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21 29歳の1回経産婦。助産所に電話で自宅分娩の介助を依頼してきた。妊婦は、現在妊娠14週。妊娠経過は正常であり、助産師による対応が可能である状態と判断した。
自宅での分娩介助の可否を決定するために優先して確認するのはどれか。
1.妊婦の住所
2.第1子の年齢
3.自宅の間取り
4.公的医療保険の種類
解答1
解説
・29歳の1回経産婦(現在妊娠14週)。
・助産所に電話で自宅分娩の介助を依頼してきた。
・妊娠経過は正常。
・助産師による対応が可能である状態と判断。
→特に緊急時に速やかに対応できるかどうかや、助産所からの距離、交通手段なども重要な判断材料となる。
1.〇 正しい。妊婦の住所は、自宅での分娩介助の可否を決定するために優先して確認するべきである。なぜなら、緊急時に速やかに対応できる距離でなければならないため。
2.× 第1子の年齢より優先されるものが他にある。第一子の年齢や過去の分娩の経過が、今回の分娩に影響を与える可能性はあるが、現時点では特に優先されることではない。
3.× 自宅の間取りより優先されるものが他にある。自宅の間取りは、第一子の休憩や遊び場、安全に出産できるかなどに関連するが、現時点では特に優先されることではない。
4.× 公的医療保険の種類より優先されるものが他にある。なぜなら、分娩介助の可・否に直接関わるものではないため。医療保険は、帝王切開や異常分娩の際に使用される。一般的な分娩に関しては、自費となっている。
22 産科棟での災害対策で適切なのはどれか。
1.災害用備品として流量膨張式バッグを常備しておく。
2.災害時、母子同室中の新生児の搬送者は母親とする。
3.平常時から新生児用コットは沐浴槽の近くに配置する。
4.災害時、新生児を搬送する手段は新生児用コットとする。
解答2
解説
災害時は瞬時に停電が起こることもあり、医療機器がすぐ使えなくなるおそれがある。そのため、事前に停電時の対策を立てておく。確認しなければならないチェックポイントは以下のとおり。
①酸素、医療ガス、人工呼吸器、保育器などの使用状況を常時把握しておく。
②輸液ポンプ、シリンジボンプ、人工呼吸器、保育器は常に非常電源に接続しておく 。
③酸素、医療ガスなどの無停電装置への切り替えと非常電源装置を確認する。
④酸素は、施設内(病棟内)のままならパイピングを使用、避難時にはポンべへ切り替えることができるようにしておく。
⑤酸素ポンべの台数を確認する。(※引用:「分娩施設における災害発生時の対応マニュアル作成ガイド」)
1.× 災害用備品として、「流量膨張式バッグ」ではなく自己膨脹式バッグを常備しておく。なぜなら、災害時には電源が使えない可能性があり、電源を必要としない医療器具が重要であるため。流量膨張式バッグ(バッグバルブマスク)は、緊急時に手動で換気を行うための器具である。
2.〇 正しい。災害時、母子同室中の新生児の搬送者は母親とする。災害時には、母親と新生児ができる限り一緒に避難することが推奨される。なぜなら、新生児の取り違いを防ぐため。また、母子の分離は、母親の不安を助長させる恐れがあるため。
3.× 平常時から新生児用コットは、沐浴槽の近くに配置する必要はない。なぜなら、災害時には水漏れや浸水のリスクがある場所は避ける必要があるため。平常時でも新生児用コットは、事故を防ぐため、安全な場所に配置するべきである。ちなみに、コットとは、産婦人科や小児科で使われている新生児用の可動式ベッドのことである。
4.× 災害時、新生児を搬送する手段は新生児用コットとする必要はない。なぜなら、新生児用コットを使用した避難は、段差や階段、がれきによって困難となることが多いため。母親の抱っこにより避難するように指導する。
【避難経路と避難方法】
・災害発生時は病院のアナウンスに従い避難・誘導を行う。
・アナウンスがない場合は、安全を確認し、まずはフロア内での避難誘導を行う。
・歩行可能な妊産褥婦は、階段または避難用スロープを使用し避難する。
・エレベーターは使用しない。
・入院時オリエンテーションで、避難経路と災害発生時のオリエンテーションを行う。
【病棟患者の避難】
①妊産褥婦・婦人科患者
・点滴中の患者のラインの扱いを決めておき、状況判断して、自分で対処してもらうか、スタッフが対処するなどして、避難誘導を行う。
・尿道留置カテーテル挿入患者は、留置したまま避難し安全な場所で看護職が抜去する。
・胎胞形成のある安静中の妊婦については、妊婦自身の生命を優先し避難するように誘導する。
②重症患者
・意識レベルの低下した患者、麻酔下にある患者や麻薬使用患者、術直後の患者はトリアージに従って担送する。
・重症患者には、ナースステーション内のナースコールボードと病室前のネームプレートに赤いマークをつけておくなどすべてのスタッフが分かるようにしておく。
③新生児
・母子同室中は、毛布やバスタオルで児を覆い、母親が抱っこし避難するように各病室を巡回し声をかける。
・病児室に児を収容している場合は、母親に病児室に行くように声をかけ、母親と児のネームバンドを照合した上で児を母親に預ける。
・避難時は状況により保温ブランケットを母親に預け、児を保温し避難してもらう。
④患児の母親が退院した児について
・保育器収容中の患児は、酸素は中止し、点滴は抜針してバスタオル・保温ブランケットで覆い、看護職が抱っこもしくは新生児避難具に収容し避難する。
・コット収容中の患児は、保温ブランケットで覆い新生児避難具に収容し避難する。
(※一部引用:「災害発生時の対応マニュアル作成ガイド P40〜41」公益社団法人 日本看護協会より)
23 重大な催奇形性のために使用が禁止されていた薬物で、近年になり妊娠が否定できる場合にのみ投与が可能となったのはどれか。
1.ジエチルスチルベストロール〈DES〉
2.テトラサイクリン
3.サリドマイド
4.チアマゾール
5.フェニトイン
解答3
解説
催奇形性とは、妊婦が薬物を服用した際に、胎児に奇形(形態的異常)を生じさせうるリスクのことである。
1.× ジエチルスチルベストロール〈DES〉は、現在も使用を禁止されている。ジエチルスチルベストロールとは、かつて流産防止剤などに用いられた合成女性ホルモンの薬剤である。1940年代頃に、ステロイド骨格を持たない合成女性ホルモン様物質の一種で、切迫早産の治療薬として使用された。また、更年期症、老人性膣炎、不妊症、乳汁うっ積による痛み止め、前立腺癌の治療薬としても使用された。しかし、ジエチルスチルベストロールを服用した女性から生まれた子供(娘)に膣の癌や子宮機能不全、卵管や卵巣などの異常などが多発したため使用が禁止された。
2.× テトラサイクリン系抗菌薬は、妊娠中期から後期の使用により歯牙着色やエナメル質形成不全を副作用にあげられるため禁忌である。
3.〇 正しい。サリドマイドは、重大な催奇形性のために使用が禁止されていた薬物で、近年になり妊娠が否定できる場合にのみ投与が可能となった。サリドマイドとは、骨髄腫細胞などの腫瘍細胞に対し、アポトーシス(細胞の自然死)を誘導する。また、血管新生を抑えたり、免疫反応を高めることにより、腫瘍細胞の増殖を抑える。 通常、再発または難治性の多発性骨髄腫の治療に用いられる。
4.× チアマゾールは、妊娠中も使用を禁止されていない。チアマゾールとは、抗甲状腺薬で、妊娠初期に使用すると、胎児に催奇形性のリスクがあるが、母体の甲状腺機能亢進症がある場合に、医師の判断の下で使用されることがある。乳汁中への移行がみられるため、主治医と相談しプロピルチオウラシルへの変更が望ましい。
5.× フェニトインは、妊娠中も使用を禁止されていない。フェニトインとは、てんかんのけいれん発作を予防するお薬である。ちなみに、てんかんとは、脳の神経の電気信号が過剰に発射され、意識障害やけいれん発作を繰り返す病気である。「妊婦または妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性(母体のてんかん発作類発を防ぎ、胎児を低酸素状態から守る)が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」と記載されており、気を付ければ投与可能である。
(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P60」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)
24 分娩後に発症する羊水塞栓症の所見で頻度が高いのはどれか。
1.発熱
2.片麻痺
3.聴力障害
4.視野狭窄
5.非凝固性の子宮出血
解答5
解説
羊水塞栓症とは、羊水が母体血中へ流入することによって引き起こされる。肺毛細管の閉塞を原因とする肺高血圧症と、それによる呼吸循環障害を病態とする疾患である。羊水塞栓症の症状として、①意識消失、②ショックバイタル、③播種性血管内凝固症候群(DIC)、④多臓器不全になる。ちなみに、播種性血管内凝固症候群〈DIC〉とは、小さな血栓が全身の血管のあちこちにできて、細い血管を詰まらせる病気である。血液凝固が増加することで出血の抑制に必要な血小板と凝固因子を使い果たしてしまい、過度の出血を引き起こす。感染、手術、出産時の合併症など、考えられる原因はいくつかある。
1.× 発熱は、羊水塞栓症との関連性が低い。主に発熱は、感染や炎症に関連する症状である。
2.× 片麻痺は、羊水塞栓症との関連性が低い。主に片麻痺は、脳血管障害(錐体路障害)に関連する症状である。
3.× 聴力障害は、羊水塞栓症との関連性が低い。主に聴覚障害は、聴覚伝導路(内耳神経→蝸牛神経核(橋)→中脳下丘→視床→側頭葉)の障害で起こる。
4.× 視野狭窄は、羊水塞栓症との関連性が低い。主に視野狭窄は、網膜剥離や緑内障などの眼疾患や視覚経路の障害で起こる。
5.〇 正しい。非凝固性の子宮出血は、分娩後に発症する羊水塞栓症の所見で頻度が高い。なぜなら、羊水塞栓症では、凝固障害(播種性血管内凝固症候群、DIC)が頻繁に引き起こされるため。出血は止まりにくく、大量出血を伴うことが多い。
播種性血管内凝固症候群〈DIC〉とは、小さな血栓が全身の血管のあちこちにできて、細い血管を詰まらせる病気である。血液凝固が増加することで出血の抑制に必要な血小板と凝固因子を使い果たしてしまい、過度の出血を引き起こす。感染、手術、出産時の合併症など、考えられる原因はいくつかある。妊娠高血圧症候群性の常位胎盤早期剥離では播種性血管内凝固症候群〈DIC〉を発生することが多い。
25 常位胎盤早期剝離に特異的な所見はどれか。
1.心窩部の不快感がある。
2.粘液状の性器出血が少量ある。
3.痛みを伴わない不規則な子宮収縮がある。
4.超音波断層法で胎盤の肥厚像を認める。
5.超音波断層法で胎盤に高輝度エコーが散在している。
解答4
解説
(※引用:「(6)常位胎盤早期剝離」日本産婦人科医会様HPより)
常位胎盤早期剝離とは、子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、胎児娩出以前に子宮壁より剥離することをいう。剥離出血のため、性器出血や激しい腹痛、子宮内圧の上昇、子宮壁の硬化が起こり、ショック状態を起こすことがある。胎盤が早い時期に剥がれると、在胎週数の割に成長しなかったり、死亡することさえある。また、低酸素のために急速に胎児機能不全に陥る。
1.× 心窩部の不快感がある場合、HELLP症候群が疑われる。ちなみに、HELLP症候群とは、妊娠中あるいは産褥期に溶血(hemolysis)、肝酵素上昇(elevated liver enzymes)、血小板減少(low platelet)を呈し、多臓器障害をきたして母体生命を脅かす重篤な妊産婦救急疾患である。主な症状は上腹部(心窩部あるいは右季肋部)痛であり、嘔気や嘔吐、強い倦怠感を伴うこともある。今回妊娠時に高血圧を発症した妊娠高血圧症候群であり、妊娠高血圧症候群は重症になると血圧上昇、蛋白尿に加えてけいれん発作(子癇)、脳出血、肝臓や腎臓の機能障害、HELLP症候群などを引き起こすことがある。直ちに行う検査としては、HELLP症候群の3徴候である①溶血、②肝酵素上昇、③血小板減少を血液検査所見で確認する。
2.× 性器出血は、「粘液状の少量」ではなく「鮮紅色の大量」となりやすい。なぜなら、胎盤由来の出血のため。
3.× 痛みを「伴わない」ではなく伴う不規則な子宮収縮がある。通常、持続的で痛みを伴う強い子宮収縮が見られる。
4.〇 正しい。超音波断層法で胎盤の肥厚像を認める。なぜなら、胎盤の下に血腫が形成されることで、胎盤が肥厚して見えるため。
5.× 超音波断層法で、胎盤に「高輝度エコー」ではなく「低輝度エコー」が散在している。「(6)常位胎盤早期剝離」日本産婦人科医会によると「常位胎盤早期剝離の超音波診断所見は,1.胎盤後血腫,2.胎盤内低エコー像,3.胎盤肥厚,4.胎盤辺縁の鈍化,といったものが挙げられているがその診断精度は高くない」
(※引用:「(6)常位胎盤早期剝離」日本産婦人科医会様HPより)