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次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
Aさん(56歳、女性、会社員)は、夕食の1時間後から腹痛・嘔吐が出現し救急外来を受診した。2か月前から自然に消失する右季肋部痛を繰り返していた。
身体所見:身長155cm、体重82kg。体温38.2℃、呼吸数16/分、脈拍110/分、血圧126/70mmHg。眼球結膜に黄染あり。右季肋部に圧痛あり。意識清明。
検査所見:白血球14,960/μL、Hb 12.8g/dL。総ビリルビン8.7mg/dL、直接ビリルビン7.2mg/dL、アミラーゼ121 IU/L、リパーゼ45 IU/L、尿素窒素18.9mg/dL、血清クレアチニン0.98mg/dL。CRP 9.2mg/dL。
腹部超音波検査所見:胆囊壁の肥厚、胆囊の腫大、総胆管の拡張、総胆管結石を認めた。
96 Aさんには、緊急内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)に続いて内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(ENBD)が留置された。入院時に採取した血液培養からは大腸菌(E.coli)が検出されたが、抗菌薬治療とENBDにより解熱している。
入院後2日、Aさんは右季肋部の違和感を訴えた。バイタルサインは正常である。
この時の看護師の対応で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.ドレナージチューブをクランプする。
2.ドレナージチューブから空気を注入する。
3.ドレナージチューブの固定位置を確認する。
4.ドレナージチューブからの排液量を確認する。
5.ドレナージチューブをアルコール綿で消毒する。
解答3・4
解説
・緊急内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)
・内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(ENBD)を留置。
・入院時:大腸菌(E.coli)検出、抗菌薬治療とENBDにより解熱。
・入院後2日:右季肋部の違和感を訴えた。
・バイタルサイン:正常。
→内視鏡的経鼻胆管ドレナージとは、ドレナージチューブ(細い排出用の管)を用いて胆汁を鼻から体外に出す方法である。総胆管結石で胆管炎や閉塞性黄疸をおこした場合に行われる。接続した排液バック内に胆汁を回収する。
1.× ドレナージチューブは、クランプ「する」ではなくしない。クランプとは、医療では「遮断する」といった意味で使用される。したがって、クランプした場合、ドレナージをストップさせることと同じであるためドレナージ効果が得られなくなる。
2.× ドレナージチューブからは、空気を注入「する」ではなくしない。なぜなら、内視鏡的経鼻胆管ドレナージの目的は、胆汁の排液であるため。空気を注入しても閉塞や逸脱の評価や対応はできない。内視鏡的経鼻胆管ドレナージとは、ドレナージチューブ(細い排出用の管)を用いて胆汁を鼻から体外に出す方法である。総胆管結石で胆管炎や閉塞性黄疸をおこした場合に行われる。接続した排液バック内に胆汁を回収する。
3~4.〇 正しい。ドレナージチューブの固定位置を確認する/ドレナージチューブからの排液量を確認する。なぜなら、本症例は「右季肋部の違和感」を訴えているため。固定チューブがずれ、排液がうまく行えていない可能性が示唆される。逸脱や閉塞を起こすと十分なドレナージ効果が得られず、閉塞性黄疸や胆管炎が再燃する。患者が自己抜去していないかを鼻翼固定位置で確認するほか、エックス線透視によってチューブ先端の留置位置がずれていないかを確認する。
5.× ドレナージチューブは、「アルコール綿で消毒する」のではなく、ドレナージチューブを一度抜去し、新しいチューブの再留置が必要である。なぜなら、ドレーンチューブは、アルコール等との接触により強度が低下して破断するおそれがあるため。酒精綿(アルコール綿)等を使用したミルキングは行わないこと。
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
Aさん(72歳、男性)は、2か月前に右中大脳動脈領域の脳梗塞を発症した。本日、病院を退院し、介護老人保健施設に入所した。
既往歴:1年前に前立腺癌のため腹腔鏡下前立腺全摘除術。
身体所見:左上下肢に軽度のしびれがある。半側空間無視がある。構音障害はない。
生活機能:改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)26点、Barthel(バーセル)インデックス65点。
97 Aさんは排尿コントロールについて「脳梗塞になってから、尿意を感じるとがまんできずに大量の尿が漏れてしまう。1日に何回も漏らす」と看護師に話した。
Aさんの状態のアセスメントで適切なのはどれか。
1.過活動膀胱
2.腹圧性尿失禁
3.溢流性尿失禁
4.腹腔鏡下前立腺全摘除術の後遺症
解答1
解説
・Aさん(72歳、男性、右中大脳動脈領域の脳梗塞:2か月前)
・本日:退院、介護老人保健施設に入所。
・既往歴:腹腔鏡下前立腺全摘除術(1年前:前立腺癌)
・身体所見:左上下肢に軽度のしびれ。半側空間無視。構音障害はない。
・生活機能:HDS-R 26点、BI 65点。
・排尿コントロール「脳梗塞になってから、尿意を感じるとがまんできずに大量の尿が漏れてしまう。1日に何回も漏らす」と。
1.〇 正しい。過活動膀胱が、Aさんの状態である。過活動膀胱とは、膀胱の蓄尿期において尿意切迫感があり、頻尿や尿失禁をきたす疾患である(切迫性尿失禁)。明らかな神経学的異常に起因する神経因性過活動膀胱(脳梗塞や脳出血、脳萎縮、脊髄損傷など)と、原因を特定できない非神経因性過活動膀胱に分けられる。原因として、①加齢、②骨盤底筋の低下、③生活習慣病、④肥満などと関連するといわれている。有病率は高齢になるほど高くなる。過活動膀胱では、膀胱訓練や骨盤底筋訓練など機能訓練を行い、薬物療法で治療を行う。
2.× 腹圧性尿失禁とは、おなかに力が入ったときに漏れてしまうタイプの失禁のことをいう。40代以上の女性に多いのが特徴の一つである。特に出産を経験した女性では、分娩時の骨盤底筋へのダメージにより、腹圧性失禁を起こすようになる。骨盤底筋は、骨盤の底にある筋。内臓や子宮、膀胱などを本来のあるべき位置に収まるように、下から支える役割を担う。しかし、骨盤底筋が弱くなると、内臓や子宮、膀胱などの臓器が下がり、骨盤内の臓器で一番下側にくるのが膀胱であるため、常に内臓や子宮に押されている形になる。すると、少しの力がお腹にかかっただけで、膀胱を圧迫してしまい、尿漏れが起こすといったメカニズムである。
3.× 溢流性尿失禁とは、尿道が狭くなったり、膀胱から尿を出す力が弱くなったりすることで、尿意はあるが自分では尿を出せず、膀胱に大量の尿が溜まったときに少しずつ溢れるように出てしまうことである。前立腺肥大症の男性に多い。神経因性膀胱や重症の前立腺肥大症で、尿の排出がうまくできず、残尿が貯留し溢れることにより起こる。尿道留置カテーテルを挿入し、その後は自己導尿などの残尿を減らす治療が有効である。
4.× 腹腔鏡下前立腺全摘除術の後遺症には、尿道括約筋の損傷により腹圧性尿失禁・性機能障害を生じる可能性がある。開腹前立腺全摘除術は、腹部の正中を切開し、直視下で、癌組織をふくむ前立腺・精嚢を全摘除し、膀胱と尿道を吻合するものである。本症例は、「脳梗塞になってから、尿意を感じるとがまんできずに大量の尿が漏れてしまう」と言っていることと、1年前に手術を終えていることから、今回の尿失禁の原因とは考えにくい。
過活動膀胱とは、膀胱の蓄尿期において尿意切迫感があり、頻尿や尿失禁をきたす疾患である(切迫性尿失禁)。明らかな神経学的異常に起因する神経因性過活動膀胱と、原因を特定できない非神経因性過活動膀胱に分けられる。原因として、①加齢、②骨盤底筋の低下、③生活習慣病、④肥満などと関連するといわれている。有病率は高齢になるほど高くなる。過活動膀胱では、膀胱訓練や骨盤底筋訓練など機能訓練を行い、薬物療法で治療を行う。
骨盤底筋は子宮、膀胱、直腸を含む骨盤臓器を支える筋肉で、骨盤底筋を強化することで尿漏れ対策となる。仰臥位が基本的な姿勢であるが、伏臥位や座位など日常生活の中でどんな姿勢で行ってもよい。座位や膝立て背臥位などで、上体の力を抜いてお尻の穴を引き上げて「きゅっ」とすぼめ、5秒キープする動作を10~20回ほど繰り返す方法と、すぼめたりを繰り返す方法の2種類ある。
膀胱訓練とは、排尿の間隔を徐々に延長し、膀胱にためることができる尿量を徐々に増やしていくものである。最初は30秒程度からスタートし、徐々に我慢する時間を延ばしていく。
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
Aさん(72歳、男性)は、2か月前に右中大脳動脈領域の脳梗塞を発症した。本日、病院を退院し、介護老人保健施設に入所した。
既往歴:1年前に前立腺癌のため腹腔鏡下前立腺全摘除術。
身体所見:左上下肢に軽度のしびれがある。半側空間無視がある。構音障害はない。
生活機能:改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)26点、Barthel(バーセル)インデックス65点。
98 入所後2日、Aさんは箸を使って食事をするが、いつも左側に置かれた食器には食べ残しがあった。
Aさんへの対応で適切なのはどれか。
1.スプーンの使用を勧める。
2.反復唾液嚥下テストを行う。
3.食事の途中で食器の配置を変える。
4.食器の下に滑り止めマットを敷く。
解答3
解説
・Aさん(72歳、男性、右中大脳動脈領域の脳梗塞:2か月前)
・既往歴:腹腔鏡下前立腺全摘除術(1年前:前立腺癌)
・身体所見:左上下肢に軽度のしびれ。半側空間無視。構音障害はない。
・生活機能:HDS-R 26点、BI 65点。
・入所後2日:いつも左側に置かれた食器には食べ残しあり。
→Aさんの「いつも左側に置かれた食器の食べ残し」は、半側空間無視による影響と考えられる。半側空間無視とは、障害側の対側への注意力が低下し、その空間が存在しないかのように振る舞う状態のことである。半盲とは性質が異なり、左半分が見えないわけではなく、左半分への注意力が低下している状態である。したがって、①左側への注意喚起、②左側身体への触覚刺激、③左足方向への体軸回旋運動、④左側からの声かけなどのアプローチが必要である。
1.× スプーンの使用を勧める必要はない。なぜなら、箸が使えずに食事を残しているわけではないため。もし箸が使えない場合は、左右関係なく残すことが多く、また食べこぼしがみられる。
2.× 反復唾液嚥下テストを行う必要はない。なぜなら、反復唾液嘩下テストは、嚥下障害がある場合(食事形態の検討)の際に行うため。本症例は、嚥下障害はなく、食事を嚥下できないために食べ残しがあるわけではない。ちなみに、反復唾液嚥下テスト〈RSST〉は、30秒間の空嚥下を実施してもらい、嚥下反射の随意的な能力を評価する。3回/30秒以上から嚥下の反復ができれば正常である。詳しい説明:検査者は中指で、被検者の「喉仏」を軽く押さえた状態のまま、30秒間唾液を飲み続け、連続して飲み込みができるか(嚥下反射が起きるか)を確認する。喉仏が中指をしっかりと乗り越えた場合のみを有効としてカウントし、3回/30秒以上であれば正常、3回/30秒未満の場合は嚥下機能に障害がある可能性がある。
3.〇 正しい。食事の途中で食器の配置を変える。本症例は、半側空間無視により左側に置かれた食べ物を残していると考えられる。したがって、ある程度右側の食べ物を食べた時点で、食器の配置を変えると、残った食事も食べられる。半側空間無視とは、障害側の対側への注意力が低下し、その空間が存在しないかのように振る舞う状態のことである。半盲とは性質が異なり、左半分が見えないわけではなく、左半分への注意力が低下している状態である。したがって、①左側への注意喚起、②左側身体への触覚刺激、③左足方向への体軸回旋運動、④左側からの声かけなどのアプローチが必要である。
4.× 食器の下に滑り止めマットを敷く必要はない。なぜなら、食器の下に滑り止めマットは、手の麻痺があったり利き手交換をしたばかりの患者に使用するため。
次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
Aさん(72歳、男性)は、2か月前に右中大脳動脈領域の脳梗塞を発症した。本日、病院を退院し、介護老人保健施設に入所した。
既往歴:1年前に前立腺癌のため腹腔鏡下前立腺全摘除術。
身体所見:左上下肢に軽度のしびれがある。半側空間無視がある。構音障害はない。
生活機能:改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)26点、Barthel(バーセル)インデックス65点。
99 入所後3日、Aさんは入浴した。Aさんは自分で脱衣し、体を洗えたが、洗い残した部分を看護師が介助した。入浴後に看護師がAさんに服を手渡すと、Aさんは戸惑った表情で服を丸めたり広げたりしている。
Aさんへの更衣援助で最も適切なのはどれか。
1.着替え始めるまで待つ。
2.伸縮性のある素材の服を渡す。
3.服を着やすい向きに持たせる。
4.ボタンをマジックテープに変えた服を渡す。
解答3
解説
・入所後3日:入浴。
・自分で脱衣し、体を洗えた(洗い残した部分を介助)。
・着衣:戸惑った表情で服を丸めたり広げたりしている。
→本症例の「戸惑った表情で服を丸めたり広げたりしている」ことは、着衣失行である。Aさんは半側空間無視を生じていることから、右頭頂葉が障害されていると考えられる。右頭頂葉の障害は、他に着衣失行などの症状が出現する。着衣失行とは、体と衣服を空間的に適合できず、衣服の上下、裏表の区別がつかない。 ボタンがかけられない、などの症状が出る。ちなみに、中大脳動脈の領域は、①側頭葉、②前頭葉、③頭頂葉の一部を灌流している。右頭頂葉の障害は、①着衣失行、②半側空間無視、③身体失認、④病態失認などがみられる。
1.× 着替え始めるまで「待つ」のではなく、Aさんのペースに合わせて着替えを促す必要がある。
2.4.× 伸縮性のある素材の服/ボタンをマジックテープに変えた服を渡す必要はない。なぜなら、それらは脳梗塞などの麻痺がある患者に用いられるため。ボタンなどの付け外しが難しいため、ボタンが不要で伸縮性のある素材の服や、ボタンをマジックテープに変えた服のほうが着衣しやすい。
3.〇 正しい。服を着やすい向きに持たせる。なぜなら、Aさんは着衣失行を呈しているため。服を着やすい向きに持たせる他にも、通す袖を教えたりするようなサポートが必要である。
次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
Aちゃん(5歳、男児)は、2日前に39℃に発熱して両側の耳下腺部の痛みを訴えた。昨日から同部位の腫脹がみられ、頭痛を訴えている。夜間に嘔吐が4回あり、発熱と頭痛が持続したため、本日父親に連れられて来院し、髄膜炎の疑いで個室に入院した。通っている幼稚園には、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)罹患児が数名いる。
既往歴:特記すべきことはない。
予防接種歴:年齢相応の定期接種はすべて済んでいる。おたふくかぜワクチンは未接種である。
家族歴:両親は流行性耳下腺炎罹患の既往がある。妹のBちゃん(3歳)は、年齢相応の定期予防接種は済んでいるが、おたふくかぜワクチンは未接種である。また、流行性耳下腺炎罹患の既往はない。
身体所見:体温39.2 ℃、項部硬直あり。両側耳下腺部の腫脹と圧痛あり。胸部聴診で異常なし。腹部は平坦で軟、圧痛なし。Kernig(ケルニッヒ)徴候あり。
検査所見:白血球8,760/μL。血清アミラーゼ834 U/L (基準44〜132)、CRP 0.1mg/dL。
100 Aちゃんに腰椎穿刺を行うことになった。看護師が検査の準備を始めると、Aちゃんは「何をするの?」と不安そうな表情をして尋ねてきた。
看護師の適切な返答はどれか。
1.「泣いちゃだめだよ」
2.「気にしないでいいよ」
3.「痛いことはしないよ」
4.「背中にお注射するよ」
解答4
解説
・腰椎穿刺を行う予定。
・看護師が検査の準備を始める。
・Aちゃん(5歳、男児)は「何をするの?」と不安そうな表情をして尋ねてきた。
→5歳の子供にも分かりやすい言葉で、不安を取り除けるよう伝えることと支援が必要である。
1~2.× 「泣いちゃだめだよ」「気にしないでいいよ」と伝える必要はない。なぜなら、Aちゃんは「何をするの?」と聞いていることに対して、患児の問いかけに無視しているため。信頼関係を失う行為である。5歳の子供にも分かりやすい言葉で、不安を取り除けるよう伝えることと支援が必要である。
3.× 「痛いことはしないよ」と伝える必要はない。むしろ、これから腰椎穿刺を行うため、多少の痛みを伴う。また虚偽を伝えることになりかねず、信頼関係を失う行為である。
4.〇 正しい。「背中にお注射するよ」と伝えることは、Aちゃんは「何をするの?」と聞いていることに対して、5歳の子供にも分かりやすい言葉で、不安を取り除けると考えられる。
インフォームドコンセントは、「十分な説明を受けたうえでの同意・承諾」を意味する。医療者側から診断結果を伝え、治療法の選択肢を提示し、予想される予後などについて説明したうえで、患者自らが治療方針を選択し、同意のもとで医療を行うことを指す。診断結果の伝達には「癌の告知」という重要な問題も含まれる。インフォームドコンセントを受けることで医師、薬剤師とのコミュニケーションがよくなり、信頼関係が高まるほか、治療や薬の必要性が理解できるので、患者さんがより積極的に治療に参加できるようになる。また、医師の考えがわかれば患者さんも意見をいうことができ、不安感をなくすことにもつながる。