第109回(R2) 看護師国家試験 解説【午後71~75】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

71 訪問看護事業所で正しいのはどれか。

1.24時間対応が義務付けられている。
2.自宅以外への訪問看護は認められない。
3.特定非営利活動法人(NPO)は事業所を開設できる。
4.従事する看護師は臨床経験3年以上と定められている。

解答3

解説

訪問看護事業所とは?

訪問看護事業所とは、住み慣れた自宅で療養生活が送れるように、医師や他の医療専門職、ケアマネジャーなどと連携し、訪問看護サービスを提供すること業所である。看護ケアを提供することで患者の療養生活をサポートするとともに、自立を目指した支援も行っている。在宅医療の一つである。訪問看護事業所は、2種類があり、①訪問看護ステーション(医療機関以外からの訪問看護事業所)と、②医療機関からの訪問看護があげられる。

1.× 24時間「対応」が義務付けられているわけではない。24時間「連絡」できる体制が整っている施設が多い。
2.× 自宅以外への訪問看護が認められる。看護職員がいない住宅型有料老人ホーム、多くのサービス付き高齢者向け住宅およびケアハウスなどは、介護保険上は「通常の自宅」と同じであるとされ、介護保険あるいは医療保険による訪問看護が認められる。
3.〇 正しい。特定非営利活動法人(NPO)は事業所を開設できる。介護保険法に基づく訪問看護事業所は、法人格を有することが条件となる。具体的には「医療法人」「営利法人(会社)」「社団・財団法人」「社会福祉法人」「地方公共団体」「協同組合」「NPO法人」などがある。ちなみに、特定非営利活動法人(NPO法人)とは、収益を分配することを目的としない活動を行う。収益を分配することを目的とせず、保健福祉などの社会貢献活動、社会的使命の実現を目的として活動する。ボランティアなどの非営利の社会貢献活動を行う組織である。
4.× 従事する看護師は、臨床経験3年以上などの臨床経験年数の条件はない。ちなみに、訪問看護ステーションの管理者の条件は、「専従かつ常勤の保健師又は看護師であって、適切な指定訪問看護を行うために必要な知識及び技能を有する者」と定められている。

 

 

 

 

 

72 Aさん(78歳、男性)は、妻(75歳)と2人暮らし。脳梗塞の既往がある。妻から「最近、夫は食事をむせずに食べることができるが、口の中に食べ物が残っていることが多い。夫の食事について助言が欲しい」と訪問看護師に相談があった。
 妻への訪問看護師の助言で適切なのはどれか。

1.「食事にとろみをつけましょう」
2.「自助具を使って食事をしましょう」
3.「口に入れる1回量を少なくしましょう」
4.「食事前に舌の動きを促す運動をしましょう」

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(78歳、男性、脳梗塞)
・2人暮らし:妻(75歳)
・妻から「最近、夫は食事をむせずに食べることができるが、口の中に食べ物が残っていることが多い。夫の食事について助言が欲しい」と。
→Aさん(脳梗塞)の摂食嚥下障害は、「口の中に食べ物が残っていることが多い」ことから、口腔期の障害と考えられる。つまり、口の中に食べ物を含み、飲み込む動き(舌運動・表情筋の運動)が不十分と考えられる。

1.× 食事にとろみは必要ない。なぜなら、むせずに嚥下はできるため。とろみは、咽頭・喉頭部を流れるスピードを低下させ、誤嚥防止のために用いることが多い。
2.× 自助具を使って食事をする必要はない。なぜなら、自助具は準備期の補助に用いられることが多いため。自助具は食べ物を口に運ぶ道具である。
3.× 口に入れる1回量を少なくする必要はない。なぜなら、Aさんの場合、口の中に含む量が多いことが原因で、口の中に食べ物が残っているとは考えにくいため。Aさんは、脳梗塞であるため、口の中の動きが低下していると考えられる。また、一口量が少なすぎると嚥下反射がおこりにくく、多いと誤嚥の危険性が出るため、適量が望ましい。
4.〇 正しい。食事前に舌の動きを促す。Aさん(脳梗塞)の摂食嚥下障害は、「口の中に食べ物が残っていることが多い」ことから、口腔期の障害と考えられる。つまり、口の中に食べ物を含み、飲み込む動き(舌運動・表情筋の運動)が不十分と考えられる。舌の運動が、食塊形成に寄与し、口の中の食べ残しの予防につながる。

嚥下の過程

①先行期・・・飲食物の形や量、質などを認識する。
②準備期・・・口への取り込み。飲食物を噛み砕き、飲み込みやすい形状にする。
③口腔期・・・飲食物を口腔から咽頭に送り込む。
④咽頭期・・・飲食物を咽頭から食道に送り込む。
⑤食道期・・・飲食物を食道から胃に送り込む。

 

 

 

 

73 皮下埋込みポートを用いた在宅中心静脈栄養法(HPN)で適切なのはどれか。

1.抜針して入浴することができる。
2.24時間持続する注入には適さない。
3.同居の家族がいることが必須条件である。
4.外出時に輸液ポンプを使うことはできない。

解答1

解説

在宅中心静脈栄養法とは?

食物を口から食べることができない場合に、中心静脈とい う心臓近くの太い血管の中に留置したカテーテルから、点滴し、生命維持や成長に必要なエネルギー、各種栄養素を 補給する方法を中心静脈栄養法(TPN:Total Parenteral Nutrition)という。この中心静脈栄養法(TPN)を 家庭で行うことを、在宅中心静脈栄養法(HPN:Home Parenteral Nutrition)と呼んでいる。(※参考:「在宅中心静脈栄養法(HPN)の手引き」著:ヒロクリニック理事長 英裕雄)

1.〇 正しい。抜針して入浴することができる。ただ、その場合、抜針後に消毒し、止血を確認したのち絆創膏などを貼用して入浴する処置が必要である。
2.× 24時間持続する注入する場合もある。注入方法には、①24時間持続注入法と、②間欠注入法がある。
3.× 同居の家族がいることは、必須条件でない。なぜなら、本人がセルフケア自立していれば、家族がいなくても問題ないため。また、本人がセルフケアできない場合で、同居の家族もいない状態でも、在宅診療医師訪問看護師などが対応できる。
4.× 外出時に輸液ポンプを使う。外出時は、軽量の輸液ポンプを使用する。ただし、外出時は、充電が切れないようにバッテリー残量の確認などの必要がある。

中心静脈栄養法とは?

中心静脈栄養法(TPN:Total Parenteral Nutrition)とは、消化管の消化吸収障害があり、口から栄養を補給できない場合に、中心静脈(上大静脈、下大静脈)にカテーテルを留置して、高カロリーの輸液を行う方法である。高カロリー輸液を行うため、高血糖、肝機能障害などの合併症、血流感染や静脈炎などのリスクがある。そのため、衛生面など管理には細心の注意が必要である。また、腸管粘膜が萎縮し、消化機能が低下し、血栓が形成されることがある。

 

 

 

 

 

74 与薬の事故防止に取り組んでいる病院の医療安全管理者が行う対策で適切なのはどれか。

1.与薬の業務プロセスを見直す。
2.医師に口頭での与薬指示を依頼する。
3.病棟ごとに与薬マニュアルを作成する。
4.インシデントを起こした職員の研修会を企画する。

解答1

解説

医療安全管理者とは?

医療安全管理者とは、医療機関の管理者から委譲された権限に基づいて、組織全体を俯瞰した安全管理に関する医療機関内の体制の構築に参画し、委員会等の各種活動の円滑な運営を支援する。また、医療安全に関する職員への教育・研修、情報の収集と分析、対策の立案、医療事故・発生時の初動対応、再発防止策立案、発生予防および発生した医療事故の影響拡大の防止等に努める。そして、これらを通し、安全管理体制を組織内に根づかせ機能させることで、医療機関における安全文化の醸成を促進する。

(※一部引用:「医療安全管理者の業務指針および養成のための研修プログラム作成指針」厚生労働省HPより)

1.〇 正しい。与薬の業務プロセスを見直す。与薬までの業務プロセスを見直し、事故防止に関する対策を立てることが重要である。
2.× 医師に、「口頭」ではなく紙面の与薬指示を依頼する。なぜなら、口頭では聞き逃しなどが発生するため。
3.× 「病棟ごと」ではなく病院全体に与薬マニュアルを作成する。
4.× 「インシデントを起こした職員」だけでなく、病院全体の研修会を企画する。

MEMO

インシデントレポートとは、医療現場で事故に繋がりかねないような、ヒヤリとしたり、はっとした出来事に関する報告書のことをいう。作成の目的は、事例を分析して類似するインシデントの再発や医療事故・医療過誤の発生を未然に防止することである。インシデントを直訳すると「出来事・事件・異変」である。一方、その行為によって患者に傷害や不利益を与えてしまった事象を、アクシデントという。なお、インシデントの本来の意味は、偶発的や付随的と解釈される。

 

 

 

 

75 Aさん(55歳、女性)は、1人暮らし。Aさんには視覚障害があり、光と輪郭がぼんやりわかる程度である。食事の準備や室内の移動は自立している。震度6の地震が発生した。Aさんは、避難所に指定されたバリアフリーの公民館に近所のBさんと避難した。公民館には複数の部屋がある。避難所の開設初日に医療救護班として看護師が派遣された。
 避難所生活を開始するAさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。

1.BさんをAさんの介助者とする。
2.Aさんの肩に触れてから声をかける。
3.Aさんにはトイレに近い部屋を割りあてる。
4.移動するときはAさんの手を引っ張って誘導する。

解答3

解説

MEMO

・Aさん(55歳、女性、1人暮らし)
・Aさん:視覚障害(光と輪郭がぼんやりわかる程度)
・食事準備、室内移動:自立
震度6の地震発生
・避難所に指定されたバリアフリーの公民館に近所のBさんと避難。
・公民館:複数の部屋がある。
・避難所の開設初日:医療救護班として看護師が派遣された。
→Aさんは視覚障害があるため、視覚障害に合わせた看護が必要になる。

 

1.× BさんをAさんの介助者とする必要はない。なぜなら、Bさん自身も被災者であり、Bさんへの身体的・精神的な負担が強くなる恐れがあるため。また、それをAさんを含め両者が希望していない場合は、お互い強いストレスが加わりかねない。
2.× 「Aさんの肩に触れてから」ではなく、先に声をかける。なぜなら、視覚障害がある中で、突然身体に触れられると、驚き恐怖につながるため。
3.〇 正しい。Aさんには、トイレに近い部屋を割りあてる。なぜなら、Aさんは視覚障害を呈しており、動線は短いことが望ましいため。
4.× 移動するときは、Aさんの手を引っ張って誘導する必要はない。視覚障害の歩行介助は、①看護師は、Aさんの半歩先に立つ。②Aさんには看護師の肘や肩、手首を軽く握ってもらう。③看護師は、Aさんの白杖代わりで、周りの状況を伝えると、Aさんは空間を認識しやすくなる。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)