第97回(H26) 助産師国家試験 解説【午後36~40】

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次の文を読み36~38の問いに答えよ。
 20歳の女性。未婚。大学生。月経が不規則で、3か月の無月経と悪心を主訴として、パートナーと一緒に来院した。身長163cm、体重48kg。経腟超音波検査で胎児心拍が確認され、頭殿長〈CRL〉は50mmであった。2人は妊娠を喜んでいる。内診時、左右の小陰唇に水疱が数個みられた。

36 助産師は親意識を促すために、妊婦とパートナーに「赤ちゃんの心臓の音を聴いてみますか」と聞いた。2人が希望したため、Doppler〈ドプラ〉法で胎児心音を聴取することにした。妊婦の腹部を図に示す。
 プローブを当てる部位で適切なのはどれか。

1.ア
2.イ
3.ウ
4.エ

解答

解説

(※図引用:「胎児超音波心音計」株式会社いつくし様)

本症例のポイント

・20歳の女性(未婚)。
・頭殿長〈CRL〉:50mm
→本症例は、妊娠初期後半(妊娠11〜12週程度)である。妊娠中期では、子宮底はまだ下腹部に位置している。妊娠12週頃とすると、恥骨上9cm程度にある。

1~2.× ア/イは、腹部左側は、心臓の位置に該当しない。

3.〇 正しい。がプローブを当てる部位である。なぜなら、妊娠12週頃(頭殿長50mm)とすると、恥骨上9cm程度にあるため。

4.× エは、妊娠24~32週におけるプローブを当てる部位である。

妊娠週数

妊娠初期:妊娠1か月~4か月(妊娠0~15週)

妊娠中期:妊娠5か月~7か月(妊娠16~27週)

妊娠後期:妊娠8か月~10か月(妊娠28週~)

 

 

 

 

 

次の文を読み36~38の問いに答えよ。
 20歳の女性。未婚。大学生。月経が不規則で、3か月の無月経と悪心を主訴として、パートナーと一緒に来院した。身長163cm、体重48kg。経腟超音波検査で胎児心拍が確認され、頭殿長〈CRL〉は50mmであった。2人は妊娠を喜んでいる。内診時、左右の小陰唇に水疱が数個みられた。

37 妊婦は「妊娠すると太ってはダメと友達から聞きました。できるだけこの体型を維持したいです」と言う。助産師は妊娠中の体重のコントロールについて説明した。この妊婦の体重増加量の目安はどれか。

1.5kg以上7kg未満
2.7kg以上9kg未満
3.9kg以上12kg未満
4.12kg以上15kg未満

解答3(※4)
※改訂されている。

解説

本症例のポイント

・20歳の女性(未婚、大学生、月経が不規則)
・身長163cm、体重48kg(BMI:18)。
→BMIの計算方法は、BMI(kg/㎡)=体重(kg)÷ 身長(m)の2乗で求められる。
→基準として、①低体重(やせ)の場合:12~15kg、②標準(ふつう)の場合:10~13kg、③肥満(1度)の場合:7~10kg、④肥満(2度以上):個別対応(上限5kgまでが目安)とされている(厚生労働省「『妊産婦のための食生活指針』の改定について(令和3年3月 31 日)」)

改定前に使用されていた「妊娠全期間を通しての推奨体重増加量」
BMI18.5以下:9~12㎏
②BMI18.5~25:7~12㎏
③BMI25以上:個別対応

1.× 5kg以上7kg未満は、いずれも該当しない。

2.× 7kg以上9kg未満は、肥満(1度)の場合の範囲である。

3.△ 9kg以上12kg未満は、R6年現在は改訂されており、標準(ふつう)の場合の範囲である。本症例は、BMI:18であるため該当しない。

4.〇 正しい。12kg以上15kg未満は、本症例(BMI18:やせ型)の体重増加量の目安である。

(※引用:「妊娠中の体重増加指導の目安」)

 

 

 

 

 

次の文を読み36~38の問いに答えよ。
 20歳の女性。未婚。大学生。月経が不規則で、3か月の無月経と悪心を主訴として、パートナーと一緒に来院した。身長163cm、体重48kg。経腟超音波検査で胎児心拍が確認され、頭殿長〈CRL〉は50mmであった。2人は妊娠を喜んでいる。内診時、左右の小陰唇に水疱が数個みられた。

38 妊婦は外陰部がピリピリすると訴えた。
 治療をした上で、今後の性生活での注意点で適切なのはどれか。

1.特に注意することはない。
2.コンドームを使用する。
3.オーラルセックスはしてもよい。
4.水疱が消えるまで性器での性交渉は中止する。

解答

解説

本症例のポイント

・20歳の女性(未婚、大学生、月経が不規則)
・身長163cm、体重48kg。
・左右の小陰唇に水疱が数個みられた。
・妊婦は外陰部がピリピリすると訴えた。
→本症例は、性器ヘルペスが疑われる。性器ヘルペスとは、ヘルペスウィルスの感染により性器に水泡(水ぶくれ)、腫れ、痛み、かゆみなどの症状が起こる。初めての感染のときに症状が強く出て、全身倦怠感やリンパ節の腫れを起こす。発病後たいてい1~2週間で症状は治まる。性器ヘルペスウイルス感染症は、5類感染症の定点把握対象疾患である。

1.× 注意することとして、性交渉を控える必要がある。なぜなら、母子感染も考えられるため。

2.× 「コンドームを使用する」のではなく、性交渉自体を控える必要がある。なぜなら、唾液や粘膜からも感染するため。

3.× オーラルセックスもしてはならない。してもよい。なぜなら、唾液や粘膜からも感染するため。ちなみに、オーラルセックスとは、口や舌を使って相手の性器やその周辺を刺激する性行為の一種である。オーラルとは、「口腔」を意味する英語「oral」を語源とする。

4.〇 正しい。水疱が消えるまで性器での性交渉は中止する。なぜなら、水疱が消えるまで性的接触を避けることが母子とも最も安全であるため。

 

 

 

 

 

次の文を読み39~41の問いに答えよ。
 53歳の女性。4回経妊3回経産婦。第1子は4100gで、鉗子分娩であった。48歳で閉経。夫は50歳で健在。初診時、身長145cm、体重70kg。6か月前から夕方になると外陰部に違和感を感じるようになったと話す。また、トイレが近く、尿を我慢していると立ち上がった時に少し漏れるという。診察すると、膀胱が努責により腟口から2cm上方まで下垂してくる。

39 追加して確認する情報はどれか。

1.性交渉の有無
2.四肢冷感の有無
3.習慣的飲酒の有無
4.ホットフラッシュの有無

解答

解説

本症例のポイント

・53歳の女性(4回経妊3回経産婦。第1子は4100g、鉗子分娩、48歳で閉経)。
・夫は50歳で健在。
・初診時:身長145cm、体重70kg。
・6か月前:夕方になると外陰部に違和感を感じる。
・トイレが近く、尿を我慢していると立ち上がった時に少し漏れる
・診察:膀胱が努責により腟口から2cm上方まで下垂してくる。
→本症例は、骨盤臓器脱(腹圧性尿失禁)が疑われる。骨盤臓器脱とは、子宮や膀胱、直腸といった骨盤臓器が下垂し腟から脱出した状態である。ペッサリー療法とは 、骨盤臓器脱により子宮や膀胱、腸など膣から出てきた臓器を人工的に膣内に納める方法で、臓器の下垂に伴う不快な症状を軽減・緩和する目的で行う。骨盤臓器脱の危険因子として、 慢性的な咳や習慣性の便秘、重い荷物を持つなどの労務、仕事、肥満、多産、加齢などがあげられる。他にも、骨盤底筋と総称される骨盤の支持組織が分娩時に損傷されたり、先天性な脆弱性、また更年期以降のエストロゲンの低下により弱くなり支持力を失うことにより引き起こされる。

1.〇 正しい。性交渉の有無は、追加して確認する情報である。なぜなら、骨盤臓器脱(子宮脱)と関連性が高いため。膣粘膜が乾いている場合、挿入の際に出血を起こす可能性がある。子宮脱が軽症の場合は、骨盤底筋体操を指導する。一概に、性交渉によって症状が悪化しない。むしろ、性交によって骨盤底筋が鍛えられ、症状が改善する可能性もあることが報告されている。

2.4.× 四肢冷感/ホットフラッシュの有無より優先されるものが他にある。なぜなら、これら症状は更年期障害に関連する項目であるため。ホットフラッシュとは、上半身ののぼせ、ほてり、発汗などが起こる、更年期障害の代表的な症状である。急に顔が熱くなったり、汗が止まらなくなったりする症状が一日に何回も出ては消える。

3.× 習慣的飲酒の有無より優先されるものが他にある。なぜなら、飲酒の有無より影響するのは切迫性尿失禁であるため。本症例は、腹圧性尿失禁が疑われる。腹圧性尿失禁とは、腹圧をかけるような運動時(重い荷物を持ち上げたときなど)に尿が漏れる状態で、男性よりも女性に多くみられる。尿道括約筋を含む骨盤底の筋肉が弱くなることが原因で、加齢、出産、喫煙、肥満などと関連している。ちなみに、切迫性尿失禁とは、膀胱が自身の意思に反して収縮することで、急に排尿したくなりトイレに行くまでに我慢できずに漏れてしまう失禁である。原因として膀胱にうまく尿がためられなくなる過活動膀胱が多く、脳血管障害など排尿にかかわる神経の障害で起きることもある。過活動性膀胱に対して、電気刺激療法や磁気刺激療法が有効とされる。薬物療法も用いられる。などは膀胱を刺激するので避けたい。

更年期障害とは?

更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。

 

 

 

 

 

次の文を読み39~41の問いに答えよ。
 53歳の女性。4回経妊3回経産婦。第1子は4100gで、鉗子分娩であった。48歳で閉経。夫は50歳で健在。初診時、身長145cm、体重70kg。6か月前から夕方になると外陰部に違和感を感じるようになったと話す。また、トイレが近く、尿を我慢していると立ち上がった時に少し漏れるという。診察すると、膀胱が努責により腟口から2cm上方まで下垂してくる。

40 この女性は保存的治療を希望したため、骨盤底筋体操を指導した。
 追加で指導する内容で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.塩分制限
2.体重の減量
3.排尿日誌の記載
4.水分摂取の制限
5.毎朝のジョギング

解答2・3

解説

過活動膀胱とは?

過活動膀胱とは、膀胱の蓄尿期において尿意切迫感があり、頻尿や尿失禁をきたす疾患である(切迫性尿失禁)。明らかな神経学的異常に起因する神経因性過活動膀胱と、原因を特定できない非神経因性過活動膀胱に分けられる。原因として、①加齢、②骨盤底筋の低下、③生活習慣病、④肥満などと関連するといわれている。有病率は高齢になるほど高くなる。過活動膀胱では、膀胱訓練や骨盤底筋訓練など機能訓練を行い、薬物療法で治療を行う。

骨盤底筋は子宮、膀胱、直腸を含む骨盤臓器を支える筋肉で、骨盤底筋を強化することで尿漏れ対策となる。仰臥位が基本的な姿勢であるが、伏臥位や座位など日常生活の中でどんな姿勢で行ってもよい。座位や膝立て背臥位などで、上体の力を抜いてお尻の穴を引き上げて「きゅっ」とすぼめ、5秒キープする動作を10~20回ほど繰り返す方法と、すぼめたりを繰り返す方法の2種類ある。

膀胱訓練とは、排尿の間隔を徐々に延長し、膀胱にためることができる尿量を徐々に増やしていくものである。最初は30秒程度からスタートし、徐々に我慢する時間を延ばしていく。

 

(※引用:「産婦人科診療ガイドライン外来編2020 P226」)

1.× 塩分制限より優先されるものが他にある。塩分制限は、腎機能の低下、高血圧患者に適応となる。

2.〇 正しい。体重の減量は、追加で指導する。なぜなら、肥満による内臓脂肪の増加は子宮や膀胱などの臓器を圧迫し、子宮脱のリスクを高めるため。また、本症例(身長145cm、体重70kg:BMI 33.3)は、肥満の範囲に入るため、生活習慣の改善が必要である。BMIとは、体重(㎏) ÷ 身長の2乗(m) で計算される体格指数のことである。日本肥満学会の基準では、18.5以下:低体重、25以下:普通、30以下:肥満Ⅰ度、35以下:肥満Ⅱ度、40以下:肥満Ⅲ度、40以上:肥満Ⅳ度である。

3.〇 正しい。排尿日誌の記載は、追加で指導する。なぜなら、生活習慣の改善のほか、膀胱訓練となるため。膀胱訓練とは、排尿の間隔を徐々に延長し、膀胱にためることができる尿量を徐々に増やしていくものである。最初は30秒程度からスタートし、徐々に我慢する時間を延ばしていく。

4.× 水分摂取の制限より優先されるものが他にある。なぜなら、水分摂取の制限は排尿回数を減らすことはできるが、脱水症状を助長させるため。また、脱水状態(水分が不足する)と血液粘稠度が上昇し、血栓が形成されやすくなるため。

5.× 毎朝のジョギングより優先されるものが他にある。なぜなら、継続するのが困難(難易度が高すぎる)であるため。53歳の女性(BMI 33.3)に対し、継続的に行え、運動の難易度も合った効果が期待できる運動を選択すべきである。

(※引用:「骨盤臓器脱に対する腹腔鏡下腟断端挙上術を実施する際の当院での工夫」聖隷浜松病院 婦人科様HP)

 

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