第113回(R6) 看護師国家試験 解説【午後36~40】

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36 痛風の患者が摂取量を減らすことが望ましい食品はどれか。

 1.鶏卵
 2.チーズ
 3.鶏レバー
 4.じゃがいも

解答

解説

痛風とは?

 痛風とは、体内で尿酸が過剰になると、関節にたまって結晶化し、炎症を引き起こして腫れや痛みを生じる病気である。風が患部に吹きつけるだけで激しい痛みが走ることから痛風と名づけられたといわれている。男性に頻発する単関節炎で、下肢、特に第1中足趾関節に好発する。尿酸はプリン体の代謝の最終産物として産生され、代謝異常があると尿酸の産生過剰・排泄障害が生じ高尿酸血症となる。高尿酸血症は痛風や腎臓などの臓器障害を引き起こすほか、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣を合併しやすい。

 1.× 鶏卵/チーズ/じゃがいもは、一人前に含まれるプリン体は極めて少ない(50mg以下)。したがって、痛風の患者におすすめな食材である。
 3.〇 正しい。鶏レバーは、痛風の患者が摂取量を減らすことが望ましい食品である。なぜなら、鶏レバーにはプリン体が多く含まれるため。鶏レバーのほかに、マイワシ干物、イサキ白子、あんこう肝酒蒸しにプリン体が多く含まれる。

高尿酸血症とは?

高尿酸血症とは、血清尿酸値が7.0mg/dLを正常上限とし、これを超えるものと定義する。男性が圧倒的に多く男女比約20:1の割合である。高尿酸血症の原因は、一般的に生活習慣の乱れによるものが大半である。食事ではアルコールは重要であり、特にビールのとりすぎは高尿酸血症の原因としてよく知られている。

続発性高尿酸血症とは、別の病気や薬剤などによって二次的に高尿酸血症となるもの。原因として、白血病、腎不全、骨髄腫、先天性尿酸代謝異常、利尿菜やアスピリンの服用などである。高尿酸血症は、体内における産生亢進(産生過剰型)と腎からの排泄低下(排泄低下型)などに起因する。

類似問題です↓

【6問】痛風についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

37 患者、看護師、ベッド、車椅子の位置を図に示す。
 ベッド上にいる右片麻痺がある患者の端座位から車椅子への移乗を援助する看護師の足と車椅子の位置で適切なのはどれか。

解答

解説

本症例のポイント

右片麻痺がある患者
・端座位から車椅子への移乗
→①患者は左手で車いすの奥のアームレストをつかむ。
→②患者は離殿後、殿部を車椅子に向けるため足を方向転換(軸回旋)する必要がある。

1.〇 正しい。なぜなら、①患者は左手で車いすの奥のアームレストをつかむことができ、②患者の足が方向転換(軸回旋)するスペースも確保されているため。
2.× 患者の足の間に、看護師の足が入っており、患者の足が方向転換(軸回旋)するスペースがない。
3~4.× 患者は左手で車いすの奥のアームレストをつかめない。

ボディメカニクス

ボディメカニクスとは、「body=身体」と「mechanics=機械学」の造語で、人間が動作するときに骨や筋肉、関節が相互にどのように作用するかといった力学的関係を活用したものである。介護を行うときには、介護者の負担の軽減のためにも身につけておきたい。

①重心の高さは、低い方が安定する。
②支持基底面の広さは、広い方が安定する。
③摩擦抵抗の有無は、有った方が踏ん張りが効き安定する。
④支持基底面と重心の距離は、短い方が足腰への負担は少ない。

 

 

 

 

 

38 健康な成人の皮膚で正しいのはどれか。

 1.垢として剝がれ落ちるのは基底層である。
 2.外陰部にはアポクリン汗腺が存在する。
 3.皮膚表面は弱アルカリ性である。
 4.ケラチンは紫外線を吸収する。

解答

解説

(※図引用:「筋膜の構造」illustAC様より)

 1.× 垢として剝がれ落ちるのは、「基底層」ではなく角質層である。表皮は、「基底層→有棘層→顆粒層→角質層」の順に深層から浅層となる。
 2.〇 正しい。外陰部にはアポクリン汗腺が存在する。エクリン腺は全身の皮膚に分布する。エクリン腺は口唇・亀頭・陰唇を除く全身の皮膚に分布する。手掌・足底・額に特に多い。エクリン汗の成分はアポクリン腺からの汗(アポクリン汗)に比べて薄い。一方、アポクリン汗腺は、主に脇や陰部などの真皮に存在する。
 3.× 皮膚表面は、「弱アルカリ性」ではなく弱酸性である。なぜなら、皮膚の表面には常在菌が存在しており、皮脂の脂肪酸を分解するため。皮脂のpHは4.5〜6.0の弱酸性に保たれている。
 4.× 紫外線を吸収するのは、「ケラチン」ではなくメラニンである。肌が紫外線を浴びると、表皮の基底層にあるメラノサイト細胞が活性化してメラニンを生成する。このメラニンはm肌の細胞に取り込まれ、肌の色を濃くすることで紫外線のダメージを軽減させる働きを持つ。ちなみに、ケラチンとは、角層細胞の中に存在する線維状のタンパク質で肌の主な構成成分のひとつである。表皮の中で最も多い細胞で、基底層で発生したケラチノサイトがケラチンを産生して分化しながら表皮の最上部で角質となる。

 

 

 

 

 

39 創傷処置について適切なのはどれか。

 1.ドレッシング材は創部の辺縁に合わせて貼付する。
 2.肉芽形成の時期は強い水圧をかけて洗浄する。
 3.感染徴候のない創傷の消毒は不要である。
 4.テープは皮膚から垂直方向に剝がす。

解答

解説

(※図引用:「これからの正しい創傷治療―湿潤療法の取り組み―」安藤 善郎)

MEMO

近年、創傷治療は「創面を消毒し、ガーゼをあてて乾燥させる」従来の方法から、「創面を消毒しない,乾燥させない」方法へと大きく変化している。

 1.× ドレッシング材は、「創部の辺縁に合わせて」ではなく創部より大きく貼付する。なぜなら、創傷を被覆することにより湿潤環境を維持して創傷治癒に最適な環境を提供するため。ちなみに、ドレッシング材とは「創における湿潤環境形成を目的とした近代的な創傷被覆材をいい、従来のガーゼは除く」と定義されている(日本褥瘡学会)。
 2.× 肉芽形成の時期は強い水圧をかけて洗浄する必要はない。なぜなら、強い水圧をかけて洗浄すると、創傷治癒が遅延するため。ちなみに、肉芽とは、毛細血管に富んだ新生結合組織(幼若な結合組織)である。
 3.〇 正しい。感染徴候のない創傷の消毒は不要である。なぜなら、消毒は、創傷治癒を遅延するため。消毒薬は、細菌だけに作用するのではなく、創傷修復に必要な細胞に対しても毒性がある。創傷は、消毒よりも創傷周囲の皮膚を洗浄し、過剰な水分を取り除いた(洗浄)後、湿潤環境を保持する。
 4.× テープは皮膚から「垂直方向」ではなく平行方向に剝がす。なぜなら、垂直に剥がすと、肉芽組織や痂皮(かひ:かさぶた)まで剥がされる可能性があるため。

創傷の治癒過程とは?

①血液凝固期(術後~数時間後):出血による凝固塊が欠損をふさいで止血する時期である。
②炎症期(術直後~3日目ころ):炎症性細胞(好中球、単球、マクロファージなど)が傷に遊走して、壊死組織や挫滅組織などを攻める時期である。
③増殖期(3日目~2週間後):線維芽細胞が周辺から遊走して、細胞外マトリックスを再構築し、血管新生が起こり、肉芽組織が形成される時期である。
④成熟期(2週間~数か月後)(再構築期:リモデリング期):線維芽細胞が減り、線維細胞へと成熟し変化するじきである。コラーゲンの再構築が起き、創部の抗張力が高くなることで創傷が治癒していく。

 

 

 

 

 

40 午前8時から24時間蓄尿を開始することになった。
 蓄尿の方法で正しいのはどれか。

 1.滅菌容器に蓄尿する。
 2.開始日の午前8時の尿は蓄尿する。
 3.終了日の午前8時の尿は蓄尿する。
 4.排尿のたびに中間尿を採取して蓄尿する。

解答

解説

MEMO

・随時尿とは、任意の時間に採取した尿のことである。患者さんに時間的な制約がなく検査できる。

・24時間尿とは、24時間蓄尿することをいい、尿量や尿蛋白量を通して腎機能を評価する時などに用いる。昼夜や食事の影響を受ける成分の尿中排出量を正確に測定するために用いられる。

 1.× 滅菌容器に蓄尿する必要はない。なぜなら、尿量や尿蛋白量を通して腎機能を評価する時などに用いるため。滅菌容器は、細菌検査で用いられる。中間尿は、細菌の特定で用いられる。最初と最後の尿は外尿道口周囲の細菌が混入するためである。
 2.× 開始日の午前8時の尿は蓄尿する必要はない。なぜなら、開始日の午前8時の尿は、それよりも前に腎臓で作られた尿であるため。
 3.〇 正しい。終了日の午前8時の尿は蓄尿する。なぜなら、開始日の午前8時の尿は、それよりも前に腎臓で作られた尿であるため。したがって、開始日の午前8時の尿は捨てて、終了日の午前8時の尿は蓄尿する。
 4.× 排尿のたびに中間尿を採取して蓄尿する必要はない。24時間尿とは、24時間蓄尿することである。中間尿とは、排尿のし始めの尿を捨てて、排尿の中間あたりの尿を集める採尿方法である。出始めの尿には尿道口や尿道内の細菌が混じっている可能性があるため、このような方法で採尿が行われる。中間尿は、細菌の特定で用いられる。

各用語の説明

・無菌とは、すべての菌が存在しない状態である。
滅菌とは、物体の表面または容器内のすべての生命形態(細菌、ウイルス、胞子、真菌など)を完全に除去または死滅させるプロセスを指す。
・消毒とは、病原性微生物を、害の無い程度まで減らしたり、あるいは感染力を失わせたりして、毒性を無力化させることである。
・殺菌とは、一部を殺しただけでも「殺菌した」と言える状態であるため、この用語を使う場合は、有効性を保証したものではないともいえる。
・静菌とは、菌をしずめている状態で、菌を殺さないがその増殖を止めている状態を指す。対象や程度を含まない概念である。
・除菌とは、菌をのぞいている状態で、対象物から菌を除いて減らしている状態である。
・抗菌とは、菌をふせぐことで、細菌の増殖を阻止する(抑制する)ことである。菌を殺したり減少させたりするのではなく、繁殖を阻止する(抑制する)対象や程度を含まない概念である。

 

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