第97回(H26) 助産師国家試験 解説【午前1~5】

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1 国際助産師連盟〈ICM〉の「基本的助産業務に必須な能力2010年」に示されている能力はどれか。

1.助産師自身の健康管理能力
2.女性の経済的自立支援能力
3.幼児を持つ母親への子育て支援能力
4.母子のケアの社会的、疫学的、文化的能力

解答

解説

基本的助産業務に必須な能力 2010 年

母子のケアの社会的、疫学的、文化的な能力 
②妊娠前のケアと家族計画の能力 
③妊娠中のケア提供能力 
④分娩と出産時のケア提供能力 
⑤産褥期の女性のためのケア提供能力
⑥新生児のための 新生児のための出産後ケアの能力
⑦自然及び人工妊娠中絶関連ケアのファシリテーション ファシリテーション ファシリテーション能力 

(※参考:「国際助産師連盟 国際助産師連盟 基本的助産業務に 基本的助産業務に必須な能力 2010 年」)

1~3.× 助産師自身の健康管理能力/女性の経済的自立支援能力/幼児を持つ母親への子育て支援能力は、国際助産師連盟〈ICM〉の「基本的助産業務に必須な能力2010年」に示されている能力とはいえない。

4.〇 正しい。母子のケアの社会的、疫学的、文化的能力は、国際助産師連盟〈ICM〉の「基本的助産業務に必須な能力2010年」に示されている能力である。

 

 

 

 

 

2 魚介類に蓄積し、妊婦が過量摂取することにより胎児の健康への影響が懸念されているため、厚生労働省が妊婦の摂取量の目安を示している物質はどれか。

1.有機鉛
2.有機リン
3.有機水銀
4.有機塩素化合物

解答

解説

(※図引用:「これからママになるあなたへ」厚生労働省HPより)

有機水銀について

有機水銀は特に胎児の中枢神経の発達に影響を及ぼすとされている。妊婦、幼児、近く妊娠を予定されている方は、有機水銀濃度が高い水産物を主菜とする料理を週1回以内(合計で週におおむね50~100g程度以下)にすることをお勧めしている。主に多くの有機水銀が含まれるものとして、マグロ類(マグロ、カジキ)、サメ類、深海魚類(キンメダイ、ムツ、ウスメバルなど)、鯨類(鯨、イルカ)などがあげられる。ちなみに、サンマ、イワシ、サバなどは、一般的に有機水銀濃度が低い水産物であるため、控える必要はない。

①四日市喘息(三重県):主に亜硫酸ガスによる大気汚染を原因。
②新潟水俣病:有機水銀(メチル水銀)による水質汚染や底質汚染を原因。
③イタイイタイ病(富山県):カドミウムによる水質汚染を原因
④熊本水俣病:有機水銀(メチル水銀)による水質汚染や底質汚染を原因

1.× 有機鉛は、魚介類に蓄積するとはいえない。有機鉛とは、鉛の有機化合物の一種で、自動車用燃料のアンチノック剤として使用されている。鉛は、脳、神経、腎臓、肝臓、血液、消化管、生殖器など、体のさまざまな部分に影響を与える毒物である。

2.× 有機リンは、魚介類に蓄積するとはいえない。有機リン化合物は、炭素とリンが結合した化合物の総称で、難燃剤可塑剤などにも使用されている。ちなみに、リンは、肉や魚、卵、乳製品、豆類など、たんぱく質の多い食品に多く含まれている。

3.〇 正しい。有機水銀は、魚介類に蓄積し、妊婦が過量摂取することにより胎児の健康への影響が懸念されているため、厚生労働省が妊婦の摂取量の目安を示している物質である。特に、キンメダイは有機水銀による胎児の健康障害が懸念される魚介である。有機水銀は、胎盤を通過して胎児の脳まで達し、胎児の中枢神経系に障害が起こる。有機水銀は食物連鎖の高位置にいる魚介類に多く含まれており、キンメダイ、マグロ、メカジキ、クジラなどに多く含まれている。1回約80gとして妊婦は週1回まで(1週間当たり80ℊ)と指導する。

4.× 有機塩素化合物とは、炭素や炭化水素に塩素が付加された化合物の総称で、トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンなどが含まれている。つまり、大気汚染に関連するものである。多量の暴露で、生殖機能、甲状腺機能及び免疫機能への影響があることが報告され、甲状腺機能の低下、生殖器官の重量や精子形成の減少、免 疫機能の低下を引き起こす。

大気汚染とは?

【大気汚染の定義】大気中に排出された物質が自然の物理的な拡散・沈着機能や化学的な除去機能、及び生物的な浄化機能を上回って大気中に存在し、その量が自然の状態より増加し、これらが人を含む生態系や物などに直接的、間接的に影響を及ぼすこと。自然一般にある空気組成を変化させる物質は総て広い意味での大気汚染物質である。
【発生源と種類】発生源は①自然起源と②人為起源に分けられる。①自然起源:火山排出物、森林火災、花粉の飛散、砂座・黄砂などの風による地面からの巻き上げ、海塩粒子などの風による海面からの巻き上げ、成層圏から対流闘に沈降するオゾンなどが上げられる。②人為起源:工場や火力発電所、自動車などの化石燃料の燃焼による排出物、生産活動により生成するガスや粒子状物質、廃楽物の処理に伴う粒子状物質や化学物質などが上げられる。
【一次汚染物質】発生源から直接発生する(一酸化炭素、二酸化硫黄、炭化水素、粉塵など)。
【二次汚染物質】環境大気中において化学変化により生成する(二酸化窒素、光化学オゾン、エアロゾルなど)
【ガス状大気汚染物質】①二酸化硫黄、②二酸化窒素、③浮遊粒子状物質、④一酸化炭素、(その他:一酸化窒素、ガス状硝酸、PAN、ガス状フッ素、塩化水素、アンモニア、メチルメルカブタン、硫化水素、硫化メチル、トリメチルアミン、二硫化メチル、アルデヒド、スチレンなど)

(※参考:「大気汚染の定義と汚染物質」環境省HPより)

 

 

 

 

 

3 妊娠中にプロゲステロンの産生の主体が黄体から胎盤に移行する時期はどれか。

1.妊娠4週ころ
2.妊娠8週ころ
3.妊娠12週ころ
4.妊娠16週ころ

解答

解説

妊娠週数

・妊娠初期:妊娠1か月~4か月(妊娠0~15週)
・妊娠中期:妊娠5か月~7か月(妊娠16~27週)
・妊娠後期:妊娠8か月~10か月(妊娠28週~)

1.× 妊娠4週ころは、主にhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピンが母体尿中に現れるため、初期の妊娠判定に用いられる。妊娠初期に妊娠黄体を刺激し、エストロゲン(卵胞ホルモン)・プロゲステロン(黄体ホルモン)を産生させ黄体を維持する。

2.〇 正しい。妊娠8週ころ、プロゲステロンの産生の主体が黄体から胎盤に移行する時期である。これを胎盤シフトという。胎盤シフトとは、妊娠7~9週頃に妊娠黄体から胎盤へとプロゲステロン産生の場が移行する期間を指す。ちなみに、約15週より完全にプロゲステロンの産生場所が胎盤に移り、妊娠黄体を刺激する必要がなくなりhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)は減少していく。

3.× 妊娠12週ころは、主につわりが軽減する時期である。とはいえ、つわりに関しては個人差が大きいため、一概にこの時期とはいいきれない。つわりは妊娠8週目~10週目ごろに症状のピークを迎える場合が多いとされている。

4.× 妊娠16週ころは、初期流産のリスクが減り、つわりが治まり始める人も多い事から安定期と呼ばれる。

 

 

 

 

 

4 骨盤腔の区分とその形成部の組合せで正しいのはどれか。

1.骨盤入口部:岬角
2.骨盤部:恥骨結合上縁
3.骨盤峡部:第2・第3仙椎接合部
4.骨盤出口部:寛骨臼内面下縁

解答

解説

(※図引用:「C.産婦人科検査法16.骨盤計測」)

1.〇 正しい。骨盤入口部は、岬角と恥骨結合上縁に該当する。

2.× 骨盤部は、「恥骨結合上縁」ではなく第2・第3仙椎接合部と寛骨臼内面中央である。ちなみに、恥骨結合上縁は、骨盤入口部に該当する。

3.× 骨盤峡部は、「第2・第3仙椎接合部」ではなく仙骨下端と恥骨結合下縁である。

4.× 骨盤出口部は、「寛骨臼内面下縁」ではなく恥骨結合下縁坐骨結節尾骨で構成された平面である。

(※図引用:「イラスト素材:骨盤」illustAC様HPより)

 

 

 

 

 

5 産褥熱について正しいのはどれか。

1.乳腺炎に続発する。
2.細菌感染症である。
3.持続的な子宮の激痛がある。
4.37.5℃以上の発熱で診断する。

解答

解説

産褥熱とは?

産褥熱とは、骨盤内感染によって分娩後24時間~産褥10日目に、2日以上にわたって38℃以上の発熱が続くことである。産褥熱の症状として、発熱とともに悪臭を伴う悪露の貯留、食欲減退から廃絶、頻脈、呼吸促迫などがみられる。

1.× 乳腺炎に続発するとはいえない。なぜなら、産褥熱は、骨盤内感染によって起こるものであるため。ちなみに、乳腺炎とは、乳汁を分泌する乳腺で炎症を起こす病気である。産後1週間以内にみられることが多く、うっ滞した乳汁が乳管内で炎症を起こすことで生じる。通常、症状は片側の乳房に生じることが多い。症状として乳房の熱感、痛み、腫れ、発熱や倦怠感が見られる。

2.〇 正しい。細菌感染症である。骨盤内感染症とは、小骨盤腔にある臓器(子宮、付属器、S状結腸、直腸、ダグラス窩、膀胱子宮窩)を含む小骨盤内の細菌感染症の総称である。

3.× 持続的な子宮の激痛がある場合、「子宮内膜炎」が疑われる。子宮内膜炎とは、子宮に細菌が入り、子宮内膜に炎症を起こす病気である。発熱、子宮の圧痛、悪露の貯留、子宮底の状態から子宮内に炎症を起こしている可能性が考えられる。

4.× 「37.5℃以上」ではなく38.0℃以上の発熱(2日以上)で診断する。産褥熱の定義は「産褥10日以内に腋窩体温で38度以上の発熱が2日以上持続した場合」である。

産褥子宮内膜炎とは?

産褥子宮内膜炎とは、子宮の感染症であり、通常は下部性器や消化管から上行してくる細菌によって引き起こされる。症状は、子宮の圧痛・腹痛または骨盤痛・発熱・倦怠感ときに分泌物がみられる。 診断は臨床的に行うが、まれに培養を要する。 治療は広域抗菌薬(例:クリンダマイシンとゲンタマイシンの併用)による。ちなみに、子宮内膜炎は、分娩中または分娩後における絨毛膜羊膜炎の後に発生しうる。素因となる状態としては、①前期破水および長時間の分娩、②内測式胎児モニタリング、③遷延分娩、④帝王切開、⑤頻回の指による内診、⑥胎盤断片の子宮内残留、⑦分娩後出血などがあげられる。

 

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