この記事には広告を含む場合があります。
記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。
次の文を読み44~46の問いに答えよ。
A社は、従業員800人のIT企業である。システムエンジニアを中心としたBグループに在籍する30名の社員は全員が情報機器作業に従事している。平均年齢は42歳で、ここ数か月の1か月当たりの時間外労働時間が30時間を超える者はいない。保健師が定期健康診断後に社員全員の面談を実施したところ、Bグループにおいて肩こり、腰痛、眼の疲れを訴える者が多いことが分かった。
46 職場巡視の結果、情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインが遵守されていないことが分かった。
保健師が最初に行う対応はどれか。
1.衛生委員会に職場巡視の結果を報告する。
2.情報機器作業者向けの健康相談を実施する。
3.管理職向けの情報機器作業に関する労働衛生教育を実施する。
4.Bグループのリーダーにガイドラインを遵守するよう指導する。
解答1
解説
・A社(IT企業):従業員800人。
・Bグループに在籍する30名の社員全員(システムエンジニア):情報機器作業に従事。
・Bグループ:肩こり、腰痛、眼の疲れを訴える者が多いことが分かった。
・職場巡視の結果:情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインが遵守されていないことが分かった。
→VDT作業とは、ディスプレイを持つ画面表示装置(VDT:Visual Display Terminals) を用いた作業のこと。コンピュータや監視カメラを用いた作業を指す。 VDT作業はVDT症候群のように、心身の負担を感じさせることにつながるため、厚生労働省においても「VDT作業における労働衛生環境管理のためのガイドライン」を定めている。
1.〇 正しい。衛生委員会に職場巡視の結果を報告する。なぜなら、職場の健康課題や改善事項は、衛生委員会で共有・協議されるべき事項であるため。衛生委員会に報告することで、「設備の改善」「作業ルールの見直し」「教育の実施」など、部門を超えた組織的な取り組みが動き出す土台が整う。ちなみに、衛生委員会とは、労働安全衛生法において定められている、労働者の意見を事業者の行う安全衛生に関する措置に反映させる制度である。①労働者の健康障害の防止や②健康の保持増進に関する取り組みなどの重要事項について、労使一体となって調査審議を行う場である。
2.× 情報機器作業者向けの健康相談を実施するより優先されるものが他にある。なぜなら、個別の健康相談は、ガイドラインが守られていない状況を個人に丸投げする対応に見えてしまいかねず、根本的な職場改善にはつながりにくいため。例えば、個人に対し「姿勢に気をつけましょう」と助言しても、環境の机や椅子が不適切なままでは解決にはつながらない可能性が高い。
3.× 管理職向けの情報機器作業に関する労働衛生教育を実施するより優先されるものが他にある。なぜなら、教育を実施する前に、職場の現状や問題点を組織で共有し、対策方針を立てることが必要であるため。例えば、ガイドラインのどこが守られていないかが共有されていない中で教育をしても、的外れな内容になりかねないため。したがって、衛生委員会で協議を行い、その結果を踏まえて教育を行う。
4.× Bグループのリーダーにガイドラインを遵守するよう指導するより優先されるものが他にある。なぜなら、リーダー個人への指導では、部署全体や会社全体としての問題として扱われなくなる可能性があるため。もし、改善が必要な点が設備や作業時間の管理など全社的なものだった場合、個人の努力では限界がある。したがって、まずは、職場全体で情報を共有し、組織的に対応するべきである。
VDT作業とは、ディスプレイを持つ画面表示装置(VDT:Visual Display Terminals) を用いた作業のこと。コンピュータや監視カメラを用いた作業を指す。 VDT作業はVDT症候群のように、心身の負担を感じさせることにつながるため、厚生労働省においても「VDT作業における労働衛生環境管理のためのガイドライン」を定めている。
【作業環境管理】
(1)照明及び採光
①室内は、できるだけ明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせないようにすること。
②ディスプレイを用いる場合のディスプレイ画面上における照度は500ルクス以下、書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上とすること。また、ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくすること。
③ディスプレイ画面に直接又は間接的に太陽光等が入射する場合は、必要に応じて窓にブラインド又はカーテン等を設け、適切な明るさとなるようにすること。
(2)一連続作業時間及び作業休止時間
一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分~15分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1回~2回程度の小休止を設けること。
(3)その他
換気、温度及び湿度の調整、空気調和、静電気除去、休憩等のための設備等について事務所
衛生基準規則に定める措置等を講じること。
(※一部引用:「VDT作業における労働衛生環境管理のためのガイドライン」厚生労働省HPより)
次の文を読み47~49の問いに答えよ。
人口200万人のA県において、ある感染症の抗体保有率を把握するために標本調査を行うことにした。
47 この研究デザインはどれか。
1.横断研究
2.介入研究
3.コホート研究
4.症例対照研究
5.生態学的研究
解答1
解説
対象:人口200万人のA県
目的:感染症の抗体保有率を把握する。
→研究の種類には、研究者が調査対象集団に対して何らかの働きかけ(介入)を行うか否かで、介入を行う「介入研究」と、介入を行わない「観察研究」とに大きく分類される。介入研究には、「臨床試験・地域研究」などがある。一方、観察研究には、大きく「①記述疫学・②分析疫学」に大別され、①記述疫学には、横断研究・時系列研究などがある。②分析疫学には、生態学的研究・横断研究・症例対照研究・コホート研究などがある。
1.〇 正しい。横断研究が該当する。なぜなら、今回は、①介入をしないこと、②現時点の研究を行うため。
・横断研究とは、一時点での疾病の頻度と分布をありのままに記述し、疾病の発生要因の仮説を立てる方法である。
2.× 介入研究は該当しない。介入研究とは、一部の対象者に何らかの働きかけ(介入)を行い、介入群と非介入群に分けて研究する調査である。
3.× コホート研究は該当しない。コホート研究とは、時間軸:前向き研究で、観察期間は長期間行う。信頼性は高いが費用・労力が大きい。
4.× 症例対照研究は該当しない。症例対照研究とは、時間軸:後ろ向き研究で、観察期間はない。信頼性は低いが費用・労力が小さい。症例群と対照群に分け、両群の過去の曝露状況を比較する方法である。曝露と疾患発症の関連を明らかにする。
5.× 生態学的研究は該当しない。生態学的研究とは、要因の有無と発生頻度を異なる地域で比較、あるいは特定の地域で時間的変化を比較し観察する調査である。特徴の異なる集団間で疾病の量が異なるかというように、集団を要約した指標を調べるものである。
次の文を読み47~49の問いに答えよ。
人口200万人のA県において、ある感染症の抗体保有率を把握するために標本調査を行うことにした。
48 性別と年齢の分布が母集団のA県と等しくなるように、2,500人を標本抽出した。
この標本抽出方法はどれか。
1.系統抽出法
2.集落抽出法
3.層化抽出法
4.多段抽出法
5.単純無作為抽出法
解答3
解説
対象:人口200万人のA県
目的:感染症の抗体保有率を把握する。
方法:性別と年齢の分布が母集団のA県と等しくなるように、2,500人を標本抽出。
→層化抽出法とは、母集団を性別・年齢など特定の属性によってあらかじめいくつかのグループ(層)に分け、各層ごとに無作為に抽出を行う方法である。これにより、母集団と同じ属性の割合をもつ標本を確実に抽出でき、属性による偏りを防ぐことが可能となる。
1.× 系統抽出法は該当しない。系統抽出法とは、あらかじめ整理された名簿から等間隔で標本を抽出する方法である。属性のバランス(性別・年齢など)をあらかじめ調整できないため、本問の条件とは一致しない。
2.× 集落抽出法は該当しない。集落抽出法とは、特定の地域や学校など「集団単位」で抽出を行い、その集団内の全員または一部を対象とする方法である。地域や集団による偏りが生じやすく、性別や年齢のバランス調整が困難となるため、本問には適さない。
3.〇 正しい。層化抽出法が該当する。層化抽出法とは、母集団を性別や年齢などの属性によっていくつかの層に分け、それぞれの層から無作為に抽出する方法である。各層の人数比率を母集団と同じにすることで、母集団の属性比率を標本にも確実に反映できる。性別・年齢を母集団と等しく調整したい本問の条件に完全に合致する方法である。
4.× 多段抽出法は該当しない。多段抽出法とは、「まず市町村を抽出し、次に抽出された市町村から個人を選ぶ」というように複数段階で抽出する方法である。各段階で偏りが生じる可能性があり、性別や年齢の分布を調整するのは難しいため、本問の条件とは合致しない。
5.× 単純無作為抽出法は該当しない。単純無作為抽出法とは、母集団から完全にランダムに対象者を抽出する方法で、性別・年齢などの属性を考慮しない。そのため、性別や年齢の分布が母集団とずれてしまう可能性がある。本問の条件とは合致しない。
層化とは、対象者をひとまとめにして分析せずに、そのサブグループごとに分けて分析することである。性別や年齢などの交絡因子となり得る因子について、男女別・年齢階層別など母集団をいくつかの集団に分けて解析を行う方法である。
次の文を読み47~49の問いに答えよ。
人口200万人のA県において、ある感染症の抗体保有率を把握するために標本調査を行うことにした。
49 抽出した2,500人のうち2,000人が調査に参加し、参加者の性別と年齢の分布に偏りはなかった。抗体保有者は1,800人であった。
調査で判明した抗体保有率はどれか。
1.0.09%
2.0.9%
3.72%
4.80%
5.90%
解答5
解説
対象:人口200万人のA県
目的:感染症の抗体保有率を把握する。
方法:性別と年齢の分布が母集団のA県と等しくなるように、2,500人を標本抽出。
結果:抽出した2,500人のうち2,000人が調査に参加し、参加者の性別と年齢の分布に偏りはなかった。抗体保有者は1,800人であった。
1~4.× 0.09%/0.9%/72%/80%
これらは該当しない。
5.〇 正しい。90%が調査で判明した抗体保有率である。
抗体保有率は、実際に調査に参加した人の中(2000人)で抗体を持っていた人(1800人)の割合で求めることができる。
【計算式】
抗体保有者数(1800人) ÷ 調査参加者数(2000人) × 100
1,800人 ÷ 2,000人 × 100
= 90%
2,000人が調査に参加し、そのうち1,800人に抗体があった場合、100人中90人が抗体保有者ということになる。
次の文を読み50、51の問いに答えよ。
Aさん(16歳、高校生)が最近太ってきたように感じた母親が、Aさんに確認したところ、しばらく月経がないことが分かった。母親が付き添って産婦人科を受診し妊娠24週であることが判明した。胎児の父親であるアルバイト先の先輩に妊娠を伝えたところ、音信不通となった。Aさんは両親と話し合った結果、出産して自分で育てることを決意し、町役場に母親と母子健康手帳の交付手続きで来所した。町役場の母子保健担当保健師がAさんと母親に面接し、Aさんは現在高校1年生であり、会社員の父と専業主婦の母と3人で暮らしていることが分かった。
50 面接時にAさんの体調を確認したうえで、保健師が行う支援で優先度が高いのはどれか。
1.母親学級の紹介
2.育児支援体制の確認
3.育児手技取得の指導
4.学業継続の意思確認
解答2
解説
・Aさん(16歳、高校生1年生、妊娠24週)
・最近太ってきたように感じた母親:Aさんしばらく月経がない。
・胎児の父親であるアルバイト先の先輩に妊娠を伝えたところ、音信不通。
・Aさんは両親と話し合った結果、出産して自分で育てることを決意。
・町役場に母親と母子健康手帳の交付手続きで来所。
・町役場の母子保健担当保健師がAさんと母親に面接。
・3人暮らし:会社員の父と専業主婦の母。
→ほかの選択肢が優先されない理由も考えられるようにしよう。
1.× 母親学級の紹介より優先されるものが他にある。なぜなら、Aさん(高校1年生)は3人暮らしで、会社員の父と専業主婦の母であるため。今のAさんに必要なのはまず育児をどのように行っていくか?具体的な生活設計(育児体制)である。
・母親学級とは、医師や助産師さんから、妊婦さんに必要な妊娠・出産・育児に関する知識や情報を学んだり、沐浴や赤ちゃんの抱っこなどの体験ができたりする場のことである。
2.〇 正しい。育児支援体制の確認は、保健師が行う支援で優先度が高い。なぜなら、Aさん(高校1年生)は3人暮らしで、会社員の父と専業主婦の母であるため。年齢や社会的状況から見て育児には多くの支援が必要である。例えば、夜間の授乳や通院、学業との両立、経済面など、若年出産では家族や地域の支えが不可欠である。
3.× 育児手技取得の指導より優先されるものが他にある。なぜなら、Aさん(高校1年生)は学業もあり、その育児を誰が行うのかの体制が不明であるため。体制が不十分な状態で手技だけを教えても、現実的に実践できないだけでなく、不安を助長させる恐れがある。
4.× 学業継続の意思確認より優先されるものが他にある。なぜなら、出産後に学業を続けたくても、育児支援がなければ物理的に通学できないため。まずは、まずは「安心・安全に出産・育児ができるか」という生活基盤の確認が優先される。