第95回(H24) 助産師国家試験 解説【午後16~20】

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16 正常新生児の良好な吸啜状態はどれか。

1.速いテンポで吸啜している。
2.児の頰にくぼみがみられる。
3.吸啜時に舌の音が聞こえない。
4.児の下唇は内側に巻き込まれている。

解答

解説

MEMO

児の下顎が乳房に埋もれこむようにすることで効果的な吸着(ラッチオン)が行えるようになる。①口が大きく開く、②唇が外向き、③下顎が乳房に触れている、④乳房の上方に比べ下方を深く含んでいるといった深い吸い方ができると乳頭亀裂などのトラブルが少なくなる。

1.× 「速いテンポ」ではなくゆっくりとしたリズミカルなテンポで吸啜していることは、正常新生児の良好な吸啜状態といえる。なぜなら、速いテンポでの吸啜は、浅い吸啜であり、乳首をうまくくわえられていない場合が多いため。

2.× 児の頰にくぼみが「みられる」のではなくみられないことは、正常新生児の良好な吸啜状態といえる。なぜなら、児の頰にくぼみが「みられる」場合、児の吸う力が入りすぎているか、乳首を正しく深く加えられていない場合に起こりやすく、吸啜がうまくいっていないサインであるため。良好な吸啜では、頰が膨らんでいるか、平らな状態である。

3.〇 正しい。吸啜時に舌の音が聞こえないことは、正常新生児の良好な吸啜状態といえる。なぜなら、舌が適切に動いて乳首を口の中にうまく吸い込むことができているサインであるため。逆に、舌の音が聞こえる場合は、舌の動きや吸啜が適切でない可能性があり、乳を十分に飲めていないことが考えられる。

4.× 児の下唇は、「内側に巻き込まれている」のではなく外側向きに広がることは、正常新生児の良好な吸啜状態といえる。児の下顎が乳房に埋もれこむようにすることで効果的な吸着(ラッチオン)が行えるようになる。①口が大きく開く、②唇が外向き、③下顎が乳房に触れている、④乳房の上方に比べ下方を深く含んでいるといった深い吸い方ができると乳頭亀裂などのトラブルが少なくなる。

 

 

 

 

 

17 日齢5の新生児。2980gで出生した。8%の生理的体重減少があったが、日齢4から体重は増加傾向になった。体重2880gである。哺乳は約10回/日で母乳のみであり、吸啜状態は良好である。排尿は9回/日、排便は6回/日である。
 アセスメントで適切なのはどれか。

1.順調な経過である。
2.哺乳回数が多過ぎる。
3.体重増加が不良である。
4.人工乳を補足する必要がある。

解答

解説

本症例のポイント

・日齢5の新生児(出生:2980g)。
8%の生理的体重減少があり。
・日齢4:体重増加傾向(日齢5:2880g)
・哺乳:約10回/日で母乳のみ(吸啜状態は良好)。
・排尿は9回/日、排便は6回/日
→上記の評価から、正常範囲を正確に覚えておこう。

1.〇 正しい。順調な経過である。体重の変化や哺乳・排尿・排便の回数とも正常範囲である。正期産により出生した正常な新生児の生理的体重減少率は,出生体重の3~10%の範囲であり、生後3~5日がそのピークである。減少率とは、出生時体重からの減少の割合で、「(出生時の体重-現在の体重)÷出生時の体重×100」で算出される。

2.× 哺乳回数が多過ぎる「とはいえない」。むしろ正常範囲である。なぜなら、一般的な哺乳回数は、1日に8〜12回であるため。

3.× 体重増加が不良である「とはいえない」。むしろ正常範囲である。出生時に2980gであり、8%の生理的体重減少があったことから、2741.6gと分かる。そこから、日齢5において2880gであったことから、138.4g(2880 – 2741.6)増加したことが分かる。したがって、一日体重増加量を求めると27.68g(138.4g÷5日)となる。
【正常乳児の一日体重増加量の目安】
・0~3か月:25~30g
・3~6か月:20~25g
・6~9か月:15~20g
・9~12か月:7~10g

4.× 人工乳を補足する必要がある「とはいえない」。なぜなら、本児は、母乳のみで哺乳しており、吸啜状態も良好であるため。人工乳とは、何らかの理由(アトピー性皮膚炎や乳頭裂傷など)で母乳が与えられない場合、調製粉乳による人工乳が使用されることが多い。現在では母乳の代用品としての調製粉乳の品質も向上し、母乳の場合と比べても大差なく育児ができるようになっている。

 

 

 

 

 

18 ヒトT細胞白血病ウイルス-1型〈HTLV-1〉抗体陽性の妊婦に提供する情報で正しいのはどれか。

1.胎児奇形症候群を発症する確率が高い。
2.陣痛発来前に帝王切開で分娩する必要がある。
3.出生した児にワクチン接種をする必要がある。
4.栄養法は、完全人工栄養、短期母乳栄養および凍結母乳栄養から選択する。

解答

解説

ヒトT細胞性白血病ウイルスとは?

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病(ATL)というリンパ球の悪性腫瘍や、HTLV-1関連脊髄症(HAM)と呼ばれる慢性の神経疾患の原因ウイルスで、日本に現在約80万人の感染者が存在すると推定されている。約40年以上の潜伏期の後に年間1000人に1人の割合で発症するとされている。ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の主な感染経路は、①性的接触、②血液感染、③母子感染である。母乳からウイルスが感染することが証明されている感染症は、①HIV(ヒト免疫不全ウイルス) 、②HTLV1(成人T 細胞白血病ウイルス )、③CMV(サ イトメガロウイルス)である。母子感染では、主に経母乳感染することから、母子感染率を減らすには人工栄養が最も確実な方法である。

【母乳における対応】
①人工栄養:もっとも確実で推奨される。感染源となるリンパ球を含んだ母乳を遮断できる。
②短期母乳:母体から移行抗体が存在するとされる生後90日以内の授乳のみ実施。
③加工母乳:搾乳して一定時間冷凍保存した母乳を与える。

1.× 胎児奇形症候群を発症する確率が「高い」とはいいがたい。どの病気と比較して、胎児奇形症候群を発症する確率を求めればよいか不明である。ちなみに、胎児奇形症候群とは、胎児が発育過程で何らかの要因によって奇形や障害を持って生まれる一連の症候群を指す。原因として、遺伝的な要因や、妊娠中に母親が特定の薬物、アルコール、感染症、または栄養不足にさらされたことによる環境的な要因が含まれる。胎児奇形は身体的な構造異常や内臓の機能異常を伴うことが多く、さまざまな形で現れることがある。

2.× 陣痛発来前に帝王切開で分娩する「必要はない」。なぜなら、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の主な感染経路は、①性的接触、②血液感染、③母子感染(母乳感染)であるため。つまり、主に母乳を通じて新生児に伝播する。ちなみに、帝王切開術の適応として、①母体適応:児頭骨盤不均衡 前置胎盤,子宮破裂,重症妊娠高血圧症候群,常位胎盤早期剝離,分娩停止,分娩遷延などである。②胎児適応:胎児機能不全(胎児ジストレス),臍帯脱出,子宮内胎児発育遅延,切迫早産,前期破水,多胎などである。

3.× 出生した児にワクチン接種をする「ことはできない」。なぜなら、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)に対するワクチンは存在しないため。

4.〇 正しい。栄養法は、完全人工栄養、短期母乳栄養および凍結母乳栄養から選択する。なぜなら、母子感染では、主に経母乳感染することから、母子感染率を減らすには人工栄養が最も確実な方法であるため。
【母乳における対応】
①人工栄養:もっとも確実で推奨される。感染源となるリンパ球を含んだ母乳を遮断できる。
②短期母乳:母体から移行抗体が存在するとされる生後90日以内の授乳のみ実施。
③加工母乳:搾乳して一定時間冷凍保存した母乳を与える。

 

 

 

 

 

19 正常分娩で出生した2900gの新生児。1時間後のバイタルサインは、皮膚温35.8℃、直腸温36.5℃、呼吸数40/分、心拍数170/分であった。
 対応で適切なのはどれか。

1.温めたリネンで覆う。
2.室温を24℃に設定する。
3.閉鎖式保育器を37℃に設定する。
4.次回のバイタルサインの測定は2時間後とする。

解答

解説

本症例のポイント

・2900gの新生児(正常分娩で出生)。
・1時間後:皮膚温35.8℃直腸温36.5℃、呼吸数40/分、心拍数170/分。
→上記評価と新生児の環境設定をおさえておこう。
【新生児室入室後の診察のバイタルサインの評価】
①心拍数:120~160回分(100以下は低酸素や心疾患を疑う)
②呼吸数:40~60回分で規則的な腹式呼吸
③体温:36.5~37.5℃(直腸温)
④皮膚色:淡紅色もしくは鮮紅色(中心性チアノーゼを認めない)

1.〇 正しい。温めたリネンで覆う。なぜなら、本児の体温が皮膚温35.8℃、直腸温36.5℃と低くなっているため。温めたリネンで新生児を覆うことは、体温がこれ以上低くならないための手段として効果的である。新生児が熱を失わないように保護し、皮膚温度を上昇させる助けとなる。

2.× あえて、室温を24℃に設定する必要はない。「暖房時の室温の目安は20度前後、ただし生まれたての赤ちゃんの場合は23~25度くらいあってもよいと思います。 冷房時の室温の目安は、28度くらいまでです。 25度以下には下げないほうが良いでしょう。」と記載されている(※引用:「部屋の温度と湿度 [子育てQ&A]」京都府様HPより)。

3.× 閉鎖式保育器は、「37℃」ではなく33.0℃に設定する。34.0±0.5℃に設定する。新生児が生まれた際の体重に応じて、適切な体温管理を行う必要がある。日齢0の場合、1000g未満は保育器内36.0℃に設定する。1000~1500gは保育器内35.0±0.5℃に設定する。1500~2000gは保育器内34.0±0.5℃に設定する。2500g以上は33.0℃に設定する。(※参考:(「新生児の診察と検査」著:小川雄之亮)

4.× あえて、次回のバイタルサインの測定は、2時間後とする必要はない。なぜなら、分娩1時間後の新生児であり、バイタルサインが変化しやすいため。また、本児の体温が皮膚温35.8℃、直腸温36.5℃と低くなっているため、バイタルサインはより頻繁に測定し、体温管理を徹底する必要がある。

 

 

 

 

 

20 病院に向かっている途中で女性が出産してしまったと、タクシーの運転手が助産所に駆け込んできた。助産師がタクシーの後部座席を見ると、啼泣している新生児を抱いた女性とその夫がおり、胎盤が娩出されていた。助産師は女性と児の安全を確保した。
 この状況での出生証明書に関する助産師の対応で適切なのはどれか。

1.助産師が記載する。
2.嘱託医に記載を依頼する。
3.夫が記載する必要があると説明する。
4.警察に記載を依頼するように夫に説明する。

解答

解説

本症例のポイント

病院に向かっている途中で女性が出産してしまった。
・タクシーの運転手が助産所に駆け込んできた。
・タクシーの後部座席:啼泣している新生児を抱いた女性とその夫。
・胎盤が娩出されていた。
・女性と児の安全を確保した。
→出生証明書とは、子供が生まれたことを証明する書類である。状況に応じた対応が必要となる。

1~2.× 助産師/嘱託医が記載することはできない。なぜなら、助産師は出産に立ち会っていないため。

3.〇 正しい。夫が記載する必要があると説明する。なぜなら、出産に立ち会った医師または助産師がいないため。つまり、医師や助産師は出生証明書を書くことができない。今回の場合、出産に立ち会った者(夫もしくはタクシー運転手)が出生証明書を書くことになる。

4.× 警察に記載を依頼するように夫に説明する必要はない。なぜなら、そもそも警察は、出生証明書の記載や出生届に関与する役割を持っていないため。また、警察も分娩に立ち会っていないため証明することができない。

医師法第19~20条

第十九条 診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。
2 診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。
第二十条 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。

(※引用:「医師法第十九条」e-GOV法令検索様HPより)

 

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