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次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
Aさん(40歳、女性)は、36歳で結婚したが自然妊娠しなかったため、38歳から不妊専門クリニックで治療を受けている。既往歴に特記すべきことはない。これまで体外受精を4回受けた。今回の体外受精で受精後5日の胚2個を子宮内に移植し、妊娠反応陽性になった。
46 Aさんは妊娠37週1日で破水し、2520gと2600gの児を帝王切開にて分娩した。術後の経過は良好である。術後7日、Aさんは「無事に出産できてほっとしていますが、退院後の育児がきちんとできるか心配です。不妊治療で貯金を遣ってしまったので、経済的にもあまり余裕がありません」と不安そうである。
Aさんが今後の支援で活用できるのはどれか。
1.養育医療
2.新生児訪問指導
3.産科医療補償制度
4.特定不妊治療助成制度
解答2
解説
・Aさん(40歳、女性、2絨毛膜2羊膜性双胎)
・既往歴:特記なし。
・妊娠37週1日:破水(2520gと2600gの児を帝王切開)
・術後の経過:良好。
・術後7日「無事に出産できてほっとしていますが、退院後の育児がきちんとできるか心配です。不妊治療で貯金を遣ってしまったので、経済的にもあまり余裕がありません」と不安そうである。
→多胎妊娠に限らず、出産後は様々な不安や心配ごとが考えらえる。その不安に対し、しっかり傾聴しながら専門的な対応が求められる。
1.× 養育医療は適応外である。なぜなら、今回、2520gと2600gの児を出産しているため。養育医療とは、入院治療を必要とする対象者に該当する乳児(出生時体重が2000g以下だった乳児、低体温、強い黄疸などの症状を示す乳児)に対して、健やかに成長できるよう、その養育に必要な医療を給付するものである。 指定医療機関において、診察・医学的処置・治療等の給付が受けられる。
2.〇 正しい。新生児訪問指導をAさんが今後の支援で活用できる。新生児訪問指導とは、母子保健法第11条に定められた事業で、主に新生児の発育、栄養、生活環境、疾病予防など育児上重要な事項の指導を目的として、生後28日以内(里帰りの場合は60日以内)に保健師や助産師が訪問する事業である。
3.× 産科医療補償制度は適応外である。なぜなら、今回、出産した児に脳性麻痺といった記載はないため。ちなみに、産科医療補償制度とは、分娩に関連して発症した脳性麻痺の子と家族の経済的負担を速やかに補償し、原因分析を行い、再発防止のための情報提供などを行う制度である。病院、診療所や助産所といった分娩を取り扱う機関が加入する制度である。原因分析の結果は、保護者と分娩機関にフィードバックされ、事例情報を整理し再発防止策を策定し広く一般に公開、提言される。
4.× 特定不妊治療助成制度は適応外である。なぜなら、今回、すでに出産を終えているため。特定不妊治療助成制度とは、体外受精・顕微授精等(特定不妊治療)を受けた方の経済的負担を軽減するため、保険適用の制限回数を超えた治療にかかる費用を助成するものである。
次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
36歳の初産婦。妊娠経過は順調であった。妊娠39週5日、午後11時に陣痛発来し、翌日午前2時に入院した。入院時の内診所見は、子宮口4cm開大、展退度30%、Station-2、未破水であった。
47 午前7時、陣痛間欠9分、陣痛発作30秒。内診所見は、子宮口5cm開大、展退度40%、Station-1、大泉門を1時方向に触れた。未破水である。
胎児の胎位で正しいのはどれか。
1.前方前頭位
2.前方後頭位
3.後方前頭位
4.後方後頭位
解答1
解説
・36歳の初産婦(妊娠経過は順調)。
・妊娠39週5日午後11時:陣痛発来。
・翌日午前2時:入院(子宮口4cm開大、展退度30%、Station-2、未破水)。
・午前7時:陣痛間欠9分、陣痛発作30秒。
・子宮口5cm開大、展退度40%、Station-1、大泉門を1時方向に触れた。
・未破水である。
→本児は、Station-1、大泉門を1時方向に触れていることから、胎勢異常(反屈位=前頭位)である。したがって、先進する大泉門が1時方向=「母体前方に回旋」してきているため、前方前頭位といえる。
(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)
第1頭位とは、胎児の背中が母体の左手側にあることをいう。つまり第1頭位の場合、入口部における小泉門は母体の左方にある。
第2頭位とは、胎児の背中が母体の右手側にあることをいう。
不正軸進入とは、胎児の頭が背骨に対して左右どちらかへ傾いた状態で骨盤の中に入り込んでしまい、恥骨や仙骨が邪魔になって分娩が停止してしまう状態である。
1.〇 正しい。前方前頭位は、胎児の胎位である。本児は、Station-1、大泉門を1時方向に触れていることから、胎勢異常(反屈位=前頭位)である。したがって、先進する大泉門が1時方向=「母体前方に回旋」してきているため、前方前頭位といえる。
2.× 前方後頭位といえない。回旋異常は,内診により小泉門と大泉門の位置を評価することで診断する。正常の第2回旋は,母体側方の小泉門が母体の前方(12時の方向)に回旋する前方後頭位である。第2回旋の異常である後方後頭位では,小泉門が母体の方向(6時の方向)に回旋する。低在横定位では第2回旋が起こらないままで,児頭が骨盤底まで下降する。
3.× 後方前頭位といえない。後方前頭位とは、頭位の児が、反屈位=前頭位かつ、母体の後方に回旋している状態である。
4.× 後方後頭位といえない。ちなみに、後方後頭位とは、胎児後頭が母体の後方に向かって回旋(先進部の小泉門が後方に回旋)したものをいう。分娩の経過中に後方後頭位をとるものは1~5%であるが、約70%は分娩進行中に前方後頭位に変わり、一部は定在横定位になる。産道に比べて児頭が相対的に小さい場合に起こりやすいとされ、広骨盤または過少児頭の場合に問題となる。第2回旋の異常(後方後頭位) に対し、腹側を下にした側臥位で休むことにより胎児の自己回転を促す方法がある。
(※図引用:「助産師基礎教育テキスト:第 5 巻:2020 年版訂正ご案内」株式会社日本看護協会出版会様HPより)
第1回旋(屈曲):児頭が骨盤入口部に進入する時、児頭は両耳結合線を軸とする横軸回旋をして強い前屈位をとる(後頭位)。この第1回旋により、先進部は小泉門となり、小斜径で産道に接するようになる。
第2回旋(内回旋):児頭は先進する小泉門が常に母体前方に向かうように、胎児長軸を軸とする縦軸回旋をしながら下降する(前方後頭位)。分娩所要時間のうち、この過程に最も時間を要する。
第3回旋(伸展):児頭後頭部が恥骨結合下を通過して、後部が恥骨下縁に接すると、そこを支点として頭部が反屈状に横軸回旋する。この運動によって、児頭は前頭、顔面、オトガイ部の順に会陰を滑って娩出される。第1回旋の逆の動きである。
第4回旋(外回旋):児頭娩出に引き続き、肩甲の下降が起こり、それに伴って児の顔面が母体大腿内側を向く縦軸回旋をする。第2回旋の逆の動きである。
第1・第3回旋:胎児の姿勢を変化させる回旋(胎勢回旋・横軸回旋)である。
第2・第4回旋:体幹の向きが移動する回旋(胎向回旋・縦軸回旋)である。
次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
36歳の初産婦。妊娠経過は順調であった。妊娠39週5日、午後11時に陣痛発来し、翌日午前2時に入院した。入院時の内診所見は、子宮口4cm開大、展退度30%、Station-2、未破水であった。
48 胎児心拍数陣痛図では正常波形であったので、病棟内を自由に歩行できるように分娩監視装置を外して経過観察した。午前10時、陣痛間欠7分、陣痛発作30秒。内診所見は、子宮口5cm開大、展退度40%、Station-1、大泉門を1時方向に触れた。未破水である。胎児心拍数陣痛図は正常波形である。
この時点の処置として適切なのはどれか。
1.人工破膜
2.メトロイリンテル挿入
3.オキシトシン点滴静脈内注射
4.プロスタグランディンE1誘導体腟坐薬の投与
解答3
解説
・36歳の初産婦(妊娠経過は順調)。
・妊娠39週5日午後11時:陣痛発来。
・翌日午前2時:入院(子宮口4cm開大、展退度30%、Station-2、未破水)。
・午前7時:陣痛間欠9分、陣痛発作30秒。
・子宮口5cm開大、展退度40%、Station-1、大泉門を1時方向に触れた。
・未破水である。
・胎児心拍数陣痛図:正常波形(分娩監視装置を外して経過観察)。
・午前10時:陣痛間欠7分、陣痛発作30秒。
・子宮口5cm開大、展退度40%、Station-1、大泉門を1時方向に触れた。
・未破水である。胎児心拍数陣痛図:正常波形。
→本症例は、分娩遷延が疑われる。分娩遷延とは、有効な陣痛があるが子宮頸管の開大や胎児の下降が異常に緩徐な場合をいう。分娩開始(陣痛周期10分以内になった時点)後、初産婦においては30時間、経産婦においては15時間を経過しても児娩出に至らないものをさす。治療はオキシトシン、鉗子・吸引分娩、または帝王切開による。
(※引用:「人工破膜実施フローチャート」日本産婦人科医会より)
1.× 人工破膜は時期尚早である。人工破膜とは、内診時に内子宮口 から赤ちゃんを包んでいる卵膜を破る処置のことで、人工的に破水させ、陣痛を誘発させることを目的としている。分娩までの時間が長引いた場合は、自然な破水と同様、子宮内感染について注意する必要がある。
2.× メトロイリンテル挿入より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例の子宮口は子宮口5cm開大し、陣痛がきているため。ちなみに、メトロイリンテルとは、子宮口が開かない際に挿入する器具であり、挿入が容易で産婦の苦痛も少ない上に効果も大きいため陣痛誘発にも用いられている。
3.〇 正しい。オキシトシン点滴静脈内注射が、最も優先される。オキシトシンは、子宮収縮剤の一種で、分娩誘発や微弱陣痛の際に点滴静注法で投与される。オキシトシンを点滴すると、点滴開始後から規則的な周期で子宮収縮が起こる。子宮収縮の誘発、促進並びに子宮出血の治療の目的で、次の場合(分娩誘発、微弱陣痛、弛緩出血、胎盤娩出前後、子宮復古不全、帝王切開術(胎児の娩出後)、流産、人工妊娠中絶)に使用する(※参考:「オキシトシン製剤」)。
4.× プロスタグランディンE1誘導体腟坐薬の投与より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例の子宮口は子宮口5cm開大し、陣痛がきているため。プロスタグランジンE2錠は妊娠末期における陣痛誘発並びに陣痛促進の効能がある。通常1回1錠を1時間毎に6回、1日総量6錠(ジノプロストンとして3mg)を1クールとし、経口投与する。
(※図引用:「産婦人科 診療ガイドライン ―産科編 2020」日本産科婦人科学会より)
微弱陣痛とは、一旦分娩開始した(陣痛の間隔が10分以内ごとであり 、痛みを伴う子宮収縮により分娩が進行)にも関わらず、陣痛の強さが弱く、発作の持続が短く、かつ陣痛の間隔が長くなってしまい、分娩が進行しない状態をいう。子宮口の開き具合により、6分30秒以上(子宮口の開き:4~6cm)、6分以上(子宮口の開き:7~8cm)、4分以上(子宮口の開き:9~10cm)が陣痛周期の目安とされている。子宮口が完全に開いてから(分娩第2期)は、初産婦では4分以上、経産婦では3分30秒以上が微弱陣痛の目安となる。
【微弱陣痛の治療】
母体疲労がある場合は、無理をして分娩を進行させるだけでなく、睡眠をとれるよう支援したり、痛みを緩和させるケアをする。温かいタオルを痛みが強い場所に置いたり、マッサージを行ったり、足浴をして緊張を解いたりする場合もある。また、不安や恐怖も微弱陣痛に関与しているため、不安軽減に努めることも大切なケアの一つになる。陣痛を有効な(正常な)陣痛にするために、陣痛促進剤の点滴を行うこともある。破水していない場合は医師、助産師の判断で人工的に破膜させることで陣痛を増強させることがある。分娩が停止してしまい、経腟分娩が可能な状態であれば、鉗子分娩や吸引分娩を行う場合がある。経腟分娩が不可能と判断される場合や母体と胎児に危険があると判断される場合には、緊急で帝王切開術を行う場合がある。
次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
36歳の初産婦。妊娠経過は順調であった。妊娠39週5日、午後11時に陣痛発来し、翌日午前2時に入院した。入院時の内診所見は、子宮口4cm開大、展退度30%、Station-2、未破水であった。
49 午後3時に子宮口は全開大した。午後4時、陣痛間欠2分、陣痛発作60秒。内診所見は、子宮口全開大、展退度100%、Station+3、小泉門が先進し6時方向に触れた。胎児心拍数陣痛図は正常波形である。
適切な対応はどれか。
1.経過観察する。
2.McRoberts〈マックロバーツ〉体位をとらせる。
3.吸引分娩の準備をする。
4.帝王切開の準備をする。
解答1
解説
・36歳の初産婦(妊娠経過は順調)。
・午後3時に子宮口は全開大した。
・午後4時、陣痛間欠2分、陣痛発作60秒。
・子宮口全開大、展退度100%、Station+3、小泉門が先進し6時方向に触れた。
・胎児心拍数陣痛図:正常波形。
→本症例は、小泉門が先進し6時方向に触れていることから、後方後頭位となっている。後方後頭位とは、胎児後頭が母体の後方に向かって回旋(先進部の小泉門が後方に回旋)したものをいう。分娩の経過中に後方後頭位をとるものは1~5%であるが、約70%は分娩進行中に前方後頭位に変わり、一部は定在横定位になる。産道に比べて児頭が相対的に小さい場合に起こりやすいとされ、広骨盤または過少児頭の場合に問題となる。
→第2期遷延への発展に注意を払う必要がある。第2期遷延とは、子宮口全開大後に標準の第2期所要時間(初産婦では2時間,経産婦では1時間)を超えて、分娩に至らない状態を指す。分娩第2期の遷延や吸引分娩などは、膀胱や尿道に対する圧迫や損傷のリスクを高め、尿閉を引き起こす可能性がある。したがって、産後の尿閉のリスクファクターは、尿閉硬膜外麻酔による無痛分娩、分娩第2期遷延、鉗子分娩などがあげられる。数日で軽快することがほとんどであるが、まれに自己導尿が必要となることもある。
1.〇 正しい。経過観察する。なぜなら、本児は後方後頭位となっているものの、後方後頭位の約70%は分娩進行中に前方後頭位に変わり、順調に降りてくる可能性が高いため。また、胎児心拍数陣痛図は、正常波形であることからも、特に緊急な介入は不要で、自然分娩を待つための経過観察が考えられる。
2.× McRoberts〈マックロバーツ〉体位をとらせる必要はない。なぜなら、McRoberts体位は、肩甲難産に適応となるため。「肩甲難産発生時には、人員の確保に努めるとともに、会陰切開、McRoberts体位、恥骨上縁圧迫法などのいずれかまたはすべてを試みる」と記載されている(※引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P181」)。ちなみに、McRoberts〈マックロバーツ〉法とは、産道を広げる方法のひとつで、いわゆるうんこ座りにより、導尿、会陰切開を広げる方法である。産道が最も広がり分娩にもっとも適した姿勢であり、それに伴い、①しっかりと妊婦さんに産道を見てもらうこと、②痛くても仰け反らない、つまり背中を丸くしてもらうことを指導する。
3.× 吸引分娩の準備をする優先度は低い。なぜなら、現時点で、分娩第2期の胎児機能不全といえないため。急速遂娩の適応は分娩第2期の胎児機能不全、回旋異常、遷延分娩、分娩停止、母体疲労や母体の心疾患などの合併症により第2期短縮が望ましい場合である。吸引分娩とは、分娩第2期に分娩を補助および促進するために鉗子または吸引器を児頭に対して使用することである。子宮口全開大から胎児娩出までの遷延や胎児機能不全の疑いがある場合などに行われる。
4.× 帝王切開の準備をする優先度は低い。なぜなら、現時点で、帝王切開術の適応とはいえないため。ちなみに、帝王切開術の適応として、①母体適応:児頭骨盤不均衡 前置胎盤,子宮破裂,重症妊娠高血圧症候群,常位胎盤早期剝離,分娩停止,分娩遷延などである。②胎児適応:胎児機能不全(胎児ジストレス),臍帯脱出,子宮内胎児発育遅延,切迫早産,前期破水,多胎などである。
肩甲難産とは、「児頭娩出後に前在肩甲が恥骨結合につかえ、肩甲娩出が困難状況なために、児の娩出が不可能な状態」と定義されている。つまり、お産のときに赤ちゃんの頭だけ出てきたものの、肩がひっかかって出てこられない状態を指す。肩甲難産の頻度は経膣分娩例のおよそ200~500人に一例程度であるが、生まれてくる赤ちゃんの体重が大きくなればなるほど頻度が高くなると考えられている。肩甲難産の危険因子としては胎児の大きさが最も重要であるが、他にも母体の糖尿病や、母体の妊娠中の過剰な体重増加、過期妊娠、母体の高年齢、骨盤の変形、過去に肩甲難産の分娩歴のある場合などがある。肩甲難産はひとたび発生すると母体にも赤ちゃんにも悪い影響を及ぼす。母体では、膣や頚管裂傷などの産道裂傷や、産後の弛緩出血(子宮の戻りが悪くて出血すること)、膀胱麻痺や尿道損傷などの危険性がある。また、赤ちゃんは肩がひっかかるためしんどくなったり、最悪の場合には命にかかわるようなケースもある。また、生まれてくる途中で首の周りの神経が傷ついて腕に麻痺が生じたり、骨折などの危険性もある。このような恐ろしい分娩合併症である肩甲難産であるが、発症を正確に予知するのは非常に難しいのが現状である。万一発生した場合にはさまざまな処置が必要であるため、産婦人科医は妊婦さんのハイリスク因子を十分考慮して分娩に対応し、異常の早期発見に努めていく必要がある。
(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P206」)
次の文を読み50〜52の問いに答えよ。
41歳の初産婦。妊娠経過は順調であった。妊娠41週3日、午前7時に前期破水し、午前10時に入院した。体温37.0℃。内診所見は、子宮口3cm開大、展退度50%、Station-2であった。
50 入院時の胎児心拍数陣痛図を下に示す。
対応で正しいのはどれか。
1.2時間ごとにドップラーで間欠的胎児心拍数聴取を行う。
2.15分ごとにドップラーで間欠的胎児心拍数聴取を行う。
3.陣痛が規則的になってから連続的分娩監視装置モニタリングを再開する。
4.連続的分娩監視装置モニタリングを継続する。
解答4
解説
・41歳の初産婦(妊娠経過:順調)。
・妊娠41週3日午前7時:前期破水(午前10時に入院)。
・体温37.0℃、子宮口3cm開大、展退度50%、Station-2
・胎児心拍数陣痛図:変動一過性徐脈(軽度、レベル2)
→変動一過性徐脈とは、15bpm以上の心拍減少が急速に起こり、減少開始から最下点まで30秒未満で急速し、回復までに15秒以上2分未満かかる徐脈である。高度の判断は、①最下点が70 bpm未満で持続時間が30秒以上、②最下点が70 bpm以上80 bpm未満で持続時間が60秒以上で評価する。子宮収縮に伴って発生する場合は、一定の形を取らず、下降度、持続時間は子宮収縮ごとに変動することが多い。
(※引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P229」)
1~2.× 2時間ごと/15分ごとにドップラーで間欠的胎児心拍数聴取を行うより優先されるものが他にある。なぜなら、本児は、変動一過性徐脈(軽度、レベル2)であるため。ちなみに、胎児のドップラーとは、超音波ドップラー法や胎児超音波ドップラーと呼ばれる医療機器や検査方法で、胎児の心音や血行状態を調べるものである。
3.× 「陣痛が規則的になってから」ではなく、現時点で、連続的分娩監視装置モニタリングを再開する。なぜなら、本症例は前期破水し、本児は変動一過性徐脈(軽度、レベル2)であるため。破水とは、卵膜が破れて羊水が子宮外に流出することである。破水は、臍帯脱出や上行感染、胎児機能不全などの原因となり得る。【破水の種類】①前期破水とは、分娩が始まる前の破水のこと、②早期破水とは、分娩開始以降で子宮口全開大前の破水のこと、③適時破水:子宮口全開大に達する頃の破水のことをいう。
4.〇 正しい。連続的分娩監視装置モニタリングを継続する。なぜなら、本症例は、41歳の初産婦であること、前期破水がみられ、本児は変動一過性徐脈(軽度、レベル2)であることからハイリスクと考えられるため。
「経過観察」を満たしても、以下の場合は連続モニタリングを行う(ただし、トイレへの歩行や病室の移動等で胎児心拍数が評価できない期間を除く)
1)分娩第2期のすべての産婦
2)分娩時期を問わず、以下のような場合(①子宮収縮薬使用中、②用量41mL以上のメトロイリンテル挿入中、③用量41mL未満のメトロイリンテル挿入中であっても陣痛が発来した場合、④無痛分娩中、⑤38℃以上の母体発熱中、⑥上記以外に産婦が突然強い子宮収縮や腹痛を訴えた場合)
3)分娩時期を問わず、以下のようなハイリスク妊娠の場合(①母体側要因:糖尿病合併、“妊娠中の明らかな糖尿病”、コントロール不良な妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、妊娠・分娩中の低酸素状態が原因と考えられる脳性麻痺児、子宮内胎児死亡児出産既往(概ね30週以上)、子癇既往、子宮体部への手術歴、②胎児側要因:胎位異常、推定体重<2,000g、胎児発育不全、多胎妊娠、サイトメガロウイルス感染胎児、③胎盤、羊水、臍帯の異常:低置胎盤、羊水過多、羊水過少、臍帯卵膜付着が診断されている場合)
4)その他、ハイリスク妊娠と考えられる産婦(コントロール不良の母体合併症等)
7.以下の場合は分娩監視装置を一定時間(20 分以上)装着してモニタリングを記録し、評価する。1)破水時、2)羊水混濁あるいは血性羊水を認めたとき、3)間欠的児心拍数聴取で(一過性)徐脈、頻脈を認めたとき、4)分娩が急速に進行したり、排尿・排便後など、胎児の位置の変化が予想される場合(間欠的児心拍聴取でもよい)
(※引用「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P223」)
胎児心拍数基線は、10分間の区間の平均心拍数で5の倍数で表現する。基線は一過性変動部分や基線細変動増加の部分は除外し、2分間以上持続している部分で判断する。胎児心拍数基線細変動は、胎児心拍数基線が判読可能な部分で判読する。基線細変動は、胎児心拍数基線の細かい変動で、定義上、1分間に2サイクル以上の胎児心拍数の変動で、振幅、周波数とも規則性がないものを指す。
①胎児心拍数基線
・頻脈:160bpm以上
・正常脈:110bpm~160bpm
・徐脈:110bpm未満
②胎児心拍数基線細変動
・細変動消失:肉眼的に認められない
・細変動減少:5bpm以下
・細変動中等度:6~25bpm
・細変動増加:26bpm以上