第112回(R5) 看護師国家試験 解説【午後81~85】

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問題81 介護保険サービスを利用して購入できるのはどれか。

1.簡易浴槽
2.特殊寝台
3.体位変換器
4.移動用リフト
5.取り付け工事を伴わないスロープ

解答

解説
1.〇 正しい。簡易浴槽は、介護保険サービスを利用して購入できる。なぜなら、特定福祉用具であるため。排泄物に関係するものや陰部近くの皮膚に触れるもの、つまり、排泄や入浴に関するものは購入の対象である。【購入の対象】①腰掛け便座、②自動排泄処理装置の交換可能部分、③入浴補助用具、④簡易浴槽⑤移動用リフトの吊り具の部分などである。
2.× 特殊寝台は、福祉用具貸与品目である。特殊寝台とは、一般的には「介護ベッド」または「電動ベッド(ギャッチベッド)」と言われ、背部または脚部の傾斜角度が調整できる機能や、床板の高さが無段階に調整できる機能を持っている。
3.× 体位変換器は、福祉用具貸与品目である。体位変換器とは、寝たきり状態の人の体の下に棒状や板状、くさび状の用具などを差し込み、テコの原理などにより摩擦を減らすことで、少ない力でも体を動かせるようにする用具のことである。
4.× 移動用リフトは、福祉用具貸与品目である。移動用リフトとは、ベッド上から車いすへの移乗などの際に、要介護の方の体を持ち上げて移動する目的で使用される福祉用具のことである。
5.× 取り付け工事を伴わないスロープは、福祉用具貸与品目である。

貸与の対象(要介護2~5)

①車椅子
②車椅子付属品
③特殊寝台
④特殊寝台付属品
⑤床ずれ防止用具
⑥体位変換器
⑦手すり
⑧スロープ
⑨歩行器
⑩歩行補助杖(T字杖を除く)
⑪認知症老人徘徊感知機器
⑫移動用リフト(つり具の部分を除く)
⑬自動排泄処理装置

 

 

 

 

 

問題82 標準的な成長をしている正期産児の身長が出生時の約2倍になるのはどれか。

1.生後6か月
2.生後12か月
3.2歳
4.4歳
5.6歳

解答

解説

1.× 生後6か月では、正期産児の身長は出生時の約1.35倍に達する。
2.× 生後12か月(1歳)では、正期産児の身長は出生時の約1.5倍に達する。
3.× 2歳では、正期産児の身長は出生時の約1.75倍に達する。
4.〇 正しい。4歳は、標準的な成長をしている正期産児の身長が出生時の約2倍になる。ちなみに、ちなみに、4歳頃には出生時の約2倍になる。
5.× 6歳の年齢になると、男女差が開いてくるため、一概に何倍という指標では表せない。

(※図引用:「子供の成長・発達」成長科学協会HPより)

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【6問】発育発達曲線についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

問題83 女子の第二次性徴に最も関与するホルモンはどれか。

1.エストロゲン
2.オキシトシン
3.成長ホルモン
4.甲状腺ホルモン
5.テストステロン

解答

解説

第二次性徴とは

二次性徴とは、性ホルモンの分泌が促進されることにより、性器および身体に現れる変化である。第二次性徴に関わるホルモンは、男性の場合はアンドロゲン、女性の場合はエストロゲンとプロゲステロンである。アンドロゲンは精巣から、エストロゲンとプロゲステロンは卵巣から分泌される。

平均的に見ると男児の場合は、10歳前後に始まり約5年間続く。 体の成長には決まった順番があり、①睾丸の発達→②陰毛の発生→③精通→④声変わり→⑤体型の変化という順番をたどる。女児の場合は、8歳前後から始まり①乳房発育→②陰毛発生→③初経という順に進行することが一般的である。その評価にはTanner分類が用いられている。

1.〇 正しい。エストロゲンは、女子の第二次性徴に最も関与するホルモンである。二次性徴とは、性ホルモンの分泌が促進されることにより、性器および身体に現れる変化である。第二次性徴に関わるホルモンは、男性の場合はアンドロゲン、女性の場合はエストロゲンとプロゲステロンである。アンドロゲンは精巣から、エストロゲンとプロゲステロンは卵巣から分泌される。ちなみに、エストロゲンとは、女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。
2.× オキシトシンとは、下垂体後葉から分泌されるホルモンで、乳汁排出や分娩時の子宮収縮作用がある。
3.× 成長ホルモンとは、下垂体前葉から合成・分泌されるホルモンで、成長促進作用や代謝作用などの作用がある。
4.× 甲状腺ホルモンとは、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)があり、新陳代謝を調節している。脈拍数や体温、自律神経の働きを調節し、エネルギーの消費を一定に保つ働きがある。
5.× テストステロンは、男子の第二次性徴に最も関与するホルモンである。アンドロゲン(雄性ホルモン、男性ホルモン)とは、ステロイドの一種で、生体内で働いているステロイドホルモンのひとつである。アンドロゲンにはテストステロンとジヒドロテストステロン (dihydrotestosterone;DHT)があり、精巣の分化、機能、組織形成、さらに内性器・外性器の形成に重要な役割を果たす。

 

 

 

 

 

問題84 Aさん(25歳、女性)は統合失調症と診断され、入院2か月が経過した。食事や水分の摂取、トイレ歩行は1人でできる。歯磨き、入浴への関心はあまりない。幻聴が聞こえると突然走り出し、壁に頭をぶつけている。日中はホールで過ごし、自分から他の患者と交流はしない。
 Aさんのセルフケアのアセスメントで優先度が高いのはどれか。

1.排泄
2.個人衛生
3.安全を保つ能力
4.活動と休息のバランス
5.孤独と付き合いのバランス

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(25歳、女性、統合失調症
・入院2か月経過:食事や水分の摂取、トイレ歩行は1人で可能
・歯磨き、入浴への関心:あまりない。
・幻聴が聞こえると突然走り出し、壁に頭をぶつけている。
・日中:ホールで過ごし、自分から他の患者と交流はしない。
→本症例は、入院から2か月経つが、幻聴が聞こえていることから急性期と考えられる。急性期は、①十分な睡眠や休養、②安心感の確保が優先される。


1.× 排泄のアセスメントの優先度は低い。なぜなら、本症例はトイレ歩行を1人で可能であるため。また、設問文に排泄に関する具体的な記載がないため、優先度を高く設定する必要はない。
2.× 個人衛生のアセスメントのの優先度は低い。なぜなら、本症例は、歯磨き、入浴への関心はあまりないため。個人衛生を優先させることは、日常生活のストレスや負担の増加につながり、統合失調症の症状の増悪につながりかねない。
3.〇 正しい。安全を保つ能力のアセスメントの優先度が高い。統合失調症の急性期は、①十分な睡眠や休養、②安心感の確保が優先される。十分な睡眠や休養のためにも安全を保つ能力が必要な課題である。また、本症例は、幻聴が聞こえると突然走り出し、壁に頭をぶつけているため、ほかの患者の安全の確保も必要となる。
4.× 活動と休息のバランスのアセスメントの優先度は低い。なぜなら、活動を促す時期ではないため。簡単な周辺処理の活動を促すのは、幻覚がみられなくなる消耗期以降である。
5.× 孤独と付き合いのバランスのアセスメントの優先度は低い。なぜなら、付き合いを促す時期ではなないため。デイケアや他者との関りを促すのは、維持期以降となる。

統合失調症とは?

統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

 

 

 

 

 

問題85 薬物血中濃度モニタリング〈TDM〉の実施が必要な薬物はどれか。2つ選べ。

1.ヘパリン
2.インスリン
3.ジギタリス
4.炭酸リチウム
5.ニトログリセリン

解答3・4

解説

薬物血中濃度モニタリングとは?

薬物血中濃度モニタリングとは、患者に投与された薬物が、体の中にどのくらいの量があるのかという値(薬物血中濃度)をもとに、それが今後どのように変化するかを計算し、最も適した濃度になるよう患者一人一人に対する投与量を解析するである。体の中での薬の動き(薬物動態)は、同じ薬でも患者によって異なる。より精密な薬物量の管理が必要な薬剤に対して、薬剤師が薬物血中濃度解析を行い、より適した薬物の投与量・投与間隔を医師へ伝えることで、患者さんが薬の効き過ぎ(過量投与)になることを防いだり、また、薬が効果的に発揮できるように治療の手助けをすることを薬物血中濃度モニタリング(TDM:Therapeutic Drug Monitoring)という。

【血中濃度を確認する必要性が高い薬剤】
フェニトイン、バルプロ酸ナトリウム、リドカイン塩酸塩、ジゴキシン、炭酸リチウム、テオフィリン

1.× ヘパリンとは、血液凝固阻止剤で、抗凝固といって、血液を固まりにくくする作用がある。人の肝臓でも生成される。したがって、医療現場では、血栓塞栓症の防止や治療、カテーテル挿入時の血液凝固防止などにも用いられる。
2.× インスリンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖低下、②脂肪合成の作用がある。
3.〇 正しい。ジギタリスは、薬物血中濃度モニタリング〈TDM〉の実施が必要な薬物である。ジギタリスとは、心筋細胞のカルシウム濃度をあげて収縮力を増加させる強心薬としての作用と迷走神経や房室結節へ作用して心拍数を減少させる作用がある。したがって、心不全患者や頻脈性心房細動患者に使用が検討される。ただし、治療域の血中濃度範囲が狭く、血中濃度の上昇によりジギタリス中毒を生じる可能性もある。ジギタリス中毒の症状には、精神・神経症状(めまい・頭痛・失見当識・錯乱)、眼症状、不整脈、消化器症状(食欲不振、悪心・嘔吐、下痢)がある。要因として、低カリウム血症、高齢者、腎機能障害があげられる。
4.〇 正しい。炭酸リチウムは、薬物血中濃度モニタリング〈TDM〉の実施が必要な薬物である。炭酸リチウムとは、双極性障害の治療でよく用いられるが、適正な血中濃度が保てない場合は、リチウム中毒となる。これは、炭酸リチウムの有効血中濃度の範囲は、0.60~1.20mEq/Lと非常に狭いため起こってしまう。リチウム中毒の症状は、悪心・嘔吐、下痢、血圧低下、不整脈、意識障害、振戦、乏尿などである。重篤になると命の危険にもつながるため、定期的な血中濃度検査が推奨されている。
5.× ニトログリセリンとは、主に狭心症、他に心筋梗塞、心臓喘息、アカラジアの一時的緩解などに用いる。狭心症は冠動脈の内腔が一時的に閉塞、狭窄する。ニトログリセリンに代表される硝酸薬は血管平滑筋を弛緩させ、血管を拡張させる作用がある。

グルカゴンとは?

膵臓のランゲルハンス島からは、①インスリン、②グルカゴン、③ソマトスタチンが分泌される。
①インスリンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖低下、②脂肪合成の作用がある。

②グルカゴンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるα細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖上昇、②脂肪分解の作用がある。

③ソマトスタチンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるγ細胞から分泌されるホルモンの一種で、成長ホルモン、インスリン、グルカゴン、ガストリン、セクレチンの分泌抑制の作用がある。

 

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