第109回(R2) 看護師国家試験 解説【午後56~60】

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56 高齢者に対するエイジズムの説明で適切なのはどれか。

1.年齢にとらわれないこと
2.加齢に伴う心身機能の変化
3.高齢という理由で不当な扱いをすること
4.老化に関連した遺伝子によって引き起こされる現象

解答3

解説

エイジズムとは?

エイジズムとは、年齢による差別、特に高齢者に対する偏見や差別をいう。具体的には、年齢が高いというだけで高齢者を画一的集団としてとらえ、役に立たない、能力が低下しているなどの否定的な考えのもと、高齢者を差別することである。

1~2.4.× 年齢にとらわれないこと/加齢に伴う心身機能の変化/老化に関連した遺伝子によって引き起こされる現象は、高齢者に対するエイジズムの説明とはいえない。もし、各選択肢において、「エイジズム」のような別の言い方があればコメント欄にてご教授いただければ幸いです。
3.〇 正しい。高齢という理由で不当な扱いをすることが、高齢者に対するエイジズムの説明である。

 

 

 

 

 

57 Aさん(90歳、女性)は、認知症で要介護3。デイサービスの送迎の際に、同居している娘から「食事は家族と同じものを食べていたのですが、昨日から下痢が続いています。発熱はなく、元気はあります」と看護師に話があった。デイサービスでは午前中に不消化便が1回あり、おむつ交換の際に、肛門周囲の発赤がみられた。
 Aさんへの対応で適切なのはどれか。

1.腹部マッサージを行う。
2.経口補水液の摂取を促す。
3.食物繊維を多く含む食事にする。
4.石けんを使って肛門周囲を洗う。

解答2

解説

本症例のポイント

・Aさん(90歳、女性、認知症、要介護3)
・デイサービスの送迎の際に、同居している娘から「食事は家族と同じものを食べていたのですが、昨日から下痢が続いています。発熱はなく、元気はあります」と。
・デイサービスの午前中:不消化便が1回
・おむつ交換の際:肛門周囲の発赤
→本症例は、下痢により肛門周囲の発赤がみられる。肛門周囲の発赤の原因として、外部刺激(下痢に伴う腸液や便が付着、拭きすぎ・こすりすぎ、シャワートイレの長時間使用など)や感染悪性新生物などが考えられる。放置すると皮膚の抵抗力が低下し、白癬菌やカンジダ菌などのかび類によって肛門周囲皮膚炎となり、かゆみやただれ、かぶれ、滲出液などの症状が発現するため予防が必要である。

1.× 腹部マッサージを行う必要はない。なぜなら、本症例は下痢:不消化便(蠕動運動亢進)が起こっているため。腹部マッサージの効果は、主に排便を促すために行う。腸管を刺激したり血流を良くしたりすることで腸嬬動を亢進させ、便秘やガス貯留などによる腹部膨満を軽減するために行う。
2.〇 正しい。経口補水液の摂取を促す。なぜなら、高齢者は繰り返す下痢により脱水を引き起こす危険性が高いため。ちなみに、脱水症状とは、体内の水分が2%失われると、のどの渇きを感じ、運動能力が低下しはじめる。3%失われると、強いのどの渇き、ぼんやり、食欲不振などの症状がおこり、4~5%になると、疲労感や頭痛、めまいなどの脱水症状が現れる。10%以上になると、死にいたることもある。
3.× 食物繊維を多く含む食事にする必要はない。なぜなら、本症例は下痢:不消化便(蠕動運動亢進)が起こっているため。食物繊維とは、人の消化酵素によって消化されにくい(胃腸に負担をかける)ため、腸を刺激して便通を促す働きを持つ。また、カロリーも少なく、肥満防止となる食物繊維の働きは、高血圧、高脂血症、糖尿病の食事療法に効果がある。
4.× 「石けん」ではなく微温湯を使って肛門周囲を洗う。なぜなら、本症例は、肛門周囲の発赤が生じており、石けん(アルカリ性)を使用することで、さらに下痢:腸液(アルカリ性)を強め、肛門周囲の発赤が助長することが考えられるため。

 

 

 

 

58 乳児の安静時におけるバイタルサインで基準値から逸脱しているのはどれか。

1.体温:37.0℃
2.呼吸数:35/分
3.心拍数:60/分
4.血圧:88/60mmHg

解答3

解説

1.× 体温:37.0℃は基準値内である。乳児の体温の基準値は、36.5~37.5℃である。体温調節機構が未発達なために体温が変動しやすい。
2.× 呼吸数:35/分は基準値内である。乳児の呼吸数の基準値は、30~40回/分である。ちなみに、幼児で20~30回、学童期で20回程度である。
3.〇 正しい。心拍数:60/分は、基準値から逸脱している。なぜなら、乳児の心拍数の基準値は100~120回/分であるため。
4.× 血圧:88/60mmHgは基準値内である。乳児の血圧の基準値は、収縮期血圧80~90mmHg拡張期血圧60mmHgである。

年齢別の脈拍数

・胎児:140〜160/分
・新生児:120〜140/分
・乳児:110〜130/分
・幼児:100〜110/分
・学童:80〜90/分
・成人:70〜80/分

 

 

 

 

 

 

59 平成28年度(2016年度)の福祉行政報告例における児童虐待で正しいのはどれか。

1.主たる虐待者は実父が最も多い。
2.性的虐待件数は身体的虐待件数より多い。
3.児童虐待相談件数は5年間横ばいである。
4.心理的虐待件数は5年前に比べて増加している。

解答4

解説

児童相談所における児童虐待相談の対応件数

平成28年度中に児童相談所が対応した養護相談のうち児童虐待相談の対応件数は122,575件で、前年度に比べ19,289件(18.7%)増加しており、年々増加している。被虐待者の年齢別にみると「7~12歳」が41,719件(構成割合34.0%)と最も多く、次いで「3~6歳」が31,332件(同25.6%)、「0~2歳」が23,939件(同19.5%)となっている。相談の種別をみると、「心理的虐待」が63,186件と最も多く、次いで「身体的虐待」が31,925件となっている。また、主な虐待者別構成割合をみると「実母」が48.5%と最も多く、次いで「実父」が38.9%となっており、「実父」の構成割合は年々上昇している。

(※一部引用:「平成28年度福祉行政報告例の概況」厚生労働省HPより)

1.× 主たる虐待者は、「実父(38.9%)」ではなく実母(48.5%)が最も多い。
2.× 性的虐待件数(1,622件)は、身体的虐待件数(31,925件)より「多い」のではなく少ない。性的虐待は最も少ない。
3.× 児童虐待相談件数は、5年間「横ばい」ではなく増加傾向である。平成25(2013)年度の相談件数は73802件であったが、平成28(2016)年度は122,575件で年々増加している。
4.〇 正しい。心理的虐待件数は、5年前に比べて増加している。心理的虐待は、平成24年度は22,423件で、平成28年度は63,186件となっている。

(※一部引用:「平成28年度福祉行政報告例の概況」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

60 Aちゃん(5歳、女児)は、インフルエンザ脳症の終末期である。Aちゃんに意識はなく、付き添っている母親は「私がもっと早く病院に連れて来ればこんなことにならなかったのに」と病室で泣いている。
 Aちゃんの母親への対応で適切なのはどれか。

1.母親に受診が遅くなった状況を聞く。
2.母親がAちゃんに対してできるケアを提案する。
3.病気で亡くなった子どもの親の会を母親に紹介する。
4.母親が泣いている間はAちゃんの病室に居ることができないと母親に説明する。

解答2

解説

本症例のポイント

・Aちゃん(5歳、女児、インフルエンザ脳症の終末期
・Aちゃんに意識はない。
・母親「私がもっと早く病院に連れて来ればこんなことにならなかったのに」と病室で泣いている。
→母親は、自責し泣いている。現時点で母親が後悔せずできるだけ前を向けられるよう支援する。

1.× 母親に受診が遅くなった状況を聞く必要はない。なぜなら、母親はすでに「私がもっと早く病院に連れて来れば・・・」と自責の感情を抱いているため。さらに自責を強めることにつながりかねない。
2.〇 正しい。母親がAちゃんに対してできるケアを提案する。なぜなら、Aちゃんに対してできるケアをすることで、母親の自責を軽減できる可能性が高いため。病室で泣いているだけでなく、母親ができることを提案し、残された時間をともに過ごせるようにすることは重要であると考えられる。
3.× 病気で亡くなった子どもの親の会を母親に紹介することは時期尚早である。なぜなら、Aちゃんはまだ生きているため。グリーフケア(悲嘆の援助)とは、スピリチュアルの領域において、さまざまな「喪失」を体験し、グリーフを抱えた方々に、心を寄せて、寄り添い、ありのままに受け入れて、その方々が立ち直り、自立し、成長し、そして希望を持つことができるように支援することである。在宅で療養する終末期患者を看取る家族に対し、患者の療養中から死亡した後まで、経過に合わせた援助(グリーフケア)が重要である。
4.× 母親が泣いている間はAちゃんの病室に居ることができないと母親に説明する必要はない。なぜなら、現時点において母親が泣くことは、納得できる状況であるため。

インフルエンザ脳症とは?

インフルエンザ脳症とは、インフルエンザウイルス感染に伴う発熱後、急速に神経障害・意識障害を伴う症候のことである。発熱後1日以内にけいれんと意識障害が出現しおくれて全身の臓器障害が現れ、続いてショック・心肺停止となり死亡する。主に5歳以下の乳幼児に起こる。30%が死亡、25%が後遺症を残すとされ、後遺症なく回復するのは4割程度という。

 

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