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11 会陰裂傷第3度があった産婦への対応で正しいのはどれか。
1.直腸診を行う。
2.直腸筋層まで縫合する。
3.食事は低残渣食とする。
4.翌日に浣腸を行う。
解答1
解説
第1度:会陰の皮膚、腟壁粘膜のみに限局し、筋層には達しない裂傷。
第2度:会陰筋層まで及ぶが、肛門括約筋には達しない裂傷。
第3度:肛門括約筋や腟直腸中隔に達する裂傷。
第4度:第3度裂傷に加え、肛門粘膜や直腸粘膜の損傷を伴う裂傷。
会陰裂傷の第4度は、直腸まで損傷しているため、その程度を確認して直腸粘膜の縫合を行う。会陰裂傷は適切な治療が行われないと、肛門括約筋機能不全、便失禁のほか、将来的に子宮下垂や子宮脱の原因となる。また縫合不全や感染を起こすと瘻孔ろうこう(穴・欠損)を形成することがあり、炎症が治まってから再手術が必要になる場合がある。
1.〇 正しい。直腸診を行う。なぜなら、第4度裂傷に至っていないか確認するため。第4度裂傷の場合、適切な治療が行われないと、肛門括約筋機能不全、便失禁のほか、将来的に子宮下垂や子宮脱の原因となる。ちなみに、直腸診(直腸検査、直腸内診断、直腸指診)とは、直腸を診断する方法で直腸がん、直腸ポリープ、前立腺肥大、痔の発見に有効な方法である。診断方法は肛門に指を挿入して指診する。
2.× 直腸筋層まで縫合するのは、「第3度裂傷」ではなく第4度裂傷である。会陰裂傷の第4度は、直腸まで損傷しているため、その程度を確認して直腸粘膜の縫合を行う。会陰裂傷は適切な治療が行われないと、肛門括約筋機能不全、便失禁のほか、将来的に子宮下垂や子宮脱の原因となる。また縫合不全や感染を起こすと瘻孔ろうこう(穴・欠損)を形成することがあり、炎症が治まってから再手術が必要になる場合がある。
3.× 食事は低残渣食とする必要はない。これは会陰裂傷ではなく潰瘍性大腸炎やクローン病などに用いられる。低残渣食とは、胃腸に負担をかけないように調整した食事のことで、日常の食事で胃腸にもっとも負担をかける成分は食物繊維で、それを制限し負担をかけやすい脂肪の多い物・刺激の強い物・極端に冷たい物などを控えた食事のことである。必要エネルギーの補給のほか、腸管の安静と食事性アレルゲンの除去を目的として栄養療法を行う。治療では小腸や大腸などの炎症や、過剰な免疫作用を抑える薬物療法が中心に行われる。
4.× 翌日に浣腸を行う必要はない。なぜなら、浣腸は排便を促す処置であるため。浣腸や座薬の挿入は、創部を刺激し縫合部分の離開や感染のリスクを増加させる可能性があるため、通常行わない。
12 Brandt-Andrews〈ブラント・アンドリュース〉胎盤圧出法で適切なのはどれか。
1.胎盤剝離徴候を確認する前に実施する。
2.片手を腹壁から子宮体と子宮下部の境の部位に当てる。
3.最初に腹壁に当てた手で子宮体を恥骨部側に押し下げる。
4.臍帯は牽引しないようにする。
解答2
解説
・適切な臍帯牽引を行うには,片手で臍帯を把持し愛護的に牽引すると同時に,もう一方の手で恥骨より頭側の下腹部(子宮底部ではなく子宮下節)に臍帯牽引の方向と逆向きの圧をかけることで,胎盤娩出を促し分娩第3期の短縮を図る.この手技はブラント・アンドリュース(Brandt-Andrews)法とよばれる.
・ただし臍帯牽引は分娩時の出血量減少に寄与しないとの報告もあり,逆に不適切な 臍帯の牽引となった場合には子宮内反症のリスクを増加させるため施行時には注意が必要である.
(※引用:「日本産婦人科医会様HPより」)
1.× 胎盤剝離徴候を「確認する前」ではなく確認後に実施する。なぜなら、胎盤が剝離していない状態で圧出を試みると、胎盤の部分残存や子宮内反のリスクが高まるため。したがって、胎盤剝離徴候(臍帯の延長、子宮底の上昇、少量の出血など)を確実に確認した後に、胎盤圧出法を行うべきである。
2.〇 正しい。片手を腹壁から子宮体と子宮下部の境の部位に当てる。Brandt-Andrews胎盤圧出法は、適切な臍帯牽引を行うために、片手で臍帯を把持し愛護的に牽引すると同時に、もう一方の手で恥骨より頭側の下腹部(子宮底部ではなく子宮下節)に臍帯牽引の方向と逆向きの圧をかけることで、胎盤娩出を促し分娩第3期の短縮を図る。
3.× 最初に腹壁に当てた手で子宮体を「恥骨部側」ではなく臍側(子宮底)に押し下げる(※図:参照)。なぜなら、恥骨部側に押し下げると、子宮内反や損傷のリスクが増大するため。
4.× 臍帯は、牽引「する」。力加減には十分注意し、強く引くと子宮内反や損傷のリスクが増大するため、軽く引き胎盤娩出する必要がある。
13 34歳の1回経産婦。前回正常分娩で2700gの児を出産した。妊娠39週3日。身長145cm、体重58kg。児頭大横径〈BPD〉9.6cm。午後2時30分に自然破水した。内診所見は、子宮口全開大、Station-3、矢状縫合は横径に一致していた。午後4時、陣痛間欠1〜2分、陣痛発作60秒。内診所見では、児頭の下降度に変化がなかった。胎児心拍数陣痛図は正常波形である。
対応で適切なのはどれか。
1.散歩を勧める。
2.絶飲食とする。
3.乳頭刺激をする。
4.子宮収縮薬の準備をする。
解答2
解説
・34歳の1回経産婦(前回:正常分娩、2700g)。
・妊娠39週3日:身長145cm、体重58kg。児頭大横径9.6cm。
・午後2時30分:自然破水した。
・子宮口全開大、Station-3、矢状縫合は横径に一致。
・午後4時:陣痛間欠1〜2分、陣痛発作60秒。
・児頭の下降度に変化がなかった。
・胎児心拍数陣痛図:正常波形。
→本症例は児頭骨盤不均衡が疑われる。帝王切開の準備が必要である。
→児頭骨盤不均衡とは、胎児の頭が母体の骨盤に比べて大きかったり、母体の骨盤の形に問題があったりして、胎児がスムーズに骨盤を通過できず分娩の進行が停止する場合を指す。全分娩の約4~6%にみられる。分娩の進行状況で、すでに子宮口が全開大し破水を認めているにもかかわらず、分娩が遷延している(2時間以上)状態であれば、児頭骨盤不均衡は極めて疑わしいと考えられるが、上記の所見により児頭骨盤不均衡が疑われる場合は、X線骨盤撮影による十分な骨盤形態の検討が要求される。
1.× 散歩を勧める必要はない。なぜなら、本症例は、すでに破水(子宮口が全開大で、児頭:Station-3)しているため。この状況で散歩を勧めると、臍帯脱出のリスクが高まる。ちなみに、臍帯脱出とは、胎児より先に臍帯が腟を通過することである。臍帯脱出が起きると胎児への血液供給が断たれてしまうため、まずは腟鏡診や内診によって臍帯を直接観察し診断する必要がある。内診により頭囲か骨盤位であるか確認し、頭囲で臍帯脱出の場合は児頭を内診指で持ち上げて臍帯の圧迫を解除する必要がある。可能ならば医師に連絡し、医師が到着するまで骨盤高位にする。
2.〇 正しい。絶飲食とする。絶飲食は手術や緊急帝王切開を視野に入れた対応である。帝王切開手術では、全身麻酔に伴う誤嚥性肺炎を予防するために、手術前日から絶飲食となる。ちなみに、緊急帝王切開の主な適応としては、胎児機能不全、臍帯下垂・脱出、前置血管破綻、37週未満の前期破水などがあり、脳性麻痺のリスク要因である。
3.× 乳頭刺激をする必要はない。なぜなら、分娩後出血の予防介入方法のひとつであるため。ちなみに、乳頭刺激のほかにも、授乳、子宮底のマッサージまたは圧迫、子宮の冷罨法などあげられるが、未だ有効性が検証されていないものも多い。
4.× 子宮収縮薬の準備をする必要はない。なぜなら、本症例の陣痛に異常はないため。子宮収縮薬とは、子宮の収縮またはより高い張性を誘発するために使用される。したがって、陣痛を誘発するためと分娩後出血を減らすための両方に使用される。副作用は、「過強陣痛」である。 その結果、胎児機能不全や子宮破裂、頸管裂傷、弛緩出血などを起こす恐れがある。そのため陣痛促進剤を使用する際は、分娩監視装置によって陣痛の強さや間隔、胎児の様子を注意深く観察していく必要がある。
児頭骨盤不均衡とは、胎児の頭が母体の骨盤に比べて大きかったり、母体の骨盤の形に問題があったりして、胎児がスムーズに骨盤を通過できず分娩の進行が停止する場合を指す。全分娩の約4~6%にみられる。
【児頭骨盤不均衡の機能的診断法(※参考:「骨盤形態からみた難産予測 著:又吉國雄 様」)】
①レオポルド触診法:第3、第4手法で、妊娠38週以降の初産婦に「floating head」が確認できる。
②Seitz法:児頭が骨盤腔内に嵌入しているか否かを腹壁上からの触診でみる方法である。恥骨結合より児頭前面が低ければ Seitz(-)、同じ高さなら(±)、児頭前面の方が隆起していれば(+)と判定し、児頭骨盤不均衡を疑える。
③内診により、児頭の先進部がstation±0に達していれば、入口部における児頭骨盤不均衡はないと考えられる。
さらに、分娩の進行状況で、すでに子宮口が全開大し破水を認めているにもかかわらず、分娩が遷延している(2時間以上)状態であれば、児頭骨盤不均衡は極めて疑わしいと考えられるが、上記の所見により児頭骨盤不均衡が疑われる場合は、X線骨盤撮影による十分な骨盤形態の検討が要求される。
14 28歳の初産婦。3400gの児を正常分娩で出産した。分娩時出血は650ml。会陰裂傷第2度と腟壁裂傷とがあり、縫合術を受けた。分娩後3時間、体温37.3℃、脈拍88/分、血圧120/70mmHg。子宮底は臍下2横指で硬く触れる。赤色出血が1時間で40g。「お尻のあたりが痛い」と激しい痛みを訴え、苦痛表情だが脱肛はない。会陰部に腫脹はなく縫合不全もない。
最も考えられるのはどれか。
1.頸管裂傷
2.腟壁血腫
3.弛緩出血
4.後陣痛
解答2
解説
・28歳の初産婦(3400g:正常分娩、分娩時出血:650ml)。
・縫合術:会陰裂傷第2度と腟壁裂傷。
・分娩後3時間:体温37.3℃、脈拍88/分、血圧120/70mmHg。
・子宮底は臍下2横指で硬く触れる。赤色出血が1時間で40g。
・「お尻のあたりが痛い」と激しい痛みを訴え、苦痛表情だが脱肛はない。
・会陰部に腫脹はなく、縫合不全もない。
→上記の評価から、ほかの選択肢の消去理由もあげられるようにしよう。
1.× 頸管裂傷は考えにくい。なぜなら、本症例の赤色出血が1時間で40g(比較的少ない)であるため。頸管裂傷とは、子宮頸管に裂けてできた傷が起こることであり、急速に分娩が進行することや吸引分娩などの処置、巨大児などが原因となる。頸管裂傷になると持続的な出血(鮮紅色の出血)が起こる。主に分娩の際に生じる可能性があり、大量出血など生命の危険にまでつながるリスクがある。
2.〇 正しい。腟壁血腫が最も考えられる。腟壁血腫とは、腟壁粘膜下組織の血管が破綻・断裂して血腫ができた状態のことである。急速な分娩進行による腟壁の急激な伸展、過大な頭部や肩甲の通過による腟壁の過度な伸展などが原因である。一般的に、分娩直後に症状が現れる。
3.× 弛緩出血は考えにくい。なぜなら、本症例の赤色出血が1時間で40g(比較的少ない)であるため。弛緩出血とは、児と胎盤の娩出後、本来なら子宮が収縮することで止まるはずの出血が続く状態である。原因は、多胎妊娠や巨大児による子宮の過伸展、子宮収縮剤の長時間投与、長引く分娩による母胎の疲労、子宮奇形などの体質によるもの、子宮内の凝血塊の遺残、全身麻酔などが挙げられる。弛緩出血が起きたときには、子宮収縮を促すためオキシトシンなどの子宮収縮剤の投与や、子宮マッサージが行われる。子宮底部の輪状マッサージとは、子宮筋を刺激して、子宮収縮を促進させるマッサージである。 排尿・排便を定期的に促し、膀胱・直腸充満からの圧迫による子宮収縮不全を防止する。早期離床を促し、悪露の貯留による子宮収縮不全を防止する。
4.× 後陣痛は考えにくい。なぜなら、本症例は「お尻のあたりが痛い」と激しい痛みを訴えているため。後陣痛とは、赤ちゃんを出産した後に、子宮が元の大きさに戻ろうと収縮する時に生じる痛み(下腹部痛)のことである。子宮を収縮させることで、胎盤が剥がれた部分の血管断裂部を圧迫し、止血する役割がある。分娩後に子宮が収縮し、元の大きさに戻ろうとすることを子宮復古といい、産後6週~8週で妊娠前の状態に戻る。正常な子宮復古の経過の場合、産褥7日頃の子宮底高は恥骨結合上縁にわずかに触れる程度である。
15 NYHA分類でⅠ度の心疾患合併妊婦の管理で適切なのはどれか。
1.選択的帝王切開を勧める。
2.妊娠初期から入院を勧める。
3.生活の中に一定の休息時間を設ける。
4.インフルエンザワクチンの接種を控えるように説明する。
解答3
解説
Ⅰ度:心疾患があるが、身体活動には特に制約がなく日常労作により、特に不当な呼吸困難、狭心痛、疲労、動悸などの愁訴が生じないもの。
Ⅱ度:心疾患があり、身体活動が軽度に制約されるもの。安静時または軽労作時には障害がないが、日常労作のうち、比較的強い労作(例えば、階段上昇、坂道歩行など)によって、上記の愁訴が発言するもの。
Ⅲ度:心疾患があり、身体活動が著しく制約されるもの。安静時には愁訴はないが、比較的軽い日常労作でも、上記の主訴が出現するもの。
Ⅳ度:心疾患があり、いかなる程度の身体労作の際にも上記愁訴が出現し、また、心不全症状、または、狭心症症候群が安静時においてもみられ、労作によりそれらが増強するもの。
1~2.× 選択的帝王切開/妊娠初期から入院を勧める必要はない。なぜなら、NYHA分類のⅠ度は、「心疾患があるが、身体活動には特に制約がなく日常労作により、特に不当な呼吸困難、狭心痛、疲労、動悸などの愁訴が生じないもの」をさす。特別な問題がなければ、自然分娩が推奨される。ちなみに、選択的帝王切開とは、予定帝王切開とも呼ばれ妊娠中から危険が予測されるため、あらかじめ日程を決めて計画的に行う帝王切開である。
3.〇 正しい。生活の中に一定の休息時間を設ける。なぜなら、妊娠が進むにつれ心臓への負担が増すため。心疾患がある妊婦に対しては、日常生活に無理のないよう、適度な休息を取り入れることが重要である。
4.× インフルエンザワクチンの接種を「控える」のではなく推奨するように説明する。なぜなら、妊婦がインフルエンザに感染すると重症化しやすいため。また、妊婦自身がインフルエンザに感染するのを防ぐことができるだけでなく、自然流産、早産、低出生体重児、胎児死亡のリスクを軽減できることが報告されている。
心疾患合併の頻度は全分娩の1~3%である。妊娠により母体では様々な生理的変化が出現する。中でも、循環器系変化は顕著である。循環血液量と心拍出量は妊娠の進行と伴に増加し、妊娠28~32週頃にはピークとなり、非妊娠時の約1.5倍の増加を示す。正常妊娠ではこうした増加に対し、末梢血管抵抗が低下し、腎臓や子宮への血流量を増加させている。実際、腎血流量は非妊娠時に比べ30%増加し、子宮血流量は10倍になる。これらの循環変化は母体が順調に胎児を育んで行く上に必須のものであるが、心疾患を合併した妊婦ではしばしば負担となる。また、分娩中は子宮収縮により静脈環流量が増加し、第2期では努責による交感神経興奮により頻脈になり、心拍出量が増加する。したがって、分娩中は心疾患合併妊婦の症状が悪化する危険な時期といえる。分娩後(産褥早期)、子宮は急速に収縮し静脈環流量が増加するが、循環血液量は急には減少しないため、一過性に心負担は増加する。この心拍出量増加は、産後の利尿により循環血液量が減少するまで継続する。産褥期に一過性に浮腫が増悪することがあるが、こうした循環器系変化のためと考えられる。
(※一部引用:「周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理」(中井章人著,東京医学社)より)