第113回(R6) 看護師国家試験 解説【午前81~85】

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81 転移性脳腫瘍の原発巣で最も多いのはどれか。

 1.胃癌
 2.乳癌
 3.肺癌
 4.大腸癌
 5.子宮頸癌

解答

解説

転移性脳腫瘍とは?

転移性脳腫瘍とは、癌の第4病期(stageIV)に当たり、以前はその存在が認められても治療の対象から外されることが多かった脳腫瘍である。脳腫瘍全体の 14.7%を占め、神経膠腫、髄膜腫、下垂体腺腫に次いで多く、原発巣は表1のように肺癌が最も多い。(※引用:「転移性脳腫瘍」日本医科大学付属病院様HPより)

 1.× 胃癌は、5.3%である。
 2.× 乳癌は、10.3%である。
 3.〇 正しい。肺癌は、転移性脳腫瘍の原発巣で最も多い。51.0%である。
 4.× 大腸癌は、6.9%である。
 5.× 子宮頸癌は、3.2%である。

遠隔転移とは?

遠隔転移とは、がん細胞が最初に発生した場所(原発巣)から、血管やリンパ管に入り込み、血液やリンパの流れに乗って別の臓器や器官に移動し、そこで増殖することである。肺や肝臓、脳、骨など血液の流れが豊富な場所や、リンパの流れが集まる場所であるリンパ節に遠隔転移することが多い。

 

 

 

 

 

82 労働者災害補償保険法に規定されている保険者はどれか。

 1.国
 2.事業主
 3.市町村
 4.都道府県
 5.健康保険組合

解答

解説

労働者災害補償保険法とは?

労働者災害補償保険法とは、労働者災害補償保険により、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするために制定された法律である。必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、適正な労働条件の確保等を図り、労働者の福祉の増進に寄与する。

第三節 通勤災害に関する保険給付
第二十一条 第七条第一項第三号の通勤災害に関する保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
一 療養給付
二 休業給付
三 障害給付
四 遺族給付
五 葬祭給付
六 傷病年金
七 介護給付

(※参考:「労働者災害補償保険法」e-GOV法令検索様HPより)

 1.〇 正しい。は、労働者災害補償保険法に規定されている保険者である。これは、第二条に「労働者災害補償保険は、政府が、これを管掌する」と記載されている。政府=国である。ちなみに、管掌とは、健康保険制度の運営主体である保険者を指す。
 2~5.× 事業主/市町村/都道府県/健康保険組合は、労働者災害補償保険法に規定されている保険者とはいえない。ちなみに、健康保険組合とは、健康保険法に基づき国が行う被用者医療保険事業を代行する公法人である。従業員の健康状態を把握し、健康増進のためのプログラムを提供する役割を果たす。

 

 

 

 

 

83 肺結核について正しいのはどれか。2つ選べ。

 1.結核の10%程度である。
 2.感染経路は接触感染である。
 3.肺アスペルギルス症と同じ原因菌である。
 4.二次性の発症は過去の感染の再活性化による。
 5.DOTS〈Directly Observed Treatment, Short-course〉が推奨される。

解答

解説

肺結核とは?

肺結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。

 1.× 結核の「10%」ではなく80%程度である。病変は肺だけでなく、結核は全身のいろいろなところに病気を作るのが特徴で、これを肺外結核という。
 2.× 感染経路は、「接触感染」ではなく空気感染である。空気感染とは、飛沫核 (粒径5μm未満の粒子に付着した微生物)が長期間空中を浮遊し、これを吸い込むことで感染が伝播・感染するものをいう。例えば、結核、水痘、麻疹などが該当する。
 3.× 肺アスペルギルス症と同じ原因菌ではない。肺結核は、結核菌による感染症である。一方、アスペルギルス症とは、アスペルギルス属の真菌によって引き起こされる通常は肺の感染症である。肺や副鼻腔内に、菌糸、血液のかたまり、白血球が絡まった球状のかたまりが形成される。
 4.〇 正しい。二次性の発症は過去の感染の再活性化による。たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。
 5.〇 正しい。DOTS〈Directly Observed Treatment, Short-course〉が推奨される。DOTSとは、直接服薬確認療法と訳され、患者が適切な容量の薬を服用するところを医療従事者が目の前で確認し、治癒するまでの経過を観察する治療方法である。結核は6か月間きちんと薬を服用すれば、完全に治すことの出来る病気であるが、症状が見られなくなったことを理由に服薬を止めてしまう患者が少なくない。治療の途中で服薬をやめてしまうと、結核菌が抵抗力を持った耐性菌となったり、時には薬が全く効かない多剤耐性菌になってしまったりと、様々な問題を引き起こす可能性がある。こうした状況を防ぎ、完璧な治癒を保証する方法がDOTS(直接服薬確認療法)である(参考:「結核患者に対するDOTS(直接服薬確認療法)の推進について」岩手県庁HPより)。

感染経路と感染症

感染には、①接触感染、②空気感染、③飛沫感染がある。

①接触感染(例:流行性角結膜炎、疥癬、ノロウイルス感染症など)
(1)直接接触感染:感染者の皮膚粘膜との直接接触による伝播・感染する。
(2)間接接触感染:感染者の微生物で汚染された衣類、周囲の器物、環境などとの接触による伝播・感染する。

②飛沫感染(例:風疹、流行性耳下腺炎、 インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳など)
咳やくしゃみなどに伴って発生する飛沫(粒径5μm以上の粒子)が経気道的にヒトの粘膜に付着し感染する。飛散する範囲は1m以内であることが特徴。

③空気感染(例:結核、水痘、麻疹など)
飛沫核 (粒径5μm未満の粒子に付着した微生物)が長期間空中を浮遊し、これを吸い込むことで感染が伝播・感染する。

(※参考:「医療施設等における感染対策ガイドライン」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

84 敗血症性ショックについて正しいのはどれか。2つ選べ。

 1.血圧は上昇する。
 2.血中の乳酸濃度は低下する。
 3.エンドトキシンが原因である。
 4.最重症の臨床像は多臓器不全である。
 5.コールドショックからウォームショックに移行する。

解答

解説

ショックとは?

ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックである。出血性ショックとは、外傷や、消化管などからの出血によって血液循環量の低下が原因で起こるショックのことである。術後出血が原因となることもある。

 1.× 血圧は、「上昇」ではなく低下する。敗血症性ショックは「急性循環不全により細胞障害および代謝異常が重度となり、死亡率を増加させる可能性のある状態」と定義される。
 2.× 血中の乳酸濃度は、「低下」ではなく増加する。なぜなら、細菌毒素(エンドトキシン)と心臓への負荷により、やがて心臓が弱り、心臓から送り出される血液の量が減少し、生命維持にかかわる臓器への血液供給がさらに低下するため。したがって、十分な血液が供給されなくなり、組織は乳酸(老廃物)を過剰に血流に放出するため、血液の酸性度が高まる(アシドーシス)。
 3.〇 正しい。エンドトキシンが原因である。敗血症ショックは、細菌による感染によって産生される細菌毒素(エンドトキシン)などの毒素が全身に広がり、多臓器不全やショックなどの症状を引き起こす全身疾患である。
 4.〇 正しい。最重症の臨床像は多臓器不全である。なぜなら、細菌毒素(エンドトキシン)と心臓への負荷により、やがて心臓が弱り、心臓から送り出される血液の量が減少し、生命維持にかかわる臓器への血液供給がさらに低下するため。
 5.× である。「ウォームショック」から「コールドショック」に移行する。ウォームショックとは、四肢が温かく、血圧が低い状態である。一方、コールドショックとは、低血圧のまま血管が収縮して四肢が冷たくなった状態をいう。ショック進行に伴い、心臓機能の低下し、四肢が冷たくなる。

敗血症ショックとは?

肺血症とは、感染症への反応が制御不能に陥ることで生命を脅かす臓器機能障害が生じる臨床症候群である。つまり、感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされている状態といえる。そのなかでも敗血症性ショックは「急性循環不全により細胞障害および代謝異常が重度となり、死亡率を増加させる可能性のある状態」と定義される。組織灌流が危機的に減少し、肺・腎臓・肝臓をはじめとする急性多臓器不全が起こる場合もある。特に、新生児は免疫学的に未熟であるため重症化しやすく、肺炎や髄膜炎を併発することもある。そのため、早期診断、早期治療が極めて重要である。

【初期の症状】悪寒、全身のふるえ、発熱、発汗など。
【症状進行時】心拍数、呼吸数の増加、血圧低下、排尿困難、意識障害など。
【重症化】腎不全、肝不全といった臓器不全、敗血性ショックを招き、命を落とす危険が高まる。

 

 

 

 

 

85 てんかんについて正しいのはどれか。2つ選べ。

 1.けいれんと同義である。
 2.症候性てんかんは脳内病変を伴う。
 3.単純部分発作では意識障害を認める。
 4.特発性の全般てんかんは高齢者に多い。
 5.脳の神経細胞の発作性電気的興奮によって起こる。

解答

解説
 1.× けいれんと同義ではない。けいれんとは、自分の意志とは無関係に勝手に筋肉が強く収縮する状態である。てんかんとは、脳の神経の電気信号が過剰に発射され、意識障害やけいれん発作を繰り返す病気である。つまり、けいれんは症状で、てんかんは病気である。
 2.〇 正しい。症候性てんかんは脳内病変を伴う。症候性てんかんの場合、脳腫瘍や脳血管障害などが原因となって起こるものもある。
 3.× 意識障害を認めるのは、「単純部分発作」ではなく複雑部分発作である。単純部分発作は、大脳半球の局所的な過剰興奮により、焦点部位に応じて様々な症状を呈するてんかんである。複雑部分発作は、側頭葉から前頭葉にかけての局所的な過剰興奮によることが多いてんかんである。発作中の意識は消失し、自動症(口をもぐもぐさせる、舌なめずりをする、ボタンや衣類をいじるなど)の症状を呈する。
 4.× 特発性の全般てんかんは、「高齢者」ではなく若年者に多い。特発性全般てんかんとは、小児から若年者に好発するてんかんで、発作時に意識を失うことが多い。発作の程度は様々であるが、手足のけいれんは生じにくい。
 5.〇 正しい。脳の神経細胞の発作性電気的興奮によって起こる。てんかんとは、脳の神経の電気信号が過剰に発射され、意識障害やけいれん発作を繰り返す病気である。

 

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