第98回(H27) 助産師国家試験 解説【午後16~20】

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16 出生後にみられる新生児の循環動態の変化について正しいのはどれか。

1.右房圧は左房圧よりも高くなる。
2.肺動脈圧は大動脈圧よりも高くなる。
3.出生後、速やかに肺血管抵抗は上昇する。
4.動脈血酸素分圧〈PaO2〉の上昇により動脈管は収縮する。

解答

解説

(※図引用:「看護師 イラスト集【フリー素材】」看護roo!様HPより)

胎児循環とは?

胎児循環とは、胎児における血液の流れ方のことで、肺のかわりを胎盤が果たす胎盤循環が主体である。胎児の下腹部で大動脈から出た左右の臍動脈は、胎盤で母体の血液とガス交換および栄養分・老廃物交換を行った後、1本の臍静脈として胎児体内に戻る。その後肝臓を通じ、あるいは静脈管を通って下大静脈から右心房に入る。この血液と上大静脈から右心房に入った血液の大部分は、心房中隔にあいている卵円孔を通じて直接左心房に移り、左心室から大動脈に出る。一部の右心房から右心室に入った血液は、肺動脈に出るが、肺がまだ活動していないので、その主体は動脈管を通じて大動脈に流入する。

1.× 逆である。「左房圧」は「右房圧」よりも高くなる。なぜなら、出生後に肺呼吸が始まるため。つまり、動脈管の閉鎖と肺血管抵抗の低下により、肺血流が急増し、それが左房に流入する。左房圧が右房圧より高くなることで、卵円孔は閉鎖される。

2.× 逆である。「大動脈圧」は「肺動脈圧」よりも高くなる。なぜなら、出生後に肺呼吸が始まり、肺が膨らみ、肺血管抵抗に低下するため。ちなみに、出生前は胎児の肺が未発達であり、肺血管抵抗(肺動脈圧)は高く保たれている。

3.× 出生後、速やかに肺血管抵抗は、「低下」する。なぜなら、出生後に肺呼吸が始まるため。つまり、動脈管の閉鎖と肺血管抵抗の低下により、肺血流が急増する。

4.〇 正しい。動脈血酸素分圧〈PaO2〉の上昇により動脈管は収縮する。動脈血酸素分圧が上昇することにより、臍動脈が収縮する。臍動脈が収縮すると、臍静脈にも血液の流入が無くなり、受動的に収縮する。静脈管も胎盤血流が無くなることを受けて、おおむね受動的に収縮する(※引用:「心エコー図検査-その22」著:田口大介様)。ちなみに、動脈管とは、ボタロー管ともいう。動脈管(ボタロー管)は、胎児期において肺動脈と大動脈とを繋ぐ血管であり、胎児循環において静脈管(胎盤からの静脈血を大静脈に送り込む静脈)、卵円孔とともに重要な役割を果たす。

1出生後の変化

出生直後に新生児は呼吸を開始し、肺胞に酸素を含む空気が充満する。これが、以下の変化を同時進行的に引き起こす。
1)肺血管の拡張(肺血管抵抗の低下)
肺動脈は酸素や一酸化窒素により拡張する性質がある。肺胞に空気が入ると肺間質の酸素濃度が上昇し、肺小動脈が拡張する。同時に肺血管内皮細胞で一酸化窒素が産生され、また胎児期のアシドーシスが無くなることで、肺動脈はさらに拡張する。さらに、肺胞内が液体から気体に代わることで、肺血管抵抗はもっと低下する。呼吸運動は肺血管内皮のプロスタサイクリン産生を促し、これも肺動脈を拡張させる。
2)臍動脈、臍静脈、静脈管の閉鎖
動脈血酸素分圧が上昇することにより、臍動脈が収縮する。臍動脈が収縮すると、臍静脈にも血液の流入が無くなり、受動的に収縮する。静脈管も胎盤血流が無くなることを受けて、おおむね受動的に収縮する。
3)動脈管の機能的閉鎖
動脈管を流れる血液の酸素分圧が上昇することと、動脈管を開存状態にしていた胎盤由来のプロスタグランジンが途絶え、さらに代謝されることにより、動脈管の中膜平滑筋が収縮し、生後数時間で機能的閉鎖にいたる。
4)卵円孔の機能的閉鎖
胎児循環では、『臍動脈⇒胎盤⇒臍静脈⇒静脈管』の血流ラインの血管抵抗が低く多量の血液が流れていたが、出生後にはこのラインの血流が無くなることにより、右房への血液流入が低下する。一方、胎児循環では右室から駆出された血液の殆どが動脈管を通り下行大動脈に流入していたが、動脈管の閉鎖と肺血管抵抗の低下により、肺血流が急増し、それが左房に流入する。すなわち、右房圧が低下し、左房圧が上昇する。これにより、卵円孔の一次中隔はフラップが閉じる形で左房側から押されて、卵円孔が機能的に閉鎖する。
5)左室圧の上昇と右室圧の低下
胎児循環では、右室から駆出された血液は、肺動脈および動脈管を通り、下行大動脈に流入していた。すなわち右室圧(肺動脈圧)の方が、左室圧(大動脈圧)よりも高かったが、出生後は、上記1-3の変化により左室圧(大動脈圧)の方が、右室圧(肺動脈圧)よりも高くなる。この圧バランスの逆転は、生後数分から数時間以内にみられる。
6)心機能の変化
胎児期および出生直後の心機能は未熟であるが、徐々に改善していき、生後1週間から1カ月で成犬と同様の血行動態を獲得する。
(※引用:「心エコー図検査-その22」著:田口大介様)

 

 

 

 

 

17 2か月児と2歳児の母親。母親は上の子どもへの対応について助産師に相談した。「最近は勝手に赤ちゃんのオムツを替えたりします。無理に赤ちゃんの足を持ち上げるなど危ないことがあります。やめるように言うと暴れるようにして泣き、手がつけられません。どうしたらよいでしょうか」と言う。
 母親への助言で最も適切なのはどれか。

1.一緒にオムツ交換をする。
2.乳児のいる部屋に入れない。
3.オムツ交換時に遊びを与える。
4.母親の言うことをきくように言い聞かせる。

解答

解説

本症例のポイント

・母親(2か月児2歳児)。
・助産師に相談「上の子どもへの対応について」
・「最近は勝手に赤ちゃんのオムツを替えたりします。無理に赤ちゃんの足を持ち上げるなど危ないことがあります。やめるように言うと暴れるようにして泣き、手がつけられません。どうしたらよいでしょうか」と。
→兄弟ができると、両親の注意をひこうと、①退行現象、②試し行動、③攻撃的な態度などで表現することがある。対応として、基本的には、子ども達のこのような問題を、やさしく、しっかりと、受け止める必要がある。ちなみに、退行現象とは、ある程度の発達を遂げた者が、より低い発達段階に「子供がえり」して、未熟な行動をすることをいう。

1.〇 正しい。一緒にオムツ交換をする。なぜなら、赤ちゃんの世話を手伝ってもらうことで、長男に自然な形で兄の自覚を促せることができるため。また、母親との絆が深まることが期待できる。

2.× 乳児のいる部屋に入れないと決める必要はない。なぜなら、2歳児に「部屋に入れない」と言っても言うことを聞かない可能性が高いため。また、設問文には「やめるように言うと暴れるようにして泣き、手がつけられません」と言っていることから、禁止事項を新たに決めるには難易度が高い。2歳児が排除されたと感じ、逆に不安や嫉妬が増す可能性が考えられる。

3.× オムツ交換時に遊びを与えるより優先されるものが他にある。なぜなら、2歳児が、勝手に赤ちゃんのオムツを替えるのは、「遊びがない」もしくは「暇だから」といった理由ではないため。赤ちゃんの世話を手伝ってもらうことで、長男に自然な形で兄の自覚を促せることができる。

4.× 母親の言うことをきくように言い聞かせる必要はない。なぜなら、2歳児にすでに「やめるように言っても、暴れるようにして泣く」様子が見られるため。対応として、基本的には、子ども達のこのような問題を、やさしく、しっかりと、受け止める必要がある。

 

 

 

 

 

18 1歳6か月児で継続的なフォローが必要な状態はどれか。

1.なぐり書きをする。
2.一人歩きができない。
3.上着を脱ぐことができない。
4.2語文を話すことができない。

解答

解説

1歳6か月児健康診査の保健指導

(1)特 性
・体型は次第に細身に変化し始める。
・歩行が可能になる。
・手指操作の微細運動が発達し、道具が使えるようになっていく。
・社会性の発達とともに自我の芽生えが見られる時期である。
・視線、指さし動作、さらにことばによる意志の伝達と受け取り(周囲の指示理解)が可能になる。

(※引用:「新潟県福祉保健部 乳幼児保健指導の手引」)

(※図:日本版デンバー式発達スクリーニング検査)

1.× なぐり書きをすることは、1歳6か月児で継続的なフォローが必要ない。なぜなら、1歳6か月の発達において一般的な行動であるため。自発的になぐり書きをすることは、1歳ごろに獲得可能となる。

2.〇 正しい。一人歩きができないことは、1歳6か月児で継続的なフォローが必要な状態である。なぜなら、1歳6か月頃には歩行が可能になるため。

3~4.× 上着を脱ぐことができない/2語文を話すことができないことは、1歳6か月児で継続的なフォローが必要ない。なぜなら、早い子で行うことかできる項目であるため。2歳ごろでほとんどの子が獲得できる項目である。

子どもの発達のポイント

【1歳6か月】
・コップで水を飲む。
・スプーンを使って食べようとする。
・積み木を2~3個積むことができる。
・意味のある言葉を2~3語話す(パパ, ママ, ブーブー)。
・簡単な指示に従うことができる(おいで、○○をとって)。
・離乳が完了する。

【3歳】
・自分の名前を言う。
・簡単な文章を話す。
・指示に従う。
・物の大小や長短、色を区別できる。
・箸を持って食べる。
・手を洗う。
・ままごとやごっこ遊びをする。

 

 

 

 

 

19 母子健康手帳の交付について正しいのはどれか。

1.妊娠12週以降に交付される。
2.双胎の場合には2冊交付される。
3.交付には妊娠の診断書が必要である。
4.交付の代理申請は認められていない。

解答

解説

母子健康手帳とは?

母子健康手帳とは、母子保健法に定められた市町村が交付する、妊娠、出産、育児の一貫した母子の健康状態を記録する手帳のことである。母子健康手帳の制度化は、母子保健法:昭和41年(1966年)である。

1.× 「妊娠12週以降」に交付されるという規定はない。母子手帳は、病院で妊娠が確定してから、いつでも受け取れる。一般的に、赤ちゃんの心拍が確認できる妊娠6~10週目頃に取得されることが多い。

2.〇 正しい。双胎の場合には2冊交付される。なぜなら、それぞれの胎児に対して個別に健康状態を記録するため。

3.× 交付には妊娠の診断書が必要「ない」。母子健康手帳の交付に必要なものとして、①本人もしくは②代理人が届出する場合で異なる。本人が届出する場合は、①身分証明書(運転免許所、パスポート、マイナンバーカード)、②妊娠の診断を受けた医療機関がわかるもの(診察券、領収書、予約券など)が必要である(※参考:「母子健康手帳交付の際に必要なものはなんですか」さいたま子育てWEBトップ様HPより)。

4.× 交付の代理申請は認められて「いる」。母子健康手帳の交付に必要なものとして、①本人もしくは②代理人が届出する場合で異なる。代理人が届出する場合(妊婦以外の方)は、①身分証明書(運転免許所、パスポート、マイナンバーカード)、②妊娠の診断を受けた医療機関がわかるもの(診察券、領収書、予約券など)、③委任状が必要である(※参考:「母子健康手帳交付の際に必要なものはなんですか」さいたま子育てWEBトップ様HPより)。

 

 

 

 

 

20 助産所の管理者に義務付けられているのはどれか。

1.産科医療補償制度への加入
2.助産師免許の助産所内での掲示
3.医療安全支援センターへの開設の届出
4.職員に対する医療に係る安全管理のための研修の実施

解答

解説

助産所について

助産所について、「医療法」に記載されている。ちなみに、医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。

助産所の管理(医療法第11条、第12条、第15条第2項)
・助産所の開設者は、助産師に、これを管理させなければならない。
・自ら管理者となることができるものである場合は、原則として、自ら管理しなければならない。
・助産所の管理者は、助産所に勤務する助産師その他の従業者を監督し、その業務遂行に遺憾のないよう必要な注意をしなければならない。

1.× 産科医療補償制度への加入は、義務付けられていない。ちなみに、産科医療補償制度とは、分娩に関連して発症した脳性麻痺の子と家族の経済的負担を速やかに補償し、原因分析を行い、再発防止のための情報提供などを行う制度である。病院、診療所や助産所といった分娩を取り扱う機関が加入する制度である。原因分析の結果は、保護者と分娩機関にフィードバックされ、事例情報を整理し再発防止策を策定し広く一般に公開、提言される。

2.× 助産師免許の助産所内での掲示は、義務付けられていない。医療法第14条2の2項において、助産所の管理者は、厚生労働省令の定めるところにより、当該助産所に関し次に掲げる事項を当該助産所内に見やすいように掲示しなければならない。①管理者の氏名、②業務に従事する助産師の氏名、③助産師の就業の日時、④前三号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項と記載されている(※引用:「医療法」e-GOV法令検索様HPより)。

3.× 医療安全支援センターへの開設の届出は、義務付けられていない。医療安全支援センターとは、医療法第6条の13の規定に基づき、都道府県、保健所を設置する市及び特別区により、日本全国で380箇所以上設置されている医療の安全に関する情報の提供、研修の実施、意識の啓発などを行う機関である。医療に関する苦情・心配や相談に対応するとともに、医療機関、患者さん・住民に対して、医療安全に関する助言および情報提供等を行っている。

4.〇 正しい。職員に対する医療に係る安全管理のための研修の実施は、助産所の管理者に義務付けられている。これは、医療法第六条の十二に規定されている。「病院等の管理者は、前二条に規定するもののほか、厚生労働省令で定めるところにより、医療の安全を確保するための指針の策定、従業者に対する研修の実施その他の当該病院等における医療の安全を確保するための措置を講じなければならない」と規定されている(※引用:「医療法」e-GOV法令検索様HPより)。

医療法第六条の四の二

助産所の管理者(出張のみによつてその業務に従事する助産師にあつては当該助産師。次項において同じ。)は、妊婦又は産婦(以下この条及び第十九条第二項において「妊婦等」という。)の助産を行うことを約したときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該妊婦等の助産を担当する助産師により、次に掲げる事項を記載した書面の当該妊婦等又はその家族への交付及びその適切な説明が行われるようにしなければならない。
一 妊婦等の氏名及び生年月日
二 当該妊婦等の助産を担当する助産師の氏名
三 当該妊婦等の助産及び保健指導に関する方針
四 当該助産所の名称、住所及び連絡先
五 当該妊婦等の異常に対応する病院又は診療所の名称、住所及び連絡先
六 その他厚生労働省令で定める事項

(※引用:「医療法」e-GOV法令検索様HPより)

 

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