第97回(H26) 助産師国家試験 解説【午前26~30】

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26 妊娠高血圧腎症の診断基準に含まれるのはどれか。

1.蛋白尿
2.両下肢の浮腫
3.低アルブミン血症
4.血中クレアチニン高値
5.糸球体濾過量〈GFR〉低値

解答

解説

(※図引用:「妊娠高血圧腎症の診断」著:神田昌子より)

1.〇 正しい。蛋白尿が妊娠高血圧腎症の診断基準に含まれる。妊娠高血圧腎症とは、妊娠20週以降に高血圧・蛋白尿が出現した場合をいう。妊娠前から高血圧と蛋白尿が存在し、妊娠20週以降にいずれかが増悪し、臓器損傷などをきたした場合でも診断される(※詳しくは上図参照)。

2.× 両下肢の浮腫は、妊娠高血圧腎症の診断基準に含まれない。浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起きることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。

3.× 低アルブミン血症は、妊娠高血圧腎症の診断基準に含まれない。アルブミンとは、肝臓で作られるたんぱく質で、肝臓や栄養状態の指標となる。血清総蛋白の60%程度を占め肝臓で生成される。アルブミンが低値の場合は、低栄養状態、がん、 肝硬変など、一方で高値の場合は、脱水により血管内の水分が減少し、濃縮効果によることが考えられる。主に血液検査で測定する。

4.× 血中クレアチニン高値は、妊娠高血圧腎症の診断基準に含まれない。クレアチニンとは、筋肉を動かすためのエネルギーを使った後に出てくる老廃物の一つで、体にとって不要なもので、尿として体の外に出す必要がある。本来は、尿素窒素と同様に腎臓の糸球体で濾過され尿中に排泄されるが、腎臓の機能が低下すると尿中に排泄される量が減少し、血液中にクレアチニンが溜まる。

5.× 糸球体濾過量〈GFR〉低値は、妊娠高血圧腎症の診断基準に含まれない。糸球体濾過量とは、腎臓の機能を表す指標で「GFR(Glomerular Filtration Rate)」とも呼ばれる。腎臓のなかにある糸球体(毛細血管の集合体)が1分間にどれくらいの血液を濾過して尿を作れるかを示している。推算糸球体濾過量(eGFR)の正常値は、「60ml/分/1.73㎡以上」で、年齢、性別、血清クレアチニン値、シスタチンC値から計算する。①正常(G1:90以上)、②軽度低下(G2:60〜89)、③中等度低下(G3a:45〜59、G3b:30〜44)、④高度低下(G4:15〜29)、⑤末期腎不全(G5:15以下)に分類される。

 

 

 

 

 

27 低置胎盤の胎盤辺縁から内子宮口までの距離を測定し、経腟分娩の可否を判断するのに適切な時期はどれか。

1.妊娠20週
2.妊娠28週
3.妊娠30週
4.妊娠35週
5.妊娠38週

解答

解説

(※引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P151」)

1~3.5.× 妊娠20週/妊娠28週/妊娠30週/妊娠38週は適切な時期とはいえない。

4.〇 正しい。妊娠35週は、低置胎盤の胎盤辺縁から内子宮口までの距離を測定し、経腟分娩の可否を判断するのに適切な時期である。

【妊婦検診の間隔と主な内容を妊娠週数】

(※引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P2」)

 

 

 

 

 

28 在胎32週3日、1850gで出生した児。出生後に呼吸障害は認められなかったが、保温のため保育器に収容した。
 出生当日の対応で最も適切なのはどれか。

1.経口哺乳を開始する。
2.生理食塩水の輸液を準備する。
3.保育器の設定温度は36.0℃にする。
4.保育器内の酸素濃度は40%にする。
5.初回面会時に母親にタッチングを勧める。

解答

解説

本症例のポイント

在胎32週3日1850gで出生児。
・出生後:呼吸障害なし
・保温のため保育器に収容。
→早産とは、妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産のことである。分娩時期の分類として、①流産期とは、妊娠21週6日までの妊娠中絶(分娩)。②早産期とは、妊娠22週0日~36週6日における分娩。③正期産とは、妊娠37週0日~41週6日までの分娩。④過期産とは、42週0日以後の分娩である。
→低出生体重児とは、2500g未満児のこと。1500g未満を「極低出生体重児」、1000g未満を「超低出生体重児」と呼ぶ。外的ストレスをできる限り減らす必要がある。
→保育器とは、未熟性の高い出生直後の新生児・未熟児を収容する医療機器である。主に新生児集中治療室(NICU)を備えた病院で使用される。

1.× 経口哺乳を開始する優先度は低い。なぜなら、本症例は、早産(在胎32週3日)かつ低出生体重児(2500g未満)であるため。早産児は胃が小さく、吸啜反射および嚥下反射は未熟であり、胃および腸管運動が不十分であるため、哺乳不良がみられることが極めて多い。このような因子により経口栄養および経鼻胃管栄養への耐容能が共に妨げられ、誤嚥リスクが生じる。経口哺乳は体重が2,000g以上になって行うことが多い。

2.× 生理食塩水の輸液を準備する優先度は低い。なぜなら、本症例は、状態悪化がみられているわけではないため。生理食塩水の輸液は、主に水分不足の場合に用いられる。ほかにも、生理食塩水の点滴の主な適応は、外科手術などで水又は電解質が欠乏している脱水症のときに、有効細胞外液量の維持と循環機能の安定化を目的として使用する。

3.× 保育器の設定温度は、「36.0℃」ではなく34.0±0.5℃にする。なぜなら、新生児が生まれた際の体重に応じて、適切な体温管理を行う必要があるため。日齢0の場合、1000g未満は保育器内36.0℃に設定する。1000~1500gは保育器内35.0±0.5℃に設定する。1500~2000gは保育器内34.0±0.5℃に設定する。2500g以上は33.0℃に設定する(※参考:(「新生児の診察と検査」著:小川雄之亮)。

4.× 保育器内の酸素濃度は40%にする優先度は低い。なぜなら、本症例は出生後、呼吸障害なしため。酸素濃度を高める必要があるのは、呼吸障害が認められる場合である。

5.〇 正しい。初回面会時に母親にタッチングを勧める。なぜなら、母親に保育器内でのタッチングを促すことは、親子の絆を深めるだけでなく、母親の安心感の安定に寄与し、児の成長発達を促せると考えられるため。ちなみに、タッチングとは、意図的な身体への接触のことで、非言語的コミュニケーションの1つとして手や指で撫でる、さするなど肌と肌との触れ合いを通じた相互作用性のある行為であり、心の触れ合い、情緒的安定をもたらす。

早期母子接触の適応基準、中止基準、実施方法

【早期母子接触の適応基準、中止基準、実施方法】
 施設の物理的、人的条件等により、ここに推奨する基本的な実施方法を一部変更せざるを得ない場合がある。そのような場合にも、早期母子接触の効果と安全性について十分に吟味し、母子の最大の利益となるように実施方法を決定する。また、早期母子接触を実施しない選択肢も考慮すべきである。以下に経腟分娩を対象とした各基準を示す。
<適応基準>
①母親の基準
・本人が「早期母子接触」を実施する意思がある
・バイタルサインが安定している
・疲労困憊していない
・医師、助産師が不適切と認めていない
②児の基準
・胎児機能不全がなかった
・新生児仮死がない(1 分・5 分 Apgar スコアが 8 点以上)
・正期産新生児
・低出生体重児でない
・医師、助産師、看護師が不適切と認めていない

<中止基準>
①母親の基準
・傾眠傾向
・医師、助産師が不適切と判断する
②児の基準
・呼吸障害(無呼吸、あえぎ呼吸を含む)がある
・SpO2:90%未満となる
・ぐったりし活気に乏しい
・睡眠状態となる
・医師、助産師、看護師が不適切と判断する

<実施方法>
 早期母子接触は母子に対して種々の利点がある。したがって、早期母子接触を実施できない特別な医学的理由が存在しない場合は、周産期医療従事者として、その機会を設けることを考える必要がある。早期母子接触は医療ではなく、ケアであることから、母親とスタッフ間のコミュニケーションがスムーズに行われている必要があり、出産後の母子を孤立させない配慮が大切である。特に、早期母子接触を実施する時は、母親に児のケアを任せてしまうのではなく、スタッフも児の観察を怠らないように注意する必要がある。
・バースプラン作成時に「早期母子接触」についての説明を行う。
・出生後できるだけ早期に開始する。30 分以上、もしくは、児の吸啜まで継続することが望ましい。
・継続時間は上限を 2 時間以内とし、児が睡眠したり、母親が傾眠状態となった時点で終了する。
・分娩施設は早期母子接触を行わなかった場合の母子のデメリットを克服するために、産褥期およびその後の育児に対する何らかのサポートを講じることが求められる。
母親:①「早期母子接触」希望の意思を確認する。②上体挙上する(30 度前後が望ましい)。③胸腹部の汗を拭う。④裸の赤ちゃんを抱っこする。⑤母子の胸と胸を合わせ両手でしっかり児を支える。
児:①ドライアップする。②児の顔を横に向け鼻腔閉塞を起こさず、呼吸が楽にできるようにする。③温めたバスタオルで児を覆う。④パルスオキシメータのプローブを下肢に装着するか、担当者が実施中付き添い、母子だけにはしない。⑤以下の事項を観察、チェックし記録する(呼吸状態:努力呼吸、陥没呼吸、多呼吸、呻吟、無呼吸に注意する。冷感、チアノーゼ、バイタルサイン(心拍数、呼吸数、体温など)、実施中の母子行動)

・終了時にはバイタルサイン、児の状態を記録する。

(※一部引用:「早期母子接触」実施の留意点 日本周産期・新生児医学会HPより)

 

 

 

 

 

29 在胎38週0日、体重2300gで出生した児。小頭症、心奇形および白内障が認められた。
 この症例の診断において優先される確認事項はどれか。

1.妊娠初期のトキソプラズマ感染の有無
2.妊娠初期の風疹ウイルス感染の有無
3.母親のアルコール依存症の有無
4.母親の薬物摂取の有無
5.母親の喫煙の有無

解答

解説

本症例のポイント

・在胎38週0日:体重2300gで出生児。
小頭症心奇形白内障
→それぞれの選択肢の病気の症状をおさえておこう。

1.× 妊娠初期のトキソプラズマ感染の有無より優先されるものが他にある。先天性トキソプラズマ症とは、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)の経胎盤感染によって引き起こされる。症状として、未熟性、子宮内胎児発育不全、黄疸、肝脾腫、心筋炎、肺炎、発疹、脈絡網膜炎、水頭症、頭蓋内石灰化、小頭症、痙攣である。十分な加熱処理がされていない生肉、トキソプラズマの終宿主である猫との接触・糞尿処理が感染のリスクとなる。

2.〇 正しい。妊娠初期の風疹ウイルス感染の有無が最も優先される。なぜなら、本症例の小頭症心奇形白内障が一致するため。ちなみに、先天性風疹症候群とは、風しんウイルスの胎内感染(垂直感染)によって先天異常を起こす感染症である。3徴は、白内障、先天性心疾患、難聴である。その他先天性緑内障、色素性網膜症、紫斑、脾腫、小頭症、精神発達遅滞、髄膜脳炎、骨のX線透過性所見、生後24時間以内に出現する黄疸などを来しうる。臨床的特徴として、先天異常の発生は妊娠週齢と明らかに相関し、妊娠12週までの妊娠初期の初感染に最も多くみられ、20週を過ぎるとほとんどなくなる。

3.× 母親のアルコール依存症の有無より優先されるものが他にある。アルコール依存症による胎児への影響は、小頭症や心奇形を引き起こすことがあるが、白内障はみられない。

4.× 母親の薬物摂取の有無より優先されるものが他にある。薬物摂取による胎児への影響も考えられるが、3徴候「小頭症心奇形白内障」ということで、風疹ウイルス感染が最も優先されるべきである。

5.× 母親の喫煙の有無より優先されるものが他にある。喫煙による胎児への影響も考えられるが、3徴候「小頭症心奇形白内障」ということで、風疹ウイルス感染が最も優先されるべきである。母親の血液中のニコチン濃度は、自らの喫煙以外にも、父親など生活を共にする家族の喫煙による受動喫煙によっても有意に増加する。また、父母の喫煙により、乳幼児の受動喫煙も問題となる。非喫煙の両親に比べ、両親が喫煙する家庭の小児呼吸器疾患の発症頻度は約3倍である。さらに、乳児突然死症候群の発症頻度は、乳児の覚醒反応を遅延させるために約5倍の高率であることが明らかにされている(※引用:「-たばことお酒の害から赤ちゃんを守りましょう-」厚生労働省HPより)。

(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P60」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

 

 

 

 

 

30 助産師の守秘義務が規定されているのはどれか。

1.刑法
2.医療法
3.母子保健法
4.保健師助産師看護師法
5.個人情報の保護に関する法律

解答

解説

1.〇 正しい。刑法は、助産師の守秘義務が規定されている。刑法とは、犯罪とそれに対する刑罰の関係を規定する法である。 刑法には、医師・薬剤師・助産師などに対し、職務上の秘密を漏らした場合の罰則規定があるが、保健師は含まれていない。(刑法第134条)医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以上の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

2.× 医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。

3.× 母子保健法とは、母性、乳幼児の健康の保持および増進を目的とした法律である。母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。各種届出は市町村長または特別区、指定都市の区長に届け出る。

4.× 保健師助産師看護師法とは、保健師・助産師および看護師の資質を向上し、もって医療および公衆衛生の普及向上を図ることを目的とする日本の法律である。通称は保助看法。(※一部引用:「保健師助産師看護師法」厚生労働省HPより)

5.× 個人情報の保護に関する法律とは、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とした個人情報の取扱いに関連する日本の法律である。定義(第2条)には、「この法律において『個人情報』とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などにより特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)をいう」とされている。

 

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