第95回(H24) 助産師国家試験 解説【午前26~30】

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26 血友病Aの父をもつ既婚の女性。最近、妊娠が判明した。女性、その母親および女性の夫は血友病Aを発症していない。女性の家系図を示す。
 出生した児が男児であった場合、この男児が将来的に血友病Aを発症する確率はどれか。

1.0
2.1/8
3.1/4
4.1/2
5.1

解答

解説

本症例のポイント

血友病Aの父をもつ既婚の女性。
・最近、妊娠が判明した。
・女性、その母親、女性の夫:血友病Aを発症していない

血友病を罹者した父:(X’Y)
正常な母:(XX)

この間に生まれた女性は、(X’X):保因者となる。
正常な夫(XY)

この間に生まれる男は、2パターンとなり、①(X’Y):発症者と②(XY):正常な場合である。

したがって、選択肢4.1/2が将来的に血友病Aを発症する確率といえる。

”血友病とは?”

血友病とは、血液を固めるのに必要な「血液凝固因子(第Ⅷ因子または第Ⅸ因子)が不足・活性低下する病気のことである。血友病の検査では、血が止まりにくいかどうかを調べるため、はじめに「血小板数」「プロトロンビン時間(PT)」「活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)」の3つを測定する。そこでAPTTだけが正常よりも延長している場合に血友病が疑われる。

【概念】
伴性劣性遺伝(男児に多い):生まれつき発症することがほとんどであるため、幼少期から①些細なことで出血する、②出血が止まりにくいといった症状が繰り返される。
血友病A:第Ⅷ凝固因子の活性低下
血友病B:第Ⅸ凝固因子の活性低下

【症状】関節内出血を繰り返し、疼痛、安静により関節拘縮を起こす。(筋肉内出血・血尿も引き起こす)肘・膝・足関節に多い。鼻出血、消化管出血、皮下出血等も起こす。

【治療】凝固因子製剤の投与、関節拘縮・筋力低下に対するリハビリテーション

(※参考:「血友病」Medical Note様HP)

 

 

 

 

 

27 在胎38週、3100gで出生した児。母親が授乳禁忌である薬物を内服していたため母乳は止め、出生した日から人工乳を哺乳していた。日齢1にビタミンK2シロップ剤を内服した。日齢2。血便を認める。呼吸状態や哺乳力に異常を認めない。便の検査で好酸球の集積を認める。
 血便の原因として最も疑われるのはどれか。

1.新生児メレナ
2.母体血の嚥下
3.急性胃粘膜病変
4.ミルクアレルギー
5.新生児壊死性腸炎

解答

解説

本症例のポイント

・在胎38週、3100gで出生した児。
・母親が授乳禁忌である薬物を内服していた。
・母乳は止め、出生した日から人工乳を哺乳していた。
・日齢1:ビタミンK2シロップ剤を内服した
・日齢2:血便を認める。
・呼吸状態や哺乳力:異常を認めない
・便の検査:好酸球の集積を認める
→上記の評価から、各選択肢の否定理由をあげられるようにしよう。

1.× 新生児メレナは考えにくい。なぜなら、本児はすでにビタミンK2シロップ剤を内服しているため。したがって、ビタミンK欠乏による出血傾向で起こる消化管出血(新生児メレナ)は考えにくい。ちなみに、新生児メレナとは、生後2〜4日の新生児に突然の吐血、血便、タール便(ノリのつくだ煮様)などの胃腸管出血をみる病気で、ビタミンKに依存する凝固因子の不足により血液が凝固しにくくなり出血を起こした病気を総称して呼ぶ。

2.× 母体血の嚥下は考えにくい。なぜなら、本児(日齢2)であるため。一般的に、母体血の嚥下の場合、生後すぐに見られ新生児が血便を呈することがある。

3.× 急性胃粘膜病変は、考えにくい。なぜなら、本児の呼吸状態や哺乳力に異常を認めないため。そもそもが、成人に関連する病態であるが、症状としては上部消化管出血(吐血)が主であり、血便や好酸球の集積はみられない。

4.〇 正しい。ミルクアレルギーが、この児の血便の原因として最も考えられる。なぜなら、血便の検査で好酸球の集積が認めたため。ミルクアレルギーとは、牛乳たんぱく質に過敏なアレルギー体質の赤ちゃんに起こる食物アレルギーで、血便などの消化管症状が現れることがある。他の症状としては、嘔吐、下痢、腹部膨満、発疹、体重増加不良などがある。ちなみに、好酸球の集積とは、白血球の一種である好酸球が特定の部位に大量に集まることを指す。好酸球はアレルギー反応に関与しており、その集積によって炎症を引き起こし、組織を傷つけたり機能不全をきたしたりする疾患を引き起こす。

5.× 新生児壊死性腸炎は考えにくい。なぜなら、呼吸状態や哺乳力に異常がないため。壊死性腸炎とは、腸への血液の流れの障害に、細菌感染などの因子が加わることにより腸が壊死してしまう病気である。 ほとんどは生まれてから30日未満(特に1週間以内)の赤ちゃんにみられ、時に生後30日目以降にみられることもある。早産児で生まれたか、重篤な病気がある新生児でみられる場合がほとんどである。症状として、腹部が膨れ、便に血液が混じり、新生児は緑色や黄色、さび色をした液体を吐き、非常に具合が悪くなりぐったりする。原因は完全には分かっていないが、血液中の酸素レベルの低下や腸への血流量の低下に伴い、腸が成熟していないことが部分的に関係している。低出生体重児、早産児の場合、経口摂取に必要な機能が成熟しておらず、消化管機能の未熟性があるため起こりやすい。

新生児メレナとはどんな病気ですか?

“メレナ”とは、本来“黒色便”のことです。そのため、“新生児メレナ”は新生児期の下血による黒色便を意味し、新生児が吐血や下血などの症状を呈する病気を総称して新生児メレナと呼ばれます。新生児メレナには、吐血や下血となる血液の由来が母体の血液である “仮性メレナ”と、児の血液である“真性メレナ”があります。仮性メレナの要因としては、出生時の胎盤からの出血や、授乳時に母親の乳頭裂傷などによる出血の嚥下があげられます。一方、真性メレナでは、主に児のビタミン K 欠乏による消化管出血が要因となります。両者はアプト試験(新生児血液中に多く存在するヘモグロビン F のアルカリ抵抗性を利用して母体血か新生児血かを判定する簡易検査)で鑑別することができます。ビタミン K は数種類の凝固因子の産生に必要な補助因子です。そのため、ビタミン K が欠乏すると消化管出血だけでなく、重症例では頭蓋内出血などを合併し、死亡する場合もあります。ビタミン K は胎盤通過性が悪く、母乳中のビタミン K 含量が少ないことなどから、新生児は出生時からビタミン K が欠乏しやすく、哺乳条件によっては乳児期まで欠乏しやすい状態が持続します。

(※一部引用:「Q3-6. 新生児メレナとはどんな病気ですか?」著:川口 千晴より)

 

 

 

 

 

28 33歳の初産婦。妊娠38週。4100gの児を出産した。分娩後4時間、歩行の際に、恥骨部に疼痛を感じたことを助産師に訴えた。
 幅広ベルトを固定する高さの目安で正しいのはどれか。

1.臍
2.上前腸骨棘
3.腸骨稜
4.大転子
5.第5腰椎

解答

解説

本症例のポイント

・33歳の初産婦(妊娠38週、4100gの児を出産)。
分娩後4時間:歩行の際、恥骨部に疼痛を感じた。
→本症例は、巨大児(出生体重が4000g以上)の出産もあり、恥骨結合離開が疑われる。幅広ベルトの使い方をおさえておこう。幅広ベルトとは、骨盤ベルトとも呼び、骨盤周囲を適切に圧迫し、骨盤が産後にずれたり開いたりするのを防ぐためのものである。主に、恥骨結合離開に用いられることが多い。恥骨結合離開とは、出産時に起こる恥骨結合部が離開し痛みが生じていることである。分娩後に恥骨痛が出現し、歩行時障害が現れたら疑われる。治療として、離開の程度によるが、安静とベルトによる固定が必要になる。重いものを持ち上げたり、長時間の歩行を控えるよう指導するだけでなく、骨盤ベルトを正しく着用することが重要である。

1~3.5.× 臍/上前腸骨棘/腸骨稜/第5腰椎が幅広ベルトを固定する高さの目安とはいえない。

4.〇 正しい。大転子が幅広ベルトを固定する高さの目安である。なぜなら、大転子の高さが、恥骨結合の高さとほぼ一致するため。この高さで固定することで、痛みの軽減に寄与する。

(※図引用:「イラスト素材:骨盤」illustAC様HPより)

 

 

 

 

 

29 在胎39週、3200gで出生した児。出生直後から全身性のチアノーゼを認めるが、明らかな外表奇形はない。胸腹部エックス線写真を下に示す。
 最も疑われる疾患はどれか。

1.胎便吸引症候群
2.呼吸窮迫症候群
3.総肺静脈還流異常
4.先天性横隔膜ヘルニア
5.Fallot〈ファロー〉四徴症

解答

解説

1.× 胎便吸引症候群とは、出生前または周産期に肺に胎便(暗緑色の、無菌の便)を吸い込んだ新生児にチアノーゼや呼吸困難(呼吸窮迫)がみられることである。酸素不足などのストレスによって反射的にあえぎ、胎便を含む羊水を肺に吸い込んでしまうことなどで起こる。多呼吸、羊水混濁が特徴である。胸部エックス線の所見の特徴では、①両肺野にびまん性の策状影、②縦郭気腫などのエアリーク所見、③両側肺の過膨張がみられる。

2.× 呼吸窮迫症候群とは、早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が産生されないか不足しているために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こる。早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、呼吸窮迫症候群を発症するリスクが高くなる。症状として、肺胞がしぼみ、呼吸がうまく出来ず、多呼吸の症状が現れる。息を吸うときに肋骨や胸骨の下が陥没するのが特徴(陥没呼吸)。 症状が悪化すると、呻吟、チアノーゼ、嗜眠、不規則呼吸および無呼吸となる。

3.× 総肺静脈還流異常とは、すべての肺静脈が左心房には還らずに、上大静脈・門脈・右心房など体静脈に還流している先天性心疾患である。チアノ-ゼや心不全を生じるが、チアノーセが軽い例では多呼吸、体重増加不良などの所見しか認めないため診断が遅れることがある。胸部エックス線の所見の特徴では、肺のうっ血像である。また、肺静脈の閉塞が強い場合は、うっ血による網状陰影と心臓の陰影も小さいのが特徴である。

4.〇 正しい。先天性横隔膜ヘルニアが最も考えられる。先天性横隔膜ヘルニアとは、生まれつき横隔膜に欠損孔があって、本来お腹の中にあるべき腹部臓器の一部が胸の中に脱出してしまう病気である。多くの場合、横隔膜の後外側を中心に生じるボホダレク孔が欠損孔であるため、別名ボホダレク孔ヘルニアとも呼ばれる。胸部エックス線画像の特徴として、胸腔内に胃泡や腸管ガス像を認める。

5.× Fallot〈ファロー〉四徴症とは、4つの特徴(「心室中隔欠損」、「肺動脈狭窄」、「大動脈騎乗」、「右室肥大」)がある病気である。大動脈が太く、通常より前方に移動していることで肺動脈が細く狭くなり、「肺動脈狭窄」になる。ファロー四徴症は、先天性心疾患であり、症状としてチアノーゼ、頻脈、多呼吸、哺乳不良などの症状がみられる。

 

 

 

 

 

30 子宮内膜症について正しいのはどれか。2つ選べ。

1.卵巣に好発する。
2.発症は40歳以降に多い。
3.治療法には低用量ピル療法がある。
4.症状の変動は月経周期に一致しない。
5.プロゲステロンに依存する疾患である。

解答1・3

解説

子宮内膜症とは?

子宮内膜症とは、子宮の内側の壁を覆っている子宮内膜が、子宮の内側以外の部位に発生する病気である。腰痛や下腹痛、性交痛、排便痛などが出現する。経口避妊薬を内服することによりエストロゲンの総量が低く抑えられ、排卵を抑制し、子宮内膜症の症状を軽減し、子宮内膜症予防にもなる。なお、乳癌や子宮内膜癌などのエストロゲン依存性悪性腫瘍や子宮頸癌及びその疑いのある場合は腫瘍の悪化あるいは顕性化を促すことがあるため禁忌となっている。

(※引用:「子宮内膜症・子宮腺筋症 」日本産婦人科医会様HPより)

1.〇 正しい。卵巣に好発する。好発部位は、上表を参考にしてほしい。子宮内膜症の発生部位としてはダグラス窩周辺が最も多く(表1),活動性の初期病変の大部分はこの部位に認められる(※引用:日本産婦人科医会様HPより)。

2.× 発症は、「40歳以降」ではなく20~30歳代に多い。なぜなら、エストロゲン依存性疾患で、生殖年齢の女性に由来するため。エストロゲン依存性とは、『エストロゲンだけが高い状態だと進行してしまう病気』ということである。したがって、40歳以降になると、エストロゲンの分泌が減少するため、子宮内膜症の症状はむしろ軽減する傾向にある。

3.〇 正しい。治療法には低用量ピル療法がある。子宮内膜症は、エストロゲンが増加し、子宮内膜の増殖している状態であるため、治療法は、子宮内膜の増殖を抑制するため低用量ピルや黄体ホルモンが用いられる。低用量ピルは、エストロゲンとプロゲスチンを含み、排卵を抑制し、月経周期を調整することで、子宮内膜症の症状が緩和できる。

4.× 症状の変動は月経周期に一致「する」。子宮内膜症の代表的な症状として、痛みと不妊を自覚することが多い。痛みの中でも月経痛は、子宮内膜症の患者さんの約90%にみられる。この他、月経時以外にも腰痛や下腹痛、排便痛、性交痛などがみられる。

5.× 「プロゲステロン」ではなくエストロゲンに依存する疾患である。エストロゲン依存性疾患の代表格として、乳がん、子宮体がん、子宮筋腫、子宮内膜症があげられる。エストロゲン依存性とは、『エストロゲン だけが高い状態だと進行してしまう病気』ということである。プロゲステロン(黄体ホルモン)は、妊娠初期は妊娠黄体から、妊娠8週以降は胎盤から分泌される。作用は、妊娠の維持(子宮筋の収縮抑制)、体温の上昇、乳腺の発育、妊娠中の乳汁分泌抑制である。厚くなった子宮内膜を、さらに受精卵が着床しやすい状態にする。

 

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