を受けることができ、国民皆保険の根幹をなす。必ず現物給付である。

【療養の給付の範囲】
①診察や治療、検査
②処置・手術注射や処置・手術
③その他の治療(放射線療法、療養指導など)
④世話や看護など

1.× 裂傷の大きさによっては異ならない。医療行為に該当するかしないかに基づく。

2.× 帝王切開以外も「使える」。なぜなら、医療行為に基づくため。

3.〇 正しい。「縫合の処置料は使えます」と説明する。これは、健康保険法の第63条(療養の給付)において「被保険者の疾病又は負傷に関しては、次に掲げる療養の給付を行う」
①診察
②薬剤又は治療材料の支給
③処置、手術その他の治療
④居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
⑤病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
と記載されている(※引用:「健康保険法」e-GOV法令検索様HPより)。

4.× 分娩介助料は「使えない」。正常経腟分娩の分娩介助料は、自費である。妊娠・出産の「異常」に対する医療行為は診療報酬で規定されているが、「正常」の場合は自費診療となる。ちなみに、分娩介助料とは、分娩時に異常が発生した際の助産師のサポートに対して請求される費用である。鉗子娩出術、吸引娩出術などで行われる会陰保護の費用も含まれる。

 

 

 

 

 

24 病院の助産師外来に通院している妊婦が助産所での分娩を希望した場合、助産所に転院可能なのはどれか。

1.合併している糖尿病の血糖コントロールは良好である。
2.先天性心疾患を有する児の分娩歴がある。
3.不妊治療後、順調に経過している。
4.身長145cmである。

解答

解説

MEMO

 「Ⅲ.妊婦管理適応リスト」では,「A.助産師が管理できる対象者」「B.連携する産婦人科医師と相談の上,協働管理すべき対象者」「C.産婦人科医師が管理すべき対象者」に分けて記載されている。(※引用:「助産業務ガイドライン 2019」)※詳しくは下図参照

(※図引用:「Ⅲ.妊婦管理適応リスト」助産業務ガイドライン 2019より)

1.× 合併している糖尿病の血糖コントロールは良好である。これは、 「Ⅲ.妊婦管理適応リスト」では、「B.連携する産婦人科医師と相談の上,協働管理すべき対象者」の「4.異常妊婦経過が予測される妊婦、妊娠中に発症した異常」に該当する。

2.× 先天性心疾患を有する児の分娩歴がある。これは、 「Ⅲ.妊婦管理適応リスト」では、「C.産婦人科医師が管理すべき対象者」の「7.産褥期に異常がある妊婦」に該当する。

3.〇 正しい。不妊治療後、順調に経過している。不妊治療後であっても、妊娠経過が順調であれば、特に大きなリスクがないと判断されることが多いため、助産所での分娩が可能である。これは、 「Ⅲ.妊婦管理適応リスト」では、「A.助産師が管理できる対象者」の「1.妊娠経過中継続して管理され、正常に経過しているもの」に該当する。

4.× 身長145cmである。これは、 「Ⅲ.妊婦管理適応リスト」では、「B.連携する産婦人科医師と相談の上,協働管理すべき対象者」の「1.理学的所見のあるもの」に該当する。

 

 

 

 

 

25 31歳の初妊婦。妊娠30週0日、双胎妊娠。小学校の教員。
 この妊婦へ支給される出産育児一時金で正しいのはどれか。

1.42万円である。
2.所得制限がある。
3.2人分支給される。
4.出産前から受け取ることができる。

解答

解説

本症例のポイント

・31歳の初妊婦(妊娠30週0日、双胎妊娠
・小学校の教員。
→出産育児一時金についておさえておこう。出産育児一時金とは、健康保険法に基づき、日本の公的医療保険制度の被保険者が出産したときに支給される手当金(1児ごとに42万円)である。そもそも正常な出産のときは病気とみなされないため、定期健診や出産のための費用は自費扱いとなる。出産育児一時金は直接支払制度となっている。直接支払制度とは、出産育児一時金42万円が直接医療機関に支払われる制度であり、分娩後、褥婦は医療機関に保険証を提示し、所定の合意書に記載することでこの制度を利用する。出産費用が出産育児一時金の額より少ない場合、その差額を被保険者等に支給する。したがって、日本の公的医療保険に加入していることが条件となる。

1.× 「42万円」ではなく84万円である。なぜなら、出産育児一時金は、1児ごとに42万円であるため。本症例は、双胎妊娠である。

2.× 所得制限は「ない」。外国籍や早産、生活保護を受けている場合、出産育児一時金をもらえない。

3.〇 正しい。2人分支給される。1児ごとに42万円支給される。

4.× 出産前から受け取ることは「できない」できる。なぜなら、出産育児一時金の申請に必要な書類に、①出産費用の領収・明細書の写し、②医師・助産婦または市区町村長の証明などが必要となるため。

 

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