第98回(H27) 助産師国家試験 解説【午前16~20】

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16 正常新生児の呼吸器系の特徴について正しいのはどれか。

1.口呼吸である。
2.胸式呼吸を主体とする。
3.シーソー呼吸がみられる。
4.軽度の鼻閉音が聞かれる。

解答

解説
1.× 「口呼吸」ではなく鼻呼吸である。なぜなら、新生児は、相対的に舌が大きく、のどを覆っているため

2.× 「胸式呼吸」ではなく腹式呼吸が主体とする。なぜなら、新生児は、肋骨の角度が水平で呼吸筋が未発達のためである。肋骨の傾斜が成人に近づき、呼吸筋が発達してくるのに合わせて、2歳ごろから胸腹式呼吸となり、6歳ごろまでに胸式呼吸となる。

3.× シーソー呼吸が「みられない」。なぜなら、呼吸障害の徴候であるため。シーソー呼吸とは、息を吸うときに胸がへこんでおなかがふくらみ、息を吐くときはその逆で胸がふくらんでおなかがへこむ状態を指す。気道の通過障害や肺胞の拡張障害があると生じる。

4.〇 正しい。軽度の鼻閉音が聞かれる。なぜなら、新生児は鼻腔が狭く、鼻呼吸が主体であるため。鼻閉音とは、鼻腔が狭くなることで鼻から鳴る音のことである。

 

 

 

 

 

17 妊娠41週2日の1回経産婦。分娩時の胎児心拍数陣痛図でレベル5の異常波形が出現し、血管確保を行い、吸引分娩で出産した。児の体重は2600g。Apgar〈アプガー〉スコアは1分後7点、5分後9点。分娩第3期までの出血量は400mL、分娩後2時間の出血量は50mL。産婦は初回歩行を行い、気分不快はなかった。児の状態は良好であった。
 このときの対応で適切なのはどれか。

1.輸液を継続して行う。
2.母児同室で経過をみる。
3.児を保育器で観察する。
4.分娩後8時間まで安静にするよう説明する。

解答

解説

本症例のポイント

・妊娠41週2日の1回経産婦。
・分娩時の胎児心拍数陣痛図:レベル5(異常波形)
・血管確保、吸引分娩で出産。
・児の体重:2600g。アプガースコア:1分後7点、5分後9点。
・分娩第3期までの出血量:400mL、分娩後2時間の出血量:50mL。
・産婦は初回歩行を行い、気分不快なし(児の状態は良好)。
→異常所見や正常範囲をしっかりおさえておこう。ちなみに、吸引分娩とは、分娩第2期に分娩を補助および促進するために鉗子または吸引器を児頭に対して使用することである。子宮口全開大から胎児娩出までの遷延や胎児機能不全の疑いがある場合などに行われる。

1.× 輸液を継続して行う優先度は低い。なぜなら、現時点で、母児の状態は良好であるため。また、産婦の出血量も正常範囲内といえる。ちなみに、一般的に分娩出血量とは、分娩中及び分娩後2時間までの出血量をいい、正常値は500ml未満である。分娩後2時間までに500ml以上の場合を異常出血と呼ぶ。
【輸液の目的】
①失われた水分,電解質の補充のための輸液
②体液の恒常性を維持するための輸液
③栄養補給としての輸液
④毒物排泄や副作用軽減をねらった輸液
⑤薬剤を投与する手段としての輸液

2.〇 正しい。母児同室で経過をみる。なぜなら、現時点で、母児の状態は良好であるため。児のアプガースコアは1分後7点、5分後9点である。

3.× 児を保育器で観察する優先度は低い。なぜなら、現時点で、児の状態は良好(体重を含め)であるため。閉鎖式保育器とは、未熟性の高い出生直後の新生児・未熟児を収容する医療機器である。低出生体重児とは、2500g未満児のこと。1500g未満を「極低出生体重児」、1000g未満を「超低出生体重児」と呼ぶ。外的ストレスをできる限り減らす必要がある。ポジショニングは、体内にいるときに近い姿勢を保つ。子宮内環境に近づける。なぜなら、低出生体重児は、胎内で屈曲姿勢をとる期間が少なく、神経系の発達が未成熟、在胎週数に応じた筋緊張が低下を認めるため。したがって、成熟児に比べて、四肢伸展、外転位の不良姿勢や不良運動パターンを認めやすい。胎内での屈曲姿勢に近い肢位をとらせるのが正しい。そのため、タオルやクッションなどを使用し姿勢のセッティングが必要になる。ポイントは、①頚部の軽度屈曲位、②肩甲帯の下制・前進、③骨盤後傾、④肩・股関節中間位(内・外転)、⑤上・下肢屈曲位である。

4.× 分娩後8時間まで安静にするよう説明する優先度は低い。なぜなら、産婦は初回歩行を行い、気分不快なしであるため。過剰な安静といえる。

早期母子接触の適応基準、中止基準、実施方法

【早期母子接触の適応基準、中止基準、実施方法】
 施設の物理的、人的条件等により、ここに推奨する基本的な実施方法を一部変更せざるを得ない場合がある。そのような場合にも、早期母子接触の効果と安全性について十分に吟味し、母子の最大の利益となるように実施方法を決定する。また、早期母子接触を実施しない選択肢も考慮すべきである。以下に経腟分娩を対象とした各基準を示す。
<適応基準>
①母親の基準
・本人が「早期母子接触」を実施する意思がある
・バイタルサインが安定している
・疲労困憊していない
・医師、助産師が不適切と認めていない
②児の基準
・胎児機能不全がなかった
・新生児仮死がない(1 分・5 分 Apgar スコアが 8 点以上)
・正期産新生児
・低出生体重児でない
・医師、助産師、看護師が不適切と認めていない

<中止基準>
①母親の基準
・傾眠傾向
・医師、助産師が不適切と判断する
②児の基準
・呼吸障害(無呼吸、あえぎ呼吸を含む)がある
・SpO2:90%未満となる
・ぐったりし活気に乏しい
・睡眠状態となる
・医師、助産師、看護師が不適切と判断する

<実施方法>
 早期母子接触は母子に対して種々の利点がある。したがって、早期母子接触を実施できない特別な医学的理由が存在しない場合は、周産期医療従事者として、その機会を設けることを考える必要がある。早期母子接触は医療ではなく、ケアであることから、母親とスタッフ間のコミュニケーションがスムーズに行われている必要があり、出産後の母子を孤立させない配慮が大切である。特に、早期母子接触を実施する時は、母親に児のケアを任せてしまうのではなく、スタッフも児の観察を怠らないように注意する必要がある。
・バースプラン作成時に「早期母子接触」についての説明を行う。
・出生後できるだけ早期に開始する。30 分以上、もしくは、児の吸啜まで継続することが望ましい。
・継続時間は上限を 2 時間以内とし、児が睡眠したり、母親が傾眠状態となった時点で終了する。
・分娩施設は早期母子接触を行わなかった場合の母子のデメリットを克服するために、産褥期およびその後の育児に対する何らかのサポートを講じることが求められる。
母親:①「早期母子接触」希望の意思を確認する。②上体挙上する(30 度前後が望ましい)。③胸腹部の汗を拭う。④裸の赤ちゃんを抱っこする。⑤母子の胸と胸を合わせ両手でしっかり児を支える。
児:①ドライアップする。②児の顔を横に向け鼻腔閉塞を起こさず、呼吸が楽にできるようにする。③温めたバスタオルで児を覆う。④パルスオキシメータのプローブを下肢に装着するか、担当者が実施中付き添い、母子だけにはしない。⑤以下の事項を観察、チェックし記録する(呼吸状態:努力呼吸、陥没呼吸、多呼吸、呻吟、無呼吸に注意する。冷感、チアノーゼ、バイタルサイン(心拍数、呼吸数、体温など)、実施中の母子行動)

・終了時にはバイタルサイン、児の状態を記録する。

(※一部引用:「早期母子接触」実施の留意点 日本周産期・新生児医学会HPより)

 

 

 

 

 

18 在胎28週0日、体重1200gで緊急帝王切開により出生した男児。Apgar〈アプガー〉スコアは1分後3点で、気管内挿管後にNICUに入院し、呼吸窮迫症候群〈RDS〉と診断された。肺サーファクタント補充療法後、人工呼吸管理を開始し、いったん呼吸状態は安定した。2時間後に突然、児は徐脈になり、皮膚色が蒼白になった。
 急変の原因として最も考えられるのはどれか。

1.無気肺
2.緊張性気胸
3.気管支肺異形成
4.脳室周囲白質軟化症

解答

解説

本症例のポイント

・在胎28週0日、体重1200g(緊急帝王切開、男児、)。
・アプガースコア:1分後3点(呼吸窮迫症候群)、気管内挿管後にNICUに入院。
・肺サーファクタント補充療法後、人工呼吸管理を開始、いったん呼吸状態は安定。
・2時間後:突然、児は徐脈になり、皮膚色が蒼白になった。
→本症例は、呼吸窮迫症候群である。呼吸窮迫症候群の合併症をおさえておこう。1度、呼吸状態は安定し2時間後、突然徐脈、皮膚色が蒼白したことから、考えられる疾患を選択しよう。

→呼吸窮迫症候群とは、早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が産生されないか不足しているために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こる。早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、呼吸窮迫症候群を発症するリスクが高くなる。症状として、肺胞がしぼみ、呼吸がうまく出来ず、多呼吸の症状が現れる。息を吸うときに肋骨や胸骨の下が陥没するのが特徴(陥没呼吸)。 症状が悪化すると、呻吟、チアノーゼ、嗜眠、不規則呼吸および無呼吸となる。

1.× 無気肺より考えられるものが他にある。なぜなら、無気肺の場合、突然(急速に起こる)の徐脈とチアノーゼ(皮膚色の蒼白)は考えにくいため。ちなみに、無気肺とは、気管支の閉塞などによって肺内の空気の出入りがなくなり、空気が抜けてしまった状態である。原因としては、肺門部の扁平上皮がんなどの原発性肺がん、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の粘液栓による気道の閉塞や気道異物などがあげられる。

2.〇 正しい。緊張性気胸が急変の原因として最も考えられる。なぜなら、特に人工呼吸管理中の早産児では、気道圧が高く気胸が発生しやすいため。ちなみに、緊張性気胸とは、胸壁と肺との間に空気がたまることで胸部への圧力が高まり、心臓に戻る血液が減少することである。症状には、胸痛、息切れ、速い呼吸、心拍数の増加などがあり、ショックに至ることがある。

3.× 気管支肺異形成より考えられるものが他にある。なぜなら、気管支肺異形成は、主に長期にわたる人工呼吸管理や酸素療法が原因で起こる慢性肺疾患であるため。ちなみに、気管支肺異形成とは、低出生体重児や早産児に生じる呼吸窮迫症候群に続発する慢性的な肺疾患で、長期的に人工呼吸器や酸素投与によって引き起こされる。生後28日を超えても呼吸障害が続き、酸素の使用が必要な状態を指す。気管支肺異形成症を発症すると、長期間に渡って酸素や人工呼吸器に頼る必要があり風邪にかかるだけでも呼吸状態が悪くなりやすい傾向があるため注意が必要である。症状として、頻呼吸、鼻翼呼吸(鼻の孔を膨らませる呼吸)、陥没呼吸(肩で大きく呼吸する肩呼吸や肋骨の間がへこむ呼吸)、喘鳴が見られる。

4.× 脳室周囲白質軟化症より考えられるものが他にある。なぜなら、脳室周囲白質軟化症の場合、突然(急速に起こる)の徐脈とチアノーゼ(皮膚色の蒼白)は考えにくいため。脳室周囲白質軟化症とは、早産児あるいは低出生体重児が来たしうる、脳室周囲の白質に軟化病巣が生じる疾患である。原因として、出生前~周産期に低酸素や仮死、出血などがあげられる。脳室周囲白質部、特に三角部には頭頂葉に存在する運動中枢からの神経線維、いわゆる皮質脊髄路が存在するため、脳室周囲白質軟化症の存在する児ではその連絡が絶たれ、痙性麻痺(脳性麻痺の一つ)となる。

気胸とは?

【原発性自然気胸】
原発性自然気胸とは、肺疾患のない人に明らかな原因なく起こる気胸のこと。通常、肺のややもろくなった部分(ブラ)が破裂した際に発生する。特徴として、40歳未満で背が高い男性の喫煙者に最もよくみられる。ほとんどの人が完全に回復するが、最大で50%の人に再発がみられる。

【続発性自然気胸】
続発性自然気胸とは、基礎に肺疾患がある人に発生する気胸のこと。最も多いものは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のある高齢者である。他にも、嚢胞性線維症、喘息、ランゲルハンス細胞組織球症、サルコイドーシス、肺膿瘍、結核、ニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎など、その他の肺疾患の患者でもみられる。特徴として、基礎に肺疾患があるため、原発性自然気胸に比べて症状や治療成績は一般に悪くなる。再発率は、原発性自然気胸と同程度である。

 

 

 

 

 

19 乳幼児期における事故を予防するための方法で最も適切なのはどれか。

1.車に乗るときは親が抱く。
2.おもちゃはデザインで選ぶ。
3.子どもを1人で家に残さない。
4.風呂の残り湯は浴槽の底から10cm以下とする。

解答

解説

乳幼児期に起こりやすい事故

乳幼児とは、小学校入学前の子どもの総称である。
1歳までに起きやすい事故:誤飲や転落・火傷など。
1〜4歳までに起こりやすい事故:交通事故や溺水である。

1.× 車に乗るときは親が抱くことは法律で禁止されている。道路交通法の第71条3の3項において「自動車の運転者は、幼児用補助装置を使用しない幼児を乗車させて自動車を運転してはならない。ただし、疾病のため幼児用補助装置を使用させることが療養上適当でない幼児を乗車させるとき、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。」と記載されている(※引用:「道路交通法」e-GOV法令検索様HPより)。つまり、幼児は、幼児用補助装置(チャイルドシート)に乗せる必要がある。

2.× おもちゃは、「デザイン」ではなく安全性で選ぶ。ほかにも、デザインより年齢に適したものを選ぶ。なぜなら、小さな部品が含まれているおもちゃは、誤飲や窒息の危険があるため。

3.〇 正しい。子どもを1人で家に残さない。なぜなら、子どもを1人で家に残すことで、転倒、窒息、火傷、溺水など様々な事故のリスクが増すため。常に大人の目の届く場所で子どもを見守ることが事故予防の基本である。

4.× 風呂の残り湯は、浴槽の底から10cm以下「でも残さない」。なぜなら、残り湯が10cmであっても、乳幼児が浴槽に落ちると転び、溺れる危険があるため。風呂の残り湯は、使用後すぐに完全に排水することが推奨される。

 

 

 

 

 

20 4か月児健康診査に来所した母児。児の計測時、大腿部につねったようなあざがみられた。児の表情は乏しく笑顔が見られない。母親は人目を気にするようにして落ち着きがなく、計測が終わると助産師から児を取り上げるようにした。児の体重は出生時2300g、生後1か月3100gと母子健康手帳に記載があり、本日は4000gであった。体温37.2℃、呼吸数34/分、脈拍110/分。定頸している。オムツかぶれはない。
 児のアセスメントで最も適切なのはどれか。

1.発育は正常である。
2.運動発達に異常がある。
3.被虐待児の可能性がある。
4.バイタルサインは正常から逸脱している。

解答

解説

本症例のポイント

4か月児健康診査に来所した母児。
・児:大腿部につねったようなあざ
・児の表情:乏しく笑顔が見られない。
・母親:人目を気にするようにして落ち着きがない。
・計測が終わると助産師から児を取り上げるようにした。
・児の体重:出生時2300g生後1か月3100g本日4000g
体温37.2℃、呼吸数34/分、脈拍110/分。
定頸している。オムツかぶれはない。
→上記の評価内容の異常所見や正常範囲が分かるようにしておこう。

(※図:日本版デンバー式発達スクリーニング検査)

1.× 発育は正常である「とはいえない」。なぜなら、体重が生後1か月から生後4か月までで900gしか増えていないため。一般的に1日約20~30g増える計算である。

2.× 運動発達は、「異常」ではなく正常である。なぜなら、生後4か月で定頸がみられているため。

3.〇 正しい。被虐待児の可能性がある。なぜなら、児の大腿部につねったようなあざがみられるため。ほかにも、児の表情は乏しく笑顔が見られないことや、母親は人目を気にするようにして落ち着きがないこと、計測が終わると助産師から児を取り上げるようにしたことなども、虐待が疑われる要因である。

4.× バイタルサインは正常から逸脱している「とはいえない」。なぜなら、すべて正常範囲内であるため。生後4ヶ月児の平熱は、個人差はあるものの36.3~37.4℃程度と言われている。生後1ヶ月頃までは体温が高めで、37.5℃前後である。生後3~4ヶ月以降になると少しずつ下がってくるのが一般的であるが、授乳の後や元気に遊んだ後、気温が急に上がったときなどは体温も上がりやすいので注意が必要である。

体重の変化

【新生児の生理的体重の変化】
正期産により出生した正常な新生児の生理的体重減少率は、出生体重の3~10%の範囲であり、生後3~5日がそのピークである。減少率とは、出生時体重からの減少の割合で、「(出生時の体重-現在の体重)÷ 出生時の体重 × 100」で算出される。

【正常乳児の一日体重増加量の目安】
・0~3か月:25~30g
・3~6か月:20~25g
・6~9か月:15~20g
・9~12か月:7~10g

 

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