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31 分娩の三要素のうち、「産道」と「胎児およびその付属物」との相互関係によって生じるのはどれか。2つ選べ。
1.肩甲難産
2.子宮破裂
3.低在横定位
4.頸管無力症
5.原発性微弱陣痛
解答1・3
解説
1.〇 正しい。肩甲難産は、分娩の三要素のうち、「産道」と「胎児およびその付属物」との相互関係によって生じる。なぜなら、肩甲難産のリスク要因は巨大児であるため。ちなみに、肩甲難産とは、「児頭娩出後に前在肩甲が恥骨結合につかえ、肩甲娩出が困難状況なために、児の娩出が不可能な状態」と定義されている。つまり、お産のときに赤ちゃんの頭だけ出てきたものの、肩がひっかかって出てこられない状態を指す。肩甲難産の頻度は経膣分娩例のおよそ200~500人に一例程度であるが、生まれてくる赤ちゃんの体重が大きくなればなるほど頻度が高くなると考えられている。肩甲難産の危険因子としては胎児の大きさが最も重要であるが、他にも母体の糖尿病や、母体の妊娠中の過剰な体重増加、過期妊娠、母体の高年齢、骨盤の変形、過去に肩甲難産の分娩歴のある場合などがある。肩甲難産はひとたび発生すると母体にも赤ちゃんにも悪い影響を及ぼす。母体では、膣や頚管裂傷などの産道裂傷や、産後の弛緩出血(子宮の戻りが悪くて出血すること)、膀胱麻痺や尿道損傷などの危険性がある。また、赤ちゃんは肩がひっかかるためしんどくなったり、最悪の場合には命にかかわるようなケースもある。また、生まれてくる途中で首の周りの神経が傷ついて腕に麻痺が生じたり、骨折などの危険性もある。このような恐ろしい分娩合併症である肩甲難産であるが、発症を正確に予知するのは非常に難しいのが現状である。万一発生した場合にはさまざまな処置が必要であるため、産婦人科医は妊婦さんのハイリスク因子を十分考慮して分娩に対応し、異常の早期発見に努めていく必要がある。
2.× 子宮破裂とは、子宮が自然に裂けて開くことであり、強い腹痛が続き、胎児の心拍数が異常に下がる。帝王切開の既往がある女性で治癒した瘢痕線に沿って起こることが多い。他に多胎妊娠や羊水過多なども原因となることがある。
3.〇 正しい。低在横定位は、分娩の三要素のうち、「産道」と「胎児およびその付属物」との相互関係によって生じる。低在横定位とは、異常分娩の1つであり、第2回旋が起こらなかったため骨盤底に達しても矢状縫合が横径に一致した状態である。児頭が横向きのまま下降するため、縦長の骨盤峡部で引っかかってしまい分娩が停止した状態となる。
4.× 頸管無力症とは、陣痛などの下腹部痛や性器出血などの症状がないが子宮頸管が開いてきてしまう状態のことを言い、流産や早産の原因となってしまうことがある。頸管縫縮術とは、子宮口を縛る手術で、頸管無力症など主に切迫早産の可能性があり、35週の終わり頃まで妊娠を継続させるために行われる。シロッカー法やマクドナルド法などがある。
5.× 原発性微弱陣痛とは、分娩開始時点から陣痛が微弱で分娩が進行していないか遷延している状態のことをいう。この原因は明らかになっていないが、母体の疲労や不安などの全身性因子、子宮奇形や子宮筋腫などの局所的因子、羊水過多や多胎、巨大児などの産科的因子などが要因になっていると言われている。
32 糖尿病合併妊婦への対応で適切なのはどれか。2つ選べ。
1.妊娠によって耐糖能は悪化しやすいことを説明する。
2.BMIが22の妊婦ではエネルギー付加は行わない。
3.食前血糖値が100mg/dl以下となるよう管理する。
4.血糖コントロールには経口血糖降下薬を用いる。
5.リトドリン塩酸塩使用時には低血糖に注意する。
解答1・3
解説
今まで糖尿病と言われた事がないにもかかわらず、妊娠中に始めて指摘された糖代謝異常で、糖尿病の診断基準をみたさない人を妊娠糖尿病といいます。具体的には糖負荷試験をした際に、空腹時血糖92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値153mg/dL以上のいずれか1点以上を満たした場合に診断されます。妊娠時に診断された糖代謝異常でも、空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c6.5%以上、随時もしくは糖負荷試験2時間値が200mg/dL以上、糖尿病網膜症の存在が認められるものは、糖尿病合併妊娠とされます。(※引用:「糖尿病妊娠」日本内分泌学会様HPより)
1.〇 正しい。妊娠によって耐糖能は悪化しやすいことを説明する。耐糖能は、非妊時と比較して妊娠中期に低下する。なぜなら、妊娠中期には、プロゲステロンの影響でインスリン抵抗性が増加し、血糖値が上がりやすくなるため。これは妊娠糖尿病のリスクを増加させる。ちなみに、妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見、または発症した糖尿病まではいかない糖代謝異常のことである。糖代謝異常とは、血液に含まれる糖の量を示す血糖値が上がった状態である。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。
2.× BMIが22の妊婦は、エネルギー付加を行う。なぜなら、食事療法が血糖管理の基本であるため。食事療法では、医師や栄養士の指導のもと、肥満の有無や妊娠時期によってエネルギー付加量を変えていく。1日3回の食事で血糖コントロールが難しい場合は、4~6分割食にしてカロリー摂取を小分けにする。それでも血糖コントロールが難しい場合は、インスリン療法を行うことが多い。
3.〇 正しい。食前血糖値が100mg/dl以下となるよう管理する。食前の目標血糖値は70〜100mg/dL以下、食後2時間血糖値120mg/dL以下である。ちなみに、HbA1cは、5.8%未満(JDS)とされている。
4.× 血糖コントロールには、「経口血糖降下薬」ではなくインスリンを用いる。なぜなら、インスリンは胎盤を通過しないが、経口糖尿病薬は胎盤を通過して胎児に移行する可能性があり、赤ちゃんへの安全性が確認されていないものが多いため。
5.× リトドリン塩酸塩使用時には、「低血糖」ではなく高血糖に注意する。なぜなら、リトドリン塩酸塩には、血糖上昇作用があるため。塩酸リトドリンとは、子宮収縮抑制薬(子宮鎮痙薬とも)である。臨床応用としては、切迫早産や切迫流産の際に子宮収縮(陣痛)を抑制するのに用いられる。投与中に過度の心拍数増加(頻脈)があらわれた場合には、減量するなど適切な処置を行うことが求められる。主な副作用として、動悸、振戦(手足の震え)、吐き気、発疹などが報告されている。胎児には、頻脈、不整脈があらわれる。作用機序として、β受容体刺激剤の中でも強いβ2選択性により、細胞内c-AMPを上昇させ、子宮収縮抑制効果を示す。
(※引用:「主食を中心に、エネルギーをしっかりと」厚生労働省様HPより)
(※図引用:「医療用医薬品 : リトドリン塩酸塩」)
・強度の子宮出血、子癇、前期破水例のうち子宮内感染を合併する症例、常位胎盤早期はく離、子宮内胎児死亡、その他妊娠の継続が危険と判断される者
・重篤な甲状腺機能亢進症
・重篤な高血圧症
・重篤な心疾患
・重篤な糖尿病
・重篤な肺高血圧症
・妊娠16週未満の妊婦
・本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者
33 新生児の黄疸で直接ビリルビンが上昇するのはどれか。2つ選べ。
1.母乳性黄疸
2.胆道閉鎖症
3.新生児肝炎
4.Rh式血液型不適合
5.ABO式血液型不適合
解答2・3
解説
(総)ビリルビンとは、赤血球が壊れたときにできる黄色い色素のことである。総ビリルビンは、①間接ビリルビンと②直接ビリルビンをあわせていう。基準値:0.2〜1.2mg/dLである。肝細胞の障害により、直接ビリルビンが上昇する。急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓がん、自己免疫性肝炎などがあげられる。腎臓からも排泄され、主に肝臓で代謝されるため、肝臓や胆嚢の状態を知るための重要な指標となる。一方、間接ビリルビンが上昇する代表的な疾患は溶血性貧血であり、溶血により多くの赤血球が壊れ、ビリルビンが肝臓の処理能力を超えて過剰に増加する。
1.× 母乳性黄疸は、間接ビリルビンが上昇する。母乳性黄疸とは、生後1か月を経過しても黄疸が存在して長引く黄疸のことで、この場合には血液中に増加するビリルビンは非抱合型(間接型)であり、尿にも排泄されにくいために尿は黄色に着色しないのが特徴である。ただし、遷延性黄疸の原因として胆道閉鎖症などの重篤な疾患も考えられるため心配であれば主治医に相談することが望ましい。
2.〇 正しい。胆道閉鎖症は、直接ビリルビンが上昇する。胆道閉鎖症とは、生まれて間もない赤ちゃんに発症する肝臓および胆管の病気で、胆汁の通り道である胆管が、生まれつきまたは生後間もなく完全につまってしまい、胆汁を腸管内へ排泄できない状態である。つまり、胆汁の通り道である胆管が生後間もなく完全に詰まってしまい、胆汁を腸管内へ排泄できない疾患である。症状は生後数か月以内の黄疸、灰白色便、肝腫大、ビタミンK不足による出血傾向などがある。治療には手術療法により詰まった胆管の一部を切除、もしくは肝移植が必要になることもある。
3.〇 正しい。新生児肝炎は、直接ビリルビンが上昇する。新生児肝炎とは、肝内胆汁うっ滞によって直接型ビリルビンが高くなる肝障害である。生後2ヶ月以内に黄疸、肝腫大、灰白色便、死亡便、褐色尿、体重増加不良などがある。治療法は胆汁排泄促進剤などの投与、栄養管理、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の補充などがあり、光線療法は胆汁うっ滞が原因の黄疸に対しては行われない。胆汁うっ滞はビリルビンの排泄不全であり、肝臓で処理後の抱合型高ビリルビン血症(直接ビリルビン)による黄疸を引き起こす。光線療法では強い光を使用し肝臓で処理される前の非抱合型ビリルビン(間接ビリルビン)を体外に速やかに排泄される形に変える治療法である。
4.× Rh式血液型不適合は、間接ビリルビンが上昇する。Rh式血液型不適合妊娠とは、母親の血液型がRh(-)、父親の血液型がRh(+)で、胎児の血液型がRh(+)のため新生児溶血性黄疸が起きる場合をいう。Rh(-)の女性が初めて妊娠し、分娩時にRh(+)の胎児の血液が母体内へ侵入すると、母体にRh(+)の血球に対する抗体がつくられる。これを母体感作といい、Rh(+)の第2子を妊娠したときには、この母体中のIgG抗体が経胎盤的に胎児に移行し、それが胎児の赤血球を破壊する。しかし、妊娠前にすでにRh(-)の母体がRh(+)の供血者からRh因子不適合輸血を受けていれば、その際にすでに感作が成立しているので、初回妊娠による第1児でも症状が出ることがある。そのため、お母さんが抗D抗体を作らないように、妊娠中や出産後の適切な時期に、お母さんに「抗D人免疫グロブリン製剤」を注射することが勧められている。
5.× ABO式血液型不適合は、間接ビリルビンが上昇する。ABO不適合溶血性疾患では血液型不適合により溶血性疾患を引き起こした際に軽度の貧血と肝臓で処理される前の非抱合型高ビリルビン血症が起きることがある。非抱合型高ビリルビン血症に対して光線療法が行われる。
その他の血液型不適合が、同様の(しかし、より軽症の)溶血性疾患を引き起こすことがあります。例えば、母親の血液型がOで胎児の血液型がAかBである場合、母親の胎内では抗Aまたは抗Bの抗体が作られます。すると、その抗体が大量に胎盤を通過し、胎児の赤血球に結合してそれらを破壊します(溶血)。その結果、軽度の貧血と高ビリルビン血症が起きることがあります。このタイプの血液型不適合を、ABO血液型不適合といいます。ABO血液型不適合は、たいていはRh式血液型不適合と比べて軽い貧血を起こし、Rh式血液型不適合とは違ってその後妊娠するたびに軽くなっていくのが通常です。
(※一部引用:「新生児溶血性疾患」MSD家庭版より)
34 日本で承認されている低用量経口避妊薬について正しいのはどれか。2つ選べ。
1.排卵を抑制する。
2.卵巣癌の発生率を高める。
3.子宮頸癌の予防効果がある。
4.黄体ホルモン単独製剤である。
5.不妊手術以外で最も避妊効果が高い。
解答1・5
解説
【方法】エストロゲンとプロゲステロンの2種類のホルモンからなる低用量経口避妊薬を毎日1錠ずつ服用する。
【利点】女性主体で避妊ができる。
正確に服用すれば、避妊効果は確実である。
以下のような避妊以外の利点がある。
・子宮体癌、卵巣癌の発生率低下。
・子宮内膜症の症状緩和。
・月経困難症、月経前症候群の改善。
【欠点】
服用開始後1~2週間くらいまで、悪心や少量の不正性器出血を起こすことがある。
血栓症、心筋梗塞などのリスクを伴う場合がある。
【禁忌】
大手術の前後および長期間安静状態を要する患者。
35歳以上で1日15本以上の喫煙者。
血栓性素因のある者。
重症の高血圧症患者。
血管病変を伴う糖尿病患者。
産後4週以内の者。
授乳中(産後6か月未満)の者など。
1.〇 正しい。排卵を抑制する。なぜなら、低用量経口避妊薬を飲むと、エストロゲンを取り入れることになり、体の中でエストロゲンが分泌されなくなるため。通常は体の中でエストロゲンの分泌がピークになると排卵が起こる。
2.× 卵巣癌の発生率を「高める」のではなく低減する。なぜなら、卵巣がんの発症要因には排卵回数(卵巣上皮の損傷と修復の繰り返し)が関係しているとされるため。低用量経口避妊薬を飲むと、生涯にわたる排卵回数が減少する。したがって、排卵による卵巣上皮の損傷が軽減されるため、結果的に卵巣がんの発症リスク低下に寄与する。
3.× 「子宮頸癌」ではなく子宮体癌の予防効果がある。なぜなら、子宮内膜を非常に薄く保つ働きがあるため。
4.× 「黄体ホルモン単独製剤」ではなく、エストロゲンとプロゲスチン(黄体ホルモン)を含む複合製剤である。黄体ホルモン単独製剤は、日本で一般的に承認されていない。
5.〇 正しい。不妊手術以外で最も避妊効果が高い。低用量経口避妊薬の避妊率は99.7%である。一方、コンドーム法の避妊効果は、98%程度であるといわれている。
35 妊娠28週の初妊婦で正常から逸脱している所見はどれか。2つ選べ。
1.AFI:25cm
2.BPD:70mm
3.子宮底長:25cm
4.推定児体重:800g
5.胎児心拍数:140bpm
解答1・4
解説
(※引用:「胎児計測と胎児発育曲線について」産婦人科学会様HPより)
1.〇 正しい。AFI:25cmは、妊娠28週の初妊婦で正常から逸脱している所見である。AFI(amniotic fluid index)の正常範囲は5~24cmであり、24cm以上は羊水過多を意味する。また、先天性心疾患のリスクは、多数の遺伝子と生活習慣などの環境要因が加わることで発症する。妊娠中の飲酒や喫煙、薬の服用、風疹ウイルス感染などでも発症リスクが高まる可能性が指摘されている。
2.× BPD:70mmは、正常範囲内である。BPDとは、胎児大横径(biparietal diameter)のことであり、式は「
3.× 子宮底長:25cmは、正常範囲内である。子宮底長とは、恥骨の中央から子宮の上の端までの直線距離を計測した数値のことで、子宮がどれくらい大きくなっているかを表したものである。医師や助産師が恥骨結合(股関節付近の左右の恥骨をつなぐ部分)の上縁にメジャーの端をあて、子宮低の最高点のところまでの長さを測る。子宮底長の測定方法として、基本的に診察台に仰向け(膝軽度屈曲位)で、お腹を出して行う。子宮底長の基準値は、妊娠5ヶ月未満までは「妊娠月数 × 3cm」の計算式で求められる。胎児の成長も早くなり、羊水量も増える妊娠6ヶ月以降は「妊娠月数 × 3cm + 3cm」が基準値である。おなかのふくらみが分かる妊娠4ヶ月くらいから測り始める。
4.〇 正しい。推定児体重:800gは、妊娠28週の初妊婦で正常から逸脱している所見である。妊娠28週の推定児体重は、853g(-2.0SD)~1473g(2.0SD)である。平均は、1163gである。
5.× 胎児心拍数:140bpmは、正常範囲内である。胎児心拍数の正常範囲は110~160bpmである。
胎児心拍数基線は、10分間の区間の平均心拍数で5の倍数で表現する。基線は一過性変動部分や基線細変動増加の部分は除外し、2分間以上持続している部分で判断する。胎児心拍数基線細変動は、胎児心拍数基線が判読可能な部分で判読する。基線細変動は、胎児心拍数基線の細かい変動で、定義上、1分間に2サイクル以上の胎児心拍数の変動で、振幅、周波数とも規則性がないものを指す。
①胎児心拍数基線
・頻脈:160bpm以上
・正常脈:110bpm~160bpm
・徐脈:110bpm未満
②胎児心拍数基線細変動
・細変動消失:肉眼的に認められない
・細変動減少:5bpm以下
・細変動中等度:6~25bpm
・細変動増加:26bpm以上