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次の文を読み109~111の問いに答えよ。
Aさん(65歳、男性)は、妻と自営業を営んでおり、2人で暮らしている。2か月前に仕事で大きな失敗をし、謝罪と対応に追われ、あまり夜に眠れなくなり、食欲不振が続いている。1か月前から気分が落ち込み、仕事で妻から間違いを指摘されたことで自信をなくしていた。Aさんは死んでしまいたいと思い、夜に自宅でロープを使って自殺を図ろうとしたところを妻に見つけられた。妻に付き添われ、精神科病院を受診し、うつ病と診断された。受診当日に入院し、抗うつ薬の内服が開始された。Aさんは「生きていても仕方がない。どうせ誰も分かってくれない」と看護師に話した。
111 入院1か月が経過し、Aさんは夜間の睡眠がとれるようになり、食事は全量摂取している。妻から間違いを指摘されたことを思い出し、「何をやってもきっと失敗するだけだ。今度はもっと大きな失敗をして仕事を辞めることになる。だから自分はだめな人間だ。努力しても意味がない」と看護師に言った。
Aさんへの治療法で最も適切なのはどれか。
1.森田療法
2.集団精神療法
3.認知行動療法
4.社会生活技能訓練〈SST〉
解答3
解説
・Aさん(65歳、男性、うつ病)
・2人暮らし:妻と自営業を営む。
・受診当日に入院し、抗うつ薬の内服が開始。
・治療:修正型電気けいれん療法が開始。
・入院1か月:夜間の睡眠がとれ、食事は全量摂取。
・妻から間違いを指摘されたことを思い出し、「何をやってもきっと失敗するだけだ。今度はもっと大きな失敗をして仕事を辞めることになる。だから自分はだめな人間だ。努力しても意味がない」と。
→本症例は、うつ病(急性期~回復前期)である。うつ病への治療法に関して覚えておこう。
1.× 森田療法とは、目的・行動本意の作業を繰り返すことにより、症状にとらわれず、症状を「あるがまま」に受け入れながら生活できるようにする方法である。強迫症(強迫性障害)、社交不安症(社交不安障害)、パニック症(パニック障害)、広場恐怖症(広場恐怖)、全般性不安症(全般性不安障害)、身体症状症(身体表現性障害)、病気不安症(心気症)、長引くうつ病、不登校・ひきこもりなどが対象である。つまり、うつ病の回復後期で行われる。
2.× 集団精神療法とは、「言葉によるやりとりや自己表現の手法等により、集団内の対人関係の相互作用を用いて、対人場面での不安や葛藤の除去、患者自身の精神症状や問題行動に関する自己洞察の深化、対人関係の習得等をもたらすことにより、病状の改善を図る治療法」である。つまり、うつ病の回復後期で行われる。
3.〇 正しい。認知行動療法を実施する。認知行動療法とは、ベックによって精神科臨床に適応された治療法である。例えば、うつ病患者の否定的思考を認知の歪みと考え、その誤りを修正することによって症状の軽快を図る。認知行動療法の中に、系統的脱感作法がある。系統的脱感作法とは、患者に不安を引き起こす刺激を順に挙げてもらい(不安階層表の作成)、最小限の不安をまず想像してもらう。不安が生じなかったら徐々に階層を上げていき、最終的に源泉となる不安が消失する(脱感作)ことを目指す手法である。
4.× 社会生活技能訓練〈SST:Social Skills Training〉とは、社会生活を送るうえでの技能を身につけ、ストレス状況に対処できるようにする集団療法の一つ(認知行動療法の一つ)である。精神科における強力な心理社会的介入方法である。患者が習得すべき行動パターンを治療者(リーダー)が手本として示し、患者がそれを模倣して適応的な行動パターンを学ぶという学習理論に基づいたモデリング(模倣する)という技法が用いられる。つまり、うつ病の回復後期で行われる。
次の文を読み112~114の問いに答えよ。
Aさん(24歳、女性)は大学卒業後、一般企業に就職したが、何度も自宅の鍵を閉めたかどうかを確認するため、遅刻を繰り返した。連絡せずに複数回の遅刻があったことを上司のBさんから強く注意され、うつ状態となったため精神科外来を受診したところ、強迫性障害と診断され、選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉が処方された。
112 内服を始めて1週後、Aさんは看護師に「鍵を閉めたかどうかの確認が増え、睡眠時間が減ってつらい」と訴えている。
看護師の声かけで適切なのはどれか。
1.「主治医に薬の変更を相談しましょう」
2.「睡眠状況を具体的に教えてください」
3.「Bさんに別の部署に異動したいと伝えてみましょう」
4.「鍵を閉めたかどうか気になるときは別のことを考えましょう」
解答2
解説
・Aさん(24歳、女性、強迫性障害)
・大学卒業後、一般企業に就職した。
・何度も自宅の鍵を閉めたかどうかを確認するため、遅刻を繰り返した。
・連絡せずに複数回の遅刻:上司のBさんから強く注意されうつ状態となった。
・選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉が処方された。
・1週後:Aさん「鍵を閉めたかどうかの確認が増え、睡眠時間が減ってつらい」と。
→本症例は、治療を始めて1週間の強迫性障害である。選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉に関する知識も覚えておこう。ちなみに、強迫性障害とは、自分の意志に反する不合理な観念(強迫観念)にとらわれ、それを打ち消すために不合理な行動(強迫行為)を繰り返す状態をいう。治療として、①SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、②森田療法、③認知行動療法などである。作業療法では、他のことに目を向けさせることによりこだわりを軽減することを目的とする。
1.× 「主治医に薬の変更を相談しましょう」と伝えるのは時期尚早である。なぜなら、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、効果が出るまでに2~3週間、場合によっては6週間かかるため。ちなみに、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、抗うつ薬として使用される薬である。強迫性障害(うつ状態)に対しても用いられる。
2.〇 正しい。「睡眠状況を具体的に教えてください」と声がけする。なぜなら、本症例は「鍵を閉めたかどうかの確認が増え、睡眠時間が減ってつらい」と言っているため。具体的な睡眠に関する評価を実施することが望ましい。
3.× 「Bさんに別の部署に異動したいと伝えてみましょう」と伝える必要はない。なぜなら、うつ状態の時に、正確な判断は難しいため。うつ状態の時の退職や仕事に関する重要事項の判断・決定は、先延ばしにすることが一般的である。
4.× 「鍵を閉めたかどうか気になるときは別のことを考えましょう」と伝える必要はない。なぜなら、本症例の「何度も自宅の鍵を閉めたかどうかを確認(強迫行為)」は、病気によるため。「別のことを考えましょう」で済ませられない。強迫行為とは、不合理な観念(手を洗っても汚いままなど)を解消するために繰り返し行ってしまう行為のことをいう。自分でもおかしいとわかっていながら、その行為を繰り返し、それが日常生活に障害をもたらしていることを強迫性障害という。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬とは、抗うつ薬の一種である。脳の神経伝達物質のセロトニンとノルアドレナリンの両方について再取り込みを阻害することで神経細胞と神経細胞の間のセロトニンとノルアドレナリンの量を増やし、情報伝達を増強して抗うつ効果を発揮すると考えられている。適応疾患として、うつ病・うつ状態以外にもパニック障害、社交不安障害、強迫性障害などに有効とされている。
次の文を読み112~114の問いに答えよ。
Aさん(24歳、女性)は大学卒業後、一般企業に就職したが、何度も自宅の鍵を閉めたかどうかを確認するため、遅刻を繰り返した。連絡せずに複数回の遅刻があったことを上司のBさんから強く注意され、うつ状態となったため精神科外来を受診したところ、強迫性障害と診断され、選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉が処方された。
113 受診に同行していた母親からは「Aから『私の代わりに鍵が閉まっているか見てきてほしい』といった要望が多い。それに従わないと『どうして私のつらさを分かってくれないの』と大きな声を出す。どのように関わればよいか分からない」と看護師に相談があった。
母親への看護師の対応で適切なのはどれか。
1.要望に応じ続ける方がよいと助言する。
2.治療の効果が得られるまで待つように伝える。
3.母親が疾患をどのように理解しているか確認する。
4.Aさんが大きな声を出しても反応しないように助言する。
解答3
解説
・Aさん(24歳、女性、強迫性障害)
・大学卒業後、一般企業に就職した。
・何度も自宅の鍵を閉めたかどうかを確認するため、遅刻を繰り返した。
・母親「Aから『私の代わりに鍵が閉まっているか見てきてほしい』といった要望が多い。それに従わないと『どうして私のつらさを分かってくれないの』と大きな声を出す。どのように関わればよいか分からない」と。
→本症例の母親からの相談である。したがって、家族心理教育が必要となる。家族心理教育とは、家族が病気を正しく理解し、適切な対応や望ましい接し方を身につけることを目的とする。病気による行動特性を理解し、症状に対する適切な対応と接し方を学ぶことができ、治療効果の増進・再発防止にもつながる。
1.× 「要望に応じ続ける方がよい」と助言する必要はない。なぜなら、要望に応じ続ける母親に負担がかかりすぎてしまうため。強迫性障害は、「不合理だとわかっていてもこだわって確認してしまう」という特徴がある。他のことに目を向けさせることによりこだわりを軽減することを目的とする。
2.× 「治療の効果が得られるまで待つ」ように伝える優先度は低い。なぜなら、母親は、今起こっている状態に具体的な解決策を求めているため。また、治療効果に時間がかかるため。一般的に、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、効果が出るまでに2~3週間、場合によっては6週間かかる。
3.〇 正しい。母親が疾患をどのように理解しているか確認する。なぜなら、Aちゃんの治療に母親の理解は不可欠であるため。家族心理教育が必要となる。家族心理教育とは、家族が病気を正しく理解し、適切な対応や望ましい接し方を身につけることを目的とする。病気による行動特性を理解し、症状に対する適切な対応と接し方を学ぶことができ、治療効果の増進・再発防止にもつながる。
4.× 「Aさんが大きな声を出しても反応しない」ように助言する必要はない。なぜなら、反応しないとAさんの精神的な安定にはつながらないため。Aさんは『どうして私のつらさを分かってくれないの』と大きな声を出している。無視ではなく、共感や傾聴が必要である。
次の文を読み112~114の問いに答えよ。
Aさん(24歳、女性)は大学卒業後、一般企業に就職したが、何度も自宅の鍵を閉めたかどうかを確認するため、遅刻を繰り返した。連絡せずに複数回の遅刻があったことを上司のBさんから強く注意され、うつ状態となったため精神科外来を受診したところ、強迫性障害と診断され、選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉が処方された。
114 選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉の内服を始めてから2か月が経過し、Aさんは外出中に鍵を閉め忘れたかもしれないという考えが強くなり、外出から予定より早く帰宅することがある。Aさんは「鍵を閉め忘れていないかの確認を減らしたい」と看護師に相談した。
Aさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。
1.外出を控えるよう助言する。
2.外出するときは誰かに付き添ってもらうよう提案する。
3.鍵の閉め忘れが気になる理由を考えてみるよう伝える。
4.鍵の閉め忘れが特に気になるときの前後の状況を振り返るよう促す。
解答4
解説
・Aさん(24歳、女性、強迫性障害)
・大学卒業後、一般企業に就職した。
・何度も自宅の鍵を閉めたかどうかを確認するため、遅刻を繰り返した。
・選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉の内服を始めてから2か月が経過。
・外出中に鍵を閉め忘れたかもしれないという考えが強くなり、外出から予定より早く帰宅することがある。
・Aさんは「鍵を閉め忘れていないかの確認を減らしたい」と。
→本症例からの相談である。強迫性障害に対する支援を行っていこう。
1.× 「外出を控える」よう助言する必要はない。なぜなら、相談の根本的な解決へとつながっていないため。外出した際に鍵の閉め忘れの確認の回数を減らしたいという相談である。
2.× 「外出するときは誰かに付き添ってもらう」よう提案する優先度は低い。なぜなら、必ずしも外出時にだれか付き添ってもらえるとは限らないため。また、付き添ってもらっても、確実に鍵の閉め忘れの確認の回数を減るとは限らず、前の問題のように、母親「Aから『私の代わりに鍵が閉まっているか見てきてほしい』といった要望をぶつけることも考えられる。
3.× 「鍵の閉め忘れが気になる理由を考えてみる」よう伝える必要はない。なぜなら、本症例は強迫性障害であるため。強迫性障害とは、自分の意志に反する不合理な観念(強迫観念)にとらわれ、それを打ち消すために不合理な行動(強迫行為)を繰り返す状態をいう。
4.〇 正しい。鍵の閉め忘れが特に気になるときの前後の状況を振り返るよう促す。なぜなら、強迫性障害の治療として、認知行動療法のひとつ系統的脱感作法であるため。認知行動療法とは、ベックによって精神科臨床に適応された治療法である。例えば、うつ病患者の否定的思考を認知の歪みと考え、その誤りを修正することによって症状の軽快を図る。認知行動療法の中に、系統的脱感作法がある。系統的脱感作法とは、患者に不安を引き起こす刺激を順に挙げてもらい(不安階層表の作成)、最小限の不安をまず想像してもらう。不安が生じなかったら徐々に階層を上げていき、最終的に源泉となる不安が消失する(脱感作)ことを目指す手法である。
次の文を読み115~117の問いに答えよ。
Aさん(14歳、男子、特別支援学校の中学生)はDuchenne〈デュシェンヌ〉型筋ジストロフィーで両親、弟(7歳)と2階建ての家に4人で暮らしている。呼吸障害が進行したため非侵襲的陽圧換気療法を導入する目的で入院した。Aさんの呼吸状態は安定し、両親に対するバッグバルブマスクによる用手換気の指導が終了したため、自宅に退院し訪問看護を毎日利用して療養生活を続けることになった。両親は「日常の呼吸管理について退院後に対応できるか心配です」と病棟の看護師に話した。
115 Aさんの両親に対する看護師の指導で適切なのはどれか。
1.息苦しいときは非侵襲的陽圧換気の吸気圧を上げる。
2.人工呼吸器が動かないときはすぐに救急車を要請する。
3.人工呼吸器が過剰送気を示すときは回路が外れていないか確認する。
4.マスクの周囲から空気が漏れるときはマスクのベルトをきつく締める。
解答3
解説
・Aさん(14歳、男子、特別支援学校の中学生、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)
・4人暮らし:両親、弟(7歳)と2階建ての家。
・呼吸障害が進行したため非侵襲的陽圧換気療法を導入する目的で入院。
・呼吸状態は安定、両親に対するバッグバルブマスクによる用手換気の指導が終了した。
・自宅に退院し訪問看護を毎日利用して療養生活を続けることになった。
・両親「日常の呼吸管理について退院後に対応できるか心配です」と。
→Duchenne型筋ジストロフィーは、病気の進行に伴い、 呼吸筋の筋力低下により呼吸障害を呈するため。20歳頃には、呼吸障害や心不全で死亡する。非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉療法は、気管切開することなくマスクを介して換気を行う治療法である。高二酸化炭素血漿を伴う呼吸不全(Ⅱ型呼吸不全)が対象となる。非侵襲的陽圧換気は、挿管をせずに鼻・口にマスクを使用した陽圧換気法で、患者にとって負担の少ない補助換気法である。気管内挿管が不要であるため患者は、苦痛が少ないが、挿管をして換気を行う侵襲的陽圧換気法の方が気道確保や換気は確実である。
1.× 息苦しいときは非侵襲的陽圧換気の吸気圧を「上げる」ことはできない。なぜなら、は非侵襲的陽圧換気の吸気圧の調整には、医師の指示が必要であるため。看護師の独断と判断で行うことはできない。
2.× 人工呼吸器が動かないときはすぐに救急車を要請する必要はない。なぜなら、人工呼吸器が動かないからといって、Aさんが直ちに具合が悪くなるとは限らないため。訪問看護も行っているので、故障を含め人工呼吸器が動かなくなった場合は、訪問看護ステーションに電話して相談するといった指導を行う。
3.〇 正しい。人工呼吸器が過剰送気を示すときは回路が外れていないか確認する。なぜなら、非侵襲的陽圧換気療法は、陽圧換気法であるため。回路が外れている場合(回路のトラブル)は、空気が常に出ており過剰送気となる。
4.× マスクの周囲から空気が漏れるときはマスクのベルトをきつく締める優先度は低い。なぜなら、マスクの周囲から空気が漏れる原因として、ベルト以外にもマスク自体の形状の問題のほか、位置や装着方法の不具合などが考えられるため。むしろマスクのベルトをきつく締めすぎると、皮膚トラブルをきたしやすいため注意が必要である。
非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉療法は、気管切開することなくマスクを介して換気を行う治療法である。高二酸化炭素血漿を伴う呼吸不全(Ⅱ型呼吸不全)が対象となる。非侵襲的陽圧換気は、挿管をせずに鼻・口にマスクを使用した陽圧換気法で、患者にとって負担の少ない補助換気法である。気管内挿管が不要であるため患者は、苦痛が少ないが、挿管をして換気を行う侵襲的陽圧換気法の方が気道確保や換気は確実である。
【睡眠時のNPPVの適応】
①慢性肺胞低換気(肺活量が60%以下の場合はハイリスク)
②昼間に酸素飽和度以下(94%以下)または高二酸化炭素血症(45mmHg以下)
③睡眠時SpO2モニターで、apnea-hypopnea index(AHI)が10/時間以上、SpO2が92%未満になることが4回以上か、全睡眠時間の4%以上
【睡眠時に加えて覚醒時のNPPVの適応】
①呼吸困難に起因する嚥下困難
②ひと息に長い文章を話せない
③慢性肺胞低換気症状を認め、昼間に酸素飽和度以下(94%以下)または高二酸化炭素血症(45mmHg以上)
(引用:NPPVガイドライン改訂第2版より)