第110回(R3) 看護師国家試験 解説【午前116~120】

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次の文を読み115~117の問いに答えよ。
 Aさん(78歳、男性)は、妻(70歳)と2人暮らしである。脳血管障害後遺症による右片麻痺があり、車椅子への移乗は部分介助、要介護2である。排泄はポータブルトイレを利用している。Aさんと妻はなるべく家で過ごしたいと考え、自宅での介護はすべて妻が行っている。長女(会社員)が県内に在住しているがAさんの介護はしていない。訪問看護を週1回利用するのみで、他のサービスは利用していない。最近、妻の腰痛が悪化し、妻から訪問看護師に「主治医から介護の負担を軽減するように言われました。でも夫は家から出たくないし、私も夫をどこかに預けるのは不安です。どうしたらよいでしょうか」と相談があった。

116 サービス導入後1か月。今朝、妻から訪問看護師に「夫の身体が震えています。よだれを垂らして、目が合わないです」と連絡があった。訪問看護師が訪問すると、Aさんの震えは止まっており、Aさん自身は「何が起きていたのか覚えていない」と言う。訪問時の体温36.0℃、呼吸数18/分、脈拍82/分、血圧130/62mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉95%(room air)であった。妻によると、2日間排便がなく、尿量1.500mL/日、尿の性状は黄色透明とのことだった。
 妻からの連絡時にAさんに起きていたと考えられる状態はどれか。

1.感染
2.脱水
3.便秘
4.けいれん

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(78歳、男性、要介護2)、2人暮らし:妻(70歳)
・Aさん:脳血管障害後遺症(右片麻痺)

・サービス導入後:1か月
・今朝、妻「夫の身体が震えています。よだれを垂らして、目が合わないです」と。
・訪問看護師が訪問:Aさんの震えは止まっている。
・Aさん「何が起きていたのか覚えていない」と。
・訪問時:体温36.0℃、呼吸数18/分、脈拍82/分、血圧130/62mmHg、SpO2:95%
・妻「2日間排便なし、尿量1.500mL/日、尿の性状:黄色透明」と。
→Aさんは「脳血管障害後遺症(右片麻痺)」で、①身体の震え、②よだれ、③目が合わない、④記憶障害の症状がみられた。選択肢から消去法で、絞っていくことも可能な問題である。高齢ではじまるてんかんの発作症状は、全身のけいれんや記憶障害などがみられる。主にもの忘れの発作を引き起こすてんかんの形態を表現する言葉として、一過性てんかん性健忘という。

1.× 感染は考えにくい。なぜなら、Aさんの体温は36.0℃であり、発熱が見られないため。他にも、呼吸状態や酸素飽和度、尿の性状も正常である。
2.× 脱水は考えにくい。なぜなら、Aさんの尿量は1.500mL/日、尿の性状も黄色透明でいずれも正常範囲内であるため。尿量は十分に保たれており、尿の性状も濃縮尿ではない「脱水」になると、自覚症状としては口の渇きや体のだるさ、立ちくらみなどを訴えることが多いです。脱水症状として、皮膚や口唇、舌の乾燥、皮膚の弾力性低下、微熱、食欲低下、脱力、意識障害、血圧低下、頻脈などが出現しやすい。
3.× 便秘は考えにくい。なぜなら、便秘がけいれんや意識障害の原因とはならないため。本症例は、2日間排便がなく軽度の便秘と考えられるが、便秘の症状としての腹痛や腹部膨満、不快感の訴えもない。
4.〇 正しい。けいれんは、Aさんに起きていたと考えられる状態である。けいれんとは、自分の意志とは無関係に勝手に筋肉が強く収縮する状態である。高齢ではじまるてんかんの発作症状は、全身のけいれんや記憶障害などがみられる。主にもの忘れの発作を引き起こすてんかんの形態を表現する言葉として、一過性てんかん性健忘という。

尿とは?

健常者の尿は、1日に8回程度で、1,000~1,500mL程度である。尿は、生体内代謝産物を排泄するため、腎臓で血液が濾過され作られる。健康人では体重1kgあたり、1時間に約1mLの尿が排泄されるとされている。膀胱は通常100~150mLで最初の尿意(初発尿意)を感じる。

・希尿:日中に3回以下。尿量は関係ない。
・頻尿:日中に8回以上。尿量は関係ない。
・無尿:100mL/日以下
・乏尿:400mL/日以下
・多尿:3,000mL/日以上
・正常な1日の尿量:1.000~1500mL/日

 

 

 

 

 

 

次の文を読み115~117の問いに答えよ。
 Aさん(78歳、男性)は、妻(70歳)と2人暮らしである。脳血管障害後遺症による右片麻痺があり、車椅子への移乗は部分介助、要介護2である。排泄はポータブルトイレを利用している。Aさんと妻はなるべく家で過ごしたいと考え、自宅での介護はすべて妻が行っている。長女(会社員)が県内に在住しているがAさんの介護はしていない。訪問看護を週1回利用するのみで、他のサービスは利用していない。最近、妻の腰痛が悪化し、妻から訪問看護師に「主治医から介護の負担を軽減するように言われました。でも夫は家から出たくないし、私も夫をどこかに預けるのは不安です。どうしたらよいでしょうか」と相談があった。

117 Aさんは入院したが、状態が安定し入院後3日で退院することが決まった。長女が「父が退院したら、母の腰痛が心配なので、私が父のポータブルトイレへの移動を手伝いたいと思います。介助の方法を教えてください」と訪問看護師に相談があった。
 訪問看護師が長女に指導するベッドからポータブルトイレへの移乗の介助方法で正しいのはどれか。

1.ポータブルトイレをAさんの麻痺側に設置する。
2.ベッドから立ち上がる際はAさんに前傾姿勢になってもらう。
3.Aさんの健側に立って介助する。
4.Aさんの向きを変えるときはズボンのウエスト部分を持つ。

解答2

解説

本症例のポイント

・Aさん(78歳、男性、要介護2)、2人暮らし:妻(70歳)
・Aさん:脳血管障害後遺症右片麻痺

・長女にAさんのポータブルトイレへの移乗介助の方法を教える。
→Aさんは、右片麻痺である。トイレへの移乗まで、①立ち上がり→②方向転換→③座り込みの手順が必要になる。その際は、右片麻痺により右側にバランスを崩しやすいため、すぐに支えられるよう介助者は右側に位置して介助を行う。

1.× ポータブルトイレをAさんの「麻痺側(右)」ではなく非麻痺側(左)に設置する。なぜなら、Aさんの非麻痺側(左)に設置することで、非麻痺側上肢(左手)で便座や手すりに手が持って、より安全に移乗できるため。Aさんの麻痺側(右)はバランスが崩れやすいため介助者が立つ。
2.〇 正しい。ベッドから立ち上がる際はAさんに前傾姿勢になってもらうのが、移乗の介助方法で正しい。なぜなら、前傾姿勢をとることで、重心が足部に移動し立ち上がりしやすくするため。
3.× Aさんの「健側(左)」ではなく、麻痺側(右)に立って介助する。なぜなら、右片麻痺により右側にバランスを崩しやすいため、すぐに支えられるよう介助者は右側に位置して介助を行う。
4.× Aさんの向きを変えるときは、「ズボンのウエスト部分(服)」ではなく、腰もしくは背中(腋窩:身体部分)を抱えるよう持つ。なぜなら、ズボンのウエスト部分は、生地が伸びやすく介助しにくいため。また、下着やおむつが腎部に食い込んで不快に感じるだけでなく、ズボンを損傷するおそれもある。

 

 

 

 

次の文を読み118~120の問いに答えよ。
 A市に住むBさん(40歳、経産婦)は、妊娠20週0日である。夫(42歳、会社員)、長女のCちゃん(5歳)の3人暮らし。朝食を終えた午前8時、大規模災害が発生し、夫は倒壊した家屋に両下肢が挟まれ身動きがとれなくなった。一緒にいたBさんとCちゃんは無事だったが、慌てるBさんのそばでCちゃんは泣きながら座りこんでいた。午前10時、夫は救助隊に救出されたが、下肢の感覚はなくなっていた。病院に搬送された夫は、その日のうちに入院となった。

118 搬送直後の夫の血液検査データで、高値が予想されるのはどれか。2つ選べ。

1.カリウム
2.カルシウム
3.ヘモグロビン〈Hb〉
4.総コレステロール
5.クレアチンキナーゼ〈CK〉

解答1・5

解説

本症例のポイント

・A市に住むBさん(40歳、経産婦、妊娠20週0日)
・3人暮らし:夫(42歳、会社員)、長女Cちゃん(5歳)
・午前8時:大規模災害発生
・夫:倒壊した家屋に両下肢が挟まれ身動きがとれなくなった
・BさんとCちゃん:一緒にいたが無事。
・午前10時:夫は救助隊に救出、下肢の感覚はなくなっていた
・病院に搬送された夫:その日のうちに入院。
→Bさんの夫は、「圧挫症候群(クラッシュ症候群)」が疑われる。圧挫症候群(クラッシュ症候群)とは、長時間にわたって四肢や臀部が圧迫を受け、挫滅・壊死した場合、圧迫から開放されたあとに、壊死した筋肉からカリウムやミオグロビン、乳酸といった毒性物質が一気に全身に運ばれ、臓器に致命的な損害を及ぼすことである。圧挫解除による虚血/再灌流による筋細胞融解(横紋筋融解)と筋細胞内にナトリウムと水分の移行によるコンパートメント症候群による末梢循環不全が主な病態である。

1.〇 正しい。カリウムは、高値が予想される。圧挫症候群(クラッシュ症候群)とは、長時間にわたって四肢や臀部が圧迫を受け、挫滅・壊死した場合、圧迫から開放されたあとに、壊死した筋肉からカリウムやミオグロビン、乳酸といった毒性物質が一気に全身に運ばれ、臓器に致命的な損害を及ぼすことである。筋肉細胞内に含まれるカリウムは血中に流出し、致死性不整脈の原因となる高カリウム血症になる。
2.× カルシウムは低値となる。圧挫症候群(クラッシュ症候群)は、筋肉細胞の障害を受けた部位にカルシウムが沈着することで低カルシウム血症になる。低カルシウム血症の症状として、しびれ感、テタニー(手指の不随意な筋収縮)、けいれん(すべての形)、喉頭けいれん・気管支けいれん、歯牙発育障害などがあげられる。
3.× ヘモグロビン〈Hb〉は影響を受けない。ヘモグロビンとは酸素分子と結合する性質を持ち、肺から全身へと酸素を運搬する役割を担っている。ヘモグロビンの値が、男性は13g/dl以下、女性は11g/dl以下になると、「貧血」と診断される。
4.× 総コレステロールは影響を受けない。圧挫症候群(クラッシュ症候群)での電解質異常は、高カリウム血症、高CK血症、高ミオグロビン血症、低カルシウム血症、高リン血症である。
5.〇 正しい。クレアチンキナーゼ〈CK〉は、高値が予想される。クレアチンキナーゼとは、骨格筋・心筋・脳などの損傷の程度を推測する指標である。筋肉細胞に含まれており、筋肉細胞の障害により高クレアチンキナーゼ血症となる。発症時の自覚症状としては、筋痛・しびれ・腫脹が生じ、筋壊死の結果として脱力・赤褐色尿(ミオグロビン尿)が生じ、腎不全症状が加わると無尿・乏尿・浮腫が生じる。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み118~120の問いに答えよ。
 A市に住むBさん(40歳、経産婦)は、妊娠20週0日である。夫(42歳、会社員)、長女のCちゃん(5歳)の3人暮らし。朝食を終えた午前8時、大規模災害が発生し、夫は倒壊した家屋に両下肢が挟まれ身動きがとれなくなった。一緒にいたBさんとCちゃんは無事だったが、慌てるBさんのそばでCちゃんは泣きながら座りこんでいた。午前10時、夫は救助隊に救出されたが、下肢の感覚はなくなっていた。病院に搬送された夫は、その日のうちに入院となった。

119 被災当日にBさんはCちゃんとともに避難所に入所した。被災後1日、Bさんは巡回してきた看護師に「今妊娠20週目ですが、おなかが張ることがあります」と話した。
 看護師が確認する項目で優先度が高いのはどれか。

1.下肢の浮腫の程度
2.食事の摂取状況
3.性器出血の有無
4.排泄状況

解答3

解説

本症例のポイント

Bさん「今妊娠20週目ですが、おなかが張ることがあります」と訴えている。
→Bさんの主訴は「おなかの張り」で、腹部の張りは最悪、切迫流産に発展することもあるため注意が必要である。切迫流産とは、妊娠22週未満に流産の可能性が通常より高い状態にあることをいう。妊娠16週以降の切迫流産では早期介入によって妊娠継続を図れる可能性がある。切迫流産は腹部緊張感性器出血が主な症状であるため、性器出血の有無は優先して確認すべき項目である。

【妊娠週数】
妊娠初期:妊娠1か月~4か月(妊娠0~15週)
妊娠中期:妊娠5か月~7か月(妊娠16~27週)
妊娠後期:妊娠8か月~10か月(妊娠28週~)

1~2.4.× 下肢の浮腫の程度/食事の摂取状況/排泄状況の優先度は低い。なぜなら、切迫流産を疑う症状の確認が優先されるため。避難所生活での生活は、活動が少なくなり、深部静脈血栓症を発症しやすい。また、深部静脈血栓症の危険因子として長期臥床、妊娠などがある。ちなみに、深部静脈血栓症とは、長時間の安静や手術などの血流低下により下肢の静脈に血栓が詰まってしまう病気である。下肢の疼痛、圧痛、熱感などの症状がみられる。Dダイマーを測定する血液検査や血管造影CT検査で診断する。造影CT検査は、動脈瘤・解離・出血・血栓症などの血管性病変の描出に有用である。
3.〇 正しい。性器出血の有無は、看護師が確認する項目で優先度が高い。なぜなら、腹部の張りの他に腹痛、性器出血の症状がみられる場合は切迫流産が疑われるため。切迫流産とは、妊娠22週未満に流産の可能性が通常より高い状態にあることをいう。妊娠16週以降の切迫流産では早期介入によって妊娠継続を図れる可能性がある。切迫流産は腹部緊張感性器出血が主な症状であるため、性器出血の有無は優先して確認すべき項目である。

災害急性期(~2,3日)における状況

【災害状況】①野外への避難、②通信・交通・ライフラインの途絶、③避難所生活開始があげられる。活動として、①救急対応(救護所の開設、必要な医療物品の準備)、②地域の被害状況、ライフライン、衛生状態の把握、③住民の安否確認と身元確認、避難行動要支援者の安否確認と移動などが優先される。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み118~120の問いに答えよ。
 A市に住むBさん(40歳、経産婦)は、妊娠20週0日である。夫(42歳、会社員)、長女のCちゃん(5歳)の3人暮らし。朝食を終えた午前8時、大規模災害が発生し、夫は倒壊した家屋に両下肢が挟まれ身動きがとれなくなった。一緒にいたBさんとCちゃんは無事だったが、慌てるBさんのそばでCちゃんは泣きながら座りこんでいた。午前10時、夫は救助隊に救出されたが、下肢の感覚はなくなっていた。病院に搬送された夫は、その日のうちに入院となった。

120 Bさんに異常は認められなかったが、Cちゃんも不安な表情でBさんの傍にいる姿をみて、看護師はBさんとCちゃんは福祉避難所への移動が必要ではないかと考えた。
 福祉避難所への移動のために看護師が連携する者で適切なのはどれか。

1.精神科医
2.民生委員
3.A市の保健師
4.ボランテイアの保育士

解答3

解説

福祉避難所とは?

避難所生活において、何らかの特別な配慮を必要とする要配慮者(具体的には、高齢者、障害者、妊産婦乳幼児、病弱者など)のための施設である。老人福祉施設や養護学校などを利用するが、不足する場合は公的な宿泊施設などに福祉避難所として機能するための物資・器材、人材を整備し活用する。

1.× 精神科医との優先度は低い。なぜなら、Aさんは不安な様子ではあるものの、精神疾患(うつ病など)が疑われるわけでないため。ちなみに、精神科医とは、精神医学を専門とする医師であり、精神障害・依存症の治療を専門的に診察する医師免許を持つ。 精神科医の業務には、精神疾患の診療、精神疾患の予防、精神衛生の普及がある。
2.× 民生委員との優先度は低い。なぜなら、Bさんは妊娠中であり、より専門職の方が良いと考えられるため。ちなみに、民生委員とは、日本独自の制度化されたボランティアである。地域社会の福祉の増進図っている。任期は3年で都道府県知事の推薦を受けて厚生労働大臣に委嘱されたものである。市町村の各地区に配置され、①住民の生活状況の把握、②関係機関との連携、③援助を要するものヘの相談援助を主な役割とする。根拠法令は「民生委員法」で給与の支給はない。
3.〇 正しい。A市の保健師は、今回看護師が連携する者で適切である。なぜなら、看護師は「BさんとCちゃんは福祉避難所への移動が必要ではないか?」と考えており、福祉避難所について専門的な知識を持つ関係者とつながる必要があるため。災害時に地域の公衆衛生活動を統括し、まとめるのは地元の保健師の役割である。選択肢の中で福祉避難所について詳しい専門職は保健師である。他にも自治体の職員も詳しい。Bさんは妊娠中で子もおり要配慮者となる。
4.× ボランテイアの保育士との優先度は低い。なぜなら、Bさんは妊娠中であり、より専門職の方が良いと考えられるため。保育士とは、一般に保育所など児童福祉施設において子供の保育を行う者である。日本の国家資格の一つである。

 

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