第109回(R2) 看護師国家試験 解説【午前86~90】

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86 地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(医療介護総合確保推進法)で推進するのはどれか。2つ選べ。

1.子育て世代包括支援センター
2.地域包括ケアシステム
3.子どもの医療費の助成
4.地域生活支援事業
5.地域医療構想

解答2・5

解説

(※画像引用:「医療介護総合確保推進法 (医療部分)の概要について」厚生労働省HPより)

医療介護総合確保推進法とは?

『医療介護総合確保推進法』とは、平成26(2014)年に成立された地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保等を目的する法律である。持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく措置として、効率的かつ質の高い医療提供体制を 構築するとともに、地域包括ケアシステムを構築することを通じ、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するため、医療法、介護保険法等の関係法律について所要の整備等を行う。

(※参考:「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(概要)」厚生労働省HPより)

1.× 子育て世代包括支援センターの設置を推進しているのは、『母子保健法』である。母子保健法とは、母性、乳幼児の健康の保持および増進を目的とした法律である。母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。各種届出は市町村長または特別区、指定都市の区長に届け出る。
2.〇 正しい。地域包括ケアシステムは、医療介護総合確保推進法で推進する。地域包括ケアシステムとは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるよう、包括的な支援・サービス提供体制の構築を目指すものである。この地域包括ケアシステムが効果的に機能するために、「4つの助(自助・互助・共助・公助)」の考え方が連携し、課題解決に向け取り組んでいく必要がある。
3.× 子どもの医療費の助成は、「各地方公共団体の条例」に基づく制度である。
4.× 地域生活支援事業は、『障害者総合支援法』に定められるサービスである。相談支援、移動支援、コミユニケーション支援、地域活動支援センターや福祉ホームの運営、日常生活用具の給付・貸与などが行われる。
5.〇 正しい。地域医療構想は、医療介護総合確保推進法で推進する。地域医療構想とは、構想区域ごとに平成37(2025)年の医療需要と病床の必要量を推計し、目指すべき医療提供体制を実現するための具体的な施策を定めるものである。

子育て世代包括支援センターとは

子育て世代包括支援センターとは、母子保健法に基づき市町村が設置するもので、保健師等の専門スタッフが妊娠・出産・育児に関する様々な相談に対応し、必要に応じて支援プランの策定や地域の保健医療福祉の関係機関との連絡調整を行うなど、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を一体的に提供している。

【主な5つの事業】
①母性・乳幼児の健康の保持増進に関する実情の把握
②母子保健に関する相談への対応
③母性・乳幼児に対する保健指導
④母子保健に関する機関との連絡調整等、健康の保持・増進に関する支援
⑤健康診査、助産その他の母子保健に関する事業

(※参考「子育て世代包括支援センター業務ガイドライン 」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

87 アルコール依存症の一次予防はどれか。2つ選べ。

1.年齢確認による入手経路の制限
2.スクリーニングテストの実施
3.精神科デイケアへの参加
4.小学生への健康教育
5.患者会への参加

解答1・4

解説

疾病予防の概念

疾病の進行段階に対応した予防方法を一次予防、二次予防、三次予防と呼ぶ。

一次予防:「生活習慣を改善して健康増進し、生活習慣病等を予防すること」
二次予防:「健康診査等による早期発見・早期治療」
三次予防:「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」と定義している。

(※健康日本21において)

1.〇 正しい。年齢確認による入手経路の制限/小学生への健康教育は、アルコール依存症の一次予防に該当する。一次予防は、生活習慣を改善して健康増進し、生活習慣病等を予防することである。
2.× スクリーニングテストの実施は、二次予防に該当する。
3.5.× 精神科デイケアへの参加/患者会への参加は、三次予防に該当する。

 

 

 

 

88 医療法で規定されているのはどれか。2つ選べ。

1.保健所
2.特定機能病院
3.地方衛生研究所
4.市町村保健センター
5.医療安全支援センター

解答2・5

解説

医療法とは?

医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。

1.× 保健所は、地域保健法に定められている。保健所とは、精神保健福祉・健康・生活衛生など地域保健法に定められた14の事業(主に疾病予防・健康増進・環境衛生などの公衆衛生活動)を中心に行っている。保健所では保健師や精神保健福祉士、医師などが生活面や社会復帰について相談にのってくれる。都道府県、特別区、指定都市、中核市、『地域保健法施行令』で定める市に必置である。
2.〇 正しい。特定機能病院は、医療法で規定されている。特定機能病院とは、高度の医療の提供、高度の医療技術の開発及び高度の医療に関する研修を実施する能力等を備えた病院である。1992年6月改正、1993年4月施行の医療法の第2次改正によって制度化された日本の医療機関の機能別区分のうちのひとつで、あらかじめ社会保障審議会の意見を聴いて厚生労働大臣が承認する必要がある。
3.× 地方衛生研究所は、設置の根拠法はない。地方衛生研究所とは、日本の地域における科学的かつ技術的に中核となる機関として、その専門性を活用した地域保健に関する総合的な調査及び研究を行うとともに、当該地域の地域保健関係者に対する研修を実施する研究所である。 地域保健に関する総合的な調査・研究を行う機関である。
4.× 市町村保健センターは、地域保健法で規定されている。市町村保健センターとは、健康相談、保健指導、健康診査など、地域保健に関する事業を地域住民に行うための施設である。地域保健法に基づいて多くの市町村に設置されている。産前・産後の事業も行われている。
5.〇 正しい。医療安全支援センターは、医療法で規定されている。医療安全支援センターとは、医療法第6条の13の規定に基づき、都道府県、保健所を設置する市及び特別区により、日本全国で380箇所以上設置されている医療の安全に関する情報の提供、研修の実施、意識の啓発などを行う機関である。医療に関する苦情・心配や相談に対応するとともに、医療機関、患者さん・住民に対して、医療安全に関する助言および情報提供等を行っている。

 

 

 

 

 

89 終末期がん患者にみられる悪液質の徴候はどれか。2つ選べ。

1.末梢神経障害
2.リンパ浮腫
3.がん疼痛
4.食欲不振
5.体重減少

解答4・5

解説

悪液質とは?

悪液とは、がんなどの慢性消耗性疾患によって生じる複合的な代謝異常の症候群である。がん悪液質とは、従来の栄養サポートで改善することは困難で、進行性の機能障害をもたらし、(脂肪組織の減少の有無にかかわらず)著しい筋組織の減少を特徴とする複合的な代謝障害症候群である。病態生理学的には、経口摂取の減少と代謝異常による負の蛋白、エネルギーバランスを特徴とする一部の癌、特に膵癌および胃癌では、深刻な悪液質を生じる。 悪液質の患者は、体重が10~20%減少することがある。典型的な症状として、食欲不振体重減少、全身衰弱などを呈する。飢餓による低栄養とは異なり、単なる栄養補給では改善しない。

1.× 末梢神経障害とは、末梢神経系(手足などの周辺部位を制御する神経)に障害が発生したことによって、筋肉や感覚などの機能が低下した状態を指す。原因として、糖尿病や多発性硬化症などの疾患、外傷、感染、がん化学療法の副作用として起こることが多い。
2.× リンパ浮腫とは、がんの治療部位に近い腕や脚などの皮膚の下に、リンパ管内に回収されなかった、リンパ液がたまってむくんだ状態のことをいう。がんのリンパ節転移やリンパ管内進展、手術などにより、リンパの流れが妨害されることで起こる。
3.× がん疼痛とは、がんが原因となって引き起こされる疼痛のことを指す。がんが進行することによって、直接的に疼痛を引き起こすこともあれば、関連疾患や治療によって引き起こされることもある。例えば、がんが骨に侵入した場合には、骨が破壊されることで疼痛を引き起こす。また、放射線治療や化学療法などの治療によって、炎症や神経障害を引き起こし、疼痛を引き起こすこともある。
4~5.〇 正しい。食欲不振/体重減少は、悪液質の徴候である。悪液とは、がんなどの慢性消耗性疾患によって生じる複合的な代謝異常の症候群である。がん悪液質とは、従来の栄養サポートで改善することは困難で、進行性の機能障害をもたらし、(脂肪組織の減少の有無にかかわらず)著しい筋組織の減少を特徴とする複合的な代謝障害症候群である。病態生理学的には、経口摂取の減少と代謝異常による負の蛋白、エネルギーバランスを特徴とする一部の癌、特に膵癌および胃癌では、深刻な悪液質を生じる。 悪液質の患者は、体重が10~20%減少することがある。典型的な症状として、食欲不振体重減少全身衰弱などを呈する。飢餓による低栄養とは異なり、単なる栄養補給では改善しない。

 

 

 

 

90 世界保健機関(WHO)の主要な活動はどれか。2つ選べ。

1.児童労働の撲滅
2.保健事業の技術的協力
3.人類の飢餓からの解放
4.感染症の撲滅事業の促進
5.労働者の労働条件の改善

解答2・4

解説

世界保健機関とは?

世界保健機関とは、「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的として設立された国連の専門機関である。

設置年:昭和23(1948)年
本部:ジュネーブ(スイス)
協力形態:多国間交流
事業内容:発展途上国への国際保健協力、感染症およびその他の疾病(エイズ・結核・マラリア等)の撲滅事業、国際疾病分類(ICD)の作成
備考:①WHOの構成組織である地域的機関は、6つ(アフリカ、アメリカ、東南アジア、ヨーロッパ、東地中海、西太平洋)あり、日本は西太平洋に所属している。②194か国加盟 (2018年4月時点)、③たばこ規制枠組み条約:たばこの消費等が健康に及ぼす悪影響から現在および将来の世代を保護することを目的とし、たばこに関する広告、包装上の表示等の規制及びたばこの規制に関する国際協力について規定。

(※参考:「日本とWHO」厚生労働省HPより)

1.× 児童労働の撲滅は、国際労働機関(ILO:Inter national Labour Organization)が取り組んでいる。国際労働機関とは、世界の労働者の労働条件と生活水準の改善を目的とする国連の専門機関である。
2.〇 正しい。保健事業の技術的協力/感染症の撲滅事業の促進は、世界保健機関(WHO)の主要な活動である。WHOの目的は、「すべての人が可能な最高の健康水準に到達すること」であり、①発展途上国への国際保健協力、②感染症およびその他の疾病(エイズ・結核・マラリア等)の撲滅事業、③国際疾病分類(ICD)の作成などが活動である。
3.× 人類の飢餓からの解放は、国連食糧農業機関(FAO:Food and Agriculture Organization of the United Nations)の活動のひとつである。国連食糧農業機関の目的は、「人々が健全で活発な生活をおくるために十分な量・質の食料への定期的アクセスを確保し、すべての人々の食料安全保障を達成すること」であり、食料・農産物の生産の効率化などの活動を行っている。
5.× 労働者の労働条件の改善は、国際労働機関(ILO:Inter national Labour Organization)の活動のひとつである。国際労働機関とは、世界の労働者の労働条件と生活水準の改善を目的とする国連の専門機関である。

 

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