第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午後91~95】

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次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(52歳、男性)は、5年前にC型肝炎、肝硬変と診断され、1回の入院歴がある。退院後、医療機関への受診を中断し3年が経過している。毎日、ウイスキーを約300mL飲んでいる。夕食の2時間後に約1,100mLの吐血があり、緊急入院となった。
 身体所見:体温35.4 ℃、呼吸数26/分、脈拍122/分、血圧86/42mmHg、顔面は蒼白、冷汗を認める。意識は清明だが不安げな表情をしている。
 検査所見:赤血球278万/μL、Hb 8.4g/dL、総ビリルビン4.1mg/dL、アンモニア188μg/dL、K 3.9mEq/L、血糖102mg/dL。

91 入院時のAさんの状態として考えられるのはどれか。

1.急性アルコール中毒
2.食道静脈瘤破裂
3.迷走神経反射
4.低血糖発作

解答2

解説

本症例のポイント

・Aさん(52歳、男性)
・5年前:C型肝炎肝硬変(1回の入院歴)
・医療機関への受診中断:3年経過。
・毎日:ウイスキー約300mL
・夕食の2時間後:約1,100mLの吐血
・身体所見:体温35.4 ℃、呼吸数26/分、脈拍122/分、血圧86/42mmHg顔面蒼白冷汗
・意識:清明(不安げな表情)
・検査所見:赤血球278万/μL、Hb 8.4g/dL、総ビリルビン4.1mg/dL、アンモニア188μg/dL、K 3.9mEq/L、血糖102mg/dL。
→本症例は、肝硬変が進行していると推測される。肝硬変の合併症として食道静脈瘤が知られており、出血性ショックの病態(頻呼吸・低血圧・顔面蒼白・冷汗)からも食道静脈瘤破裂による吐血が最も疑われる。ちなみに、肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。 慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができる。合併症として、腹水、肝性脳症、食道静脈瘤、血小板減少による出血傾向、肝がんなどがあげられる。

1.× 急性アルコール中毒の可能性は低い。なぜなら、本症例の意識は清明であるため。急性アルコール中毒とは、アルコール摂取により一過性に意識障害を生じるものである。他の症状として、顔や全身の紅潮、発汗、動悸、呼吸苦、胸痛、頭痛、めまい、目のかすみ、嘔吐、口渇、脱力感などの中毒症状を起こす。正常な酩酊を単純酩酊(ふつうの酔っ払い)、興奮や幻覚妄想を伴う酩酊を異常酩酊(暴れる酔っ払い)という。
2.〇 正しい。食道静脈瘤破裂が考えられる。静脈瘤自体は無症状であるが、原因となる肝硬変の症状(手のひらが赤くなる、胸のあたりに血管が浮き出る、疲労感、倦怠感、黄疸 など)がでる。静脈瘤が破裂した場合に吐血や下血などがおこり、出血量に応じて、出血性ショックの病態(頻呼吸・低血圧・顔面蒼白・冷汗)も起こる。
3.× 迷走神経反射の可能性は低い。なぜなら、迷走神経反射は、「頻脈」ではなく徐脈となるため。ちなみに、迷走神経反射のひとつに頸動脈洞反射(ツェルマーク・へーリング反射)があげられる。脈拍を抑えることを目的として利用されることがある(頸動脈洞マッサージ)。つまり、副交感神経優位になる。
4.× 低血糖発作の可能性は低い。なぜなら、本症例は①吐血がみられること、②血糖102mg/dLであるため。一般的に低血糖発作では、血糖値が70mg/dLより低くなり、交感神経症状(発汗・頻脈・顔面蒼白など)がみられる。ちなみに、低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。

出血性ショックとは?

出血性ショックとは、外傷や、消化管などからの出血によって血液循環量の低下が原因で起こるショックのことである。術後出血が原因となることもある。

【ショックの診断】
・心拍数:100回/分以上
・呼吸数:22回/分以上
・低血圧(収縮期血圧90mmHg)、または通常の血圧から30mmHgの低下
・尿量:0.5mL/kg/時
・意識障害が見られる。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(52歳、男性)は、5年前にC型肝炎、肝硬変と診断され、1回の入院歴がある。退院後、医療機関への受診を中断し3年が経過している。毎日、ウイスキーを約300mL飲んでいる。夕食の2時間後に約1,100mLの吐血があり、緊急入院となった。
 身体所見:体温35.4 ℃、呼吸数26/分、脈拍122/分、血圧86/42mmHg、顔面は蒼白、冷汗を認める。意識は清明だが不安げな表情をしている。
 検査所見:赤血球278万/μL、Hb 8.4g/dL、総ビリルビン4.1mg/dL、アンモニア188μg/dL、K 3.9mEq/L、血糖102mg/dL。

92 入院から4日が経過し、Aさんは医師から「C型肝炎、肝硬変の患者は肝細胞癌を発症することがある」と説明を受けた。Aさんはスクリーニングの目的で、肝臓から骨盤内臓器までの範囲で腹部超音波検査を受けることになった。
 検査前日に看護師が行う説明で正しいのはどれか。

1.「検査直前に排尿を済ませてください」
2.「おならは検査が終わるまで我慢してください」
3.「造影剤のアレルギーがあれば教えてください」
4.「検査当日は、起床時から飲食物を摂取しないでください」

解答4

解説

本症例のポイント

・入院から4日経過
・医師「C型肝炎、肝硬変の患者は肝細胞癌を発症することがある」と。
・肝臓から骨盤内臓器までの範囲で腹部超音波検査を受けることになった。
→腹部超音波検査とは、腹腔内臓器に対して行う超音波検査である。腹部エコーともいう。腹部超音波検査を受ける場合の注意点として、①朝ご飯を食べない(お水やお茶は少量なら大丈夫)、②検査前できるだけトイレに行かない、③お薬は、医師による中止の指示がない限り、通常通り服用するなどがあげられる。

1.× 検査直前の排尿は行わず、むしろ検査2時間前から排尿を我慢してもらう。なぜなら、膀胱に尿がたまると、膀胱が風船のようにふくらみ膀胱の中の結石や腫瘍が見えやすくなるため。また子宮、卵巣、前立腺などは深い骨盤内に位置しており、腸管ガスの影響で見えにくくなるが、尿をためることで腸管ガスの影響を少なくなる。
2.× おならは、検査が終わるまで我慢する必要はない。むしろ、おならをした方が、消化管内のガス減少に伴い観察しやすくなる。消化管内のガスが貯留しているようなら、検査前日に下剤を投与することもある。
3.× 造影剤は使用しないため、アレルギーを聞く必要はない。造影剤とは、画像診断検査をより分かりやすくするために用いる薬剤全体を指す。主にCT検査、MRI検査などで用いられる造影剤は静脈に注射し、血管造影検査(ANGIO)ではカテーテルを用いて直接血管内に注入する。したがって、一般的な超音波検査では、造影剤は使用しない。
4.〇 正しい。「検査当日は、起床時から飲食物を摂取しないでください」と検査前日に看護師が説明する。なぜなら、飲食物を摂取すると、消化管内でのガスの発生胆嚢収縮などを避けるため。午前中に検査を行う場合には、検査前日の夜以降、検査終了まで飲食しないよう指導する。ただし、少量の水分(水、お茶)の摂取の影響は少ない。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(52歳、男性)は、5年前にC型肝炎、肝硬変と診断され、1回の入院歴がある。退院後、医療機関への受診を中断し3年が経過している。毎日、ウイスキーを約300mL飲んでいる。夕食の2時間後に約1,100mLの吐血があり、緊急入院となった。
 身体所見:体温35.4 ℃、呼吸数26/分、脈拍122/分、血圧86/42mmHg、顔面は蒼白、冷汗を認める。意識は清明だが不安げな表情をしている。
 検査所見:赤血球278万/μL、Hb 8.4g/dL、総ビリルビン4.1mg/dL、アンモニア188μg/dL、K 3.9mEq/L、血糖102mg/dL。

93 検査の結果、C型肝炎に対し抗ウイルス療法が開始され、退院後は定期的に外来通院することになった。
 退院に向けたAさんへの食事指導で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.禁酒する。
2.食物繊維を控える。
3.高蛋白食を摂取する。
4.カリウム制限をする。
5.熱い食べものを避ける。

解答1・5

解説

本症例のポイント

・Aさん(52歳、男性)
・5年前:C型肝炎肝硬変(1回の入院歴)
食道静脈瘤破裂
・C型肝炎に対し抗ウイルス療法が開始。
・退院後:定期的に外来通院する。
・退院に向けたAさんへの食事指導を行う。
→肝臓病の食事は、以前は「高たんぱく、高カロリー、低脂肪」が大原則であったが、現在では、病んでいる肝臓に多くの栄養を与えても、かえって負担を増してしまうことが分かってきた。つまり、肝臓病の食事療法の基本は普通食を基本にした、バランスのとれた食事をとることである。主なポイントとして、①1日3食規則正しい食事、②バランスの良い食事、③食物繊維、海藻類、ビタミン、ミネラルを意識的に摂取する。③アルコールを控える、④ジュースやお菓子を控えることなどがあげられる。

1.〇 正しい。禁酒する。なぜなら、本症例は、肝硬変が進行しており、アルコールによりさらに肝臓に負担をかけてしまうため。ちなみに、肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。 慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができる。合併症として、腹水、肝性脳症、食道静脈瘤、血小板減少による出血傾向、肝がんなどがあげられる。
2.× 食物繊維は、「控える」のではなく、積極的に摂取する。なぜなら、食物繊維は便通をよくする作用があるため。便秘は、アンモニア源となる腸内容物が蓄積し、高アンモニア血症や肝性脳症を発症するリスクが上昇する。ちなみに、肝性脳症とは、重度の肝疾患がある人において、正常なら肝臓で除去されるはずの有害物質が血液中に蓄積して脳に達することで、脳機能が低下する病気である。長期にわたる(慢性の)肝疾患がある患者に発生する。 原因として、消化管での出血、感染症、処方薬を正しく服用しないこと、その他のストレスによって誘発される。正常な肝なら代謝されるはずの有害物質(アンモニアなど)が脳に達することによって生じる。肝性脳症は多くの場合、治療により予後良好である。主に、①ラクツロース、②抗菌薬が用いられる。①合成糖であるラクツロースは、下剤として作用し、食物が腸を通過する速度を速めることで、体に吸収されるアンモニアの量が減少させる。②口から投与しても腸から吸収されない抗菌薬(リファキシミンなど)を処方することにより、腸に残り、消化中に毒素を作り出す細菌の数を減らす効果が期待できる。(※参考「肝性脳症」MSDマニュアル家庭版)
3.× 摂取するのは、「高蛋白食」ではなく、低蛋白食である。なぜなら、蛋白質はアンモニアの生成を促進するため。本症例は、アンモニアが188μg/dLと高値であり、アンモニアの生成を抑制、肝性脳症を発症する可能性を低くする必要がある。ちなみに、蛋白摂取の指導は、腹水や肝性脳症のない代償期の肝硬変であっても、1.0~1.5g/kg/日程度とする。
4.× カリウム制限は必要ない。浮腫や腹水の出現を避けるためには、「カリウム」ではなく、ナトリウム(食塩)の制限を行う。ちなみに、カリウム制限は腎機能が低下している場合に行う。ほかにも、蛋白制限、塩分制限の食事療法を行う。
5.〇 正しい。熱い食べものを避ける。本症例は、食道静脈瘤がある。食道静脈瘤において、熱い食べ物や刺激の強いもの、固い食べ物は、食道静脈瘤が破裂する可能性が高まるため避ける必要がある(参考:「合併症がない肝硬変(代償期)の食事」エーザイの肝疾患サポートサイトより)。

慢性腎不全(CKD)とは?

 慢性腎不全(慢性腎臓病とも)は、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。その結果血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。その原因として最も多いのは糖尿病で、次に多いのは高血圧である。尿や血液、腹部超音波検査やCTなどの検査で腎臓機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される。

慢性腎不全(CKD)に対する治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。
①生活習慣の改善:禁煙・大量飲酒の回避・定期的な運動・ワクチン接種による感染症の予防・癌スクリーニングなど。
②食事療法:十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限。

 

 

 

 

次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
 Aさん(58歳、男性、会社員)は、妻(55歳)と2人暮らし。5年前から高血圧症、脂質異常症を指摘され、降圧薬を内服していた。自宅で左半身に脱力感が出現し、救急車で搬送された。救急外来でCT及びMRI検査を行った結果、右中大脳動脈領域に脳梗塞の所見が認められた。入院時は、グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)E3V4M5、体温36.8 ℃、呼吸数16/分、脈拍66/分(不整)、血圧160/85mmHg、HbA1c 5.8%、心電図では、RR間隔は不定で心拍数100/分であった。入院後、血栓溶解療法を受け、2日後からリハビリテーションが開始された。1週後には回復期リハビリテーション病棟へ転棟した。

94 Aさんの脳梗塞の原因で考えられるのはどれか。2つ選べ。

1.糖尿病
2.胃潰瘍
3.高血圧症
4.心房細動
5.心房粗動

解答3・4

解説

本症例のポイント

・Aさん(58歳、男性、会社員)
・2人暮らし:妻(55歳)
・5年前:高血圧症脂質異常症(降圧薬内服)
・左半身に脱力感(右中大脳動脈領域に脳梗塞
・入院時:GCSはE3V4M5、体温36.8 ℃、呼吸数16/分、脈拍66/分(不整)、血圧160/85mmHg、HbA1c 5.8%
・心電図:RR間隔は不定で心拍数100/分
・入院後:血栓溶解療法(2日後からリハ)
・1週後:回復期リハビリテーション病棟へ転棟した。
→脳卒中の発症の原因となる主な危険因子としては、加齢に加え、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動、喫煙、飲酒、全身の高い炎症状態が考えられる。本症例に適した危険因子を設問文から選択する。

1.× 糖尿病は脳梗塞の危険因子となりうるが、本症例の脳梗塞の原因とは考えにくい。なぜなら、本症例の来院時HbA1cは、5.8%であるため。HbA1cの正常範囲は、4.6〜6.2%である。6.5%以上になると糖尿病が疑われることになり、ブドウ糖負荷試験などの再検査が必要となる。(※参考:「糖尿病治療ガイドライン」日本糖尿病学会より)
2.× 胃潰瘍が、脳梗塞の原因とは考えにくい。なぜなら、本症例の既往や経過で胃潰瘍を疑わせる所見はないため。また、脳梗塞の発症の原因となる主な危険因子として、胃潰瘍は該当しない。ちなみに、胃潰瘍とは、胃粘膜が炎症を起こし、粘膜の一部が欠損している状態である。症状として、みぞおちを中心とした鋭い痛み、吐き気、嘔吐、胸やけ、頻繁なげっぷ、食欲不振などである。
3.〇 正しい。高血圧症が、本症例の脳梗塞の原因と考えられる。本症例は、5年前から高血圧症と診断されており、入院時の血圧も160/85mmHgである。一般的にも高血圧は、動脈硬化を進展させるため、脳梗塞の危険因子である。
4.〇 正しい。心房細動が、本症例の脳梗塞の原因と考えられる。本症例は、入院時の脈が不整、心電図所見のRR間隔は不定、心拍数100回/分であったことから、心房細動が疑われる。心房細動は、心原性脳塞栓症の原因として最も多い不整脈である。心房細動は、心臓がこまかく震えている状態である。血栓ができやすいため脳塞栓の原因となり最多である。心房細動の特徴として、心房の興奮が形・大きさともに不規則であり、基線が揺れている(f波)。心房が正常に収縮しないためにP波が消失し、QRS波が不規則である。
5.× 心房粗動は脳梗塞の危険因子となりうるが、本症例は心房粗動を呈していない可能性が高い。なぜなら、心房粗動の心電図の特徴として、P波は見られず、F波(ノコギリ状)が出現するため。つまり、RR間隔が比較的保たれ、心房が240回/分以上で規則正しく収縮する。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
 Aさん(58歳、男性、会社員)は、妻(55歳)と2人暮らし。5年前から高血圧症、脂質異常症を指摘され、降圧薬を内服していた。自宅で左半身に脱力感が出現し、救急車で搬送された。救急外来でCT及びMRI検査を行った結果、右中大脳動脈領域に脳梗塞の所見が認められた。入院時は、グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)E3V4M5、体温36.8 ℃、呼吸数16/分、脈拍66/分(不整)、血圧160/85mmHg、HbA1c 5.8%、心電図では、RR間隔は不定で心拍数100/分であった。入院後、血栓溶解療法を受け、2日後からリハビリテーションが開始された。1週後には回復期リハビリテーション病棟へ転棟した。

95 入院から3週が経過し、リハビリテーションによって日常生活動作(ADL)は改善しているが、夜間は眠れず、食欲も低下している。Aさんは「なかなか良くならない。何もできなくなってしまった」と話している。
 現在のAさんへの声かけで、最も適切なのはどれか。

1.「時間が経てば良くなりますよ」
2.「リハビリをがんばりましょう」
3.「同じ病気の患者さんをご紹介しますね」
4.「なかなか良くならないと感じているのですね」

解答4

解説

本症例のポイント

・入院から3週が経過
・ADL:改善(夜間は眠れず、食欲も低下)
・Aさん「なかなか良くならない。何もできなくなってしまった」と。
→本症例は、うつ症状がみられる。脳出血や脳梗塞などの病気では、脳の血管が障害され、このとき脳の中の気分や感情にかかわる部分も影響を受けて、抑うつ状態が現れることがある。それに加え、脳卒中を起こしたことによる①障害受容、②生活環境上のストレスなどが加わり、うつ病(脳卒中後うつ病)が発症しやすいといわれる。ちなみに、障害受容の過程は、「ショック期→否認期→混乱期→解決への努力期(再起)→受容期」の順に現れる。5段階のプロセスは順序通りに進むわけはなく、また障害受容に至らない障害者も存在する。

1.× 「時間が経てば良くなりますよ」と、あいまいな表現を使用した励まし保証は、看護師の責任問題やかえってAさんの意欲を低下させてしまう可能性がある。時間が経てば良くなるのであれば、リハビリの必要がなくなってしまう。また、どれくらいの時間で、どのくらい良くなるのか?発症前の生活のようになれるのか?などさらに言及される可能性もある。
2.× 「リハビリをがんばりましょう」と伝える必要はない。なぜなら、本症例は、リハビリで日常生活動作が改善していることからも、すでに頑張っている様子がうかがえる。さらに、がんばるように安易に励ますことは、抑うつ症状を悪化させる原因にもなる。
3.× 「同じ病気の患者さんをご紹介しますね」と伝える必要はない。なぜなら、Aさんからの発言だけでは、「他社との交流」を求めているようには受け取れないため。また、抑うつ状態時に、他者との交流を強要するのは、負担になり症状が悪化する可能性が考えられる。
4.〇 正しい。「なかなか良くならないと感じているのですね」と伝える。抑うつ状態への対応として、①気持ちを受け入れる。②共感的な態度を示す。③心理的な負担となるため、激励はしない。④無理をしなくてよいことを伝える。⑤必ず回復することを繰り返し伝えていく。⑥静かな場所を提供するなどがあげられる。

うつ病患者への対応

かかりやすい:几帳面で完璧主義、責任感が強い人が多い。

うつ病の特徴:意欲低下、精神運動抑制などの症状のため、自己評価が低く、疲労感が強い。

①調子が悪いのは病気のせいであり、治療を行えば必ず改善すること。
②重要事項の判断・決定は先延ばしにする。
③自殺しないように約束してもらうことなど。

【作業基準】
①工程がはっきりしている。
②短期間で完成できる。
③安全で受身的で非競争的である。
④軽い運動(いつでも休憩できる)

【対応】
①気持ちを受け入れる。
②共感的な態度を示す。
③心理的な負担となるため、激励はしない。
④無理をしなくてよいことを伝える。
⑤必ず回復することを繰り返し伝えていく。
⑥静かな場所を提供する。

 

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