第95回(H24) 助産師国家試験 解説【午前21~25】

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21 正期産で第1子を出産し、1か月健康診査に来院した女性。母乳哺育を行っており、母子ともに健康状態は良好である。
 保健指導で適切なのはどれか。

1.入浴はまだできないと説明する。
2.避妊にはコンドームの使用を勧める。
3.Kegel〈キーゲル〉体操の中止を勧める。
4.推定エネルギー必要量に550kcal/日を付加して摂取するよう説明する。

解答

解説

本症例のポイント

1か月健康診査:女性(正期産、第1子を出産)。
・母乳哺育を行っている。
・母子ともに健康状態は良好
→日常生活指導をおさえておこう。

1.× 入浴は、「まだできない」と説明する必要はない。なぜなら、設問から母子ともに健康状態は良好であることがわかるため。ちなみに、産後のシャワーは2~3日目から(帝王切開の場合:3~6日目)は入れることが多い。湯船を使ったお風呂は、産後1ヶ月後にある「1ヶ月健診」で医師から許可が出たら入れる。産後のママは子宮口が開いており、出産による免疫や体力の低下があるため、雑菌などによる感染症に注意が必要である。

2.〇 正しい。避妊にはコンドームの使用を勧める。なぜなら、母乳哺育中でも排卵が再開する可能性があるため。したがって、妊娠の希望がなければ、避妊は必要である。ちなみに、コンドーム法とは、性感染症の予防ができ、日本で最も普及している避妊法である。男性主導であることが多く、性交渉の途中で付けたり、破れてしまったり、はずれてしまったりなどの失敗が少なくないことから、一般的な使用方法だと1年間の失敗率は15%といわれている。

3.× Kegel〈キーゲル〉体操の中止を勧める必要はない。むしろ継続を進める。なぜなら、Kegel体操は骨盤底筋を強化し、産後の尿失禁予防や骨盤底の回復に役立つため。ちなみに、Kegel体操とは、骨盤底筋体操のことである。骨盤底筋は子宮、膀胱、直腸を含む骨盤臓器を支える筋肉で、骨盤底筋を強化することで尿漏れ対策となる。仰臥位が基本的な姿勢であるが、伏臥位や座位など日常生活の中でどんな姿勢で行ってもよい。

4.× 推定エネルギー必要量に、「550kcal/日」ではなく450kcal/日を付加して摂取するよう説明する(※下図参照)。

(※引用:「主食を中心に、エネルギーをしっかりと」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

22 新生児の先天性聴覚障害で正しいのはどれか。

1.発生頻度は出生10000人当たり1、2人である。
2.日本では聴覚スクリーニングは90%以上の新生児で行われている。
3.自動聴性脳幹反応〈AABR〉で異常が出た場合は耳音響放射〈OAE〉法を行う。
4.生後6か月までに治療を開始すると言語発達は良い。

解答

解説

聴覚スクリーニング

新生児聴覚スクリーニング検査は、聴覚障害を早く発見し、早期に援助することを目的に行うものである。精密検査の必要性を判定し、音刺激を与えて反応を得る検査である。生まれて間もない赤ちゃんを対象とした「耳の聞こえ」の検査である。出産した医療機関等で、退院までの間に検査を受けることが一般的である。赤ちゃんが眠っている間に、小さな音を聞かせて、反応を検査機器で確かめる。おおむね生後3日以内に行う。検査は、数分から10分以内で終わり、痛みや赤ちゃんの体への影響のない安全な検査である。

1.× 発生頻度は、「出生10000人」ではなく出生1000人当たり1、2人である。新生児聴覚スクリーニング検査によって難聴児を早期発見し、早期療養を開始することにより、難聴児の生活の質が大幅に改善につながる。 (※データ参照:「すべての新生児が聴覚スクリーニング検査を受けて」厚生労働省HPより)

2.△ 日本では聴覚スクリーニングは90%以上の新生児で行われている(令和6年現在、約98%で実施されている)。ただし、問題作成時(H17年の調査)では、60%程度の実施率であった。

3.× である。スクリーニング検査である「耳音響放射〈OAE〉法」で異常が出た場合は、自動聴性脳幹反応〈AABR〉を行う。耳音響放射検査(Otoacoustic Emission:OAE)とは、外耳道に挿入した音響プローブにより、内耳からの微弱音を検出する内耳有毛細胞機能の他覚的検査である。診断用の専用機器を用いてスクリーニングよりも細かく評価できる。ただし、内耳蝸牛の外有毛細胞の機能を検査するもので、耳垢や羊水の貯留等の影響を受けやすい。また、内耳は正常でも内耳から中枢に異常がある場合、耳音響放射<OAE>では正常な反応を示すことから、偽陽性率が高いといえる。ちなみに、偽陽性率とは、疾病なしだが、検査結果は陽性と判定される割合のことである。

4.〇 正しい。生後6か月までに治療を開始すると言語発達は良い。2000年に米国小児科学会、聴覚学会などの関連学会からなる乳児聴覚に関する連合委員会は、生後入院中に最初にスクリーニングを行い、生後1か月後までにはスクリーニングの過程を終え、生後3か月までに精密聴力検査を実施し、生後6か月までに支援を開始する(1-3-6 ルール)という聴覚障害の早期発見・早期療育(Early Hearing Detection and Intervention:EHDI)のガイドラインを出した。

(※図引用:「新生児聴覚スクリーニングマニュアル」一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会より)

 

 

 

 

 

23 日本における20〜39歳の母の歳ごとの年齢階級別出生率の推移を示す。
 30〜34歳に該当するのはどれか。

1.A
2.B
3.C
4.D

解答

解説

(※図引用:「母の年齢別出生率の推移」厚生労働省HPより)

1.× Aが25〜29歳に該当する。

2.× Bが20〜24歳に該当する。

3.〇 正しい。が30〜34歳に該当する。

4.× Dが35〜39歳に該当する。

 

 

 

 

 

24 乳児家庭全戸訪問事業〈こんにちは赤ちゃん事業〉の根拠となる法律はどれか。

1.児童福祉法
2.母子保健法
3.地域保健法
4.次世代育成支援対策推進法

解答

解説

乳児家庭全戸訪問事業とは?

乳児家庭全戸訪問事業は、児童福祉法(第6条の3)に規定されている。児童福祉法(第6条の3)「この法律で、乳児家庭全戸訪問事業とは、一の市町村の区域内における原則として全ての乳児のいる家庭を訪問することにより、厚生労働省令で定めるところにより、子育てに関する情報の提供並びに乳児及びその保護者の心身の状況及び養育環境の把握を行うほか、養育についての相談に応じ、助言その他の援助を行う事業をいう」と記載されている(※引用:「児童福祉法」e-GOV法令検索様HPより)。

1.〇 正しい。児童福祉法が乳児家庭全戸訪問事業〈こんにちは赤ちゃん事業〉の根拠となる法律である。ちなみに、児童福祉法とは、児童の福祉を担当する公的機関の組織や、各種施設及び事業に関する基本原則を定める日本の法律である。児童が良好な環境において生まれ、且つ、心身ともに健やかに育成されるよう、保育、母子保護、児童虐待防止対策を含むすべての児童の福祉を支援する法律である。

2.× 母子保健法とは、母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進を図るため、母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。

3.× 地域保健法とは、地域保健対策の推進に関する基本指針、保健所の設置その他地域保健対策の推進に関し基本となる事項を定めることにより、母子保健法その他の地域保健対策に関する法律による対策が地域において総合的に推進されることを確保し、地域住民の健康の保持及び増進に寄与することを目的として制定された法律である。

4.× 次世代育成支援対策推進法とは、次世代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ育成される環境整備を図るための次世代育成支援対策の基本理念を定めた法律である。都道府県・市町村の行動計画、一般事業主の行動計画を次世代育成支援対策推進センターなどで規定している。

 

 

 

 

 

25 助産所の運営管理で正しいのはどれか。

1.助産所での妊婦健康診査は公費負担の対象とならない。
2.母性健康管理指導事項連絡カードを記載することはできない。
3.分娩を取り扱わない場合でも嘱託医を確保しなければならない。
4.嘱託医の書面による包括的指示があれば処方箋医薬品を購入できる。

解答

解説

助産所について

助産所について、「医療法」に記載されている。ちなみに、医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。

助産所の管理(医療法第11条、第12条、第15条第2項)
・助産所の開設者は、助産師に、これを管理させなければならない。
・自ら管理者となることができるものである場合は、原則として、自ら管理しなければならない。
・助産所の管理者は、助産所に勤務する助産師その他の従業者を監督し、その業務遂行に遺憾のないよう必要な注意をしなければならない。

1.× 助産所での妊婦健康診査は公費負担の対象と「なる」。ちなみに、妊婦健康診査とは、妊婦さんや赤ちゃんの健康状態を定期的に確認するために行うものである。妊婦健康診査の費用は、妊娠・出産は正常な経過であれば、保険適用されず自費診療となる。保険が適用されない妊婦健診費用の一部を自治体(市区町村)が負担している。妊婦検診の費用は、14回のすべてが負担対象となっているが、1回あたり平均で約5,000円である。妊婦健康診査の費用助成は、全自治体で行われている。ただし、96市区町村は、公費負担額が明示されていない(※参考:「妊婦健康診査の公費負担の状況について」厚生労働省HPより)。

2.× 母性健康管理指導事項連絡カードを記載することは「できる」。母性健康管理指導事項連絡カードとは、妊娠中および出産後の女性従業員が、病院やクリニックから指導を受けた内容を適切に事業主に伝達するための書類で、通称「母健連絡カード」と呼ばれる。母性健康管理指導事項連絡カードの記載は、助産師(もくしは医師も)が行える。母体保護法とは、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する堕胎罪の例外事項を定めること等により、母親の生命健康を保護することを目的とした法律である。1948年7月13日に公布された。

3.× 分娩を取り扱わない場合は、嘱託医を確保「しなくてもよい」。これは、厚生労慟省医政局長通知「分娩を取り扱う助産所の嘱託医師および嘱託する病院又は診療所の確保について」において記載されている。

4.〇 正しい。嘱託医の書面による包括的指示があれば、処方箋医薬品を購入できる。これは、医師等の処方箋なしに販売が行える正当な理由における「④ 助産師が行う臨時応急の手当等のために、助産所の開設者に対し、臨時応急の手当等に必要な処方箋医薬品を販売する場合」に該当する。

医師等の処方箋なしに販売が行える正当な理由

① 大規模災害時等において、医師等の受診が困難な場合、又は医師等からの処方箋の交付が困難な場合に、患者(現に患者の看護に当たっている者を含む。)に対し、必要な処方箋医薬品を販売する場合
② 地方自治体の実施する医薬品の備蓄のために、地方自治体に対し、備蓄に係る処方箋医薬品を販売する場合
③ 市町村が実施する予防接種のために、市町村に対し、予防接種に係る処方箋医薬品を販売する場合
助産師が行う臨時応急の手当等のために、助産所の開設者に対し、臨時応急の手当等に必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑤ 救急救命士が行う救急救命処置のために、救命救急士が配置されている消防署等の設置者に対し、救急救命処置に必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑥ 船員法施行規則第 53 条第1項の規定に基づき、船舶に医薬品を備え付けるために、船長の発給する証明書をもって、同項に規定する処方箋医薬品を船舶所有者に販売する場合
⑦ 医学、歯学、薬学、看護学等の教育・研究のために、教育・研究機関に対し、当該機関の行う教育・研究に必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑧ 在外公館の職員等の治療のために、在外公館の医師等の診断に基づき、当該職員等(現に職員等の看護に当たっている者を含む。)に対し、必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑨ 臓器の移植に関する法律(平成9年法律第 104 号)第 12 条第1項に規定する業として行う臓器のあっせんのために、同項の許可を受けた者に対し、業として行う臓器のあっせんに必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑩ 新法その他の法令に基づく試験検査のために、試験検査機関に対し、当該試験検査に必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑪ 医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の原材料とするために、これらの製造業者に対し、必要な処方箋医薬品を販売する場合
⑫ 動物に使用するために、獣医療を受ける動物の飼育者に対し、獣医師が交付した指示書に基づき処方箋医薬品(専ら動物のために使用されることが目的とされているものを除く。)を販売する場合
⑬ その他①から⑫に準じる場合

(※一部引用:「薬局医薬品の取扱いについて」厚生労働省HPより)

 

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