第95回(H24) 助産師国家試験 解説【午前36~40】

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36 前置胎盤に合併しやすいのはどれか。2つ選べ。

1.妊娠高血圧症候群
2.妊娠糖尿病
3.胎位異常
4.癒着胎盤
5.子宮破裂

解答3・4

解説

前置胎盤とは?

前置胎盤とは、胎盤が正常より低い位置(腟に近い側)に付着してしまい、そのために胎盤が子宮の出口(内子宮口)の一部もしくは全部を覆っている状態のことをいう。頻度として、全分娩の約1%弱を占めている。一般的に前置胎盤は無症状であるが、典型的な症状として①腹痛を伴わない突然の性器出血(警告出血)や大量性器出血があげられる。これらの症状は、お腹が大きくなり張りやすくなる妊娠28週以降に増加するといわれている。

(※図引用:「前置胎盤・癒着胎盤」日本産婦人科医会より)

1.× 妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧(血圧140/90mmHg以上)を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。

2.× 妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見、または発症した糖尿病まではいかない糖代謝異常のことである。糖代謝異常とは、血液に含まれる糖の量を示す血糖値が上がった状態である。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。

3.〇 正しい。胎位異常は、前置胎盤に合併しやすい。なぜなら、前置胎盤により、胎児の正常な位置を妨げることが多いため。胎位異常とは、例えば、骨盤位や横位のことを指す。胎盤が子宮下部を覆うため、胎児が適切に頭位に入れず、異常な胎位になるリスクが高まる。

4.〇 正しい。癒着胎盤は、前置胎盤に合併しやすい。なぜなら、胎盤が子宮筋層に癒着するリスクが増加するため。ちなみに、癒着胎盤とは、胎盤の組織の一部(絨毛)が脱落膜を貫通して子宮の筋肉の内側に入り込んでいる状態をいう。分娩前には正確な診断が難しく、赤ちゃんを取り出した後、胎盤が子宮からなかなかはがれないために判明することがほとんどである。

5.× 子宮破裂とは、分娩時、まれに妊娠末期に起こる子宮の裂傷で、胎児死亡のみならず母体死亡にもいたる重篤な疾患である。子宮破裂の発生頻度は、0.02~0.1%で、若干増加傾向にある。 陣痛促進薬で誘発された出産や子宮手術、帝王切開瘢痕(子宮の外傷)などが誘因となるものと、分娩中、何らかの原因により胎児の進行が停止し収縮輪が上昇することで破裂にいたるものがある。

(※図引用:「妊娠高血圧腎症の診断」著:神田昌子より)

 

 

 

 

 

37 30歳の初産婦。妊娠41週で入院し、オキシトシンの点滴静脈内注射によって分娩誘発を受けている。胎児心拍陣痛図を下に示す。内診所見は子宮口8cm開大、展退度80%、Station-1、頭位、未破水である。
 行うべき処置はどれか。2つ選べ。

1.導尿
2.体位変換
3.人工破膜
4.努責の誘導
5.オキシトシンの点滴静脈内注射の中止

解答2・5

解説

本症例のポイント

・30歳の初産婦(妊娠41週で入院)。
オキシトシンの点滴静脈内注射によって分娩誘発。
・胎児心拍陣痛図:遅発一過性徐脈
・内診所見:子宮口8cm開大、展退度80%、Station-1、頭位、未破水。
→本症例は、子宮口8cm開大であるため、分娩第1期と考えられる。胎児心拍数陣痛図とは、分娩監視装置による胎児心拍数と陣痛の連続記録であり、子宮収縮に対する胎児の心拍数変化により胎児の状態を推測するものである。本症例の胎児の場合、徐脈(高度変動一過性徐脈)が認められる。変動一過性徐脈とは、15bpm以上の心拍数減少が急速に起こり、開始から回復まで15秒以上2分未満の波形をいう。高度の判断は、①最下点が70 bpm未満で持続時間が30秒以上、②最下点が70 bpm以上80 bpm未満で持続時間が60秒以上で評価する。子宮収縮に伴って発生する場合は、一定の形を取らず、下降度、持続時間は子宮収縮ごとに変動することが多い。

1.× 導尿より優先されるものが他にある。なぜなら導尿は、膀胱がいっぱいになって分娩進行を妨げている場合や、尿路の閉塞が疑われる場合に行う処置であるため。

2.〇 正しい。体位変換を実施する。左半側臥位(もしくは用手的に子宮を左方移動し背臥位)にする。妊娠中は、増大した子宮によって下大静脈が圧迫されやすいことから、下肢の静脈還流が妨げられ低血圧を呈することがしばしばある。それを予防するために仰臥位の妊婦であれば用手的に子宮を左方移動し、手術台などでは手術台を傾けて左半側臥位にする(※参考:「妊産婦蘇生ガイドライン2020」著:田中 博明様)。つまり、母体の体位を変えることで、胎児への血流を改善することが期待され、胎児への酸素供給が改善される。

3.× 人工破膜を行う必要はない。なぜなら、人工破膜の適応とはいえないため。人工破膜とは、内診時に内子宮口 から赤ちゃんを包んでいる卵膜を破る処置のことで、人工的に破水させ、陣痛を誘発させることを目的としている。分娩までの時間が長引いた場合は、自然な破水と同様、子宮内感染について注意する必要がある。

4.× 努責の誘導は必要ない。なぜなら、努責を促すのは第2期以降であるため。早いタイミングで努責(いきみ)を行うと産道に傷がついたり赤ちゃんの頭に無理がかかったりする。分娩第1期は呼吸法や肛門圧迫で努責(いきみ)を逃す。

5.〇 正しい。オキシトシンの点滴静脈内注射を中止する。オキシトシンとは、子宮収縮薬(点滴静注法)である。 胎児が「徐脈(高度変動一過性徐脈)」が疑われるため、早急に胎児のストレス緩和を目的に、子宮収縮薬(オキシトシン)を中止することにより子宮収縮を停止させる必要がある。

 

(※引用:「人工破膜実施フローチャート」日本産婦人科医会より)

分娩期

【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。

・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。

・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。

・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。

 

 

 

 

 

38 在胎28週、1200gで9月に出生した極低出生体重児。後遺症はなく、生後2か月で退院した。
 退院後の感染症予防の対策として適切なのはどれか。2つ選べ。

1.抗菌薬の内服を行う。
2.RSウイルスの予防接種を行う。
3.ワクチンの接種量を正期産児と等量とする。
4.インフルエンザワクチンを12月中に接種する。
5.生ワクチンの接種は修正月齢6か月になるまで行わない。

解答2・3

解説

本症例のポイント

・在胎28週:1200gで9月に出生した極低出生体重児。
・後遺症はなく、生後2か月で退院した。
→極低出生体重児のワクチン接種の知識をおさえておこう。ワクチン接種は、低出生体重児でも出生月齢で行う。つまり、通常のスケジュールどおりでよい。

(※表引用:「予防接種スケジュール」日本小児学会より)

1.× 抗菌薬の内服を行う必要はない。なぜなら、抗菌薬は特定の感染症を予防するためのものではなく、細菌感染症が確認された場合に使用するものであるため。つまり、抗菌薬とは、細菌の増殖を抑制したり殺したりする働きのある化学療法剤のことである。細菌による感染症の治療に使用される医薬品である。

2.〇 正しい。RSウイルスの予防接種を行う。妊婦が産生した抗体が胎盤を介して胎児に移行することで出生後すぐから生後6か月頃までRSウイルス感染症の発症、重症化を予防できる。ちなみに、RSウイルス感染症とは、年齢を問わず感染を起こすが、特に乳幼児期において重要な病原体である。初感染は、軽症の感冒様症状から重症の細気管支炎や肺炎などの下気道疾患に至るまで様々である。しかしながら、初感染においては下気道疾患を起こす危険性は高い。1/3 が下気道疾患を起こすと報告されている。発熱・鼻汁などの上気道炎症症状が数日続き、そのあと下気道症状が出現する。

3.〇 正しい。ワクチンの接種量を正期産児と等量とする。ワクチンの接種量は、出生体重や在胎週数に関係なく、正期産児と同じ量で接種する。ワクチン接種においては、年齢に基づいたスケジュールを遵守する必要がある。

4.× インフルエンザワクチンを12月中に接種することはできない。なぜなら、インフルエンザワクチンは、生後6カ月(満6カ月)から打てるため。本児は、9月に出生している場合、早くても6か月後である。

5.× 生ワクチンの接種は、修正月齢6か月になるまで行わないという規定はない。なぜなら、ワクチン接種は、低出生体重児でも出生月齢(実際の生後月齢)で行うため。したがって、生ワクチンの接種も生後2か月から行える。

(※図引用:「ワクチンの接種間隔の規定変更に関するお知らせ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

39 次世代育成支援対策推進行動計画策定指針に示されているのはどれか。2つ選べ。

1.親の視点
2.子どもの視点
3.サービスの量の視点
4.次世代の親づくりという視点
5.家族内の自助努力という視点

解答2・4

解説

次世代育成支援とは?

次世代育成支援とは、国や自治体、企業が一体となり、次代を担う子供や、子供を育てる家庭を支援する取り組みのことである。国による行動計画策定指針並びに地方公共団体及び事業主による行動計画の策定等により支援対策を推進するために必要な措置が講じられている。

三 市町村行動計画及び都道府県行動計画の策定に関する基本的な事項
1 市町村行動計画及び都道府県行動計画の策定に当たっての基本的な視点
(1) 子どもの視点
(2) 次代の親の育成という視点
(3) サービス利用者の視点
(4) 社会全体による支援の視点
(5) 仕事と生活の調和の実現の視点
(6) 結婚・妊娠・出産・育児の切れ目ない支援の視点
(7) 全ての子どもと家庭への支援の視点
(8) 地域の担い手や社会資源の効果的な活用の視点
(9) サービスの質の視点
(10) 地域特性の視点
(※引用:「行動計画策定指針」厚生労働省様HPより)

1.2.5.× 親の視点/サービスの量の視点/家族内の自助努力という視点は、次世代育成支援対策推進行動計画策定指針に示されていない。
次世代育成支援の主要な目標は、子どもに焦点を当て、サービスの質と内容が重視される。また、次世代育成支援の方針は、家族内の自助努力だけに頼るのではなく、社会全体で子育てを支援することが目的である。家族を孤立させず、地域や社会が一体となって支えることが重要視されている。

2.〇 正しい。子どもの視点は、次世代育成支援対策推進行動計画策定指針に示されている。
「我が国は、児童の権利に関する条約の締約国としても、子どもに関わる種々の権利が擁護されるように施策を推進することが要請されている。このような中で、子育て支援サービス等により影響を受けるのは多くは子ども自身であることから、次世代育成支援対策の推進においては、子どもの幸せを第一に考え、子どもの利益が最大限に尊重されるよう配慮することが必要であり、特に、子育ては男女が協力して行うべきものとの視点に立った取組が重要である(※引用:「行動計画策定指針」厚生労働省様HPより)。」

4.〇 正しい。次世代の親づくりという視点(次代の親の育成という視点)は、次世代育成支援対策推進行動計画策定指針に示されている。
「子どもは次代の親となるものとの認識の下に、豊かな人間性を形成し、自立して家庭を持つことができるよう、長期的な視野に立った子どもの健全育成のための取組を進めることが必要である(※引用:「行動計画策定指針」厚生労働省様HPより)。」

 

 

 

 

 

40 産科医療補償制度で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.助産所は加入できない。
2.出生体重2000g以下の新生児が対象である。
3.出生後に感染症で脳性麻痺になった児は対象に含まれる。
4.分娩に関連して発生した脳性麻痺の再発防止を目的としている。
5.補償対象の脳性麻痺の原因分析を行う第三者委員会が設置されている。

解答4・5

解説

(※図引用:「産科医療補償制度について」厚生労働省HPより)

産科医療補償制度とは?

産科医療補償制度とは、分娩に関連して発症した脳性麻痺の子と家族の経済的負担を速やかに補償し、原因分析を行い、再発防止のための情報提供などを行う制度である。病院、診療所や助産所といった分娩を取り扱う機関が加入する制度である。原因分析の結果は、保護者と分娩機関にフィードバックされ、事例情報を整理し再発防止策を策定し広く一般に公開、提言される。産科医療補償制度の定める「脳性麻痺」の定義に合致し、以下の3つの基準をすべて満たし、運営組織が「補償対象」として認定した場合に、補償金が支払われる仕組みである。

①在胎週数28週以上で出生したこと、②先天性や新生児期の要因によらない脳性まひであること、③身体障害者手帳1・2級相当の脳性まひであることがあげられる。いずれにしても、まずは産科医療補償制度の定める「脳性麻痺」の定義に合致する必要がある【令和4年1月1日以降に生まれた場合】。

1.× 助産所も加入「できる」。病院、診療所や助産所といった分娩を取り扱う機関が加入する制度である。

2.× 出生体重2000g以下の新生児が対象「という条件はない」。①在胎週数28週以上で出生したこと、②先天性や新生児期の要因によらない脳性まひであること、③身体障害者手帳1・2級相当の脳性まひであることがあげられる。いずれにしても、まずは産科医療補償制度の定める「脳性麻痺」の定義に合致する必要がある【令和4年1月1日以降に生まれた場合】。

3.× 出生後に感染症で脳性麻痺になった児は対象に「含まれない」。なぜなら、先天性や新生児期の要因によらない脳性まひであることが対象条件となっているため。

4.〇 正しい。分娩に関連して発生した脳性麻痺の再発防止を目的としている。分娩に関連して発症した重度脳性まひのお子さまとご家族の経済的負担を速やかに補償するとともに、原因分析を行い、同じような事例の再発防止に資する情報を提供することなどにより、紛争の防止・早期解決および産科医療の質の向上を図ることを目的としています(※引用:「産科医療補償制度について」厚生労働省HPより)。

5.〇 正しい。補償対象の脳性麻痺の原因分析を行う第三者委員会が設置されている。産科医療補償制度は、産科医不足の改善や産科医療提供体制の確保を背景に、より安心して産科医療を受けられる環境整備の一環として、平成21年1月に創設されました(※引用:「産科医療補償制度について」厚生労働省HPより)。

 

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