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6 妊娠高血圧症候群の栄養管理で正しいのはどれか。
1.塩分摂取は7〜8g/日とする。
2.蛋白質摂取は「理想体重(kg)×2g/日」とする。
3.水分摂取は前日尿量に200ml程度加えた量とする。
4.エネルギー摂取は非妊時BMI20の妊婦では「30kcal×理想体重(kg)」とする。
解答1
解説
妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上)を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。
(※引用:「表2 日本産科婦人科学会による妊娠中毒症の栄養管理指針(1998)1)」著:伊東 宏晃様)
1.〇 正しい。塩分摂取は7〜8g/日とする(※上表参照)。一般的な妊婦の塩分摂取も、6.5g/日以下とする(※下表参照)。特に、妊娠高血圧症候群といえども、極端な制限をする必要はない。
2.× 蛋白質摂取は、理想体重(kg)×「2g/日」ではなく1g/日とする。過剰な蛋白質摂取は腎臓に負担をかけることがある。
3.× 水分摂取は、「前日尿量に200ml程度加えた量」ではなく制限しない。ただし、1日尿量500ml以下や肺水腫では前日尿量に500mlを加える程度にする必要がある。
4.× エネルギー摂取は、非妊時BMI20の妊婦では「30kcal×理想体重(kg)」ではなく「30kcal×理想体重(kg)+200kcal」とする。非妊時のBMI24以下か以上かで分類される。
(※引用:「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」厚生労働省様HPより)
7 母親役割獲得過程からみた妊娠期の特徴はどれか。
1.定位行動
2.没入感情
3.自己像の形成
4.エントレインメント
解答3
解説
ルービン,R.による母親役割獲得過程とは、①模倣、②ロールプレイ、③空想、④取り込みー投影ー拒絶、⑤悲嘆作業の5つの認識的操作を行いながら児との心理的絆形成が進むプロセスである。
①模倣:先輩母親や専門家の行動を母親役割のモデルとし、真似をすること。
②ロールプレイ:自分のお腹にいる子どもや他者の子どもを通して、母親たちが一般的に体験していることを自分も同じように体験すること。
③空想:自分の子どもや自分自身の状況を思い描くこと。
④取り込みー投影ー拒絶:空想した行動や態度などを母親役割のモデルとして自分に投影し、それを受け入れるか拒絶するかを吟味すること。
⑤悲嘆作業:母親としての自分とは立場が異なる過去の自分について思い起こし、妊娠によってできなくなったことや今度変化すると思われることについて考え、嫌だと思ったりあきらめたりすること。
母親として適応するための褥婦の心理的過程を3つの時期に分ける。
①受容期(自分自身の基本的欲求に意識が向けられる時期):産褥1~2日目(赤ちゃんを指先で触れたり、抱っこしたりすることで自分の子供だと認識する)
②保持期(自分の体のセルフケアができ、赤ちゃんの欲求に関心がうつり、子供との関係づくりが始まる時期):産褥3~10日間(喜びと同時に、母親としての能力があるかどうか不安を抱いたり、些細な周囲の言葉が傷つく)
③解放期(ママとしての課題を果たす時期):産褥10日~1か月(子供と母親がお互い理解し合っていきますが、子供の要求が多すぎてママは応えきれずに罪悪感を抱き、自らの存在に対し否定的になることもある)
これらの3つの段階を通して、母親役割を獲得する。
1.× 定位行動とは、愛着関係を築いた相手が、どこにいるのかを確認する行動である。例えば、お母さんの行動を目で追いかけたり、お母さんの声がした方を向いてお母さんを探すような仕草を見せたりする行動である。これは主に産後に見られる行動で、妊娠期の特徴ではない。ちなみに、愛着形成は、精神科医のジョン・ボルビィが1969年に著書「愛着行動」の中で書かれた考え方である。 「子どもが不安な時に親や身近にいる信頼できる人にくっつき安心しようとする行動」のことである。
2.× 没入感情とは、エングロスメントともいい、親が子育てに夢中になり、他のことが気にならなくなるほどある対象や状況に意識を集中している状態を指す。これは主に産後に見られる行動で、妊娠期の特徴ではない。
3.〇 正しい。自己像の形成は、母親役割獲得過程からみた妊娠期の特徴である。自己像とは、自分が自分のことをどう思うかというものである。子育てにおいては、親の言葉や行動などが子どもの自己像を形成する重要な要素となる。
4.× エントレインメントとは、発達段階(乳児期)においての用語で、乳児期の母子相互の働きかけを指すものである。同調現象(エントレインメント)は、母親や養育者の声の調子やリズム、行動や表情を、子が反応・模倣する相互同期性のことで、生まれて間もない時期からみられる。したがって、主に産後に見られる行動で、妊娠期の特徴ではない。
8 羊水量の診断で正しいのはどれか。
1.AFI 4cmは羊水過少である。
2.AFI 20cmは羊水過多である。
3.羊水量200mlは羊水過少である。
4.羊水量600mlは羊水過多である。
解答1
解説
AFIとは、「amniotic fluid index」の頭文字で、子宮の各4分の1について羊水深度を垂直に計測した値の合計である。AFIの正常範囲は5~24cmであり、24cm以上は羊水過多を意味する。
1.〇 正しい。AFI 4cmは羊水過少である。羊水過少とは、AFI5以下をいう。AFI(amniotic fluid index)とは、子宮の各4分の1について羊水深度を垂直に計測した値の合計である。羊水の量が極端に少なくなると、胎児が圧迫され、四肢の変形、平らな鼻、下顎が小さくなり後退しているように見えるなどの問題が生じる。吸収が減少する病態として、食道閉鎖や十二指腸閉鎖などの上部消化管閉鎖(狭窄)などの先天異常、染色体異常などで機能的に嚥下ができない場合がある。また、上部消化管周囲から羊水の通過を妨げる口腔、頸部、肺などの腫瘍も原因となる。
2.× AFI 「20cm」ではなく24cm以上で羊水過多である。羊水過多とは、羊水量が800mLを超える場合であり、母体の糖尿病や児が羊水をうまく飲めない消化管閉鎖などが原因となることが多い。診断方法は超音波検査によるamniotic fluid index(AFI)の計測であり、AFIの正常範囲は5~24cmであり、24cm以上は羊水過多を意味する。
3.× 羊水量「200ml」ではなく100ml以下で羊水過少である。
4.× 羊水量「600ml」ではなく800mL以上で羊水過多である。
羊水とは、羊水腔を満たす液体であり、その99%が母の血液の成分からつくられている。妊娠中期以降は胎児尿が主な生産源である。胎児は16週ころから羊水を嚥下し排尿行動と合わせて羊水量を維持する。嚥下した羊水は、食道・胃・小腸・大腸へと移行し、消化管の成熟を助ける。妊娠20週になると羊水量は350mlになり、赤ちゃんの腎臓が発達して、おしっこが出るようになる。赤ちゃんが羊膜腔内に満たされた羊水を飲み込んでは、おしっこをする「胎児循環」のしくみができあがっていく。羊水量が保たれていることは、羊水中で胸郭運動を行う胎児の肺発育にとってきわめて重要である。羊水は子宮の収縮によって胎児にかかる圧力を均等に分散し、臍帯や胎盤への圧力を軽減させる。 同時に、胎動が直接母体に伝わることを防ぎ、胎動による母体の痛みを緩和する。一方、羊水には外界や母体の温度変化からの緩衝作用があり胎児の体温を一定に保つ働きがある。
【羊水の働き】
①胎児の保護作用(物理的および機械的刺激に対する保護作用、感染防御作用、前期破水および早産の予防)
②胎児発育にかかわる作用
③分娩時の作用
④羊水から得られる臨床情報
9 38歳の経産婦。陣痛発来で入院した。現在、陣痛間欠3分、陣痛発作40秒である。子宮口全開大から30分経過したが、まだ児娩出に至らない。陣痛開始から16時間が経過している。
この時点の助産診断で正しいのはどれか。
1.分娩停止
2.微弱陣痛
3.遷延分娩
4.第2期遷延
解答3
解説
・38歳の経産婦(陣痛発来で入院)。
・現在:陣痛間欠3分、陣痛発作40秒。
・子宮口全開大から30分経過したが、まだ児娩出に至らない。
・陣痛開始から16時間が経過している。
→上記評価から、各選択肢の消去できる理由をあげられるようにしよう。
1.× 分娩停止といえない。なぜなら、本症例(経産婦)は、子宮口全開大から30分経過した状態であるため。「子宮口全開大後,初産婦で2時間以上,経産婦で1時間以上児が娩出されない場合には分娩第Ⅱ期遷延・分娩停止と診断される.しかし,硬膜外麻酔による無痛分娩時には分娩第Ⅱ期には遷延するので,初産婦3時間,経産婦2時間以上児が娩出されない場合分娩第Ⅱ期遷延・停止と診断する」と記載されている(※引用:「2.CQ404 微弱陣痛が原因と考えられる遷延分娩への対応は?」著:徳永昭和輝様より)。
2.× 微弱陣痛といえない。本症例は、現在:陣痛間欠3分、陣痛発作40秒であるため。ちなみに、微弱陣痛とは、一旦分娩開始した(陣痛の間隔が10分以内ごとであり 、痛みを伴う子宮収縮により分娩が進行)にも関わらず、陣痛の強さが弱く、発作の持続が短く、かつ陣痛の間隔が長くなってしまい、分娩が進行しない状態をいう。子宮口の開き具合により、6分30秒以上(子宮口の開き:4~6cm)、6分以上(子宮口の開き:7~8cm)、4分以上(子宮口の開き:9~10cm)が陣痛周期の目安とされている。
3.〇 正しい。遷延分娩が最も疑われる。なぜなら、本症例は、陣痛開始から16時間が経過しているため。ちなみに、遷延分娩とは、有効な陣痛があるが子宮頸管の開大や胎児の下降が異常に緩徐な場合である。定義として、初産婦では30時間、経産婦では15時間を経過しても児娩出に至らない場合である。なお、初産婦の分娩開始から子宮口が全開大するまでの分娩第一期のみの所要時間は10〜12時間であり、全体の分娩所要時間は12〜15時間である。
4.× 第2期遷延といえない。なぜなら、本症例(経産婦)は、子宮口全開大から30分経過した状態であるため。ちなみに、第2期遷延とは、子宮口全開大後に標準の第2期所要時間(初産婦では2時間,経産婦では1時間)を超えて、分娩に至らない状態を指す。分娩第2期の遷延や吸引分娩などは、膀胱や尿道に対する圧迫や損傷のリスクを高め、尿閉を引き起こす可能性がある。したがって、産後の尿閉のリスクファクターは、尿閉硬膜外麻酔による無痛分娩、分娩第2期遷延、鉗子分娩などがあげられる。数日で軽快することがほとんどであるが、まれに自己導尿が必要となることもある。
10 多胎妊娠で正しいのはどれか。
1.羊水過少が起こりやすい。
2.妊娠貧血が起こりやすい。
3.一卵性双胎では二絨毛膜二羊膜にはならない。
4.一卵性双胎は二卵性双胎よりも周産期死亡率が低い。
解答2
解説
(画像引用:「多胎妊娠とは」和歌山県立医科大学様HPより)
多胎妊娠とは、2人以上の赤ちゃんを同時に妊娠することをいう。双胎妊娠には①一卵性双胎と②二卵性双胎とがある。②二卵性双胎とは、2個の受精卵から発生したもので、2個の胎盤があり、二絨毛膜二羊膜となる。一方、一卵性双胎は、1個の受精卵が分裂することにより発生し、
・1絨毛膜2羊膜:胎児の間に隔壁があり
・1絨毛膜1羊膜:胎児の間に隔壁がなし
1.× 「羊水過少」ではなく羊水過多が起こりやすい。なぜなら、多胎妊娠では、母体への負担が単胎妊娠に比べて大きくなり、子宮が大きくなることで羊水量が増え、お腹の張りが増えるため。羊水過多の原因の約8~10%が多胎妊娠である。
2.〇 正しい。妊娠貧血が起こりやすい。なぜなら、妊娠中は、胎盤に送る血液量が増え、母体に蓄えられていた鉄が胎児に優先的に送られ、多くの鉄分が必要になるため。ちなみに、妊娠貧血とは、妊婦に認められる貧血の総称である。その診断基準はヘモグロビ ン(Hb)値 11.0 g/dL 未満、またはヘマトクリット(Ht)値 33 %未満である。妊婦貧血は全妊娠の20%に発症し、その大部分は妊娠に起因する鉄欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血または両者を合併したものである。原因として、妊婦さんはヘモグロビンの生成に関わる鉄分の多くをお腹の赤ちゃんに吸収されてしまうからと考えられている。
3.× 一卵性双胎では、二絨毛膜二羊膜にはならないと断言できない。二卵性双胎は、100%で二絨毛膜性である。双胎妊娠には①一卵性双胎と②二卵性双胎とがある。②二卵性双胎は2個の受精卵から発生したもので、2個の胎盤があり、二絨毛膜二羊膜となる。一卵性双胎は1個の受精卵が分裂することにより発生し、分裂の時期により二絨毛膜二羊膜、一絨毛膜二羊膜、一絨毛膜一羊膜のいずれかになる。
4.× 一卵性双胎は、二卵性双胎よりも周産期死亡率が「低い」のではなく高い。なぜなら、一卵性双胎では、合併症のリスクが高くなるため。一絨毛膜双胎は双胎間輸血症候群のリスクが高く、分娩時にも合併症が生じやすい。ちなみに、双胎間輸血症候群とは、この胎盤の吻合血管により双胎間に慢性の血流アンバランス(不均衡)が生じ引き起こされる病態である。一絨毛膜二羊膜双胎の約10%に起こるとされる。