第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午前116~120】

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次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
 Aさん(73歳、女性)は(夫73歳)と2人暮らし。6年前にParkinson<パーキンソン>病と診断され、レボドパ<L-dopa>を1日3回内服している。Hoehn-Yahr<ホーエン・ヤール>重症度分類のステージⅢ、要介護1である。夫が付き添い神経内科外来に月1回、杖歩行で通院している。外来受診のとき、Aさんは足がすくんで転びやすくなったことを主治医に相談し、レボドパ<L-dopa>を1日4回に増量して様子を見ることになった。Aさんと夫は薬の副作用<有害事象>について外来看護師に尋ねた。

116 1か月後の外来受診のときに、Aさんは「いつもと違う時間に入浴したら転んでしまった。怪我をしなくてよかった」と主治医に話した。主治医から勧められ、Aさんは訪問看護を週に1回利用することになった。
 今後Aさんが安全な入浴をするために訪問看護師がアセスメントする内容で最も優先するのはどれか。

1.浴室の床の素材
2.居室から浴室までの距離
3.転倒による打撲痕の状態
4.日常生活動作<ADL>の日内変動

解答1

解説

本症例のポイント

・1か月後:Aさん「いつもと違う時間に入浴したら転んでしまった」と
訪問看護(週に1回)利用する。
→訪問看護とは、看護を必要とする患者が在宅でも療養生活を送れるよう、かかりつけの医師の指示のもとに看護師や保健師などが訪問して看護を行うことである。訪問看護師の役割として、主治医が作成する訪問看護指示書に基づき、健康状態のチェックや療養指導、医療処置、身体介護などを行う。在宅看議の目的は、患者が住み慣れた地域で自分らしく安心して生活を送れるように、生活の質(QOL)向上を目指した看護を提供することである。療養者とその家族の価値観や生活歴を重視し、その人らしさやQOLを考える。

1.× 浴室の床の素材の優先度は低い。なぜなら、Aさんは「いつもと違う時間に入浴したら転んでしまった」と、転倒した要因は「いつもと違う時間に入浴した」からと考えているため。
2.× 居室から浴室までの距離の優先度は低い。なぜなら、Aさんは「入浴したら転んでしまった」と、転倒した場所は「浴室」と考えているため。
3.× 転倒による打撲痕の状態の優先度は低い。なぜなら、Aさんは「怪我をしなくてよかった」と打撲したことは言っていないため。
4.〇 正しい。日常生活動作<ADL>の日内変動は、安全な入浴をするために訪問看護師がアセスメントする内容で最も優先する。パーキンソン病薬の長期服用によって、①wearing-off現象や②on-off現象がみられる。①wearing-off現象とは、薬効時間が短縮し、内服してから短時間でパーキンソニズムが出現する現象である。②on-off現象とは、服用時間に関係なく症状が急変することをいう。対策としては、服用回数を増やすことがあげられる。

UPDRSとは?

パーキンソン病統一スケール(Unified Parkin-son’s Disease Rating Scale:UPDRS)は、1987年にパーキンソン病の方の病態把握のための評価尺度としてFahnらにより開発された。評価項目はⅣ部に分けられ、Ⅰ部:認知・情動状態(知的機能)、Ⅱ部:ADL(歩行)、Ⅲ部:運動機能(姿勢)、Ⅳ部:薬剤の副作用の項目(ジスキネジア)を評価する。全42項目を0~4の5段階で行い、評価尺度は順序尺度である。

 

 

 

 

 

次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
 Aさん(73歳、女性)は夫(73歳)と2人暮らし。6年前にParkinson<パーキンソン>病と診断され、レボドパ<L-dopa>を1日3回内服している。Hoehn-Yahr<ホーエン・ヤール>重症度分類のステージⅢ、要介護1である。夫が付き添い神経内科外来に月1回、杖歩行で通院している。外来受診のとき、Aさんは足がすくんで転びやすくなったことを主治医に相談し、レボドパ<L-dopa>を1日4回に増量して様子を見ることになった。Aさんと夫は薬の副作用<有害事象>について外来看護師に尋ねた。

117 3か月後、Aさんは「夫は家事を楽しんでいるようで助かっていますが、友人と外出したいと言っています。私も最近は転ぶこともなくなったので、身体を動かしたり、レクリエーションに参加してみたいです」と訪問看護師に話した。
 訪問看護師がAさんに提案するサービスで最も適切なのはどれか。

1.通所介護
2.訪問介護
3.訪問入浴介護
4.短期入所生活介護

解答1

解説

本症例のポイント

・夫「家事を楽しんでいるようで助かっていますが、友人と外出したい」と。
・Aさん「身体を動かしたりレクリエーションに参加してみたい」と。
→Aさんの希望でもある「運動とレクリエーション」ができる施設を選択する。

1.〇 正しい。通所介護が、Aさんに提案するサービスで最も優先度が高い。通所介護とは、施設に入所せず、昼間に日帰りで利用できる通所介護サービスのことである。ゲームなどのレクリエーションや食事、入浴などの中で機能訓練を行う場所である。介護保険で受けることができる。主に高齢者などの要介護者や障害者、児童に対するサービスを提供する。デイサービスともいう。
2.× 訪問介護とは、訪問介護員(ホームヘルパー)などが利用者の自宅を訪問して身体介護や調理、洗濯、掃除などの生活援助を行うサービスである。
3.× 訪問入浴介護とは、専門の事業者が、寝たきり等の理由で、自宅の浴槽では入浴するのが困難な在宅の要介護者に対して、浴槽を自宅に持ち込み入浴の介護を行うサービスである。介護職員2名と看護師1名の3名で行うことが一般的である。
4.× 短期入所生活介護とは、利用者が可能な限り自己の生活している居宅において、その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるように、利用者に短期間入所してもらい、入浴、排泄、食事などの介護や日常生活上の世話及び機能訓練を行うサービスである。

 

 

 

 

次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、女性、外国籍)は3年前に日本人の夫と結婚し来日した。簡単な日本語を話せたため、来日した半年後からコンビニエンスストアでアルバイトを始めた。最近になり、夫は仕事で帰りが遅くなることが多くなった。Aさんが「お客さんが自分の悪口を言っている」と話したが、夫は気にしなかった。その後、アルバイト先の上司から「Aさんが奇声を発している」「ぶつぶつと独り言を言って歩き回っている」と夫に連絡があった。夫が病院に付添い精神科外来を受診し、統合失調症と診断されて入院となった。入院時、Aさんの髪は乱れ、誰かに見張られている気がすると怯えていた。

118 入院当日に看護師が行う情報収集で最も優先するのはどれか。

1.症状が日常生活に与える影響
2.アルバイト先の人間関係
3.医療用語の理解力
4.精神疾患の家族歴

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(28歳、女性、外国籍、統合失調症
・3年前:日本人の夫と結婚した。
・アルバイト先「Aさんが奇声を発している」「ぶつぶつと独り言を言って歩き回っている」と。
・受診し入院となった。
入院時:Aさんの髪は乱れ、「誰かに見張られている気がする」と怯えていた。
→Aさんは、入院初期で幻覚も見られていることから「急性期」と考えられる。この時期は、十分な睡眠や休養、安心感を確保できるように支援する。

1.〇 正しい。症状が日常生活に与える影響は、情報収集で最も優先する。Aさんは、入院初期で幻覚も見られていることから「急性期」と考えられる。この時期は、十分な睡眠や休養、安心感を確保できるように支援する。症状が日常生活にどれほど影響しているのか評価し、必要であれば支援・介助を実施していく。
2.× アルバイト先の人間関係の優先度は低い。なぜなら、Aさんは、入院初期で幻覚も見られていることから「急性期」と考えられるため。復職する予定であれば、回復期以降に実施することが多い。
3.× 医療用語の理解力の優先度は低い。なぜなら、外国籍や日本語が十分でなくとも、治療者はなるべく専門用語を使用せず、患者が自ら治療方針を選択できるよう分かりやすい言葉で説明する必要があるため。インフォームド・コンセントは、「十分な説明を受けたうえでの同意・承諾」を意味する。
4.× 精神疾患の家族歴の優先度は低い。なぜなら、家族歴が現在(急性期)の治療に影響は少ないため。また、統合失調症患者の多くには家族歴がないといわれている。ただし、遺伝的要因の存在が強く示唆されている。第1度近親者に統合失調症患者がいる人々では、本障害の発生リスクが約10~12%であるのに対し、一般集団におけるリスクは1%である。

”統合失調症とは?”

統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。

(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

 

 

 

 

 

次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、女性、外国籍)は3年前に日本人の夫と結婚し来日した。簡単な日本語を話せたため、来日した半年後からコンビニエンスストアでアルバイトを始めた。最近になり、夫は仕事で帰りが遅くなることが多くなった。Aさんが「お客さんが自分の悪口を言っている」と話したが、夫は気にしなかった。その後、アルバイト先の上司から「Aさんが奇声を発している」「ぶつぶつと独り言を言って歩き回っている」と夫に連絡があった。夫が病院に付添い精神科外来を受診し、統合失調症と診断されて入院となった。入院時、Aさんの髪は乱れ、誰かに見張られている気がすると怯えていた。

119 入院後、担当看護師は毎日面会に来ている夫の表情が気になり声をかけた。夫は「先生から統合失調症には様々な症状があるとお聞きしました。入院して妻は落ちつきましたが、これからどう接していけばいいのか悩んでいます」と話した。担当看護師はチームカンファレンスで夫の様子を伝え、主治医の判断で、夫に家族心理教育への参加を促すことになった。
 担当看護師が夫に家族心理教育を勧める声かけで適切なのはどれか。

1.「Aさんの症状と対応について学ぶことができます」
2.「ご家族に参加して頂くことが退院の条件です」
3.「家族同士の自助グループです」
4.「匿名で参加できます」

解答1

解説

本症例のポイント

・夫「これからどう接していけばいいのか悩んでいます」と。
・主治医の判断で、夫に家族心理教育への参加を促すことになった。
→家族心理教育とは、家族が病気を正しく理解し、適切な対応や望ましい接し方を身につけることを目的とする。病気による行動特性を理解し、症状に対する適切な対応と接し方を学ぶことができ、治療効果の増進・再発防止にもつながる。

1.〇 正しい。「Aさんの症状と対応について学ぶことができます」と声がけする。なぜなら、夫は、統合失調症には様々な症状があることに対し、妻にどのように接していけばよいか悩んでいる。その不安を解決できると説明する声掛けが良いだろう。ちなみに、家族心理教育とは、家族が病気を正しく理解し、適切な対応や望ましい接し方を身につけることを目的とする。病気による行動特性を理解し、症状に対する適切な対応と接し方を学ぶことができ、治療効果の増進・再発防止にもつながる。
2.× 退院の条件には、家族心理教育への参加は含まれない。退院の判断は、主に総合的に患者の症状を医師が判断して決定する。もし家族心理教育への参加ができなかった場合、一生退院できなくなってしまう。
3.× 家族同士の自助グループではない。自助グループとは、同じ問題や悩みを抱える者同士が集まり、自分の苦しみを訴えたり、仲間の体験談を聞いたりすることで問題を乗り越える力を養っていくものである。断酒継続のための自助グループ(セルフヘルプグループ、当事者グループとも)としてよく知られているものに、断酒会とAA(Alcoholics Anonymous:アルコール依存症者匿名の会)がある。
4.× 匿名で参加できるものもあるが、夫の発言からそのような不安はない。夫は、統合失調症には様々な症状があることに対し不安を訴えている。

 

 

 

 

 

次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、女性、外国籍)は3年前に日本人の夫と結婚し来日した。簡単な日本語を話せたため、来日した半年後からコンビニエンスストアでアルバイトを始めた。最近になり、夫は仕事で帰りが遅くなることが多くなった。Aさんが「お客さんが自分の悪口を言っている」と話したが、夫は気にしなかった。その後、アルバイト先の上司から「Aさんが奇声を発している」「ぶつぶつと独り言を言って歩き回っている」と夫に連絡があった。夫が病院に付添い精神科外来を受診し、統合失調症と診断されて入院となった。入院時、Aさんの髪は乱れ、誰かに見張られている気がすると怯えていた。

120 入院後2か月が経過した。Aさんは独り言を言うことはあったが、他の入院患者と口論になることはなかった。作業療法士から「Aさんは手先が器用で、作業療法中は楽しそうに過ごしています」と情報を得た。退院に向けた担当看護師との面談で、Aさんは「手芸が楽しかった」「家に1人でいると寂しい」と話した。
 退院に向けてAさんに提案する社会資源として適切なのはどれか。

1.共同生活援助<グループホーム>
2.短期入所<ショートステイ>
3.通訳のボランティア
4.精神科デイケア

解答4

解説

本症例のポイント

・入院後:2か月経過。
・Aさん:独り言はあるが、他の入院患者と口論なし
・作業療法士「Aさんは手先が器用で、作業療法中は楽しそうに過ごしています」と。
・Aさん「手芸が楽しかった」「家に1人でいると寂しい」と。
→Aさんは、入院後2か月経過し、回復期~維持期であると考えられる。また、他者との問題がなくなり「家に1人でいると寂しい」と話している。「手芸が楽しかった」と話していることからも、今後は再発防止だけでなく、社会的交流(デイケア)や創作活動、体力作りが行えるよう支援していく。

1.× 共同生活援助<グループホーム>は、主に夜間や休日に精神障害者が共同生活を営む住居で、食事の世話・服薬指導など、相談や日常生活の援助を行う。
2.× 短期入所<ショートステイ>は、居宅において介護者の疾病やその他の理由により、当事者の介護が行えない場合に、障害者支援施設、児童福祉施設などに短期間入所するサービスである。入所中は食事や入浴などの生活動作を支援する。対象は、障害者支援区分が区分1以上である者である。
3.× 通訳のボランティアは、優先度が低い。なぜなら、Aさんは簡単な日本語を話せ、来日した半年後からコンビニエンスストアでアルバイトを始められているため。また、作業療法中も支障なく、看護師とは「手芸が楽しかった」「家に1人でいると寂しい」と会話が行えている。
4.〇 正しい。精神科デイケアが、退院に向けてAさんに提案する社会資源である。精神科デイケアとは、精神科に通院している患者を対象に、①居場所を提供したり、②疾患の再発予防、③日常生活技能の改善、④社会復帰のための援助を目的とした施設である。病院内に設置されていることが多い。目標に向けて提供するリハビリテーションは変わるが、おもにレクリエーションや社会生活技能訓練(SST)などを行う。

 

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