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6 頭位分娩での児頭の応形機能について正しいのはどれか。
1.前方後頭位では大斜径が短縮する。
2.児頭の変形は分娩後約1か月持続する。
3.両頭頂骨の上に前頭骨・後頭骨が重なる。
4.後在頭頂骨が前在頭頂骨の下方に進入する。
解答4
解説
(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)
骨重積とは、児頭が産道を通過する際に周囲から強く圧迫され、頭骨の辺縁が互いに重なり合うことである。母体の骨盤に合わせて変形し、産道内通過が容易になるこの胎児の頭蓋が変形する性質を応形機能という。
1.× 前方後頭位では大斜径が、「短縮」ではなく延長する。なぜなら、児頭が産道を通る際に大斜径が延長することで、産道を通過しやすくなるため。児頭は通過面に対して縮小し、骨盤軸の方向に延長する。ちなみに、児頭の大斜径とは、オトガイと小泉門より3cm前方の点を結んだ径線である。
2.× 児頭の変形は、分娩後「約1か月持続」ではなく約1週間で消失する。児頭の変形が回復するには、生後2~3日を要する。遅くとも1週間で消失する。
3.× 両頭頂骨の「上」ではなく下に前頭骨・後頭骨が重なる。圧力のかかる仙骨側の頭頂骨が反対側の頭頂骨の下に入り込み、さらに後頭骨がその下に入り込む。
4.〇 正しい。後在頭頂骨が前在頭頂骨の下方に進入する。これにより小斜径短縮、大斜径延長して長頭蓋となる。
第1回旋(屈曲):児頭が骨盤入口部に進入する時、児頭は両耳結合線を軸とする横軸回旋をして強い前屈位をとる(後頭位)。この第1回旋により、先進部は小泉門となり、小斜径で産道に接するようになる。
第2回旋(内回旋):児頭は先進する小泉門が常に母体前方に向かうように、胎児長軸を軸とする縦軸回旋をしながら下降する(前方後頭位)。分娩所要時間のうち、この過程に最も時間を要する。
第3回旋(伸展):児頭後頭部が恥骨結合下を通過して、後部が恥骨下縁に接すると、そこを支点として頭部が反屈状に横軸回旋する。この運動によって、児頭は前頭、顔面、オトガイ部の順に会陰を滑って娩出される。第1回旋の逆の動きである。
第4回旋(外回旋):児頭娩出に引き続き、肩甲の下降が起こり、それに伴って児の顔面が母体大腿内側を向く縦軸回旋をする。第2回旋の逆の動きである。
第1・第3回旋:胎児の姿勢を変化させる回旋(胎勢回旋・横軸回旋)である。
第2・第4回旋:体幹の向きが移動する回旋(胎向回旋・縦軸回旋)である。
7 39歳の初産婦。双胎妊娠による切迫早産で4週間の安静入院後、妊娠37週で帝王切開となった。手術翌日の子宮底の高さは臍下1横指で収縮は良好である。Hb10.2g/dl。初回歩行時、軽度下肢の痛みを感じたがしばらくして痛みは落ち着いた。脈拍72/分、血圧118/56mmHg。初回歩行の時間後にトイレまで歩行した際、トイレ内で突然意識を消失した。
考えられる状態はどれか。
1.子癇
2.脳虚血
3.肺血栓塞栓症
4.出血性ショック
解答3
解説
・39歳の初産婦(妊娠37週で帝王切開)。
・双胎妊娠による切迫早産:4週間の安静入院。
・手術翌日:子宮底の高さは臍下1横指、収縮は良好(Hb10.2g/dl。)。
・初回歩行時:軽度下肢の痛みを感じたがしばらくして痛みは落ち着いた。
・脈拍72/分、血圧118/56mmHg。
・初回歩行の時間後にトイレまで歩行した際、トイレ内で突然意識を消失した。
→各選択肢の消去理由もあげられるようにしよう。
1.× 子癇より優先されるものが他にある。なぜなら、子癇は高血圧に伴いやすく、本症例の血圧118/56mmHgであるため。子癇とは、妊娠20週以降に初めて痙攣発作を起こし、痙攣発作の起こった時期により、妊娠子癇・分娩子癇・産褥子癇に分けられる。 子癇発作の発症頻度は、0.04%程度であり、妊娠中が19%、分娩時39%、産褥期42%との報告がある。てんかんや二次痙攣が否定されるものである。子癇の病態の詳細はまだ明らかになっていないが、高血圧に伴う一過性の脳浮腫が原因といわれている。(子癇のよみかた:しかん)
2.× 脳虚血より優先されるものが他にある。なぜなら、脳虚血の場合、トイレまで歩行する前から脳虚血に関する症状がみられやすいため。また、初回歩行時に、軽度下肢の痛みを感じたことからも否定しやすい。ちなみに、脳虚血の主な原因は、動脈硬化と心房細動(不整脈)である。脳が酸欠状態に陥ったことで症状が現れるが、脳細胞が壊れる前に血流が回復した場合元に戻りやすい。
3.〇 正しい。肺血栓塞栓症が考えられる状態である。根拠として、①4週間の安静入院、②帝王切開、③初回歩行時:軽度下肢の痛み、④突然意識の消失である。ちなみに、肺血栓塞栓症とは、肺の血管(肺動脈)に血のかたまり(血栓)が詰まって、突然、呼吸困難や胸痛、ときには心停止をきたす危険な病気である。ロング・フライト血栓症やエコノミークラス症候群などと呼ばれる。離床(車椅子乗車や立位訓練、歩行訓練など)を開始したタイミングで発症するリスクが高くなるため注意が必要である。多く原因は、足の深いところにある静脈(深部静脈)に血液の塊である血栓ができて、その血栓が血流に乗って心臓を介して肺動脈に詰まることである。
4.× 出血性ショックより優先されるものが他にある。なぜなら、本症例は手術の翌日と時間が経過しているため。出血性ショックとは、外傷や、消化管などからの出血によって血液循環量の低下が原因で起こるショックのことである。術後出血が原因となることもある。
【ショックの診断】
・心拍数:100回/分以上
・呼吸数:22回/分以上
・低血圧(収縮期血圧90mmHg)、または通常の血圧から30mmHgの低下
・尿量:0.5mL/kg/時
・意識障害が見られる。
8 60歳の女性。排尿困難を主訴として来院した。膀胱と子宮頸部が腟口まで下垂しており、医師は骨盤臓器脱と診断し、排尿障害の治療のためにリングペッサリーを腟内に装着した。
この女性への指導として正しいのはどれか。
1.「入浴時には外してください」
2.「スポーツは控えてください」
3.「装着したまま性交渉が可能です」
4.「長時間の外出は控えてください」
解答3
解説
・60歳の女性(主訴:排尿困難)。
・膀胱と子宮頸部が腟口まで下垂。
・医師の診断:骨盤臓器脱。
・治療:排尿障害のためリングペッサリーを腟内に装着。
→骨盤臓器脱とは、子宮や膀胱、直腸といった骨盤臓器が下垂し腟から脱出した状態である。ペッサリー療法とは 、骨盤臓器脱により子宮や膀胱、腸など膣から出てきた臓器を人工的に膣内に納める方法で、臓器の下垂に伴う不快な症状を軽減・緩和する目的で行う。ペッサリーの欠点として、①感染のリスクや②おりもの過多、③出血などが起こる可能性がある。また、腹圧がかかるなどで脱落しやすくなると、膣内に留置することが困難になる。
(※図引用:「ペッサリーの装着」IUGA Office様HPより)
1.× 入浴時にも外す必要はない。なぜなら、ペッサリーは長期間装着することを前提としており、頻繁に取り外すと感染リスクが高まる可能性があるため。交換頻度(着脱頻度)は、数か月に1回である。
2.4.× スポーツ・長時間の外出を控える必要はない。なぜなら、適度な運動や骨盤底筋トレーニングは、骨盤臓器脱の改善に役立つため。根拠:「ペッサリーは日常生活の制限なしに症状を解決してくれます.例えば,スポーツや自転車,長距離の歩行も可能です.※引用:「ペッサリーの装着」IUGA Office様HPより」
3.〇 正しい。「装着したまま性交渉が可能です」と伝える。根拠:「リング型ペッサリーを挿入中であれば,ペッサリーをそのままに性交することが可能です.あなたやパートナーが性交中にリング型ペッサリーが気になるようであれば,いったん外して性交後に再挿入することも可能です.ドーナツ型やキューブ型,ゲルホーン型などの他の型のペッサリーは腟内を大きく占拠するため,ペッサリーが入ったままでの性交は困難です.※引用:「ペッサリーの装着」IUGA Office様HPより」
9 25歳の初産婦。妊娠40週5日で、3850gの児を正常分娩した。弛緩出血で、約2000ml出血した。現在分娩後2時間、子宮収縮は良好である。脈拍130/分、血圧80/50mmHg。産婦は意識清明であるが悪心を訴えており、四肢の冷感を認めた。
直ちに行われる処置はどれか。
1.全身を温める。
2.輸血を開始する。
3.気管内挿管する。
4.副腎皮質ステロイドを投与する。
解答2
解説
・25歳の初産婦(妊娠40週5日、3850g:正常分娩)。
・弛緩出血、約2000ml出血。
・現在分娩後2時間、子宮収縮:良好。
・脈拍130/分、血圧80/50mmHg。
・産婦:意識清明、悪心の訴え、四肢の冷感を認めた。
→上記の評価から正常から逸脱しているものを分かるようにしよう。ショック指数から推定出血量を求めることができる。ショック指数(ショックインデックス)とは、出血、体液喪失が原因で起こる循環不全を循環血液量減少性ショックといい、重症度の指標としてショック指数(SI)を用いることがある。SI=「脈拍数(心拍数)/収縮期血圧」で表す。1.0で循環血液量のおよそ20%が、1.5でおよそ40%が失われていると考えられる。基準として、正常(0.5)、軽症(1.0)、中等症(1.5)、重症(2.0)となる。
→弛緩出血とは、児と胎盤の娩出後、本来なら子宮が収縮することで止まるはずの出血が続く状態である。原因は、多胎妊娠や巨大児による子宮の過伸展、子宮収縮剤の長時間投与、長引く分娩による母胎の疲労、子宮奇形などの体質によるもの、子宮内の凝血塊の遺残、全身麻酔などが挙げられる。弛緩出血が起きたときには、子宮収縮を促すためオキシトシンなどの子宮収縮剤の投与や、子宮マッサージが行われる。子宮底部の輪状マッサージとは、子宮筋を刺激して、子宮収縮を促進させるマッサージである。 排尿・排便を定期的に促し、膀胱・直腸充満からの圧迫による子宮収縮不全を防止する。早期離床を促し、悪露の貯留による子宮収縮不全を防止する。
(※引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P264」)
1.× 全身を温めるより優先されるものが他にある。なぜなら、本症例はショック症状が疑われるため。
2.〇 正しい。輸血を開始する。なぜなら、本症例は、ショックインデックスは1.5(130÷80=1.625)を超えており、「産科危機的出血」と宣言されるため。「産科危機的出血」と宣言し、①直ちに輸血開始、②高次施設へ搬送する必要がある。
3.× 気管内挿管する必要はない。なぜなら、本症例は現在、意識清明であるため。一般的な気管内挿管の適応として、①低酸素血症および高二酸化炭素血症による呼吸不全、②気道防御機能の破綻(咳嗽反射消失,舌根沈下など)、③NPPV(非侵襲的陽圧呼吸)で改善しない呼吸不全の3つの場合が挙げられる。
4.× 副腎皮質ステロイドを投与するより優先されるものが他にある。なぜなら、副腎皮質ステロイドの適応とはいえないため。ステロイドは免疫反応を抑制する作用を持つ。
(※図引用:「産科危機的出血への対応指針 2022」日本産科婦人科学会より)
10 妊娠20週の双胎妊娠の女性。会社員。非妊時BMIは21.5。現在、非妊時体重より4kg増加している。
保健指導で適切なのはどれか。
1.「マタニティビクスをしましょう」
2.「次の妊婦健康診査は4週後になります」
3.「分娩予定日の16週前から休業できます」
4.「非妊時から分娩時までの体重増加の目安は11〜14kgです」
解答4
解説
・妊娠20週の双胎妊娠の女性(会社員)。
・非妊時BMI:21.5。
・現在、非妊時体重より4kg増加。
→ほかの選択肢の消去理由をしっかりおさえておこう。
(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P99」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)
1.× マタニティビクスは勧められない。なぜなら、本症例は双胎であるため。マタニティビクス・マタニティヨガの対象は、①自然流産を3回以上繰り返した経験がない、②重度の合併症を伴っていない(高血圧など)、③単胎妊娠である(双子でない)、④胎盤の位置異常を指摘されていない(前置胎盤でない)、⑤切迫流早産の指摘を受けていない(子宮頸管長の短縮、安静指示、お腹の張りが強い)、⑥子宮頸管無力症の診断を受けていない、⑦赤ちゃんの発育の異常を指摘されていない、⑧羊水量の異常を指摘されていない、⑨重度の貧血を指摘されていないがあげられる(※引用:「東京かつしか赤十字母子医療センター様HPより」)。
2.× 次の妊婦健康診査は、「4週後」ではなく2週後である。なぜなら、双胎妊娠は、単胎妊娠よりも妊娠中のトラブルが多くなるため。わずかな変化も見逃さないよう、妊娠12週から36週までは2週間に1回、妊娠37週以降は毎週妊婦健診を行う。
3.× 分娩予定日の「16週前」ではなく14週前から休業できる。
産前休業とは、女性労働者が母体保護のため出産の前後においてとる休業の期間である。産休とも称される。産前休業は、「妊娠26週」から取得できる。また産前休業の期間は、予定日前の14週間取得できる。これは、労働基準法第65条「使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない」と記載されている(一部引用:「労働基準法」e-GOV法令検索様HPより)。
4.〇 正しい。「非妊時から分娩時までの体重増加の目安は11〜14kgです」と保健指導する。BMIとは、体重(㎏) ÷ 身長の2乗(m) で計算される体格指数のことである。日本肥満学会の基準では、18.5以下:低体重、25以下:普通、30以下:肥満Ⅰ度、35以下:肥満Ⅱ度、40以下:肥満Ⅲ度、40以上:肥満Ⅳ度である。基準として、①低体重(やせ)の場合:12~15kg、②標準(ふつう)の場合:10~13kg、③肥満(1度)の場合:7~10kg、④肥満(2度以上):個別対応(上限5kgまでが目安)とされている(厚生労働省「『妊産婦のための食生活指針』の改定について(令和3年3月 31 日)」)
改定前に使用されていた「妊娠全期間を通しての推奨体重増加量」
①BMI18.5以下:9~12㎏
②BMI18.5~25:7~12㎏
③BMI25以上:個別対応
(※引用:「妊娠中の体重増加指導の目安」)
妊婦健康診査とは、妊婦さんや赤ちゃんの健康状態を定期的に確認するために行うものである。 そして、医師や助産師などに、妊娠・出産・育児に関する相談をして、妊娠期間中を安心して過ごしていただくことが大切である。病気の有無を調べることだけが妊婦健診ではない。妊娠期間中を心身ともに健康に過ごし、無事に出産を迎えるためには、日常生活や環境、栄養など、いろいろなことに気を配る必要がある。より健やかに過ごすために、妊娠検診を活用する必要がある。検診費用には、公費による補助制度がある。日本では、「母子保健法」により、14回程度の健康診査の回数が勧められており、健康診査の間隔や実施する検査内容について、国が基準を示している。
【妊婦健康診査の望ましい基準】
①妊娠23週まで:4週間に1回
②24週~35週:2週間に1回
③36週~出産まで:1週間に1回