第110回(R3) 看護師国家試験 解説【午後16~20】

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16 ループ利尿薬について正しいのはどれか。

1.作用発現が速い。
2.眠前の服用が望ましい。
3.抗不整脈薬として用いられる。
4.副作用〈有害事象〉に高カリウム血症がある。

解答1

解説

ループ利尿薬とは?

ループ利尿薬は、主にヘンレループにおける再吸収を抑える作用(薬剤によってはヘンレループ以外の部位の再吸収も抑える)により尿量を増やし体内の過剰な水分を排泄することで、ナトリウムの排泄を促しむくみを改善する。降圧薬としても用いられ、心不全などに適応となる。他の利尿薬と比較すると、効果持続は短いが、利尿作用が強く、心不全や腎不全を伴う高血圧に有用である。デメリットとして、低カリウム血症や脱水症状の恐れがある。

1.〇 正しい。作用発現が速い。ほかの利尿薬と比較すると、利尿作用が強く作用の発現は早い。ただし、デメリットとして、低カリウム血症や脱水症状の恐れがある。
2.× 「眠前」ではなく朝もしくは日中の服用が望ましい。なぜなら、寝る前に服用すると夜間多尿となる可能性が高いため。夜間頻尿は、生活の質(睡眠不足)を下げることになる。また寝ぼけてトイレに行くことで高齢者の転倒につながるケースもある。
3.× 「抗不整脈薬」ではなくナトリウムの排泄(利尿薬)として用いられる。デメリットとして、低カリウム血症や脱水症状の恐れがある。低カリウム血症の主な症状としては、脱力、手足のだるさ、こわばり、筋肉痛、麻痺、不整脈などが見られる。
4.× 副作用〈有害事象〉に「高カリウム血症」ではなく低カリウム血症がある。なぜなら、排尿によりナトリウムとともに、カリウムも排泄するため。

 

 

 

 

 

 

17 経口投与後の薬物が初回通過効果を受ける場所はどれか。

1.胃
2.肝臓
3.小腸
4.腎臓

解答2

解説

初回通過効果とは?

初回通過効果とは、摂取された薬剤が、投与された部位から全身へ送られる際に肝臓で代謝される過程のことを指す。

1.3.× 胃/小腸は、薬物の吸収にかかわる。
2.〇 正しい。肝臓は、経口投与後の薬物が初回通過効果を受ける場所である。初回通過効果とは、摂取された薬剤が、投与された部位から全身へ送られる際に肝臓で代謝される過程のことを指す。
4.× 腎臓は薬物の排泄にかかわる。

経口投与薬とは?

経口投与薬は、消化管より吸収され、門脈を経て肝臓に達し、血中タンパク質との抱合などによる代謝を受けて、全身に循環する。その後、薬物およびその代謝物は、肝臓(胆汁)や腎臓(尿)より排出される。空腹時に服用する薬、食後に服用する薬、特定の他の薬と併用してはいけない薬、経口投与できない薬などに分けられる。

 

 

 

 

18 自力での摂取が困難な成人患者の食事介助で適切なのはどれか。

1.水分の少ない食べ物を準備する。
2.時間をかけずに次々と食物を口に入れる。
3.患者に食事内容が見える位置に食器を配置する。
4.患者の下顎が上がるよう高い位置からスプーンを操作する。

解答3

解説
1.× 「水分の少ない食べ物」ではなく「ある程度水分があって軟らかい食べ物」を準備する。なぜなら、水分の少ない食べ物は滑りが悪く飲み込みにくいため。誤嚥しにくい食べ物の特徴として、①口腔内や喉にくっつく(のり、もちなど)、②噛み切れない(リンゴ、れんこんなど)、③水分がなくパサパサとした食感を持つ(パン、カステラなど)、④口の中でバラバラになってしまう(そぼろ、ヒジキなど)があげられる。ゼリーのようにとろみがついているものの方が誤嚥は少ない。
2.× 「時間をかけず次々と食物を口に入れる」のではなく、時間をかけよく咀嚼し、1回分をしっかり飲み込んだことを確認してから次の食物を口腔内に入れる。誤嚥を防ぐため、患者の食べ方やペースに合わせて食事を進めることが基本である。
3.〇 正しい。患者に食事内容が見える位置に食器を配置する。なぜなら、嚥下の過程には、①先行期:飲食物の形や量、質などを認識する時間も含まれる。先行期に唾液が出て、咀嚼・嚥下の準備が始まる。また、患者が食事の時間であることを意識でき、目でも食事を楽しめる。
4.× 患者の下顎が「上がるよう高い位置」からスプーンを操作するのではなく、患者の下顎が下がるよう低い位置からスプーンを操作する。なぜなら、患者の下顎が上がる状態(頸部伸展位)にすると咽頭部が直線的になり、喉頭蓋が閉まりにくく食物が気管に流れやすくなるため。つまり誤嚥しやすくなる。誤嚥しにくい姿勢として、①しっかり座り、②下にうなずき、③顎を引いた姿勢が良い。

嚥下の過程

①先行期・・・飲食物の形や量、質などを認識する。
②準備期・・・口への取り込み。飲食物を噛み砕き、飲み込みやすい形状にする。
③口腔期・・・飲食物を口腔から咽頭に送り込む。
④咽頭期・・・飲食物を咽頭から食道に送り込む。
⑤食道期・・・飲食物を食道から胃に送り込む。

 

 

 

 

 

 

19 フィジカルアセスメントにおいて触診で有無を判断するのはどれか。

1.腱反射
2.瞳孔反射
3.腸蠕動運動
4.リンパ節の腫脹

解答4

解説

フィジカルアセスメントとは?

フィジカルアセスメントとは、「フィジカル(身体的な)」「アセスメント(評価)」と訳すことができ、問診・視診・触診・聴診・打診などである。日本語では「身体診察技法」と呼ばれる。

1.× 腱反射は、骨格筋の腱をハンマーで叩打し反射を観察する。ちなみに、腱反射が亢進している場合は、上位ニューロンの障害を疑い、減弱または消失している場合には、反射弓の障害を疑う。
2.× 瞳孔反射(対光反射)は、ペンライトを用い、瞳孔にを入れ、縮瞳を観察する。対光反射は、中枢神経機能の指標として、意識障害や心肺停止を起こしたときに確認される。 瞳孔散大、対光反射の消失は死亡判定の条件である。
3.× 腸蠕動運動は、聴診器を用い、聴診で確認する。腸音が1分間聴取されない場合を減弱、5分間聴取されない場合を消失とする。減弱時は腸管癒着や腸捻転による機械的イレウスを疑う。機能的イレウスとは、器質的な異常がなく、腸管の運動麻痺や痙攣により腸管の内容物が停滞することである。長期臥床、中枢神経疾患、腹膜炎、偽性腸閉塞が原因となることが多い。麻痺性イレウスと痙攣性イレウスに分けられる。
4.〇 正しい。リンパ節の腫脹は触診で有無を判断する。リンパ節腫脹とは、1つまたは複数のリンパ節が増大して触知できるようになった状態である。ウィルス、細菌、結核菌、梅毒、トキソプラズマなどによって起こる。体表から触知できるリンパ節は、①頭頸部、②腋窩、③肘関節上部、③腹部、④鼠径部(大腿部)、⑤膝窩部である。リンパ節は皮下に存在するため、皮膚を動かしても皮膚と一緒に動くことはないため、示指から環指の指腹を皮膚に軽く密着させ、皮膚を動かすことにより触診する。

イレウス(腸閉塞)とは?

 イレウス(腸閉塞)とは、何らかの原因により、腸管の通過が障害された状態である。主に、①機械的イレウス(腸閉塞とも呼び、腸内腔が機械的に閉塞されて起こる)、②機能的イレウス(腸管に分布する神経の障害により腸内容が停滞する)に大別される。

①機械的イレウスには、器質的異常を伴うものをいい、単純性イレウスと絞扼性(複雑性)イレウスに分類される。機械的イレウスは血流障害の有無によって、さらに単純性イレウスと複雑性イレウスに分類される。絞扼性(複雑性)イレウスは、腸間膜血行の停止により腸管壊死を伴うイレウスであり、急激に病状が悪化するため緊急に手術を要する。

②機能的イレウスとは、器質的な異常がなく、腸管の運動麻痺や痙攣により腸管の内容物が停滞することである。長期臥床、中枢神経疾患、腹膜炎、偽性腸閉塞が原因となることが多い。麻痺性イレウスと痙攣性イレウスに分けられる。

 

 

 

 

20 患者の洗髪の介助方法で適切なのはどれか。

1.30℃の湯をかける。
2.脱脂綿で耳栓をする。
3.指の腹を使って洗う。
4.強い振動を加えて洗う。

解答3

解説
1.× 「30℃」ではなく40±1℃の湯をかける。なぜなら、30℃の湯は温度が低すぎる。ちなみに、熱くも冷たくも感じない37℃前後の水温(不感温度)は、心拍数、血圧、呼吸数、酸素消費量など最も影響が少ない。人それぞれ温度の感じ方は異なるため、あくまでも目安で患者に聞きながら温度は調整する。
2.× 耳栓は、「脱脂綿」ではなく撥水性の高く油分を含む青梅綿を用いる。なぜなら、脱脂綿は吸水性の高い(水を吸ってしまう)ため。
3.〇 正しい。指の腹を使って洗う。なぜなら、爪を用いると頭皮を傷つけやすいため。指の腹を使って頭皮をマッサージするように洗うことでも、十分毛根の汚れが除去されるうえに、頭皮の血流促進効果が得られる。
4.× 強い振動を加えて洗う必要はない。なぜなら、頭部を強く振動させるとめまいや悪心の原因となるため。片手で頭部を支えて安定させ、大きく揺らさないように洗う。

 

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