第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午後101~105】

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次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
 Aさん(83歳、男性)は妻(81歳)と2人暮らし。息子夫婦は共働きで同市内に住んでいる。Aさんは自宅の廊下で倒れているところを妻に発見され、救急搬送された。Aさんは右上下肢に力が入らず、妻の声かけにうなずくが発語はなかった。頭部CTで左中大脳動脈領域の脳梗塞と診断されたため救急外来で血栓溶解療法が行われ、入院となった。血栓溶解療法による治療後2週。Aさんは右上下肢麻痺、失語などの後遺症があるが、自宅への退院を希望したため、機能訓練の目的で回復期リハビリテーション病棟に転棟した。転棟後1日。Aさんはベッドから車椅子への移乗動作の訓練を始めたが、健側の下肢筋力が低下しているため、立位のときにバランスを崩しやすい状況である。

101 Aさんは妻や看護師との話の内容は理解しているようだが、返答の際に言葉を間違えてしまうことや言葉がなかなか出てこないことがある。
 Aさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。

1.Aさんの言葉を推測しながら話す。
2.Aさんの言い誤りを訂正する。
3.大きな声で話す。
4.話題を変える。

解答1

解説
1.〇 正しい。Aさんの言葉を推測しながら話す。なぜなら、Aさんはブローカ失語を呈していることが疑われるため。ブローカ失語(運動性失語)とは、①復唱困難、②言語理解良好、③非流暢を特徴として言語障害である。聞き直しや修正は話し手のストレスにもつながったり、治療効果としては薄いため、聞き手は、Aさんの言葉に慣れ、推測しながら話す。
2.× Aさんの言い誤りを訂正する必要はない。なぜなら、運動性失語を呈している患者は、話したい文章は成立しているが、発語が正しく行えない特徴を持つため。聞き直しや修正は話し手のストレスにもつながったり、治療効果としては薄いため、聞き手は、Aさんの言葉に慣れ、推測しながら話す。また、患者が「はい」「いいえ」で答えることができるように質問することが望ましい。
3.× 大きな声で話す必要があるのは、「難聴」に対する対応である。
4.× 話題を変える必要はない。なぜなら、沈黙した場合は、本人なりに次の言葉を作っている可能性があるため。すぐに話題を変えずに患者が何らかの反応をするまで待つこともある。

 

 

 

 

 

次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
 Aさん(83歳、男性)は妻(81歳)と2人暮らし。息子夫婦は共働きで同市内に住んでいる。Aさんは自宅の廊下で倒れているところを妻に発見され、救急搬送された。Aさんは右上下肢に力が入らず、妻の声かけにうなずくが発語はなかった。頭部CTで左中大脳動脈領域の脳梗塞と診断されたため救急外来で血栓溶解療法が行われ、入院となった。血栓溶解療法による治療後2週。Aさんは右上下肢麻痺、失語などの後遺症があるが、自宅への退院を希望したため、機能訓練の目的で回復期リハビリテーション病棟に転棟した。転棟後1日。Aさんはベッドから車椅子への移乗動作の訓練を始めたが、健側の下肢筋力が低下しているため、立位のときにバランスを崩しやすい状況である。

102 転棟後5週。Aさんは歩行練習が開始となり、病棟内では日常生活動作<ADL>も徐々に自立してきている。食事は時々むせがみられるが、配膳すれば自力で摂取できる。排泄は車椅子でトイレへ移動しており、ズボンの着脱に介助が必要である。入浴はシャワーチェアーに座り、手が届くところは自分で洗うことができる。歯磨きは一部介助が必要である。Aさんは早く自宅に帰りたいと話し、午前と午後の機能訓練には積極的に参加しているが、機能訓練後は「疲れて何もしたくない」とベッドで横になり眠っている。夕方に面会に来た妻は「面会時にいつも疲れたと言って眠っているので、このままの状態で退院して家で世話ができるかどうか自信がありません。息子夫婦も仕事が忙しいので、介護を手伝ってもらえるかわかりません」と言っている。
 看護師の妻への対応で最も適切なのはどれか。

1.施設入所の検討を提案する。
2.トイレ介助の方法を指導する。
3.Aさんの機能訓練中の様子の見学を勧める。
4.息子夫婦にも介護に参加してもらうよう助言する。

解答3

解説

本症例のポイント

・転棟後5週(歩行練習開始)。
・病棟内ADL:徐々に自立
・「早く自宅に帰りたい」と午前と午後の機能訓練には積極的に参加している。
・機能訓練後は「疲れて何もしたくない」とベッドで横になり眠っている。
・妻「面会時にいつも疲れたと言って眠っているので、このままの状態で退院して家で世話ができるかどうか自信がありません。息子夫婦も仕事が忙しいので、介護を手伝ってもらえるかわかりません」と言っている。
→妻は病棟内で夫が寝ているところしか見ておらず不安を漏らしている。

1.× 施設入所の検討を提案する優先度は低い。なぜなら、設問文から施設入所の希望はAさん、妻とも聞かれていないため。むしろ、Aさんは「早く自宅に帰りたい」と午前と午後の機能訓練には積極的に参加している。
2.× トイレ介助の方法を指導する優先度は低い。なぜなら、妻は「このままの状態で退院して家で世話ができるかどうか自信がありません」とはいうもののトイレの介助方法についての具体的言及はないため。また、退院もまだ未定で、今後のリハビリテーションの進み具合、予後予測もない段階でのトイレ介助の方法の指導は、より不安を助長する恐れもある。
3.〇 正しい。Aさんの機能訓練中の様子の見学を勧める。なぜなら、Aさんは午前と午後の機能訓練には積極的に参加しているため。寝ている時間が多いとはいえ、歩行練習も開始している。妻の「面会時にいつも疲れたと言って眠っているので、このままの状態で退院して家で世話ができるかどうか自信がありません」という不安も改善する可能性が選択肢の中で最も高い。
4.× 息子夫婦にも介護に参加してもらうよう助言する優先度は低い。なぜなら、Aさんの介護が必要と決まっているわけではないため。また、妻「息子夫婦も仕事が忙しい」と言っており、安易に家庭の状態を変更するよう勧める時期ではない。

 

 

 

 

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
 Aちゃん(2歳10か月、女児)は昨日から下痢と嘔吐を繰り返し、食事が摂れなくなったため、母親に抱かれて小児科外来を受診した。診察の結果、ウイルス性胃腸炎による中等度の脱水症と診断され入院した。入院時、体温38.2℃、呼吸数36/分、心拍数136/分であった。3日前の保育所の身体計測では身長90cm、体重12.5kgであった。

103 Aちゃんにみられる状態はどれか。

1.昏睡状態である。
2.流涙は普段と変わらない。
3.体重は3日前と変わらない。
4.排尿頻度は普段通りである。
5.皮膚のツルゴールは低下している。

解答5

解説

本症例のポイント

・Aちゃん(2歳10か月、女児、ウイルス性胃腸炎による中等度の脱水症
・昨日入院:下痢と嘔吐を繰り返し、食事が摂れなくなった
・入院時:体温38.2℃、呼吸数36/分、心拍数136/分。
・3日前:身長90cm、体重12.5kg。

1.× 昏睡状態であるのは、「中等度」ではなく重度の脱水症の症状である。中等度の場合は主に傾眠、興奮状態、乏尿がみられる。一方、重度の場合は主に昏睡、無尿となる。ちなみに、昏睡とは、覚醒させることができず、閉眼した状態が続く無反応状態である。
2.× 流涙は、「普段と変わらない」のではなく低下する。なぜなら、脱水により体内の水分が減少しているため。それに伴い流涙も低下する。
3.× 体重は、3日前と「変わらない」のではなく低下する。なぜなら、Aちゃんは設問文から、下痢と嘔吐を繰り返し、食事が摂れなくなっている状態であると読み取れるため。
4.× 排尿頻度は、「普段通り」ではなく低下する。中等度の場合は主に傾眠、興奮状態、乏尿がみられる。乏尿とは、1日の尿量が400mL以下となった状態である。
5.〇 正しい。皮膚のツルゴールは低下している。なぜなら、Aちゃんは中等度の脱水症を呈しているため。ツルゴールの評価方法は、一般的に皮膚の張りをさし、皮膚をつまみ、皮膚の戻る時間を計る触診を行うことで、脱水の評価ができる。皮膚が元の状態に戻るまでに2秒以上かかる場合は、ツルゴールの低下と判断し、脱水の可能性を疑う。

 

 

 

 

 

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
 Aちゃん(2歳10か月、女児)は昨日から下痢と嘔吐を繰り返し、食事が摂れなくなったため、母親に抱かれて小児科外来を受診した。診察の結果、ウイルス性胃腸炎による中等度の脱水症と診断され入院した。入院時、体温38.2℃、呼吸数36/分、心拍数136/分であった。3日前の保育所の身体計測では身長90cm、体重12.5kgであった。

104 Aちゃんは、個室隔離での入院となり、持続点滴静脈内注射が開始された。排泄が自立していないため普段から紙オムツを使用している。
 Aちゃんのオムツ交換における注意点について、入院に付き添う母親への看護師の説明で適切なのはどれか。

1.布オムツに切り替える。
2.使い捨て手袋は1日1回交換する。
3.オムツ交換後に石けんで手洗いを行う。
4.アルコール入りのおしり拭きで殿部の清拭を行う。

解答3

解説

感染予防策とは?

感染予防策は、院内感染の防止策として推奨されている方法である。感染の有・無にかかわらず患者と医療スタッフすべてに適応される予防対策である。患者の血液や体液、分泌、排泄されるすべての湿性物質、粘膜、創傷の皮膚は感染のおそれがあるとみなして対応・行動する方法である。

1.× 布オムツに切り替える優先度は低い。むしろたびたび変えられるため紙おむつの使用のほうが良い。Aちゃんはウイルス性胃腸炎に罹患しているため、おむつ交換では感染を広めてしまう可能性も考えられる。
2.× 使い捨て手袋の交換は、「1日1回」ではなくケアのたびに使い捨てにするのが望ましい。手袋は、医療従事者の手指を血液や体液など感染性物質による汚染から守り、また医療従事者の手指から患者へ微生物の伝播を防ぐ役割を果たす。
3.〇 正しい。オムツ交換後に、石けんで手洗いを行う。「WHO医療における手指衛生ガイドライン2009」では、石けんと流水を用いた手の洗い方として全工程を40~60秒で行う方法が記載されている。
4.× アルコール入りのおしり拭きで殿部の清拭を行う優先度は低い。なぜなら、急性胃腸炎を引き起こすウイルス(ロタウイルスやノロウイルス)は、アルコールは無効であるため。さらにアルコール入りでのお尻ふきは、皮膚が荒れやすく炎症を引き起こす恐れがあるため控えたほうが良い。

 

 

 

 

 

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
 Aちゃん(2歳10か月、女児)は昨日から下痢と嘔吐を繰り返し、食事が摂れなくなったため、母親に抱かれて小児科外来を受診した。診察の結果、ウイルス性胃腸炎による中等度の脱水症と診断され入院した。入院時、体温38.2℃、呼吸数36/分、心拍数136/分であった。3日前の保育所の身体計測では身長90cm、体重12.5kgであった。

105 入院2日。Aちゃんは、水様便は続いているが嘔吐はなくなった。付き添ってる母親は「Aは大泣きして、ストレスが溜まっているみたいです。アイスクリームを食べたいみたいです」と看護師に話した。
 このときに看護師が母親に伝える内容で適切なのはどれか。

1.プレイルームで遊べること
2.アイスクリームを食べてよいこと
3.個室隔離が明日、解除されること
4.Aちゃんの好きなおもちゃを自宅から持参してよいこと
5.Aちゃんが静かに過ごせるよう看護師の訪室を控えること

解答4

解説

本症例のポイント

・入院2日:水様便あり、嘔吐なし。
・母親「Aは大泣きして、ストレスが溜まっているみたいです。アイスクリームを食べたいみたいです」と。
→母親は子供の入院の際は、無力感に陥りやすい。Aちゃんのために何か力になりたいと考えていることは間違いないため、看護師としても母親に対するケアや精神的な安定の支援をはかる必要がある。

1.× プレイルームで遊べない。なぜなら、感染拡大の恐れがあるため。ウイルス性胃腸炎とは、感染すると、24から48時間で、下痢・吐き気・おう吐・腹痛・発熱などの症状がでる。また、症状の程度は個人差があるが、通常3日以内に回復する。しかし、ウイルスは症状回復後でも1週間程度、長い場合は1カ月にわたり、便中にウイルスが排泄される場合があるため注意が必要である。
2.× アイスクリームを食べてはならない。なぜなら、現在も水様便が続いているため。下痢は、ウイルス性胃腸炎や細菌性腸炎などの時に見られる症状で、食べたものが腸で十分吸収されずに出てしまう状態である。①冷たいもの、②刺激が強いもの、③脂肪が多いもの、④佐藤文が多いものなどは、大人も同様に下痢時には避けたほうが良い。
3.× 個室隔離が明日、解除されることは約束できない。なぜなら、ウイルスは症状回復後でも1週間程度、長い場合は1カ月にわたり、便中にウイルスが排泄される場合があるため。また、看護師ではなく医師が決めることなので、安易な約束はしてはならない。
4.〇 正しい。Aちゃんの好きなおもちゃを自宅から持参してよいことを看護師が母親に伝える。母親は子供の入院の際は、無力感に陥りやすい。Aちゃんのために何か力になりたいと考えていることは間違いないため、看護師としても母親に対するケアや精神的な安定の支援をはかる必要がある。
5.× Aちゃんが静かに過ごせるよう看護師の訪室を控える必要はない。なぜなら、看護師の訪室を控えた場合、急変した場合や処置が十分できなかったりと安全確保が担保できないため。

 

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